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公文書開示審査会答申第108号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

「○○市デイサービスセンターにおける利用者死亡に至る介護事故について 当該事故に係る居宅介護支援事業についての実地指導に対し、社会福祉法人△△△による、一連のケアマネジメント業務を適正に実施するとして提出された、別紙参考資料(MDS-HC方式)」の非開示決定に対する異議申立てに係る答申書

 群馬県公文書開示審査会
第一部会

第1 審査会の結論

 実施機関が行った非開示決定は妥当ではなく、別表に掲げる「非開示部分」を除き、開示すべきである。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成19年1月25日付けで、「○○市デイサービスセンターにおける利用者死亡に至る介護事故について 当該事故に係る居宅介護支援事業についての実地指導に対し、社会福祉法人△△△による、一連のケアマネジメント業務を適正に実施するとして提出された、別紙参考資料(MDS-HC方式)」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成19年2月2日、本件請求に係る公文書を「○○市デイサービスセンターにおける利用者死亡に至る介護事故について 当該事故に係る居宅介護支援事業についての実地指導に対し、社会福祉法人△△△による、一連のケアマネジメント業務を適正に実施するとして提出された、別紙参考資料(MDS-HC方式)」(以下「本件公文書」という。)であると判断し、条例第14条第2号及び第3号イに該当するとして、非開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、本件公文書を開示しない理由を次のとおり付して、申立人に通知した。

  • 条例第14条第2号該当
  • 条例第14条第3号イ該当

 請求のあった別紙参考資料は、「在宅アセスメント表(問題領域一覧)」、「居宅サービス計画書(1)」、「居宅介護経過」及び「介護保険サービス連絡票」であり、これらには、利用者の個人情報が記載されており、特定の個人を識別することができるため。

 また、法人の内部管理情報が記載されており、開示することで法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれがあるため。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成19年3月22日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立てを行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成19年4月13日、本件異議申立て事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点(条例第14条第2号及び第3号イ該当性)

 条例第14条第2号及び第3号イに該当するとして、本件公文書を非開示とした決定は妥当であるか。

第4 争点に対する当事者の主張

争点(条例第14条第2号及び第3号イ該当性)

(1)申立人の主張要旨

 公文書の不開示が、介護給付の不正受給その他の犯罪の隠蔽を意図していた場合においては、本件公文書の不開示は絶対に認められない。

 記載される内容の如何に関わらず、条例第14条の規定を濫用することは、本条例の精神に著しく反する。

 介護保険法に規定される指定基準違反の事実の隠蔽に基づく法人の利益と、県民の知る権利を比較検討した場合において、当該法人の不当な利益を偏重することは許されない。

 執行機関が任意に選出した審査会の委員であっても、委員各自が有する職責に求められる社会的責務に反して不当な諮問を行うことはあってはならず、当然のことながら、実施機関の不正を看過することは許されない。

 本件公文書は、本審査会答申74号等により明らかとなった社会福祉法人△△△による介護報酬の不正受給及び本件介護事故裁判において認められた、同法人の不法行為並びに注意義務違反について、本来なすべきであった不正な不作為が明確に示される公文書である。

 「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成11年 老企22)」第二3(7)【6】(原本は丸数字の「6」である。)において、「・・当該課題分析は、介護支援専門員の個人的な考え方や手法のみによって行われてはならず、その者の課題を客観的に抽出されるための手法として合理的なものと認められる適切な方法を用いなければならないものであるが、この課題分析の方式については、別途通知するところによるものである。」とされ、「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について(平成11年 老企29)」の「別紙4課題分析標準項目について」において、「介護サービス計画作成の前提となる課題分析については、(中略)当該「基準解釈通知」の趣旨に基づき、個別の課題分析手法について「本標準課題分析項目」を具備することを持ってそれに代えることとするものである。」とされているが、他方、「介護支援専門員養成研修事業の実施について(平成11年 老発316号)」において、介護支援専門員の研修過程においては、課題分析・居宅サービス計画作成手法として、MDS-HCの手法を紹介することとなっている。また、本件に係る裁判において、同法人の支援専門員は、当該課題分析手法は群馬県より指導された旨証言している。従って、当該課題分析手法は法令において明示される介護サービス事業者に共通する事業運営の手法であることから、当該法人が有する固有の「ノウハウ」ではない。よって、当該法人の事業運営上の地位を害するとは認められず、条例第14条第3号イには該当しない。

