ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 地域創生部 > 文化財保護課 > 文化財保護審議会 平成24年度第2回開催結果

本文

文化財保護審議会 平成24年度第2回開催結果

更新日:2013年2月4日 印刷ページ表示

1 開催日時

 平成25年2月4日(月曜日)午前11時00分~午後0時20分

2 場所

 群馬県庁第1特別会議室

3 出席者

 大平良治会長、戸所隆副会長、篠木れい子委員、染川香澄委員、野田香里委員、松本健一委員

4 専門部会長出席者

 青木雅夫名勝・天然記念物副部会長

5 事務局出席者

 西田健彦文化財保護課長(参事)、柿沼則久埋蔵文化財主監、須藤正巳文化財保護課次長、洞口正史文化財保護課次長(埋蔵文化財係長)

 文化財活用係:飯塚聡補佐(文化財活用係長)、齊藤英敏指導主事、田島輝之指導主事、武藤直美主任

6 文化財保護審議会の開会

 午前11時

7 会長あいさつ

 群馬県文化財保護審議会大平会長より、あいさつ。

8 議事録署名人選出

 議長が、今回の議事録署名人に野田委員を指名。

9 傍聴制限確認

 文化財保護課埋蔵文化財主監により、審議事項については非公開、その他の報告事項については公開の提案がされ、委員により承認された。

10 審議事項

  「中之条町六合のチャツボミゴケについて」

(事務局)指定文化財候補について説明

(委員)チャツボミゴケは年間を通し、緑を保つのか。夏と冬の比較は。

(事務局)冬は雪に覆われるが20度程度の水温があるため、常に水がかかる場所には雪がなく、緑色を保っている。水がかからない場所は茶色に変色するが死んでしまっているわけでなく、水がかかるとまた緑色になる。

(委員)チャツボミゴケが学術的になぜ大事なのか、その特徴を素人にも分かりやすいよう説明して貰いたい。また、既に知られている群生群はどこにあるのか。それらとの比較は。

(事務局)チャツボミゴケは蘚苔類18,000種の中で最も耐酸性が強いコケである。火山性の酸性の水域に生息し、県内では、かつては草津町の西の河原にあったといわれているが、現在はほとんど無い。万座温泉には若干あるといわれている。チャツボミゴケの群落は全国で数カ所、いずれも火山のある場所で確認されている。例えば九州の九住赤川(大分)、隣の長野県にもあるが、これほど大規模ではない。

 昨年度中之条町で調査委員会を設置し、コケの専門の研究者である立正大学の佐竹先生、新潟大学の地質研究者である赤井先生らと調査を行った。全国的に見ても既知のものでは最大で間違いない、また世界的に見てももしかしたら最大かも知れないとの見解であった。

 六合のチャツボミゴケは複数の場所から温水が湧き出している非常に大規模な群落である。県内には温泉が多く、群馬の自然を代表する、記念する植物としても貴重で珍しいものといえる。チャツボミゴケそのものは環境が整えば生育することができるが、これだけ大規模なものは全国でも類例がない点で大変貴重である。

(委員)pH(水素イオン濃度)が2.5というと、私たちの胃液と同じ酸性濃度で、ほとんど生物が生きられない。チャツボミゴケはこのような特殊な環境で生きているコケである。コケというのは水が無くなってしまうとカラカラになってしまうが、水がかかれば元に戻り生育し始める。チャツボミゴケの場合は、pH(水素イオン濃度)2.5の温泉水がかかるとこの景観を示す。

 群馬鉄山は、太平洋戦争末期に日本国中の鉄が少なくなったため、何とか鉄を採掘しようということで、開発された。群馬鉄山の鉄は、第四紀から酸性度の高い水と、シアノバクテリアとチャツボミゴケが生える環境の中で、水に含まれる、あるいは溶け出している鉄がどんどん堆積、沈殿してできていったものである。そして質は良くないが、10~20メートルの地層、そして幅100メートル程のこの場所から鉄を掘り出して軍事産業に使おうという目的であったが、戦争が終わり、日本の復興に役立った。このような群馬鉄山の文化的・歴史的な価値、また希少なシアノバクテリアの生物的な価値もある。チャツボミゴケはそれを象徴するコケである。

