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2 発生防止対策

更新日:2011年9月13日 印刷ページ表示

品質低下の要因については前述のとおりであるが、その要因に対する栽培技術対策について、以下のように一覧として整理した。
また個々の具体的な対策について記載した。

1 高温登熟障害の要因と栽培技術対策(一覧)

高温登熟障害の要因と栽培技術対策一覧
要因と症状 対策 具体的な栽培技術
高温登熟による白未熟粒・胴割粒の発生 高温登熟の回避
  1. 品種特性に応じた田植時期の設定
  2. 作期分散による被害の軽減
  3. 高温時のかけ流し(可能な地域)および夜間かん水
根張り不良
生育後半の窒素・水分供給不足等による
白未熟粒・胴割粒の発生
高温に強い稲体づくり

<土づくり>
(1)適正な深耕(15~18センチメートルを目標)
(2)作期分散による被害の軽減
(3)高温時のかけ流し(可能な地域)および夜間かん水
<稲作後半までの稲体の活力維持>
(4)中間追肥の施用
(5)適正な穂肥施用
(6)間断かん水
(7)早期落水の防止

収穫遅れによる胴割粒の発生 適期収穫
  1. 早めの収穫作業

2 栽培技術対策(地域の土壌・水利条件等に応じて技術を選定する)

(1)高温登熟の回避

1)品種特性に応じた田植時期の設定

 高温登熟を回避するため、高温登熟性の劣る「ゴロピカリ」は普通期(6月16日~)以降の植え付けとする。
 ただし、二毛作での遅植えは、麦類の播種に影響を与えないように注意する。
 なお、高温登熟を回避するための平坦地域の主要品種の田植時期は以下を目安とする(表8)。

表8 高温登熟を回避するための田植適期(平坦地)
品種名 時期(目安)
あさひの夢 6月10日~6月25日
ゴロピカリ 6月16日~6月30日

2)作期の分散による被害の軽減

 熟期の異なる複数品種を組み合わせて作期を分散し、被害を最小限に抑える。

3)高温時のかけ流し(可能な地域)および夜間かん水等による地温低下

 出穂期以降、最高気温30度以上、最低気温25度以上の条件では玄米品質に及ぼす影響が大きくなる(表9)ので、かけ流し(可能な地域)や夜間かん水等を行い、地温を低下させ、根の活力を維持する。
 ※かけ流しの可能な地域:用水が豊富でかけ流しを実施しても、当該地域から下流地域にかけて用水不足等が生じない地域

表9 出穂後7日~成熟までの温度が玄米品質に及ぼす影響(粒数%)
昼温/夜温 日平均気温 発育停止米 死米 乳白米 背白米 心白米 完全米
24/19度 21度 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0%
27/22度 24度 0.0 0.0 0.0 0.0 7.3% 92.7%
30/25度 27度 0.0 0.0 2.4% 11.9% 0.0 85.7%
33/28度 30度 0.0 0.0 4.4% 34.8% 0.0 60.8%
36/31度 33度 0.0 13.7% 86.3% 0.0 0.0 0.0
39/34度 36度 18.4% 73.7% 7.9% 0.0 0.0 0.0

 (Tashiro  and  Wardiaw,1991)
 注 昼温は6時間、夜温は16時間の処理。穂の中央部4本の1次枝梗の上から4.5個の穎果で測定

(2)高温に強い稲体づくり

1)適正な耕深(15~18cmを目標)による根域の確保

 ほ場条件に応じた深耕を行い、作土層を厚くすることが重要である(図6)。
 耕深は15cm以上確保されることが望ましく、安定多収のためには18cmを目標基準とする。
 この場合、一度に深耕すると下層の混入により地力の低下がおこるので、毎年1~2cm 程度ずつ深くする。

適正な耕深(15~18cmを目標)による根域の確保の画像

2)堆肥、ワラ等の有機物の施用による地力、保水力の維持・増進 ※表14参照

ア 堆肥の施用
 水田では、稲1作で60~80キログラム/10アールの腐植が消耗するので、1作あたり落葉や稲ワラの完熟堆肥を前年秋~早春にかけて1トン/10アール程度施用し、地力の維持を図る。
 家畜ふん堆肥を施用する場合は、堆肥に含まれる肥料成分量(表10)を考慮する必要がある。
 原料の種類によって肥料成分量が異なるため、表11を参考に施用量に応じて減肥する。
 施用量は、基肥窒素施用量の2~3割が望ましい。
 水田での家畜ふん堆肥の直前施用は、土壌条件等によって還元障害やガス障害が懸念されるので田植の一ヶ月前までの施用が望ましい。
 特に湿田では、秋~冬期にかけての施用が望ましい。

表10 家畜ふんたい肥の成分含有率と有効化率
種類 窒素 リン酸 カリ 水分
含有率 有効化率 含有率 有効化率 含有率 有効化率
牛ふんたい肥 0.7% 30% 0.9% 60% 0.8% 90% 80%
豚ふんたい肥 1.8% 40% 6% 70% 2.1% 90% 45%
鶏ふんたい肥 2.6% 50% 3% 70% 5% 90% 15%

注)水分の多少により、養分含有率は変わるので換算する。
 換算方法:表10の含有率×{100/100-(表10の水分-使用するたい肥の水分)}
※作物別施肥基準及び土壌診断基準(群馬県農政部 平成16年3月)より

