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公文書開示審査会答申第110号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

(1)「平成17年に、○○○○・△△△△(株)・□□□□(株)及びその販売店◇◇◇◇の販売員に、請求者との電話のやり取りで、迷惑に感じたらすぐ県立精神医療センターの職員に通報してくれ、と依頼した内容。なお、請求者は当時の◇◇◇◇の責任者の●●さんから口頭で前述の内容を聞いている。」の公文書の存否を明らかにしない決定、

(2)「群馬県立精神医療センターが精神保健福祉法第41条を厳密に守らないことを示し合わせた内容」の不存在決定、

(3)「県立精神医療センターの患者に親族の資産を相続または贈与させまいと病院職員の間で示し合わせた内容」の不存在決定、

(4)「県立精神医療センターの病院職員がなぜ請求者の保護者(平成5年に◆◆を■■家裁が選任)に請求者の保護・扶養・引取りに、精神保健福祉法に反して指示が出来ないのかを示す内容。なお前述の指示が出来ないことは同センターの▲▲看護師長から電話で請求者は聞いている。さらに、県立精神医療センターは精神保健福祉法で言う当該病院・及び指定病院である。」の公文書の存否を明らかにしない決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会
第二部会

第1 審査会の結論

 実施機関の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県病院管理者(以下「実施機関」という。)に対し、以下(1)~(4)の開示請求を行った。

(1)平成19年10月11日付けで、「平成17年に、○○○○・△△△△(株)・□□□□(株)及びその販売店◇◇◇◇の販売員に、請求者との電話のやり取りで、迷惑に感じたらすぐ県立精神医療センターの職員に通報してくれ、と依頼した内容。なお、請求者は当時の◇◇◇◇の責任者の●●さんから口頭で前述の内容を聞いている。」の開示請求(以下「本件請求1」という。)

(2)平成19年10月13日付けで、「群馬県立精神医療センターが精神保健福祉法第41条を厳密に守らないことを示し合わせた内容」の開示請求(以下「本件請求2」という。)

(3)平成19年10月15日付けで、「県立精神医療センターの患者に親族の資産を相続または贈与させまいと病院職員の間で示し合わせた内容」の開示請求(以下「本件請求3」という。)

(4)平成19年10月17日付けで、「県立精神医療センターの病院職員がなぜ請求者の保護者(平成5年に◆◆を■■家裁が選任)に請求者の保護・扶養・引取りに、精神保健福祉法に反して指示が出来ないのかを示す内容。なお前述の指示が出来ないことは同センターの▲▲看護師長から電話で請求者は聞いている。さらに、県立精神医療センターは精神保健福祉法で言う当該病院・及び指定病院である。」の開示請求(以下「本件請求4」という。)

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成19年10月18日、本件請求1、本件請求2及び本件請求3に係る公文書を以下(1)~(3)、平成19年10月23日、本件請求4に係る公文書を以下(4)のとおりであると判断し、(1)及び(4)について公文書の存否を明らかにしない決定(以下「本件処分1」及び「本件処分4」という。)を行い、(2)及び(3)について公文書不存在決定(以下「本件処分2」及び「本件処分3」という。)を行い、それぞれ理由を付して、申立人に通知した。

(1)「平成17年に、○○○○・△△△△(株)・□□□□(株)及びその販売店◇◇◇◇の販売員に、請求者との電話のやり取りで、迷惑に感じたらすぐ県立精神医療センターの職員に通報してくれ、と依頼した内容。なお、請求者は当時の◇◇◇◇の責任者の●●さんから口頭で前述の内容を聞いている。」(以下「本件公文書1」という。)

 (存否を明らかにしない理由)

  • 条例第17条該当

 特定個人を名指しした開示請求に係る情報は、当該情報が存在するか否かを答えるだけで、条例第14条第2号の個人に関する情報を明らかにすることになるため。

(2)「群馬県立精神医療センターが精神保健福祉法第41条を厳密に守らないことを示し合わせた内容」(以下「本件公文書2」という。)

 (不存在の理由)

  • 当該請求に係る文書は保有していないため

(3)「県立精神医療センターの患者に親族の資産を相続または贈与させまいと病院職員の間で示し合わせた内容」(以下「本件公文書3」という。)

 (不存在の理由)