(2)実施機関の主張

ア 本件公文書についての過去の答申

 本件公文書の取扱いについては、審査会の答申(平成18年11月3日付け答申第79号(諮問第70号))(以下「答申第79号」という。)において、非開示が妥当であると判断されている。

イ 本件公文書全般

 介護保険事業者の個人情報の取扱いは、厚生労働省により示された「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(平成16年12月24日(平成18年4月21日改正))」に沿って、適切に運営するよう指導しているところである。

 また、指定基準にあるように、居宅サービス計画をはじめとする個人情報を居宅介護支援事業所などの関係事業者等に提供する場合は、本人に文書による同意を求めるなど、厳正な取扱いが求められている。

 介護保険事業者においては、利用者が極めて限定されていることから、氏名をマスキングしたとしても、生年月日や利用者の状況などの記載内容などの僅かな情報からでも、利用者やその家族等の関係者が見た場合、利用者が簡単に特定されてしまうことが十分想定される。

 個人情報といえども必要な情報の提供は行われるものであるが、監査実施機関から第三者への提供は、利用者やその家族の同意が確認できないことから、極めて慎重な取扱いが必要である。

 また、利用者に係る情報は、法人の内部情報であり、特に医療・介護の分野においては、通常よりも個人情報の管理に慎重な取扱いが求められていることから、このような情報を開示することは法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれがあると考えている。

 なお、従業員の氏名は、条例第14条第2号に規定する非開示情報に該当する。

ウ 在宅アセスメント表(問題領域一覧)

 通常、アセスメントシート自体は、外部に公表するものではなく、事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画を作成する過程の中で作成される書類である。アセスメントは居宅サービス計画書を作成する上で重要なものであるが、アセスメントをはじめとするケアマネジメントは、担当する事業者(介護支援専門員)の技量が出やすい事項でもあり、一種の「ノウハウ」ともいえる。

 具体的にアセスメントに関していえば、どの様な項目を調査しているのか(アセスメントチャートの様式など)、利用者や家族の要望は適切に把握されているか、利用者の心身の状況が的確に把握できているのか、日常生活を行っていく上での課題は適切に把握できているか、などが重要なポイントである。

 第三者にこうした「ノウハウ」を無制限に開示することは、条例第14条第3号イに規定する権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えている。

エ 居宅サービス計画書(1)

 居宅サービス計画は、本人の文書による同意を得たうえで、関係する事業者に提供されるものであり、こうした形で、第三者へ開示されることは想定されていないだけでなく、事業者の「ノウハウ」に該当するものであり、第三者にこうした「ノウハウ」を無制限に開示することは、条例第14条第3号イに規定する権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えている。

オ 居宅介護経過

 居宅介護経過は、介護現場における看護・介護の記録と同様に、本人が開示請求をした場合以外には開示されることは想定されていないだけでなく、事業者の「ノウハウ」に該当するものであり、第三者にこうした「ノウハウ」を無制限に開示することは、条例第14条第3号イに規定する権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えている。

カ 介護保険サービス連絡票

 介護保険サービス連絡票は、居宅介護支援事業所と介護保険サービス提供事業所間での連絡事項を記載したものであるが、記載の方法・内容は、事業者の「ノウハウ」に該当するものであり、第三者にこうした「ノウハウ」を無制限に開示することは、条例第14条第3号イに規定する権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えている。

