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文化財保護審議会 令和元(平成31)年度 第1回開催結果

更新日:2021年12月23日 印刷ページ表示

1 日時

令和元(平成31)年8月1日(木曜日)午後1時30分から午後4時00分

2 会場

県庁29階 第一特別会議室

3 出席者

戸所隆会長、村田敬一副会長、飯島康夫委員、金澤好一委員、榊原悟委員、染川香澄委員、
野田香里委員、右島和夫委員、宮崎俊弥委員

4 事務局出席者

笠原寛教育長、柴野敦雄文化財保護課長、福田一也次長、櫻井美枝文化財専門官
文化財活用係:齊藤英敏補佐(係長)、井野千春指導主事、橋本淳指導主事、
笹澤泰史指導主事、小林正主幹、小嶋圭指導主事、今城未知文化財保護主事
埋蔵文化財係:飯森康広係長

5 開会

13時30分

6 挨拶

群馬県教育委員会教育長 主催者あいさつ(笠原寛教育長)
群馬県文化財保護審議会 会長あいさつ(戸所隆会長)
群馬県文化財保護審議会 副会長あいさつ(村田敬一副会長)

7 議事録署名人選出

議長が今回の議事録署名人に村田委員・右島委員を指名。

8 傍聴人の報告

事務局(福田次長)が、1名であることを報告。

9 傍聴制限確認

事務局(齊藤補佐)から、審議事項については非公開、その他については公開とする提案がなされ、委員に承認された。

10 内容

報告事項

  1. 平成30年度文化財保護課事業報告
  2. 令和元年度文化財保護課主要事業
    1. 事業の概要
    2. 文化財活用係の事業について
    3. 埋蔵文化財係の事業について
  3. 群馬県指定文化財の保存事業について
  4. 群馬県指定文化財の現状変更等について
  5. 国県指定等文化財数について

質疑

(議長)報告について、質問があればお願いする。

(審議委員)全体的に、いま時代が変わりつつあると感じている。アプリがいろいろなところに活用されつつある。何のために情報発信するのか、何のためにアプリを作るのかということを考える上で最も重要なのは、対象だと思う。今回のこの報告の中では、対象がはっきりしているところは子ども向けのもので、これはめざましい成果が出ている。一方で、その他のものに関して、対象が見えづらかった。自治体からの情報を一方的に発信するものが、ホームページやパンフレットだが、アプリはちょっと違って、受け取る側が主体的に情報を取りに行くものである。自治体にとってみれば、今までと違う情報発信の仕方ということになり、誰が見ているのかということを、想定しながら発信することが、より大切になってくる。アプリの場合、登録の時に、何歳代ですか?とか、男女ですか?とか聞くことが、決して失礼ではない。例えば県外ですか?県内ですか?とか、そういった情報収集がビッグデータとして活かされていくと思う。そういったことに繋がるような情報発信の仕方を踏まえた上で、アプリの制作、ホームページの作り方、そしてホームページとアプリの橋渡し役になっていく、SNSの活用を考えていければよいと思われる。
ホームページは誰が見ているか分からないが、SNSの場合はたとえ個人名が分からなくても相手の属性は必ず分かるので、そういったことを意識するような今後の取り組みが必要になってくるのではないか。対象をどなたにするのか、というような発想の仕方を、今後取り入れてほしい。

(議長)今の発言内容は大綱にも関係すると思う。デジタル系のものをどう活用していくか、県全体のネットワークにも関係してくるかと思うが、その辺の視点を今年度の事業に活かすとともに、将来、大綱もどうしていくかが大きな課題。ここが上手くいくかどうかが、今後に係ってくると思っている。他にいかがか。

(審議委員)2点、質問したい。1点は京ケ島小学校の古墳学習プログラムについて、具体的に子どもたちが、どんなところに疑問を持ったのか、興味を持って授業に臨んだのか、先生方の授業のポイント、古墳学習の授業で何に一番力点を置いて教えたのか、公開授業、研究会の様子を具体的にお話いただきたい。もう1点は建造物等の資材の供給地としての、ふるさと文化財の森の設定ついて、具体的にどんな保護、維持管理をどうするのかとか、設定にあたって文化財保護課として具体的にどんなことをやるのか教えていただきたい。全国的にどうなのか、茅葺きがどんどん無くなっている中で、他にも設定があるのかどうか、その辺を含めて教えていただきたい。

