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令和5年度答申第7号

更新日:2023年8月7日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 処分庁による令和4年4月19日付け生活保護開始決定処分(以下「本件処分」という。)に係る本件審査請求には理由があるから、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により本件処分は取り消されるべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 審査請求人の主張は、敷金等の一時扶助費の支給を求めるもので、その理由は次のとおりである。
(1) 生活保護申請において、住所地確保で賃貸借契約に要した費用(礼金・敷金・火災保険保証料)は一時扶助として認められる費用であるにもかかわらず、本人負担としたのは違法である。
(2) 生活保護申請において、同一世帯での生活が困難であることから単身住居を確保した本件において、世帯分離による生活保護申請が認められない理由は何か不明である。
(3) 申請時の生活実態を根拠とするとき「安定した住居のない要保護者」とはどのような生活実態の者が適応となるのか。本件は、生活保護申請から決定までの間、一時的に○○宅に身を寄せている状態は「安定した住居」があり、同一世帯での保護という処分庁の考えです。世帯分離は認めないことに加えて、住居を現に失った状態になるまで生活保護申請を受け付けないという処分庁の対応は法の趣旨に沿ったものといえるのか。
(4) 申請時の資産調査においても本人の所持金及び年金額を踏まえるなら、生活扶助額以上となる所得がないことが明確であるにも関わらず、不動産会社への礼金敷金保証金という一時金の支払い能力を自己都合、自己責任とすることは、保護決定後の生活が借金返済を前提とすることになり、本来の生活保護法の趣旨から逸脱することにならないか。​

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件処分を取り消すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 生活保護法(昭和25年法律第144号)第24条第3項は「保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。」と規定している。また、審査請求人は生活保護申請以前から、今後住む予定のアパートの見積書を持参して処分庁に対し生活保護の受給について相談しており、生活保護申請時にも今後住む予定のアパートの見積書を持参して申請していたことから、敷金等の一時扶助費についても支給してほしい旨処分庁に伝えていたことが認められる。
よって、処分庁は、本件処分において保護を開始するに当たり、敷金等の一時扶助費の支給の要否についても判断すべきであったことが認められる。
 「生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)」第7の4(1)キにおいて、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者(保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る。)が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合で、オに定める特別基準額以内の家賃又は間代を必要とする住居を確保するときは、オに定める特別基準額に3を乗じて得た額の範囲内において特別基準の設定があったものとして必要な額を認めて差し支えないこと」と規定されている。本件において、審査請求人は生活保護の申請から決定までの間、一時的に○○宅に身を寄せている状態であり、局長通知第7の4(1)キに当てはまる可能性があるにもかかわらず、処分庁は、開始時のケース検討会議等で局長通知第7の4(1)キに該当するかどうかの検討を行っていない。
 局長通知第1の2において、「同一世帯に属していると認定されるものでも、次のいずれかに該当する場合は、世帯分離して差しつかえないこと。」とされ、その中で、「(2)要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯に転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき(直系血族の世帯に転入した場合にあっては、世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となるときに限る。)」とされている。本件において、審査請求人は確実に○○と生計を一にしているということができず、局長通知第1の2に当てはまる可能性があるにも関わらず、処分庁は、開始時のケース検討会議等において、該当するかどうかの検討を行っていない。
 また、局長通知第1の2に該当し、世帯分離での保護開始がなされていれば、保護開始後に「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知。以下「課長通知」という。)」第7問30答13を適用し、敷金等の一時扶助費を支給し、転居することも検討できたはずである。
 以上のことから、生活保護の開始に際して、敷金等の一時扶助費の支給を行わなかった処分庁の判断は、必要な検討が十分になされておらず、本件処分に瑕疵があることが認められる。
 したがって、本件審査請求には理由があるから、行政不服審査法第46条第1項の規定により、本件処分は取り消されるべきである。​