第5 審査会の判断

 審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 本件事案を判断するに当たっての留意点

 答申第79号の審議において、実施機関は本件公文書が事業者の「ノウハウ」であり条例第14条第3号イに該当すると主張したことに対し、申立人は「ノウハウ」に関する主張をしなかったため、審査会では実質的な争点とならず、結果として本件公文書のすべてを非開示と判断している。

 しかし、本件事案においては新たな主張がなされていることから、答申第79号の内容を踏まえつつも、審査会の答申で示される考え方は決して不変のものではなく、変更されることもあり得ることを念頭に置き判断を行う。

2 争点(条例第14条第2号及び第3号イ該当性)

 実施機関が非開示とした本件公文書が、条例第14条第2号及び第3号イに該当するかどうかについて検討する。

 この点に関して、答申第79号においては次のように各公文書を非開示と判断している。

 「エ 在宅ケアアセスメント表(問題領域一覧)

在宅ケアアセスメント表は、事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画を作成する過程の中で作られる書類であり、利用者の介護経歴、家族関係、意向及び問題領域等が記載されている。

審査会において該当公文書の内容を確認したところ、文書自体は、択一方式になっている部分もあり、必ずしも利用者の情報が濃密、詳細に記載されているとは認められなかった。

しかしながら、通常利用者(顧客)に係る情報は、基本的に法人の内部管理情報であると判断され、とりわけ医療・介護関係等の分野は通常法人より個人情報の管理に慎重な取扱いが求められていること、及びアセスメントは居宅サービス計画書を作成する上で重要なものであり、アセスメント及びケアマネジメントの方法を記録したものは方式を含めノウハウに準ずるものと判断できることに鑑みれば、結局のところこのような情報を開示することは法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれが認められるので、非開示が妥当である。

 オ 居宅サービス計画書(1)

居宅サービス計画書(1)は「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日老企発第29号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)の第1表の書類であり、利用者名、居宅サービス計画作成者氏名、利用者及び家族の介護に対する意向、総合的な援助の方針及び家事援助中心型の算定利用等の情報が記載されている。

審査会において該当公文書の記載内容を確認したところ、必ずしも利用者の情報が濃密、詳細に記載されているとは認められなかった。

しかしながら、この公文書についても上記エと同様に、通常利用者(顧客)に係る情報は、基本的に法人の内部管理情報であると判断され、とりわけ医療・介護関係等の分野は通常法人より個人情報の管理に慎重な取扱いが求められていること、及びノウハウに準ずるものと判断できることに鑑みれば、結局のところこのような情報を開示することは法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれが認められるので、非開示が妥当である。

 カ 「居宅介護経過」

居宅介護経過は「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日老企発第29号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)の第6表の書類であり、利用者名、居宅サービス計画作成者氏名、年月日及び内容の情報が記載されている。

審査会において該当公文書の記載内容を確認したところ、利用者の状態がある程度具体的に記載されていることが認められた。

また、この公文書についても上記エ及びオと同様に、通常利用者(顧客)に係る情報は、基本的に法人の内部管理情報であると判断され、とりわけ医療・介護関係等の分野は通常法人より個人情報の管理に慎重な取扱いが求められていることに鑑みれば、結局のところこのような情報を開示することは法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれが認められるので、非開示が妥当である。

 キ 「介護保険サービス連絡票」

介護保険サービス連絡票は、法人の施設間での連絡事項を記載したものである。

審査会において該当公文書の記載内容を確認したところ、利用者の状態がある程度具体的に記載されていることが認められた。

この公文書についても上記エ、オ及びカと同様に、通常利用者(顧客)に係る情報は、基本的には法人の内部管理情報であると判断され、とりわけ医療・介護関係等の分野は通常法人より個人情報の管理に慎重な取扱いが求められていることに鑑みれば、結局のところこのような情報を開示することは法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれが認められるので、非開示が妥当である。