(委員)企業の職員保養施設であったということだが、建物は現在残っているのか、また使用可能な状態にあるのか。それを使う予定があるのか。

(事務局)建物は事務室、物置、温泉浴場の3棟である。他にキャンプ場やグランドなどを町営公園として利用を進めている。

 チャツボミゴケをNHKや民放などのテレビで何度か紹介したところ、それまでは年間数千人程度の利用者だったのが2万5,6千人ほどまで増えた。ただ、地元にお金を落とすとか、雇用を生み出すところまではいっていないのが状況である。

 しかし、これ以上お客さんが増えると自然が破壊されてしまう危険性もある。中之条町とも協議する中で自然を守りながら利活用できる方向を探っていきたい。

(委員)群馬鉄山を引き継いだ日本鋼管があの場所で六合ハム、ソーセージを作っていると思うが、それとの関連はどうか。

(事務局)今でも作っているとは思うが、直接この場所で作ってはいない。

(委員)先ほど質問があった町営公園の範囲は、資料7頁の地図で赤線で囲まれた指定範囲よりもっと広く、図面には載っていない東の方に事務所棟や温泉棟がある。それらを含めて中之条町の町営公園として常時町の職員数名が対応している。以前私がこの場所に行ったときには、近所の農家の方による農作物の販売がされていた。テレビで放映されて以来、好評なようで、遠方から草津温泉の帰りに寄るような方もいる。ただ、冬場は雪が積もるため、12月~4月くらいまでは入ることはできない。

(議長)群馬鉄山の鉄を運ぶために太子(おおし)まで線路がひかれた。

 6頁の地図、青い湖水は野反湖で、ここが分水嶺となって群馬県の水が信濃川へ流れる。群馬と長野の境に当たり、松代藩の領地が少しあり、今「八重の桜」で盛んに出ている佐久間象山が、この辺りを何回も資源調査をしていた。

 中公新書の秋山弘之著『苔の話』の中で「群馬県奥草津の六合村にある穴地獄と呼ばれる場所の群落などは観光名所にもなっています。」ということが書かれている。様々な本の中にこの場所が出ており、研究者からも注目されていた。全国的に見ても非常に珍しい場所である。

(委員)チャツボミゴケの価値を他のものと関連させて一般の人に分かり易く、地域資源として様々なものと関連させてもらいたい。例えば、鉄山ができたことによる鉄道-長野原線-現在の吾妻線ができ、太子の方へ行く。長野原から鉄道の跡が残っているが、これは今、崩れつつある。それらや赤岩の重要伝統的建造物群保存地区、地域全体との関連を、一般の人にも分かりやすくしていただきたい。

 私が大学の頃までは吾妻川は真っ赤な川で、非常に酸性度の高い川であったが、途中に中和工場ができて、自然改造をしたことで八ツ場ダムの建設が可能となる。八ツ場ダムの建設には、鉄山と吾妻川が関係しており、群馬の天然資源とつながってくる。それが地域資源として草津などの温泉にも関連してくる。天然記念物を守るためにその辺りのシナリオ作りをしてもらえればと思う。

 天然記念物としていかに維持管理してくかということは、中之条町という公的機関が持続的に管理するという中で、維持・利活用、この機会に群馬の自然を強調してもらいたいというのが希望である。

(委員)私は六合村で8年間、方言・民俗の調査をしてきた。六合村は江戸の頃の姿を留めていると同時に、西日本-主に長野県と群馬県のせめぎ合いの中で育まれてきた土地である。西の薫りのする言葉の特徴、伝説があり、民俗的にも非常に面白い。六合村時代に多くの研究者が入り、調査を行ったが、それらがうまく活用されてこなかった。自然とそこに住んだ人たちの歴史とが複合的に展開するとよい。

