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令和5年度答申第5号

更新日:2023年8月7日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 審査請求人は、令和4年9月2日付け特例給付支給事由消滅処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める理由として、次のとおり主張している。

(1) 親の所得に応じて児童手当の支給を停止することは、憲法13条が保障する「人権」及び憲法25条の「生存権」と「国の社会的使命」に反する。

(2) 基礎的人的控除(配偶者控除・扶養控除・基礎控除)は、憲法25条の生存権を保障するための最低生活費控除である。最低生活費部分を課税の対象外に置くことは、憲法上の要請による不可侵の事項である。

(3) 平成22年の税制改正で、子ども手当創設に伴い年少扶養控除が廃止された。子ども手当が年少扶養控除の代替であることを踏まえれば、現児童手当に所得制限を設けることは、子どもの「人権」、「生存権」及び「国の社会的使命」に反していると考えられる。また、当初子ども手当の理念として掲げられた「次代の社会を担う子ども一人ひとりの育ちを社会全体で応援するという理念のもと実施するものであり、家計の収入如何にかかわらず確実に支給されるよう所得制限を設けないこと」にも反している。国際的にみれば、先進国の制度においても所得制限は設けないことが一般的であり、日本国は先進国の子育て施策と逆行しているといえる。 

(4) 国際連合児童基金UNICEFの掲げる「子どもの権利条約」第2条では、保護者の収入で子どもを差別してはならないことが明記されているにもかかわらず、審査請求人及び審査請求人の子どもは国と自治体から明らかに不平等な税配分と、度を過ぎた応能負担による理不尽な経済的差別を受けている。

(5) 累進課税で税負担が大きい世帯の子ども達をありとあらゆる子育て支援の給付から外すという制度は極めて不公平である。子どものためにと努力したことがかえって子どもの権利(人権・生存権)を奪うような制度は適切でないといえる。

(6) 今回の決定は、著しく子育て世帯への配慮を欠いた決定であり、立法府の裁量権の濫用による不当な決定と言わざるを得ない。処分の取消しを強く求めると同時に、納得のいく説明を求める。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 児童手当は、児童手当法(昭和46年法律第73号。以下「法」という。)第5条第1項の規定により、父母等の前年の所得が児童手当法施行令(昭和46年政令第281号。以下「施行令」という。)第1条に規定する所得制限限度額(以下「所得制限限度額」という。)以上であるときは支給されないが、法附則第2条第1項の規定により、当分の間、当該所得が施行令第7条に規定する所得上限限度額(以下「所得上限限度額」という。)未満であるときは、同項の規定による給付(以下「特例給付」という。)を行うこととされている。

 処分庁は、審査請求人について、児童手当法施行規則(昭和46年厚生省令第33号。以下「規則」という。)第4条第3項の規定により、法第26条第1項及び規則第4条第1項で定める届出を省略し、公簿において前年の特例給付対象所得を確認している。当該公簿によると、審査請求人の総所得額は○○○○円であり、当該総所得額から控除額を差し引いた所得額は○○○○円である。審査請求人の扶養親族の人数は○人であるため、所得制限限度額は○○○○円、所得上限限度額は○○○○円である。したがって、審査請求人の所得額はいずれの額も超過しており、特例給付の支給要件に該当しない。

 また、審査請求人は、今回の特例給付の支給事由を消滅するという決定は、立法府の裁量を超えた不当なものと主張している。

 行政不服審査法第1条において、行政不服審査は行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とするとされている。つまり、当該審査請求に係る処分が、法令の規定に則った適法かつ妥当なものであるか否かを審理判断するものであるから、立法府の裁量を超えたものかどうかについては、本件審査請求で審理することはできない。

 このほか、審査請求人は縷々(るる)主張するが、その主張はいずれも独自の見解であって、本件処分の取消しの根拠となる理由とは認められない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和5年6月16日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和5年6月30日 調査・審議
 令和5年7月21日 調査・審議​

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1) 児童手当等の支給要件について

ア 法第4条第1項第1号において、児童手当は、支給要件児童を監護し、かつこれと生計を同じくするその父母等であって、日本国内に住所を有するものに支給するとされており、ここでいう支給要件児童とは、中学校修了前の児童及び中学校修了前の児童を含む2人以上の児童とされている。