(議長)事務局。

(事務局)はじめの古墳学習プログラムの関係で説明する。実際に授業をされる社会の先生の学習指導案の作り方をプログラムとして活用してほしい、というところもあり、ゲストティーチャーとして文化財保護課からも4人加わった。学習指導案の組み立てから参加をして、見学地の石室と墳丘、埴輪がどのように使われたかということも含めて、見学地を3ポイントに絞り、20人のグループに分かれて回りながら、その場その場で、どういうことを学ぶのかを検討した。見学に先立ち、古墳の授業をして、生徒たちが質問を用意した上で当日を迎えるようにした。目標とすると、群馬の古墳と大和王権がどのような関係にあるのかまで理解しようという目標があったようで、最終的なまとめの授業として行われたと聞いている。まとめたものを冊子にしたいと考えている。

(審議委員)生徒たちの反応はどうか。

(事務局)みなさん、先生を囲んで質問をしていた。アンケートもいただき、好評だったと思っている。
ふるさと文化財の森は、設定という言葉を使っている。指定と違い、ゆるやかに場所、材料を取る人たち、技術を守っていこう、伝えていこうという趣旨のもので、群馬県では初めてなので、設定になったから買い上げが生じるということではない。今の所有者は町だが、町が団体に貸して、その団体が茅の刈り取りをイベント的に行いながら出荷をしている。設定することによって、文化庁から補助金を受けることが出来る。進入道路の整備や、大規模なイベント開催などの普及活動が助成の対象である。茅の場合、火入れが必要であり、火を入れないと他の草が生えたり、茅が細くなったり、量が減ったりするので、大規模にやるときは文化庁の補助金を受けることが出来る。全国の状況だが、10年前の平成18年度から設定がはじまり、現在80カ所にある。まだ一つもない都道府県や、2、3カ所持っている所もある。群馬県は漆等の産地が無いこともあり、ようやく茅場が設定できた。他に木材、ヒバ、各種材料で設定がなされている。

(議長)他に、あるか。

(審議委員)3ページ事業の概要、各種文化財の保存事業への補助について、いくらぐらい予算化されているのか。「地域に伝わる有形・無形の文化財の保護」の予算総額135,000,000円のうちの各種文化財の保存事業への補助について。

(事務局)各種文化財保存事業への補助金予算は、約9,600万円である。

(審議委員)10ページ、群馬県指定文化財の保存事業について、今年の事業が書かれているが、10番の萩原の大笠マツは、個人が事業者になっているが、事業費全体、補助金、個人負担の額をそれぞれ教えてほしい。

(事務局)萩原の大笠マツは、総額807,000円で、補助額が564,000円、差額は、高崎市と個人の負担となる。

(審議委員)了解した。続けて1番の連取のマツはいくらか。また所有が市になっているが、補助残は市が持つのか。

(事務局)総事業費が1,441,000円で、県の補助が3分の1、480,000円。残りが市となる。

(審議委員)そうすると個人の場合と、市が事業者の場合とで補助率が変わってくるということか。

(議長)御検討いただければと思うのだが、文化財の絵コンクールは素晴らしいと思うが、私たちの学会で環境地図とか、地図を関係させてコンクールをやっている。主体が教育委員会であるが、横の歴史の道のところには地図があって、どう回るかとありますが、地域の活性化に文化財を活用しながら、どういうふうに地域を特色づけるか、空間的に地図上で表わしながら、年表とか時空間で表しながらものを見ていく。学校教育と結びつけてやっているところもある。そうすると空間認識とか全体をどう見ていくかということで、子どもたちへの意識付けという意味で有効だと思う。絵にプラスすると別の効果が出てくるのでは、と思うので御検討いただければと思う。
では、時間の関係もあるので、報告事項はこれで終わりにする。ここで、非公開になるので、傍聴人の方は退出をお願いする。

審議事項

  1. 群馬県文化財保存活用大綱の策定について
  2. 専門部会の活動について

質疑

(議長)それでは審議事項に入りたい。先程説明があったように、文化財保護審議会として文化財保存活用大綱の策定について審議していきたい。委員の皆さんには既に目を通していただき、これまでも議論しているので、お気づきの点について、質問・意見交換をしながら進めていくということでよいか。では事務局から、大綱全体の説明と注意事項等の説明をお願いする。

