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公文書開示審査会答申第117号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

「会計検査院が見つけて指摘した県の不正経理に関する次の情報、(3)知事や副知事のいう「個人的流用はなく全て職務で使用した」ことが判る一切の文書(内部調査資料を含む)、(4)同じく「知識が充分でなく処理が不適切だった」ことを説明できる一切の文書」の公文書不存在決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会
第二部会

第1 審査会の結論

 実施機関の決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成20年10月21日付けで、「会計検査院が見つけて指摘した県の不正経理に関する次の情報(1)会計検査院から受領された不正経理の指摘内容にかかる一切の文書、(2)物品名を偽って差し替え処理をした全ての事例にかかる一切の文書(コンビニのプリペイドカード、個人名入り印鑑など不正購入例を含む)、(3)知事や副知事のいう『個人的流用はなく全て職務で使用した』ことが判る一切の文書(内部調査資料を含む)、(4)同じく『知識が充分でなく処理が不適切だった』ことを説明できる一切の文書」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、平成20年11月4日、本件請求に係る公文書を「会計検査院が見つけて指摘した県の不正経理に関する次の情報(1)会計検査院から受領された不正経理の指摘内容にかかる一切の文書、(2)物品名を偽って差し替え処理をした全ての事例にかかる一切の文書(コンビニのプリペイドカード、個人名入り印鑑など不正購入例を含む)」及び「会計検査院が見つけて指摘した県の不正経理に関する次の情報 (3)知事や副知事のいう『個人的流用はなく全て職務で使用した』ことが判る一切の文書(内部調査資料を含む)、(4)同じく『知識が充分でなく処理が不適切だった』ことを説明できる一切の文書」(以下「本件公文書」という。)であると判断し、前者について決定期間を延長するとともに、後者(本件公文書)について、公文書不存在決定(以下「本件処分」という。)を行い、不存在の理由を「当該請求に係る公文書は、当該実施機関では作成・取得・保有していないため」と付記して、申立人に通知した。

 なお、その後、実施機関は前者について、平成20年12月18日、公文書開示決定、公文書部分開示決定及び公文書非開示決定を行った。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成20年12月1日付けで、本件処分を不服として実施機関に対し異議申立てを行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成21年1月14日、本件異議申立て事案(以下「本件事案」という。)の諮問を行った。

第3 争点(本件公文書の不存在について)

 本件公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。

第4 争点に対する当事者の主張

争点(本件公文書の不存在について)

(1)申立人の主張要旨

 知事や副知事が、記者会見等で「個人的流用はなく全て職務で使用した」「知識が充分でなく処理が不適切だった」と述べていることから、何らかの根拠となる公文書があると考えられるので、不存在ということはありえない。

 各主管課が口を揃えて口頭で、「不適正な経理があったが不正な経理による個人的流用はなく全て職務で使用した」とか「職員の知識が不十分であり、経理処理が不適切だったこと」と釈明したのであれば、そのような書類がなければならないはずである。なぜなら、不適正な経理と不正な経理の定義は、きちんと峻別されなければならないし、「不適正な経理ではあったが、不正な経理ではなかったから、問題視するにはあたらない」と判断できる根拠が存在しなければならない。「個人的流用はなく全て職務で使用した」と判断したのだから、当然に、そのような証拠がなければならない。

 知事や副知事が、各主管課による報告で、「個人的流用はなく全て職務で使用した」と認識したのであれば、その根拠となる情報があるはずだが、少なくとも、申立人が閲覧した情報の中には、その証拠となる情報はなかった。よって、知事が、上記のように認識した背景には、各主管課による何らかの釈明ないし誘導を行なった証拠がなければならない。もし、本当に、当該請求に係る公文書を、当該実施機関では作成、保有もしていないのであれば、知事や副知事が「個人的流用はなく、全て職権で使用した」と認識したのは、根拠のない出鱈目な発言であったことを意味する。万が一、事実でないことを記者会見で言ったとすれば、各主管課が証拠も示さず、ただ単に「不適正ではあったが不正ではなかった」という偽りの報告内容だったことになる。

(2)実施機関の主張要旨

 知事や副知事の記者会見等の発言は、平成20年10月17日に該当する部の各主管課が副知事等に対して行った「会計検査院第5局特別検査課による会計検査について」等の報告を受けてのものであり、この報告の中で、「不適正な経理があったが不正な経理による個人的流用はなく全て職務で使用したこと」を認識したものである。また、この報告の中で、今後の補助事務費執行方針等を受けて、「職員の知識が不十分であり、経理処理が不適切だったこと」を認識したものである。