なお、エからキの公文書は利用者氏名等の個人情報は当初よりマスキングがなされている。また、これらの書類には職員の氏名等の個人情報や特にカ及びキについてはその記述の内容から個人の権利利益を害するおそれがあると判断されるものでもあるが、今回の答申では、既に法人情報として非開示であると判断しているので、特に個人情報での評価は行わない。」

(1)MDS-HC方式の課題分析手法等のすべてを非開示とすることの妥当性について

申立人は、MDS-HC方式の課題分析手法は、実施機関から指導され、法令において明示される介護サービス事業者に共通する事業運営の手法であることから、当該法人が有する固有の「ノウハウ」ではないので、当該法人の事業運営上の地位を害するとは認められず、条例第14条第3号イには該当しないと主張しているので、この点について検討する。

指定居宅介護支援において、介護支援専門員は居宅サービス計画の作成に先立ち利用者の課題分析を行うこととなるが、上記「第4 争点に対する当事者の主張(1)申立人の主張要旨」にもあるとおり、平成11年11月12日老企発29号により当該課題分析の標準項目及び介護サービス計画書の様式が提示されており、さらに、平成11年4月2日老発第316号(平成12年6月9日老発第519号にて一部改正)には、国の高齢者ケアサービス体制整備検討委員会及び同委員会ケアプラン専門委員会の中で検討された、MDS-HC方式、三団体ケアプラン策定研究会方式、日本介護福祉士会方式、日本社会福祉士会方式、日本訪問看護振興財団方式の課題分析手法が挙げられている。

本件公文書のうち「在宅ケアアセスメント表(MDS-HC2.0)」及び「問題領域一覧」の書式は、市販される書籍等にも掲載されていることが確認された。

よって、MDS-HC方式の課題分析手法は居宅介護支援事業における課題分析の代表的な手法の一つであり、その書式は誰でも容易に入手でき、当該法人のみならず複数の介護サービス事業者で使用されているものであると推察できることからも、当該法人固有の「ノウハウ」であるとは認められない。

なお、実施機関は、記入方法・内容も事業者の「ノウハウ」に該当するものであるため非開示であると主張するが、仮に記入方法・内容が事業者の「ノウハウ」に該当し非開示が妥当である場合であっても、その部分を非開示とすれば、残りの書式そのものまで事業者の「ノウハウ」であるとは認められない。

次に、「居宅サービス計画書(1)」及び「居宅介護経過」は、「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日老企発第29号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)で提示された書式の第1表及び第6表を使用したものであることが確認された。

よって、これらについても当該法人固有の「ノウハウ」であるとは認められない。

また、「介護保険サービス連絡票」は、法人の施設間での連絡事項を記載したものであり、利用者の状態が具体的に記載されているところ、医療・介護関係等の分野は通常法人より個人情報の管理に慎重な取扱いが求められているが、法人の内部管理情報として保護される部分及び個人情報に該当する部分を除けば、非開示とする理由はないと認められた。

したがって、「在宅ケアアセスメント表(MDS-HC2.0)」、「問題領域一覧」、「居宅サービス計画書(1)」、「居宅介護経過」及び「介護保険サービス連絡票」の全てを非開示としたことは妥当ではなく、それぞれの文書ごとに非開示部分を判断すべきである。

(2)部分開示すべき部分の判断について

次に、「在宅ケアアセスメント表(MDS-HC2.0)」、「問題領域一覧」、「居宅サービス計画書(1)」及び「居宅介護経過」の書式以外の記載内容の非開示情報該当性についてそれぞれ判断する。

ア 「在宅ケアアセスメント表(MDS-HC2.0)」

当該文書は、事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画書を作成する過程で作成される書類の1ページ目であり、利用者の基本情報が記載されている。さらに、氏名、生年月日(年齢)、最初の相談・受付年月日及び職歴以外は択一式となっている。

「AA-3.生年月日(年齢)」欄の記載は、特定の個人が識別されるものであるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