  • 当該請求に係る文書は保有していないため

(4)「県立精神医療センターの病院職員がなぜ請求者の保護者(平成5年に◆◆を■■家裁が選任)に請求者の保護・扶養・引取りに、精神保健福祉法に反して指示が出来ないのかを示す内容。なお前述の指示が出来ないことは同センターの▲▲看護師長から電話で請求者は聞いている。さらに、県立精神医療センターは精神保健福祉法で言う当該病院・及び指定病院である。」(以下「本件公文書4」という。)

 (存否を明らかにしない理由)

  • 条例第17条該当

 特定個人を名指しした開示請求に係る情報は、当該情報が存在するか否かを答えるだけで、条例第14条第2号の個人に関する情報を明らかにすることになるため。 

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成19年10月23日付けで本件処分1及び本件処分2、平成19年10月24日付けで本件処分4、平成19年10月29日付けで本件処分3を不服として実施機関に対し異議申立て(以下、合わせて「本件異議申立て」という。)を行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成19年11月12日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 争点

1 争点1(本件公文書1の条例第14条第2号ただし書ロ該当性)
 本件公文書1が条例第14条第2号ただし書ロに該当するか。

2 争点2(本件公文書2の公文書不存在決定について)
 本件公文書2を不存在とした決定は妥当であるか。

3 争点3(本件公文書3の公文書不存在決定について)
 本件公文書3を不存在とした決定は妥当であるか。

4 争点4(本件公文書4の条例第14条第2号ただし書ロ該当性)
 本件公文書4が条例第14条第2号ただし書ロに該当するか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 争点1(本件公文書1の条例第14条第2号ただし書ロ該当性)

(1)申立人の主張

 条例では、第14条第2号ただし書ロにおいて、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報は開示せねばならない。例えば、最近の電化製品は複雑で、電話によるサポートが欠かせない。また、入院中の患者でも手紙の発信及び着信はどこの業者を利用しても自由であり、それらを民間の企業と共謀して妨害するという内容は、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められるのであり、従って開示しなければ条例違反である。
 また、情報の存否拒否というからには、たとえ個人情報の形で開示請求をしても不存在もしくは非開示の決定を下すのが目に見えており、悪質である。

(2)実施機関の主張

 請求件名に「請求者」と「◇◇◇◇の●●」の2名の個人名が含まれており、請求件名に特定個人を名指しした開示請求に係る情報は、当該情報が存在するか否かを答えるだけで、条例第14条第2号の個人に関する情報を明らかにすることになるため、条例第17条により公文書の存否を明らかにできない。
また、本件請求は申立人と実施機関の関係が請求内容となっており、条例第14条第2号ただし書ロに規定される「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」には該当しないと判断した。

2 争点2(本件公文書2の公文書不存在決定について)

(1)申立人の主張

 通称精神保健福祉法では第41条において保護者(親が選任されている場合が多い)に緊急措置入院からの退院・措置入院からの退院・仮退院の際に患者の引取りを課しているが、私が知っているだけでも何十人も保護者に引き取ってもらえず、このような場合入院の必要がなくなって退院しても住むところがなくなってしまう恐れさえあり、これも条例第14条第2号ただし書ロに該当する。
 県立精神医療センターがこの精神保健福祉法第41条を厳密に守らないため、親元へ帰れずに寂しい思いをしている患者が大勢いるというのに、いけしゃあしゃあと実施機関は「当センターはこの法律法第41条に違反するような行為は行っておらず」と理由説明書の中で謳っているのには開いた口がふさがらない。

(2)実施機関の主張

 請求者の言う「精神保健福祉法」とは通称であり、正式な名称は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」である。当センターはこの法第41条に違反するような行為は行っておらず、したがってそのようなことを示し合わせた公文書も存在しない。

3 争点3(本件公文書3の公文書不存在決定について)

(1)申立人の主張

 私が知っているだけでも何十人も遺産の相続権を放棄しろと退院をちらつかせながら迫られ、その旨の文書に署名・捺印した患者が居り、従ってこれも条例第14条第2号ただし書ロに該当する。
 本来実施機関を始め病院職員は患者の人権を守るべき職責があるにもかかわらず、保護者の義務をごまかしていることが多い。患者本人ではなく患者の家族の義務を緩和し本来患者の家族が世話すべきところを精神病院に無理矢理入院させ、そのまま家族は引き取らず、厄介者払いの道具にしてきた「全家連」という圧力団体も破産の上解散した。すなわち、「全家連」は患者本人のためのものではなくて、患者の家族のための団体であったのだ。そういう圧力団体がなくなった今、患者の相続権を強調すべきである。