(事務局)では大綱について説明する。前回、提出できなかった分についても提出した。構成案についてであるが、今回文章を書き進めていく中、ボリューム的に一つの章にまとめることが厳しい所があったので、別紙、大綱構成変更案の赤字部分を変更したい。一番大きな変更点は、第2章の4文化財保存・活用の基本方針を入れておいたが、第2章が現状と課題で文章のボリュームが多くなってしまったのと、基本方針のボリュームが多いことから、基本方針を第3章として独立させた上で、第2章と切り離して章立てをしたい。先生方には第2章の4として、小さな段落で7まであるが、こちらについても順番を入れ替えて、1番のイから7番までの小段落の順番を入れ替えたい。また第6章の小段落が限定的な題名になっていたので、災害に備えた取組と災害発生時における対応、事前の取組と事後の取組に分けて表題をつけた。最後にまとめ的なものとして、第8章を追加した。今ご覧いただいているのは文章の部分だけだが、実際はこれにグラフ・表・写真を盛り込みたい。今回御意見をいただいて修正したものをお送りする際には、そこまで入れ込んだものを、お送りしたい。
文化庁に相談をしたところ、文化庁より大幅な加筆を求められた。第2章の文化財の保存活用に関する現状と課題に、県内のそれぞれの地域の特徴と現状と課題を書き足してくれという要望だった。県内をどういう形で区切るのか検討し、市町村がそれぞれの地域計画を作成する上で参考になるよう、是非入れて欲しいということであった。これについても今後追加をして書き足したいと思っている。
お手元にお配りした、群馬県文化財保存活用大綱(案)に対する意見は、県内の市町村、前回の大綱策定委員会の時に御意見をいただいた民間団体、庁内のオブザーバー関係各課から届いた意見である。参考までにご覧いただきたい。
活用大綱については、国から指針は出ていたが、実際にどのようなものかというのがないままに、手探りで進めてきた。神奈川県が先行して作ったものは、パブリックコメントを取っている。その大綱の素案を、添付したので参考にしていただきたい。以上簡単であるが、御意見をお願いしたい。

(議長)説明があったように、大綱の構成で第2章4が膨大になるので、現状と課題を踏まえて、新しく章を設け、最後に方向性のまとめの章を追加した。異論がなければ、予定どおり次の策定委員会で、内容について承認ということでよろしいか。今日はこれらを念頭に置きながら御意見があれば、お願いする。それから前回、皆さんから御意見をいただいたものを、事務局としてかなり入れ込んでいただいている。委員の皆さんから見ると、まだここは、という所について意見を出していただき、進めていきたい。何か意見があるか。

(審議委員)すごく詳しく書かれ、時間をかけて作成されたと捉えている。読んだ感じは、論文調ですごく調べられていて丁寧に書かれている。神奈川県のものと比べて、見出しの数が少ない。区切ったところで、小さな見出しをつけてやると文章が解りやすいということと、神奈川県のものを見ていただけると分かるが、大事なところは四角で囲って、その中に箇条書きにまとめられている。こういうことをやると、ここではこういうことをやらなくてはいけないのではないのか、というのがよく分かる。ふりがなも必要かどうかわからないが、いずれにしても読む側に立って、使う側、県民にもわかりやすい表記スタイルにしてもらうと、良い大綱になるのではないか。内容はこれでよいと思う。