また、「介護台帳NO.」、「AA-4.最初の相談・受付年月日」、「AA-5.配偶者の有無」、「AA-6.教育歴(最終学歴)」、「AA-7.職歴」、「AA-8.相談・受付時の住居」、「AA-9.相談・受付時の同居者」、「AA-10.過去の入院・入所歴」、「AA-11.退院後の経過期間」、「AA-12.転居歴」及び「AA-13.意思決定権/終末期に対する希望」各欄の記載内容又は選択番号は、特定の個人が識別できないとしても、当該個人と特別の関係にある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報と組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することとなり、当該個人の権利利益が害されるおそれがあるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

なお、「氏名」及び「AA-1.対象者氏名(フリガナ)」各欄の記載部分は、本件公文書が当該法人から実施機関に提出された段階からすでに黒塗りされている。

イ 「問題領域一覧」

当該文書も「在宅ケアアセスメント表(MDS-HC2.0)」と同様に事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画を作成する過程の中で作成される書類であり、アセスメントの結果選び出された問題領域が記載されるところ、当該一覧には、「2.IADL(支援)(B)」、「5.コミュニケーション」及び「8.認知」に係る3項目の記載がある。

「担当ケアマネ」欄の記載は、特定の個人が識別されるものであるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

また、「介護台帳NO.」及び「アセスメント日」各欄の記載は、特定の個人が識別できないとしても、当該個人と特別の関係にある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報と組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することとなり、当該個人の権利利益が害されるおそれがあるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

しかし、「2.IADL(支援)(B)」、「5.コミュニケーション」及び「8.認知」に係る問題領域の「問題の要因・危険性・可能性」及び「ケアの方向性」各欄の記載内容については、審査会で見分したところ、「問題の要因・危険性・可能性」欄の記載は、利用者の具体的な記載ではないため個人の権利利益を害するおそれがあるとは認められず、「介護台帳NO.」及び「アセスメント日」を非開示とすることで特定の利用者を識別することはできないため条例第14条第2号には該当しない。また、「ケアの方向性」欄も個別具体的な方針までは記載されておらず、ある程度類型化された表現で記載されており、当該法人の「ノウハウ」とまではいえないため、条例第14条第3号イにも該当しない。

なお、「氏名」欄の記載部分は、本件公文書が当該法人から実施機関に提出された段階からすでに黒塗りされている。

ウ 「居宅サービス計画書(1)」

当該文書は、利用者に対する居宅介護サービスを行うための計画書であり、利用者名、計画作成者氏名、利用者及び家族の意向及び援助の方針等の情報が記載されている。

「『利用者名』欄の印影」並びに「生年月日」、「住所」及び「居宅サービス計画作成者氏名」各欄の記載は、特定の個人が識別されるものであるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

また、「居宅サービス計画作成(変更)日」、「認定の有効期間」、「要介護状態区分」、「利用者及び家族の介護に対する意向」及び「総合的な援助の方針」各欄の記載内容は、特定の個人が識別できないとしても、当該個人と特別の関係にある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報と組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することとなり、当該個人の権利利益が害されるおそれがあるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

なお、「利用者名」欄の記載部分は、本件公文書が当該法人から実施機関に提出された段階からすでに黒塗りされている。

エ 「居宅介護経過」

当該文書は、利用者の居宅介護の経過を記録するための様式である。

「居宅サービス計画作成者氏名」欄の記載は、特定の個人が識別されるものであるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

また、「年月日」及び「内容」各欄の記載内容は、利用者の心身状態や介護の経過が時系列的に詳細かつ具体的に記録されているため、特定の個人が識別されるおそれがある。また、特定の個人が識別できないとしても、当該個人と特別の関係にある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報と組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することとなり、当該個人の権利利益が害されるおそれがあるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

