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水試だより55号

更新日:2023年5月19日 印刷ページ表示

新たな県産ブランド魚が目白押し!?

 昨年度、9 年ぶりに川場養魚センターへ異動し、3回目の勤務となりました。1回目は平成8年度から4年間で、三年成熟系ニジマスの固定化試験を引継ぎ、県産ブランド魚となるギンヒカリを発表できました。
 2回目の勤務は平成24年度から2年間で、この時は箱島養鱒センター勤務(平成19年度から4年間)の時に開発を始めた遊漁用ニジマスの特性評価試験を引継ぎ、第2の県産ブランド魚となるハコスチを発表できました。
 そして、3回目の勤務では奇しくも新たな県産ブランド魚の開発に関わっています。生食用で高い評価を得ているギンヒカリに続き、加熱調理に向いている食用ブランド魚が求められています。
 そこで、ハコスチは釣り応えで高い評価を得ている一方、遊漁者から美味しいとの評判があります。さらに、ハコスチを食材として利用した料理人から、火を通した料理に適していると評価されています。
 このようなことから、主に生食として利用されるギンヒカリとのすみ分けを行い、ハコスチの食用化を検討するために、「G -アナライズ&PRチーム」による群馬県農畜産物ブランディング支援業務で分析を行っています。
 その結果と解析については、今年度以降に発表を予定しており、新たなネーミングで第3の県産ブランド魚が誕生します。

 また、地域ブランド魚は各地で群雄割拠していることから、川場養魚センターではマス類のブランド力向上を目指して様々な取組みを行っています。例えば、マス類の高付加価値化研究では、塩水経験による成長ホルモン分泌作用を利用した飼育技術や魚の浸透圧調節を利用して味を良くする「味上げ」技術の開発を行っています。この技術が開発できれば、県内の温泉水を利用したご当地「温泉プレミアマス」の誕生も夢ではありません。

 次に、ニジマス新品種等の開発では、地域特産物による飼料添加物を利用したプレミアムトラウトの開発や魚類の代理親魚技術を用いたコバルトマスの安定生産技術の開発を行っています。また、選抜育種による三年成熟系ヤマメ等の新たな系統の作出も行っています。

 以上のように、川場養魚センターでは新たな県産ブランド魚となる候補たちが目白押しとなっており、これらの開発には熱意をもって複数年取り組まなければなりません。そこで、少数精鋭となっている水産試験場と水産係の水産チームがワンチームとなり進めていきますので、ご期待ください。

(川場養魚センター長 新井 肇)

江戸川系ver.2の冷水病耐性

はじめに

 冷水病耐性アユ系統である江戸川系に対して、種苗性の維持などを目的として2021年に天然アユとの戻し交配を実施し、江戸川系ver.2を作出しました。この交配による冷水病耐性への影響を把握しておく必要があると考えられました。そこで、冷水病の原因細菌 Flavobacterium psychrophilum を用いた人為感染実験により、江戸川系ver.2の冷水病耐性が従来の江戸川系からどの程度変化しているのか検証しました。

試験研究の具体的内容と結果

方法

 供試魚として、江戸川系ver.2(F1)および江戸川系(F11)に加え、対照として冷水病感受性系統である群馬系(F52)を用いました。攻撃区では、0.1ミリリットル/尾の冷水病菌液を腹腔内に注射しました。攻撃強度は 1.0×10^5、1.0×10^6、1.0×10^7、1.0×10^8 CFU/尾の4通りに設定しました。なお、群馬系の攻撃区は、冷水病への感受性を考慮して攻撃強度を1.0×10^4 CFU/尾に設定した試験区を追加し、5通りに設定しました。対照区では、0.1ミリリットル/尾の冷水病細菌の培養に用いる改変サイトファーガ液体培地を腹腔内に注射しました。注射後、供試魚は水温約17℃の井戸水で飼育し、以後1日あたりの死亡個体数を18日間記録しました。各系統について、累積死亡率 を用いてProbit法により半数致死菌量 LD50を算出しました。

結果と考察

 今回および過去の実験結果から算出したLD50を表に示しました。今回の実験におけるLD50は、江戸川系で3.2×10^6 CFU/尾、江戸川系ver.2で7.7×10^6 CFU/尾と同等の値でした。一方で、群馬系のLD50は、8.2×10^4 CFU/尾と、江戸川系および江戸川系ver.2より低い値を示しました。
 以上の結果から、江戸川系ver.2においても、高い冷水病耐性が引き継がれていることが明らかとなりました。これは江戸川系作出時の親魚選抜により、冷水病耐性に関連する遺伝的な因子が系統内に固定化されていたことを示しています。