(議長)他にいかがか。

(審議委員)今、世の中の人の心に最も響くのは映像ではないか。寺社魅力発掘・発信事業の3カ年計画の中に、映像という言葉が一つも無かったので、3年後に映像を全く活用しないというのは、ちょっともったいないと思う。また大綱の17ページと21ページ、これが映像の活用と関係すると思うが、17ページだと地域の理解と文化財の活用も重要である。文化財を展示・公開し、間近に見て触れて楽しむことにより、文化財の価値や魅力を実感することが出来るかどうかは分からないのではないか。なぜかというと、展示を見ただけでは、背景にあるストーリーや舞台裏、プロセス、価値は伝わらないからである。展示・公開、身近に触れて楽しむことだけではなく、そこにある舞台裏のストーリー、それを支えている人たちの物語を知ることで、初めて文化財の価値や魅力を実感することが出来るのではないか。そのためには、映像の活用が一番人々の心に届くのではないかと感じる。21ページもそうだが、冊子やホームページ、スマートフォンアプリとあるけれども、映像の活用が入ってこないと、今の時代なかなか人の心に…。映像を見てはじめてアプリを登録してみようかなと思う人もいるのではないか。映像を活用すべきだと思う。
映像には、広報という映像と、記録保存して後世に伝える映像という、二種類の映像があり、それぞれの活用があるのではないか。基本的に神奈川県の目指すべき将来像および方向性というのが基本理念として出ている。いま価値観が変わり、文化財は無くてもいいかな、もっと経済的なことがやりたい、という人たちがいる中で、保存・継承していくためには、活用していかなければならない。私が見た群馬県のあり方だと思う。ただ、その中で地域の住人と行政が一緒になって支えているのであるが、人手不足とか、地域住民の高齢化で消えていく。地域住民や行政の閉塞感が生まれてしまう。異なる価値観や違った文化がふれあうことで、新しいことが生まれる時代なので、そこに外からの視点が入るような工夫をしていく。例えば、文化財保護アドバイザーなどの外からの意見、全く突拍子もないことでも、何か必要なことを見つけ出す道として、外の人たちを入れるような取組を市町村・群馬県がやっていくのが良いのではないか。

(議長)今の意見で感じますことは、活用なくして保存なし的な考え方は、一つ大きくあると思う。活用ということについて見ていくのは、かなり重要である。現実的にいろいろな歴史や何かでも、その時代のトレンドによって評価が変わってきているものはたくさんある。かつて評価されていないものが評価される。もう一つ重要なことが、学術的とか、これは重要だという別の視点である。これはいろいろ批判もあるけれど、学術的と言うのか、その時代では無視されるものでも保存しなければならない。これは行政主体の場合もあるし、地域が守ってきた場合もある。こういう視点と、活用の視点からやっていく。この二つの視点が、将来像を作るのに関係してくると思う。

(審議委員)文化財保護法の改正の中で活用という文化財に対する概念、その部分が社会的に見ると全面に出てきた。新しい展開部分を持っているし、文化財の保護にそういう側面を考えているというのがあったのかなと思う。会長が言われたこととも関係するが、そこのところをきちんと交通整理していかなければならない。文化財には、現在、価値が定めきらない部分がたくさんあるし、だからといってカットしたら、それで終わりのような部分がある。今社会の中で活用につながらない文化財をどう考えるか、ここで一度きちんと整理してから本論に入っていくことが必要だと思う。

(審議委員)文化財の活用は当たり前だし、それがいいのだが、今の傾向はどちらかというとそれにシフトしすぎている。指定・活用の前の段階がすごく重要であるにも係わらず、弱体化していると思う。今回35市町村で、以前の70のちょうど半分になった。私が係わっている5市1町のうち、合併したところは、ほとんど文化財把握が出来ていない。例えば審議委員についても、地元の人ではないので、何を指定すべきか言える人は誰もいない。育成も出来ていない。そういう意味では、それに焦点を合わせる必要はないが、県内で分けるのは東毛・西毛とかではなくて、行政規模において課題が全然違うのではないか。おのおのの文化財の活用という問題の話ではない。まず、正規の専門職員がいない所へ、どのように文化財を扱うかという提言がないと、その市町村にしてみれば「何、絵空事を言っているんだ、文化庁は何考えているんだ」という話しか出てこない。地に足をつけて、現状の課題が何かを、考えていく必要がある。その意味では、ほとんどの市町村が、現在、文化財指定をできる体制にない。専門家が多いから考古は出来る。それ以外については、専門家(専門職員)がいないので、どうやって指定してよいかさえ解らない。私が関わっているところは、建築の調査の発注さえ出来ない。何の図面を頼んだらいいのか分からない。どんな調査をしていいのか分からないから、委託仕様書が書けない。研修の強化という方法もあるが、一言で言えば指定、調査に関わる課題をすごく持っている。状況が、以前から全然動いていない。専門家がいない町村が、「なるほど、県はよく考えてくれた。町村の現状を分かって、言ってくれている」という内容でないと、理想論だけになると、通り一遍のものになってしまう。
また、大綱の位置づけの中に、県の総合計画との関連が全然書いていない。総合計画を見させてもらっていると、みな歴史・伝統、文化財を大事に、と書いてあるが、それは絵空事で全然実施されていない。町村と全然連携していない。そういう意味では大綱の中に、少なくとも総合計画との関連について入れた方がいいと思う。市町村も総合計画の中での位置づけとして、位置づけてもらわない限りは大綱でも何でもない。単に、文化財の関係課が作っているのではないか、ということになる。いろいろあるが、1章ではその点を感じた。
2章の文化財概要の中で、古代は非常に書いている。だんだん中世・近世になると一行か二行になる。中世・近世も均等に書くべきではないか。あと専門家がいなくなっていて、実際に指定が出来ない。また未指定の文化財をどうやって把握するか、町村は把握しろと言われても、把握する体制すらない。体制を言う人もいない。そういう状況である。全部とはいかないが、うまくいっていないことも入れる。いいことを言ってくれているな、ということを書いていただきたい。全体には良くできている。