(議長)チャツボミゴケは体内に重金属をため込むという珍しい性質がある。その結果、水の浄化に役立つという研究者もいる。

 この辺りは鉱物資源が豊富で、40年代の半ばまで4つの硫黄鉱山があった。大きなものでは、三井家の吾妻硫黄などが硫黄の生成をしていた。昭和40年代には石油を精製する際に公害を発生させたため、煙突の上に脱硫装置を開発し、その工程で硫黄がとれるようになった。その結果、それによって群馬の硫黄鉱山は衰退していった。かつては小串鉱山などには千人近い人が働き、活況を呈していた。この場所は近代産業遺産群とも関連する地域となると考えている。今後の課題としてもらえれば。

(委員)チャツボミゴケは他の県では天然記念物に指定されていないのか。また、町営公園と指定の範囲の関わりを教えて貰いたい。

(事務局)国指定の中で、コケとつくものが全部で4ヶ所ある。ヒカリゴケが3ヶ所、猪苗代湖のミズスギゴケが1ヶ所、天然記念物に指定されており、後は植物群落や湿原の構成要素の中にコケが入るものがあるが、チャツボミゴケが指定されていることはない。

 町営公園の範囲は指定の範囲よりはもっと広く、その中で今回天然記念物として保護する地域として指定したのはほんの一部の範囲である。民間企業の保養施設時代は職員のみの利用であったが、その後、経営の関係で一般も利用できるようになり、現在は町で管理し、キャンプ場などに使用されている。

 チャツボミゴケについては、車で入る場合は一台につき200円の寸志をいただき、環境保護の維持にあてている。入口にはロープが張られ勝手に入れる状況ではない。

(委員)日本鋼管が中之条町に譲り渡したということになるのか。

(事務局)全体を無償譲渡した。

(委員)写真ではほぼ無人の状態だが、コケは人が踏むなど自由に入れるとダメになってしまう。コケは何年もかけて育つものである。橋や通路はあるようだが、人が入れる場所はどうなっているのか。

(事務局)観望台があり、ぐるっと回れるように日本鋼管時代に遊歩道を整備した。しかし道を外れて中に入っているような状態や、踏み荒らされている場所も見られる。遊歩道以外の場所への立ち入りは遠慮してもらえるよう、中之条町と協議しながら保護・活用できるように進めたい。

(委員 指定に関し異議なし)

(議長)審議していただいた結果、「中之条町六合のチャツボミゴケ」は諮問どおり指定文化財とすることで答申する。

11  部会報告

 事務局より、各専門部会の活動報告が行われた。

 委員による質問なし。

12 報告事項

  • 分野別国県文化財件数について
  • 平成24年度文化財保存事業について
  • 県指定の文化財の現状変更等について
  • 史跡上野国分寺跡整備及び古墳情報発信・古墳総合調査について
  • 史跡上野国分寺跡及び史跡観音山古墳の保護管理について

13 報告事項概要

報告事項1

(事務局、資料に基づき説明)

 群馬県内の分野別国県指定文化財件数は一覧表のとおり。前回8月6日の審議会以降に指定を受けたものは、国指定史跡として田島弥平旧宅、同じく追加指定で高山社跡である。今回の指定によって、世界遺産登録のための要件を満たした。

報告事項2

(事務局、資料に基づき説明)

 今年度の県指定文化財保存事業は一覧表のとおりである。

報告事項3

(事務局、資料に基づき説明)

 今年度、群馬県教育委員会が許可した県指定文化財の現状変更は一覧表のとおりである。ただし、軽微な変更については、各市教育委員会が許可している。

報告事項4

(事務局、資料に基づき説明)

報告事項5

(事務局、資料に基づき説明)

(議長)事務局の説明について、質問や何か気がついたことは。

(委員)古代東国文化サミットは平成27年まで継続される予定である。入場者数で図ることも大切ではあるが、継続事業のため入場者数以外での調査を行い、翌年以降のアクションに反映させる必要があるのではないか。

 また、古墳調査の養成講座などは県外の方にとっては情報を知り難い。単に東京などで告知したり、ポスターを貼ったりするだけでなく、県外の方が群馬県を応援したくなるような仕組み作りや、県外の方がこれらの事業をどのように受け止めたのかを検証するなど、事前に県外の方が準備委員として中に入り、考えてもらえればと思う。