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

 令和5年 6月16日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受

 令和5年 6月30日 調査・審議

 令和5年 7月21日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1) 局長通知第7の4(1)キにおいて、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者(保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る。)が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合で、オに定める特別基準額以内の家賃又は間代を必要とする住居を確保するときは、オに定める特別基準額に3を乗じて得た額の範囲内において特別基準の設定があったものとして必要な額を認めて差し支えないこと」と規定されている。
(2) 局長通知第7の4(1)カにおいて、「被保護者が転居に際し、敷金等を必要とする場合で、オに定める特別基準額以内の家賃又は間代を必要とする住居に転居するときは、オに定める特別基準額に3を乗じて得た額の範囲内において、特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差しつかえないこと。」と規定されている。その上で、課長通知第7問30「局長通知第7の4の(1)のカにいう「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、どのような場合をいうか。」の答において、「「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、次のいずれかに該当する場合で、敷金等を必要とするときに限られるものである。」とされ、その中で、「13 住宅が確保できないため、親戚、知人宅等に一時的に寄宿していた者が転居する場合」とされている。
(3) 「生活保護法による保護の実施要領について(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)」第1において、「同一の住居に居住し、生計を一にしている者は、原則として、同一世帯員として認定すること。」と規定されている。その上で、局長通知第1の2において、「同一世帯に属していると認定されるものでも、次のいずれかに該当する場合は、世帯分離して差しつかえないこと。」とされ、その中で、「(2)要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯に転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき(直系血族の世帯に転入した場合にあっては、世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となるときに限る。)」とされている。​

3 本件処分の妥当性について

 (1) 生活保護法第24条第3項に「保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。」とある。また、審査請求人は令和○○年○○月○○日の保護申請以前の令和○○年○○月○○日にも今後住む予定のアパートの見積書を持参して、処分庁を来所し、相談していた。そして、当該保護申請時にも今後住む予定のアパートの見積書を持参して申請しており、敷金等の一時扶助費についても支給してほしい旨処分庁に伝えていたことが認められる。
 よって、処分庁は、本件処分において保護を開始するに当たり、敷金等の一時扶助費の支給の要否についても判断すべきであったことが認められる。
(2) 局長通知第7の4(1)キにおいて、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者(保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る。)が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合で、オに定める特別基準額以内の家賃又は間代を必要とする住居を確保するときは、オに定める特別基準額に3を乗じて得た額の範囲内において特別基準の設定があったものとして必要な額を認めて差し支えないこと」と規定されている。本件において、審査請求人は生活保護の申請から決定までの間、一時的に○○宅に身を寄せている状態であり、局長通知第7の4(1)キに当てはまる可能性がある。しかし、処分庁が本件処分をするに当たってのケース診断会議録やケース記録には、審査請求人が「安定した住居のない要保護者」に該当するかどうかの判断を行った記載はなく、処分庁は、開始時のケース検討会議等で局長通知第7の4(1)キに該当するかどうかの検討を行っていない。
(3) 局長通知第1の2において、「同一世帯に属していると認定されるものでも、次のいずれかに該当する場合は、世帯分離して差しつかえないこと。」とされ、その中で、「(2)要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯に転入した場合であって、同一世帯として認定することが適当でないとき(直系血族の世帯に転入した場合にあっては、世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となるときに限る。)」とされている。本件において、審査請求人は確実に○○と生計を一にしているということができず、局長通知第1の2に当てはまる可能性がある。しかし、処分庁が本件処分をするに当たってのケース診断会議録やケース記録には、審査請求人が局長通知第1の2(2)の「同一世帯として認定することが適当でないとき」に該当するかどうかの判断を行った記載はなく、処分庁は、開始時のケース検討会議等において、該当するかどうかの検討を行っていない。
(4) また、局長通知第1の2に該当し、世帯分離での保護開始がなされていれば、保護開始後に課長通知第7問30答13を適用し、敷金等の一時扶助費を支給し、転居することも検討できたはずである。
(5) 以上のことから、生活保護の開始に際して、敷金等の一時扶助費の支給を行わなかった処分庁の判断は、必要な検討が十分になされておらず、本件処分には手続上の瑕疵があることが認められる。​

4 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、行政不服審査法第46条第1項の規定により、本件処分は取り消されるべきである。
 なお、審査請求人は、本件処分に対して一時扶助の実施を求めて本件審査請求を提起したものであるが、審査庁は処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもないため、行政不服審査法第46条第1項ただし書の規定により、本件処分を変更することはできない。​

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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