(議長)今、お二人の方が言ってくれたことは、私も前から申し上げている。色々な文化財があっても、建物が大切だと思っても、相続などの問題をどこに聞いたらいいのか、窓口がない。それがために時間切れで潰してしまう。その(建物の)中には古文書などもある。指定以前の問題だと思う。相談に来た時に判断する人がいるのかどうか。システムを作っていくことが保存活用の前提である。

(審議委員)専門家がいないという点では、民俗文化財というのはその最たるものかなと思う。どこの資料館へ行っても民俗資料は山のようにあるが、きちんと評価して価値づけているところはないので、某市では合併にあたって民俗文化財が密かに破棄されているというような、非常に問題のあることが起こっているというのが現状だと思う。大綱の中でも比較的、無形の民俗文化財、芸能であるとかは評価されているが、有形のものがそこから漏れてくる。例えば25ページの2、改正文化財保護法では、指定・未指定に関わらず域内の文化財の総合的な把握を行った上で、というようなことが書かれている。大変いいことだし、災害のところでも、指定・未指定に関わらず文化財のリスト化が必要であると書かれている。大変重要なことで、災害の時にどういう文化財がどこにあるのかということを把握していないと、文化財救済ネットも救済できない状況になる。ところが、民俗文化財の未指定のものが、多分把握できないのではないか。美術工芸品といったものは、蔵の中にあるときに所有者もそれなりに把握しているが、蔵の中にある日常の生活用具は把握していない。震災で蔵が壊れた場合には、まず捨てられてしまう。災害時に何が必要かというと、まず急いで「捨てないでください」という張り紙をすることが、市町村の文化財担当者のやることである。水をかぶっても何をしても、古文書、民俗文化財にあたるようなものを捨てないでくれというのが、まず行われるという状況である。一つの原因は民俗文化財といっても生活用具なので、文化財なのか、生活上の消費されるような消耗品なのかは区別できないことである。東北大震災の時も収蔵庫のレスキューに行ったときに、津波で近くの家の生活用具が流されてきて、収蔵庫の民俗文化財と一緒になってしまって、どれが民俗文化財の資料なのか分からない状態になっている。そういうものなので、逆に言うとその価値を判断するような専門家がいないと、全部捨てるか、いらない物まで全部とっておくかになってしまう。人材育成のことを前回に比べてたくさん書いていただいているが、ここには民俗文化財に関連することが、一つも出てきていない。大変なところではあるが、実際にどうやっていくのか。実際に市町村で分類しろと言っても、あるいはリスト化しようと言っても、出来る人はまずいないだろう。その辺をどうしていくのかは、大きな課題だと感じている。域内の指定文化財はできるが、未指定を含めてリストを作成することは、かなり難しいのではないか。具体的な指針は示さなければいけないのではないか。