イ 児童手当は、法第5条第1項の規定により、父母等の前年の所得が所得制限限度額以上であるときは支給しないとされているが、法附則第2条第1項により、当分の間、所得制限限度額以上であっても、所得上限限度額未満であるものに限り特例給付を行うとされている。

ウ 所得制限限度額は、施行令第1条において、法第5条第1項に規定する扶養親族等がないときは622万円、扶養親族等があるときは622万円に扶養親族等1人につき38万円を加算した額とされている。また、所得上限限度額は、施行令第7条において、法第5条第1項に規定する扶養親族等がないときは858万円、扶養親族等があるときは858万円に扶養親族等1人につき38万円を加算した額と規定されている。この場合の扶養親族等の有無は、法第5条第1項及び所得税法(昭和40年法律第33号)の規定により、前年12月31日時点での所得税法上の現況によって判定される。

(2) 現況届の提出省略について

 法第26条第1項(法附則第2条第4項において準用する場合を含む。以下同じ。)において、児童手当又は特例給付の支給を受けている者は市町村長に対し、前年の所得の状況及びその年の6月1日における被用者又は被用者等でない者の別を届け出なければならないと規定されている。

 また、規則第4条第1項(規則第15条において準用する場合を含む。以下同じ。)において、毎年6月1日から同月30日までの間に、その年の6月1日における状況を記載した届書を市町村長に提出しなければならないとされているが、同条第3項(規則第15条において準用する場合を含む。以下同じ。)では、届け出られるべき書類の内容を公簿等によって確認することができるときは、当該届出を省略させることができると規定されている。

(3) 職権による児童手当の支給事由消滅の処理について

 「市町村における児童手当関係事務処理について」(平成27年12月18日付け府子本第430号内閣府子ども・子育て本部統括官通知)別添児童手当市町村事務処理ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)第22条第1項において、受給事由消滅届の提出がない場合においても、公簿等によって児童手当等(特例給付を含む。)の支給事由が消滅したものと確認したときは、職権に基づいて、受給事由消滅届の提出を受けたときの例により処理するものとされており、同項第7号において、法第5条第1項の所得の額が、児童手当の所得制限限度額(所得上限限度額を含む。)を超過した場合、職権に基づく支給事由消滅の処理ができると規定されている。

3 本件処分の妥当性について

(1) 処分の前提となる審査請求人の所得及び扶養する親族の状況について

 処分庁は、審査請求人について、規則第4条第3項の規定により、法第26条第1項及び規則第4条第1項で定める届出を省略し、公簿において前年の特例給付対象所得を確認している。当該公簿によると、審査請求人の総所得額は○○○○円である。また、当該総所得額から控除される控除額は、施行令第3条第1項に規定する一律控除額の80,000円のみであり、所得制限限度額及び所得上限限度額と比較をする所得額は、総所得額から控除額を差し引いた○○○○円となる。

 審査請求人の所得税法に規定する扶養親族の人数は○人であるため、児童手当に係る所得制限限度額は○○○○円、特例給付に係る所得上限限度額は○○○○円となる。

したがって、審査請求人の所得額はいずれの額も超過しており、特例給付の支給要件に該当しない。

以上により、処分庁が、法附則第2条及び施行令第7条の規定に基づき審査請求人が特例給付の支給要件に該当しないものと判断し、ガイドライン第22条第1項の規定により職権による支給事由消滅処理を行ったことについては、法令やガイドラインに基づく手続に従い行われたもので、違法又は不当な点は認められない。

(2) 立法府の裁量権の濫用による不当な決定であるとの主張について

 審査請求人は、今回の特例給付の支給事由を消滅するという決定は、立法府の裁量を超えた不当なものと主張している。

 行政不服審査法第1条において、行政不服審査は行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とするとされている。つまり、当該審査請求に係る処分が違法又は不当なものであるかどうかを審理判断するものであるから、立法府の裁量を超えたものかどうかについては、本件審査請求で審理することはできず、当審査会の調査審議の対象にならない。

(3) 児童手当法が憲法第13条及び第25条に違反するかどうかについて

 上記(2)の後段に記載した理由と同じく、本件処分の根拠となった法の規定自体が憲法に違反するか否かは、本件審査請求で審理することはできず、当審査会の調査審議の対象にならない。

このほか、審査請求人は縷々主張するが、その主張はいずれも独自の見解であって、本件処分の取消しの根拠となる理由とは認められない。

(4) 結論

 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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