(2)実施機関の主張

 当センターでは、申立人の主張するような行為は行っておらず、したがってそのようなことを示し合わせた公文書も存在しない。

4 争点4(本件公文書4の条例第14条第2号ただし書ロ該当性)

(1)申立人の主張

 実施機関の決定は条例第14条第2号ただし書ロに反するため、無効である。実施機関の記すことは要するに精神科の患者の人権を踏みにじるものであり、断固許されざるものである。また、情報の存否拒否というからには、たとえ個人情報の形で開示請求をしても不存在もしくは非開示の決定を下すのが目に見えており、悪質である。

(2)実施機関の主張

 請求件名に「請求者」と特定の個人が含まれており、特定個人を名指しした開示請求に係る情報は、当該情報が存在するか否かを答えるだけで、条例第14条第2号の個人に関する情報を明らかにすることになるため。

第5 審査会の判断

 当審査会は、本件事案について審査した結果、次のとおり判断する。

1 争点1(本件公文書1の条例第14条第2号ただし書ロ該当性)

 条例は第13条で原則開示をうたい、第14条で例外的に非開示を認めている。本県の条例は非開示とすべき個人情報の類型について個人識別型を採用しているので、条例第14条第2号本文にいう「個人に関する情報」であって「特定の個人を識別することができるもの」とは、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることになる氏名その他の記述の部分だけでなく、特定の個人情報全体を指すほか、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別可能となるものについても含まれると解される。

 また、条例の開示請求制度は、何人に対しても開示請求権を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されず、条例第14条第2号ただし書イ~ハ又は条例第16条で規定する公益上の理由による裁量的開示に該当しない限り、非開示となる。

 本件請求1は、実施機関が申立人の件で複数の法人に対して電話で依頼をしたことに関する情報を求めるものであるが、請求内容に「請求者」及び「◇◇◇◇の責任者の●●さん」という記載があることから、請求内容全体が、特定の個人に関する情報であることは明らかである。

 したがって、本件請求1に係る情報が存在しているか否かを答えることは、特定の個人に関する情報を開示することになり、条例第14条第2号本文に該当することとなる。しかし、申立人は本件請求1が条例第14条第2号ただし書ロに規定される「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当すると主張しているため、以下、この点について判断する。

 公にすることが必要であると認められる情報とは、人の生命、健康、生活又は財産の保護の必要性が、公にすることにより害されるおそれがある個人の権利利益よりも上回る場合をいうものであり、開示の必要性も、その公にする必要性と個人の権利利益を比較衡量した上で判断されるものである。

 条例が何人にも開示請求権を認め、何人にも同じ情報を開示することから、自己の個人情報の開示請求である等の個別事情を考慮しないことは前述のとおりである。

 また、条例第14条第2号ただし書ロは、「公にすることが必要である」ということを要件としているが、本件請求1については、実施機関が特定個人に関することについて複数の法人に電話で依頼をしたことに関する情報が何人にも公にされることにより害されるおそれがある当該個人の権利利益を上回る必要性があるとは認められないため、本件請求内容は条例第14条第2号ただし書ロには該当しない。

2 争点2(本件公文書2の公文書不存在決定について)

 申立人の主張は、大要、実施機関が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)第41条を厳密に守らないため、保護者に引き取ってもらえない患者を大勢知っており、本件公文書2は存在するはずであるとの趣旨と判断される。

 一方、実施機関は、精神保健福祉法第41条に違反するような行為は行っておらず、したがってそのようなことを示し合わせた公文書も存在しないと主張する。

 「公文書を保有していない」という類型には、(1)そもそも作成又は取得していない、(2)作成又は取得したが保存期間満了により廃棄済み、及び(3)開示請求の対象となる「公文書」ではないという3つの場合があるが、実施機関は、そもそも作成又は取得していないと主張しているので、本件公文書2が実施機関における事務処理において作成・取得されるものであるか否かを検討する。