なお、「利用者名」及び「内容」各欄の一部記載については、本件公文書が当該法人から実施機関に提出された段階からすでに黒塗りされている。

オ 「介護保険サービス連絡票」

当該文書は、当該法人がサービス担当者会議を開催するために、施設間で連絡を行ったものであり、会議の開催日時や利用者の状態等が記載されている。

「担当」欄の記載は、特定の個人が識別されるものであるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

「照会(依頼)する利用者の氏名(イニシャル)」欄の記載及び「『利用者について』欄(以下「欄1」という。)における『照会(依頼)内容』の1行目の記載(開催日時)」は、特定の個人が識別できないとしても、当該個人と特別の関係にある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報と組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することとなり、当該個人の権利利益が害されるおそれがあるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

「『欄1』及び『ケアプランについて』欄(以下「欄2」という。)」の「『照会(依頼)内容』及び『回答内容』」のうち、「『欄1』における『回答内容』の記載」、「『欄2』における『照会(依頼)内容』の1行目から3行目の記載」及び「『欄2』における『回答内容』の記載」は、当該法人の担当者から見た利用者の心身状態が詳細に記載されているため、特定の個人が識別できないとしても、当該個人と特別の関係にある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報と組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することとなり、当該個人の権利利益が害されるおそれがあるため、条例第14条第2号に該当し、非開示が妥当である。

なお、「『欄1』及び『欄2』における『回答内容』の記載」は、具体的な事例における当該法人(担当者)の考え方が利用者の心身状態も含めて記載されているため、当該情報は居宅介護支援事業における「ノウハウ」であると認められ、開示することにより当該法人の事業を営む運営上の地位を害するおそれがあるため、条例第14条第3号イに該当する。

3 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

 なお、申立人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過

年月日 内容
平成19年4月13日 諮問
平成19年5月17日 実施機関からの理由説明書を受領
平成19年8月1日 異議申立人からの意見書を受領

平成19年8月16日

異議申立人からの「意見書の訂正等について」を受領

平成19年12月25日
(第13回 第一部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成20年2月4日
(第14回 第一部会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成20年3月10日
(第15回 第一部会)
審議
平成20年4月28日
(第16回 第一部会)
審議
平成20年6月16日
(第17回 第一部会)

審議

平成20年7月25日
(第18回 第一部会)

審議

平成20年7月29日 答申

別表

対象公文書名 非開示部分 非開示理由
在宅ケアアセスメント表

(MDS-HC2.0)

「介護台帳NO.」、「AA-3.生年月日(年齢)」、「AA-4.最初の相談・受付年月日」、「AA-5.配偶者の有無」、「AA-6.教育歴(最終学歴)」、「AA-7.職歴」、「AA-8.相談・受付時の住居」、「AA-9.相談・受付時の同居者」、「AA-10.過去の入院・入所歴」、「AA-11.退院後の経過期間」、「AA-12.転居歴」及び「AA-13.意思決定権/終末期に対する希望」各欄の記載又は選択番号

条例第14条第2号
問題領域一覧

「介護台帳NO.」、「アセスメント日」及び「担当ケアマネ」各欄の記載

条例第14条第2号

居宅サービス計画書(1)

「『利用者名』の印影」、「生年月日」、「住所」、「居宅サービス計画作成者氏名」、「居宅サービス計画作成(変更)日」、「認定の有効期間」、「要介護状態区分」、「利用者及び家族の介護に対する意向」及び「総合的な援助の方針」各欄の記載

条例第14条第2号

居宅介護経過

「居宅サービス計画作成者氏名」、「年月日」及び「内容」各欄の記載

条例第14条第2号

介護保険サービス連絡票

「担当」及び「照会(依頼)する利用者の氏名(イニシャル)」各欄の記載、並びに「『利用者について』欄における『照会(依頼)内容』の1行目の記載(開催日時)」及び「『ケアプランについて』欄における『照会(依頼)内容』の1行目から3行目の記載」

条例第14条第2号

「『利用者について』欄における『回答内容』の記載」及び「『ケアプランについて』欄における『回答内容』の記載」

条例第14条第2号

条例第14条第3号イ