(審議委員)18ページ文化財を核にした地域づくりという項目になっているが、書いてある3分の1は学校教育のことである。本来、第3章の中に、「学校教育との連携」ではなく、「学校教育」を取り上げていいのではないかと思う。やはり文化財の理解を深めてもらうのは、最終的には子どもたちへの教育であり、群馬のことをきちんと教えていくことだろう。そういう中で文化財保護課が研究授業をやられたのは、すごくいいことだと思う。しかし本来、これは教育センターがやることであって、文化財保護課が教員と一緒になってやることではない。指導部局が、全くそういう観点を持ってないということである。自分が校長をやっていた時は連携出来たが、普段は全然そんな関係には無い。保護課は保護課、高校教育は高校教育、義務は義務としかなっていない。学校教育との連携をきちんとやるには、教育センターでプログラム化して、先生方にきちんと研修をすることが一番で、生徒の問題だけではない。先生方が知らない、というようなことにもなる。18ページに書いてあることを学校教育に委ねられるのであれば、群馬県は学校教育に入れるべきだということを明確に出すべきだ。当然、機関としての教育センター頑張れ、ということだ。教科書では全国のことを教えるが、群馬県のことはなかなか教えられない。伝統教育を学校でやっていないことが、一番の課題だと思う。学校教育の中での文化財の教育を、項目としてあげて書くことができるのではないか。第3章に項立てて、学校教育において何が課題であるかを問題分析して、今後どうあるべきかという道筋をきちんと出した方がいいのではないか、という気がする。

(議長)二人委員が言われたことは、基本的な方向性を明確に示していくことが重要だ。大綱の場合、別の言葉で言うと、首長が変わると政策が変わってしまうことが往々にしてあるが、首長が変わっても、これは必要だという情報発信の基本になるものを作っていくことが重要である。この地域で必要なものというか、そういう視点から見たときに、教育委員会でどういうシステムでやっていくかが重要である。他にいかがか。
(審議委員)定義をしなければいけないと前回も申し上げた。広報も活用の中に入るとか、もう少し定義について記述したらいいのではないかと思う。定義という意味では、16ページの4、文化財の保存活用の基本方針については、本来であれば、文化財の保存・活用・継承の基本方針ではないか。保存のためには活用しなければならないが、その先の継承のために、活用をやっている。継承という言葉をぜひ入れるべきだと思った。

(審議委員)この間の会議、外部の団体とか、色々な会長さんが来て話をされた。私は議事録署名人になったので、読み直してみた。一番多かったのは、先程皆さんから出ている人材育成のことであった。専門職員がいない。専門職員間の交流もない。保存・活用の担い手が、一番大きな問題で取り上げられていた。私もいろいろ考えてみたが、文化財保護課としては、県内の市町村で文化財担当の職員がいない所がどのくらいの町村あるのか。小さな町村には文化財保護係さえなく、社会教育で担当しているのではないか。実態を把握されているのかお聞きしたい。

(事務局)埋蔵文化財の専門職員の配置状況だが、今年の5月1日現在、未配置が16町村である。その中で、嘱託職員等を配置している場合もあるので、それを除くと、8町村である。

(審議委員)今、大変な状況にある自治体が多いというのが分かった。県の文化財保護課が町村の文化財状況を把握し支援していくことが、必要な時期になっている。それが出来ればいいと思う。数町村がブロックで担当者を置く方策が考えられるなら、小さな自治体をカバーする方向性を大綱で打ち出せたら良いと思う。
 もう一つは学校教育との連携、資料館・博物館、文化財関連の色々な機関と文化財担当職員との連携がある。文化財係がなくても、資料館や博物館が各町村にあれば、それが核になって、保存・活用の体制が少しは出来ると思っている。いずれにしても、連絡・協議機関みたいなものは考えなければならない。文化財担当職員と学校、関連の機関、文化財機関との連携は必要、その辺のところをどこかで書き込んでもらいたい。他の委員からもあった、20ページ、24ページと、いろいろな所に人材育成が非常に大きな課題だと書き込んである。場所が分散しているので、1カ所に集中して課題と対応の方法を書いた方がわかりやすいと思った。
 また、古文書のことを結構書いてくれて良いのだけれど、時代の概況のところ、近代のところが完全に落ちている。群馬県の概要、考古・古代、現代は交通網の発達、工業団地の問題は書き込んであるが、近代の群馬県の状況を数行でもよいので入れてもらいたい。書き方としてはここも中世とか近世に分けて、項目を立ててあったほうが、読みやすいのではないか。いろいろな項目を立てるのは大事だと思う。