 精神保健福祉法第41条では、措置入院者の退院等の場合についての保護者の義務を規定しており、同法に基づき緊急措置入院した者について措置入院としなかった場合、措置解除により退院した場合及び仮退院の場合、保護者は患者を引き取らなければならないとしていることからも、実施機関が保護者に対して患者を引き取るよう指示することを義務付けた規定ではない。さらに、審査会では、本件事案についての説明を実施機関から受けたが、実施機関内の関係者に聴取をしたところそのような事実は確認できず、職員が示し合わせて保護者に引き取らせないようにするなど、同法第41条を守らないことを示し合わせた文書は存在しないとする実施機関の説明に特段不合理な点は認められなかった。

 また、申立人の主張する「実例を知っている」についても、「何を根拠に言っているのか当実施機関としては分かりかねる」との説明に不自然な点は認められなかった。

 したがって、本件公文書2について不存在であるとした実施機関の決定は妥当である。

3 争点3(本件公文書3の公文書不存在決定について)

 申立人の主張は、大要、遺産の相続権を放棄しろと退院をちらつかせながら迫られ、その旨の文書に署名・捺印した患者を何十人も知っており、本件公文書3は存在するはずであるとの趣旨と判断される。一方、実施機関は、申立人の主張するような行為は行っておらず、したがってそのようなことを示し合わせた公文書も存在しないと主張する。

 「公文書を保有していない」という類型には、上記2で述べたとおり3つの場合があるが、実施機関は、そもそも作成又は取得していないと主張しているので、本件公文書3が実施機関における事務処理において作成・取得されるものであるか否かを検討する。

 審査会では、本件事案についての説明を実施機関から受けたところ、患者や患者の親族等から相続や贈与について相談があった場合の対応について、実施機関内で対応指針やマニュアル等は作成しておらず、法律的な内容については、市町村等で実施している無料法律相談を紹介するなどのアドバイスをすることはあるものの、相続や贈与の法律的な内容に実施機関が直接関与することはないとのことであった。さらに、実施機関内で関係者に聴取をしたところそのような事実は確認できず、患者に親族の資産を相続または贈与させまいと病院職員の間で示し合わせた文書は存在しないとする説明に特段不合理な点は認められなかった。

 また、申立人の主張する「私が知っているだけでも何十人も遺産の相続権を放棄しろと退院をちらつかせながら迫られ、その旨の文書に署名・捺印した患者がいる」について、実施機関が患者等の相続や贈与に直接関与することがない以上、実施機関の「何を根拠に言っているのか当実施機関としては分かりかねる」との説明に不自然な点は認められなかった。

 したがって、本件公文書3について不存在であるとした実施機関の決定は妥当である。

4 争点4(本件公文書4の条例第14条第2号ただし書ロ該当性)

 本件請求4は、請求者の保護・扶養・引取りに関する情報を求めるものであるが、請求内容に「請求者」という記載があることから、請求内容全体が、特定の個人に関する情報であることは明らかである。

 したがって、本件請求4に係る情報が存在しているか否かを答えることは、特定の個人に関する情報を開示することになり、条例第14条第2号本文に該当することとなる。

 しかし、申立人は本件請求4が条例第14条第2号ただし書ロに規定される「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当すると主張しているため、以下、この点について判断する。

 「公にすることが必要であると認められる情報」とは、上記1で述べたとおり、人の生命、健康、生活又は財産の保護の必要性が、公にすることにより害されるおそれがある個人の権利利益よりも上回る場合をいうものであり、開示の必要性も、その公にする必要性と個人の権利利益を比較衡量した上で判断されるものである。

 また、条例第14条第2号ただし書ロは、「公にすることが必要である」ということを要件としているが、本件請求4については、請求者の保護・扶養・引取りに関する情報が何人にも公にされることにより害されるおそれがある当該個人の権利利益を上回る必要性があるとは認められないため、本件請求内容は条例第14条第2号ただし書ロには該当しない。

5 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

 なお、申立人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過

年月日 内容
平成19年11月12日 諮問
平成19年11月26日 実施機関からの理由説明書を受領
平成19年12月4日 異議申立人からの意見書を受領
平成20年4月25日
(第16回 第二部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成20年6月24日
(第17回 第二部会)
審議(実施機関からの口頭説明)
平成20年7月24日
(第18回 第二部会)
審議
平成20年7月29日 答申