今後の展望

 天然アユを交配することで冷水病耐性に関連する遺伝的な因子が、江戸川系ver.2においてどのように変化したのかは明らかになっていません。ゆえに今後、江戸川系ver.2を継代する過程で冷水病耐性が変化する可能性があり、定期的な冷水病耐性の確認が必要です。
 また、将来的に、冷水病耐性形質についてのマーカー選抜技術を導入することができれば、冷水病耐性の高い個体を親魚として効率的に選抜できるようになります。

(水産環境係 阿久津 崇)

江戸川系ver2のLD50画像

【水産行政から】ギンヒカリの魅力を再確認!! ~G-アナライズ&PRチームと連携した取り組み~

はじめに

 「ギンヒカリ」は水産試験場川場養魚センターが開発した三年成熟系ニジマスで、大型で良好な肉質から刺身用高級魚として主に旅館や飲食店で利用されてきました。ギンヒカリは令和5年でデビュー22年目を迎えますが、その出荷量は平成26年がピーク(32トン)であり、それ以降出荷量が伸び悩む状態が続きました。また、近年ではコロナ禍の影響で観光客の需要が落ち込んだことにより、旅館や飲食店販売を主とするギンヒカリも大きな打撃を受けてしまいました。
 直近では、新型コロナウイルスも落ち着き、サーモン需要も回復の兆しを見せています。しかし、デビュー当初から変わらない訴求方法では時代や急激な状況の変化に弱いことを関係者一同痛感したため、ギンヒカリブランドの再定義(リブランディング)が課題となっているところです。

G-アナライズ&PRチームによる分析

 この課題の解決に向け、知事自らがチームリーダーとなり、農畜産物の試験研究、販売促進、生産振興などに関わる職員により構成されるプロジェクトチーム「G-アナライズ&PRチーム」と連携した取り組みを行いました。このチームは、群馬県産農畜産物について、おいしさや健康に関わる成分を分析し農畜産物の「強み」を見いだし、その「強み」を効果的に消費者に伝え、生産力向上につなげる事を目的としています。

 そこで、ギンヒカリを群馬県が誇る水産物としてこのチームに分析を依頼し、ギンヒカリの「強み」を確認しました。その結果、我々がよく食べるサーモンの代表格であるアトランティックサーモン等と比較し、官能評価試験では図1のとおり「味わいはさっぱりすっきり」、「生臭さが少ない」、「身の締まりが良好」、という他のサーモンと明確に違う「強み」を確認できました。また、図2、3のとおり、低脂質にもかかわらず、現代人に不足しがちなDHAの含有割合が高いという健康に関する「強み」のエビデンスも得ることができました。

 今回、G-アナライズ&PRチームの分析で明確になったギンヒカリの「強み」の一部を紹介しましたが、その他の結果は以下のQRコードの「G-アナライズ&PRチームリポート」に掲載されています。是非ご覧下さい。

今後の展望

 デビューから22年となるギンヒカリですが、生産者の努力もあり長年高い品質が保たれています。しかし、PR方法や販路の変化がほとんどなかったため、時代に即したテコ入れが必要だと考えています。
 そのためには、ギンヒカリのリブランディングを前提として、今回の分析で明らかとなったギンヒカリの「強み」を関係者で共有し、新しい時代や消費者に受け入れられるようなブランド戦略に関係者一丸となって取り組んでいきます。

(蚕糸園芸課水産係 渡辺 峻)

ギンヒカリ画像

水産試験場の新人紹介

生産技術係 田島 稔明

 今年度、新規採用となりました田島稔明(たじまとしあき)と申します。主に温水性魚類の養殖に関わる業務に従事しております。3月まで農業関係の職に就いており、水産関係は初めてになります。

 群馬県の水産業の発展に貢献できるように、一から学び、日々努力し、誠心誠意努めて参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

令和5年度職員の配置(令和5年4月1日現在)

  • 場長 小西浩司
  • 次長 上村倫恵
  • 主席研究員 田中英樹
  • 総務係 係長(次長兼務)、北野洋一、櫻木葉子
  • 水産環境係  係長 鈴木究真、鈴木紘子、阿久津崇、塩澤佳奈子
  • 生産技術係 係長(主席研究員兼務)、清水延浩、齋藤駿介、田島稔明、高橋伸幸
  • 川場養魚センター  センター長 新井肇、星野勝弘、山下耕憲、井下眞