(審議委員)13ページ、天然記念物の課題が書かれているが、その中段あたりにこの10年で2本指定解除されているとある。その後これに関して書かれていない。中段あたりに、また「天然記念物は…」という文章があって名木・巨木・奇岩と書かれているが、「…地誌的な観点からの指定が重要であり、相当広範囲の周辺環境を保全しないと、指定時の環境を持続することが困難な状況である…」と書かれている。これが、名木・巨木・奇岩の説明だとすると、どうもよく分からない。住民の生活、文化との関係が、大切なことだと思っている。
 天然記念物には樹木と植物群落、動物が多いが、生き物を対象としているのは6分野の中で天然記念物専門部会だけなので、どうも記述が弱い気がする。項目を考えていくと、日常行為として生き物を生かしていく、枯死させない、そのような保護管理計画が必要になってくる。23ページの(3)に修理・整備というのがある。天然記念物の樹木は、現在、個人所有が多い。先程経費の負担を聞いたのも、その辺との関連があるが、市町村が実際やってくれれば市町村の負担で、個人負担は無くなる。ただ萩原の大笠マツなどは、前橋藩主が下し置いた盆栽から大きくなった昔からの歴史があるが、所有している個人が10万円も負担して毎年やっている。内容がよく分からないが、個人所有の天然記念物の樹木に関して、所有者の負担が大きすぎる。県の天然記念物が枯れるか枯れないかという事態が生じたときの負担軽減について何とかしてもらわないと、天然記念物が減っていくのかなという感じがして、大変困っているところである。
 続いて27ページ、市町村による文化財保存活用地域計画策定への支援方針と書いてあるが、この辺のところで補助率の引き上げと事業主体の考え方を市町村の方によく説明して、市町村に事業主体としてやってもらう。市町村の財政負担からいうと、県の指定文化財くらいは補助率をもう少し上げるよう考えてもらえたらありがたい。
 もう一点、前回の会議でも申し上げた人材の育成で、埋蔵文化財の育成ばかり言っているようだというお話をした記憶があるが、今回も全然変わっていない。私の個人的な考えだが、県の職員にしてもそうだが、それぞれが専門家ではなくて、6分野を論じるのはとても無理である。私はどちらかというと、県の職員は人数がいるから専門家でもよいが、市町村はどちらかというと、ゼネラリストを養成して、部外の力を使って民俗の問題とか、建築の問題とかに対応していくというような方向性にも触れておかないとだめだと思う。お金が無く、人もいないのだから、スペシャリストを養成できるはずがない。県には、専門家・教員もたくさんいて、知識を持っている方もたくさんいる。文化財保護課・県が文化財の重要性を鑑みて、そういう人を引っ張ってくるように働きかけていただければありがたい。

(審議委員)私が申し上げたかったのもその点で、第7章に文化財保存活用の推進体制とあるけれど、その最初に文化財行政の方向性を述べていいのではないか。当然県も含めてだが、一つは文化財が変わっているということ。その時代を反映するのが文化財だから、今までに無い新しい分野が出てくる。その時代として残すべきかを考えなくてはならなくて、そういう方向性とか…。自分達の持っている施設の活用や発掘も、町村の半分くらいが外部機関に委託している。当然、誰がチェックするかの問題がある。例えば専門職員がいないところは、いるところと連携を取る、または、県の埋文センターが面倒をみる。行政としてのやり方で、専門家を育成すると言っているが、現実的に無理なのだろう。今まで言い続けても、県もこういう状況で、いつになっても専門家が入って来ない状況で、何も変わらない。そういう中では、文化財行政としてマネジメントする側に、きちんとその位置づけをして、そのための機関を考える。例えば保存の場合、今ではクラウドファウンディングは当たり前になってきている。文化財の場合、民間の金も利用するとか、新しい手法の例も示した中で、何も自分たちで予算化するだけではなく、もっと他の方を巻き込んだらどうか、みたいな新しい文化財の方向性を第7章の中でやったらどうか。そうなれば専門家はいなくてもいい。電話して相談できる場所があればいい。埋蔵文化財センターの埋蔵を取って、文化財センターにしたらどうか。それが一番的確だろうという気がする。制度整備・制度設計を県も考えて、市町村ができないのなら制度に変えるのはどうか。そういう意味で文化財行政のあり方を、最初に入れておくのがよいと思う。