(事務局)古墳関係のイベントについて、県内向けには、今年は高崎市で開催したため、西部管内の首長に集まってもらい、それぞれの市町村の文化財自慢をしてもらった。来年度は前橋市で開催する予定で、同様に県央地域の首長に集まって文化財自慢をしてもらう予定である。首長に自分の市町村にある文化財を自覚してもらうことが大事である。

 同時に広い範囲への告知もしたい。実は一般向けの本を作り始めていたが、昨年末に(渋川市金井東裏遺跡にて)甲を着た人骨の発見があった。これを反映させず本を作るのはもったいない。来年一年間これに関する調査を行い、その成果を含めて本を作りたい。

 同時に生活文化部所管の課でも、重複するほどの事業を行い、様々な面で県外にも群馬の文化財を知らせる機会を設けている。

 古墳総合調査については中央の先生方に指導委員に入っていただき、一般の人たちにどのようにアピールしていけるか考えている。

(委員)平成27年度まで行う古墳総合調査に期待している。

 群馬県には古墳が多く、関西方面の研究者を案内すると驚かれるのは、国史跡レベルでも自由に古墳の中に入れることである。同時に保存が悪いという指摘を受ける。調査とともに、貴重な古墳を意識的に保存していくという取組が必要である。保存状態を保ったり、コンクリートで固めたような古墳は修復したりするなどを含め、子どもたちへの教育が必要。この調査をとおし、50年、100年を見据えて意識を高める一歩となるのが希望である。

(事務局)古墳調査はまず現状を調べ、そこから今後手を入れて積極的に保存したい古墳を調べるなど、文化財的価値を確認し、指定や復元を考えている。

(委員)群馬は東日本最大の古墳県であるが、群馬県と匹敵する古墳の多い県を教えて欲しい。また、日本全国での古墳サミットをするような計画はあるのか。

(事務局)全国的な古墳の数の多さでは大阪、奈良、岡山、福岡の順、大きさは、大阪、奈良、岡山の次に群馬県は位置する。

 群馬県の古墳の特徴は古い時代からはじまり、末期の大きな横穴式石室を持つ古墳まで揃っていること、また近畿地方と異なり、形象人物埴輪が豊富なことである。加えて国際的なものとして、朝鮮半島系、中国からの文物がきており、一例として、綿貫観音山古墳からは韓国の武寧王陵の鏡と同じ型で作った鏡が出土している。

 サミットの件では県内に留まらず、ということも考えてはいるが、まずは県内を回ることからスタートした。この中で県外の研究者に入ってもらって開催するシンポジウムや、韓国の研究者に来てもらっての発表を考えている。またバーレーンには日本のものと形は異なるが、砂漠の中に古墳が多く、これは文化振興課の事業であるが、研究者に来てもらってシンポジウムを行うなど、国際的になりつつある。

(委員)学術的な調査や大きなサミットなどのイベントなど華々しい進み方とともに、できるだけ子どもたちや全く知らない人たちに群馬の宝を分かっていただく機会を設けてもらいたい。

 それらが自分とどう関わっていて大事なのか、知ってもらう方法を考えながら伝えることが必要。大事だから「指定」するというのではなく、文化財が大事であるということを自分との関わりの中で自覚してもらえれば、心底わかってもらって大事にしていくことができる。自ら学ぶ場所を作ってもらえるとよい。

(委員)過去の大々的に調査されたデータがどの程度今に引き継がれているのか。過去の調査とこれから4年間の調査がどのように連動していくのか教えてもらいたい。

(事務局)群馬県は昭和10年に古墳総合調査を行っており、8,423基の古墳が確認されている。この調査により群馬県に数多くの古墳があることが全国に認識された。その後、それが確実に引き継がれているかというと、一般の方には古墳があるのが当たり前という感覚があり、古墳がすごいという実感は伝わっていなかった。そして、その後の発掘調査でも新しい古墳が発見されるが、今までのデータと充分な整合はされていない。

 結果は出ているが、成果として実になっていないというのが現状である。今回の調査によって成果を出したいというのが目的である。

14 文化財保護審議会の閉会

 午後0時20分