 したがって、当該請求に係る公文書については、当該実施機関では作成、保有もしていないため不存在と決定したものである。

 なお、「会計検査院第5局特別検査課による会計検査について」の内部報告文書については、平成20年12月25日に申立人に開示済みである。

第5 審査会の判断

1 争点(本件公文書の不存在について)

 本件事案に係る開示請求は、知事や副知事が記者会見等で発言した内容の根拠となる文書の開示を求めるものである。

 申立人は、知事や副知事が各主管課による報告を受け、記者会見等で「個人的流用はなく全て職務で使用した」「知識が充分でなく処理が不適切だった」と釈明したのであれば、何らかの根拠となる書類がなければならないはずであり、不存在ということはありえないと主張する。これに対し実施機関は、知事や副知事の記者会見等の発言は、該当する部の各主管課の報告を受けてのものであり、この報告の中で、「不適正な経理があったが不正な経理による個人的流用はなく全て職務で使用したこと」や「職員の知識が不十分であり、経理処理が不適切だったこと」を認識したものである。したがって、当該請求に係る公文書については、当該実施機関では作成、取得、保有もしていないと主張する。

 「公文書を保有していない」という類型には、(1)そもそも作成、取得していない、(2)作成又は取得したが保存期間満了により廃棄済み、及び(3)開示請求の対象となる「公文書」ではないという3つの場合があるが、実施機関は、そもそも作成、取得しておらず保有していないと主張しているので、本件公文書が実施機関における事務処理において作成・取得されるものであるか否かを検討する。

 審査会は、本件事案についての概要の説明を実施機関から受けたところ、本件請求にある知事や副知事の発言については、平成20年10月20日の第12回知事定例記者会見(以下「本件記者会見」という。)において、農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等について、会計検査院から不適正な経理処理が指摘されたことに関する記者からの質問への応答としてなされたものであり、知事や副知事が、会計検査を受検した各部主管課からの報告を踏まえ、自らが認識していたことを簡潔に発言されたものであるとのことである。

 「知事記者会見」は、知事が県政の重要事項について発表したり、意見や見解を述べる場であり、その時に配付される資料や会見内容を聞いて、記者が質問をする形となっていることから、本件記者会見の発言については、記者からの予告のない質問に対して、知事や副知事が、その時までに得ていた情報等を自ら簡潔にまとめて発言したとしても何ら不自然ではない。

 また、実施機関の説明によると、会計検査院からの指摘事項に関しては、その概要がまとまった平成20年10月17日に、各主管課長等が副知事に対して報告を行い、その報告の中で、不適正と指摘を受けた事例の概要や今後の補助事務費執行方針等について口頭で説明を行っている。そして、副知事に対する説明においては、各主管課職員が会計検査院から指摘を受けた案件の担当所属の職員から電話等で聞き取りを行った内容や今後の補助事務費の執行方針等を簡潔にまとめたA4判1枚の「会計検査院第5局特別検査課による会計検査について」という表題の文書のみを使用し、各主管課職員が担当所属の職員から聞き取りを行った際の内容については、文書を作成していないとのことである。

 一般に、実施機関のように大きな行政組織の実務において、知事や副知事といった幹部への報告文書については、報告を受けた者が一読して理解できるよう、強調すべき点や問題点を絞り内容を簡潔にまとめて作られるものであることは理解できないことではない。また、報告文書を作成するに当たっての基礎資料等について文書を作成することは実施機関において義務付けられていないことから、本件公文書を作成、取得、保有もしていないという実施機関の説明に不自然な点があるとまでは認められない。

 さらに、審査会は、実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、会計検査に関する公文書を確認したが、確認した限りでは、本件公文書として特定すべき文書の存在は認められなかった。

 以上のことから、本件公文書について、作成、取得、保有しておらず不存在であるとする実施機関の判断に特段不合理な点は認められない。

2 結論

 「第1 審査会の結論」のとおりであると判断する。

 なお、申立人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成21年1月14日 諮問

平成21年2月16日

実施機関からの理由説明書を受領

平成21年3月19日

異議申立人からの意見書を受領

平成21年4月27日
(第24回第二部会)

審議(本件事案の概要説明)

平成21年6月15日
(第25回第二部会)

審議(実施機関の口頭説明)

平成21年7月22日
(第26回第二部会)

審議(条例第30条第4項による調査を実施)

平成21年8月24日
(第27回第二部会)

審議

平成21年8月31日

答申