(審議委員)この文化財の大綱を作るのは、そもそも文化財保護法が改正されたからであるが、その背景として、政府がインバウンドの税収を増やすためにものすごく大きく舵を取っていて、文化財を活用しようではないか、もっと外国人に魅力を発信しようというのが基になっている。そのような大きな流れの中で、私が個人的に知っている文化庁の方は、皆が頑張っておられる。課題をきちっと見せてあげるのは、すごく喜ばれる事だと思う。具体的な事例として、制度の話とか、職員とかの話をきちっと書いて別紙で添える。そういうことをきちっと調査をして、情報として持っておく。そういうことが、大事なのではないか。意外とそういうことが分からなくて、情報を欲しがっているので、何かの時に出せるよう、いくつかの事例だけでよいので、数文入れるということも大事なのではないかなと思う。今、図書館司書の非正規雇用がものすごい速度で起こっていて、7割だったか、数年の間にものすごいことになっている。学芸員にくるかもしれないし、今の状況よりさらに悪くなる。是非その辺で、群馬としてそこに一石を投じていただければと思う。

(議長)予定された時間なので、このあたりでと思うが、今までの話を聞いていて、こういうことを申し上げると、これまでの経験から後でいろいろ問題が起こる可能性があるが、あえて申し上げさせていただく。この審議会で、群馬の文化財保護の方向性をどうしようかということについて、もっと自由に議論して方向性を出していく。文化財保護課がどうやっていくか、その辺を議論できる場が1,2度あってもいいのではないか常々思っている。
例えば、非常に新たな開発として太陽光が出てくる。一つ一つ見ると大したことはないのだけれど、総量規制をしていかないと大変なことになる。景観とか文化財が壊されていく。文化財の保存・活用、将来のいろいろな新しい問題にどう対応していくか、これに対する何らかの審議過程が必要なのかなと思った。例えば総合計画との関連がどうなっているか、全体との関連がどうかなど。
もう一方で、現在の働き方改革と関係すると思うが、群馬には結構有能なプロフェッショナルな方が退職してきているが、下手に意見を言うとただ働きさせられる。もう退職だからとこき使われる。これを変えないとならない。一定の仕事をしてするのだったら、そんなに多くなくてもいい、交通費と手当を出してくれたらお手伝いする、という方がけっこういる。それなりの大学で教鞭をとった方が、多くは余生を静かにしており、静かにしていると割合早く亡くなる。群馬が良い所だと言うためにも、人材活用はいろいろある。そういった広い視野からの方向性を示していくというか、そういうのが大綱では必要で、結果として、細かなことは書かなくてもいい。大きな方向性を示したら、市町村の方はそれに基づき、また市町村の方から要望が上がってくる。そういうコミュニケ-ションをするためのツールにする。これを元に県庁内の横のコミュニケーションが図れるように、そういうものにしていってほしい。

(審議委員)聞いていて、ちょっと思い当たったのだが、隠れた民間にいる人材を活用するというのが大事かなと思い、文化財人材バンクのような資料作成を検討してほしい。県の文化財、もし出来れば、いろいろな地域にいるのだと、そういうのを活用するのも良いかと思う。検討してほしい。

(議長)その場合、評価して、このくらい手当てを出す、というのが無いといかん。

(審議委員)ボランティアで皆やってくれている…。

(議長)いやいや、なかなか続かない。新しい人を考えれば、はるかに安く出来るわけで…。ともかくその辺、御検討をいただければありがたい。
本日皆さんからいただいた内容・御意見について、事務局は大変であるが、まとめて再度提案していただけるようにお願いする。

(審議委員)和紙を作るコウゾの木が少なくなっている。文化財の担い手というのは、直接の担い手だけではなく、二次的な担い手の方も育成するようにお願したい。

(議長)では、今後の予定を事務局からお願いする。

(事務局)第3回大綱策定委員会は、今年の10月を予定している。今回と同様、いただいた意見を参考にしながら2~3度修正し、10月に完成形に近いものを提示できるようなスケジュールで進めたい。

(議長)皆さんまだ言いたいことはあるかと思うが、これで終了とさせていただく。

11 閉会

午後4時00分 文化財保護審議会の閉会

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