表11 家畜ふんたい肥の施用による基肥基準量の減肥量
種類と量 窒素 リン酸 カリ
牛ふんたい肥1トンの場合 2.1キログラム/10アール 5.4キログラム/10アール 7.2キログラム/10アール
豚ふんたい肥500キログラムの場合 3.6キログラム/10アール 10.5キログラム/10アール 9.5キログラム/10アール
鶏ふんたい肥300キログラムの場合 3.9キログラム/10アール 12.6キログラム/10アール 9.2キログラム/10アール

(単位:キログラム/10アール)

イ ワラ類の施用
 ワラすき込みはメタンガスが発生するため、温暖化防止の面からは有機物の施用は堆肥が望まれるが、堆肥の確保が困難な場合はワラ類のすき込みも次善の策である。
 排水が良好な水田では、全量(約500キログラム/10アール)すき込んでもほとんど障害はないが、分解促進のため窒素成分3~4キログラム/10アール(硫安または石灰窒素を約20キログラム/10アール)を施用し、できるだけ早くすき込んでおく。
 また、土壌の強還元化を防止するため、間断かん水や中干し等の水管理を十分に行う。
 排水が不良な水田では、すき込み量の減量や水管理を特に徹底する必要がある。
 ワラを連年すき込みした場合は、4年目以降、生育が旺盛となることが多いので、基肥の減量等、肥培管理に注意する必要がある。
 ※強湿田では強還元化により生育に影響するため、堆肥・ワラとも施用は避ける方が良い。

3)土壌改良資材の施用による根の健全化 ※表14参照

 根張りを良くし、登熟後期まで根の活力を維持するため、ケイ酸カルシウム等を施用する(資材例 ケイカル:施用量100~150キログラム/10アール程度)。
 また、リン酸や塩基の施用は土壌診断に基づき、適正量を施用する。

4)中間追肥による根の活性化 ※表14参照

 根の活性化を図るため、出穂前30~50日頃、ケイ酸カリ(約30キログラム/10アール)または塩化カリ(約10キログラム/10アール)等を施用する。

5)適正な穂肥による稲体の活力維持 ※表14参照

 稲体の活力維持には、穂肥による生育後期の栄養確保が重要であるため、品種に応じた適正な施用を行う(表12)。

表12 主要品種の穂肥施用時期と施用量
品種名 施用時期 窒素成分施用量(キログラム/10アール)
あさひの夢 出穂前20日頃 2キログラム/10アール~3キログラム/10アール
ゴロピカリ 出穂前20日頃 2キログラム/10アール~3キログラム/10アール
ひとめぼれ 出穂前15日頃 2キログラム/10アール
コシヒカリ 出資前10日頃 1.5キログラム/10アール~2キログラム/10アール

6)間断かん水による根の健全化

 根の健全化のため、出穂後7日以降は、2湛3落(2日湛水3日落水)等、ほ場条件に応じた間断かん水を基本とする。
 ※高温時には2-(1)-3)により、地温の低下を図る。

7)早期落水の防止

 水分不足による登熟阻害を防ぐため、落水は出穂後30日以降とする(図7)。
 その後も乾いたら走り水を行う。

早期落水の防止の画像

(3)適期収穫

1)早めの収穫作業準備

 高温が続くと収穫時期が早まるため、早めに収穫準備を整え、収穫の適期を逃さないようにする。
 収穫適期は、出穂後の積算平均気温や帯緑色籾歩合を参考に判断する(表13)。

表13 収穫適期の目安
品種名 出穂後の積算平均気温 帯緑色籾歩合(緑がかった籾の場合)
コシヒカリ 950度 10%
ひとめぼれ 950度 10%
ゴロピカリ 980~1,040度 15%
あさひの夢 1,000~1,100度 10%

稲の画像

表14 地域・品種別施肥基準
地帯別 品種別 基肥 追肥
N P2O2 K2O N K2O
高冷地帯 ユメコガネ 6~7 10 8 2~3 2~3
ふゆげしき 6~7 10 8 1.5~3 2~3
タツミモチ 4~5 10 8 0 0
山間地帯 峰ひびき 5~6 9 7 2~3 2~3
ひとめぼれ 5~6 9 7 2 2
コシヒカリ 4~5 9 7 1.5~2 1.5~2
ヒメノモチ 4~5 9 7 1.5~2 1.5~2
まんぷくもち 4~5 9 7 2 2
中間地帯 峰ひびき 5~6 9 7 2~3 2~3
ひとめぼれ 5~6 8 7 2 2
コシヒカリ 3~4 9 7 1.5~2 1.5~2
まんぷくもち 4~5 9 7 2 2
群馬糯5号 4~5 8 7 2 2
平坦地帯 朝の光 5~6 8 7 2~3 2~3
ゴロピカリ 5~6 8 7 2~3 2~3
あさひの夢 5~6 8 7 2~3 2~3
さわぴかり 5~6 8 7 2 2
群馬糯5号 5~6 8 7 2 2
東部平坦 コシヒカリ 2~4 8 7 1.5~2 1.5~2
あさひの夢 5~6 8 7 2~3 2~3
ゆめまつり 5~6 8 7 2~3 2~3

有機物施用(10アールあたり)
 次のいずれかを施用する。(強湿田では施用を避ける方が良い。)

  • 落葉・稲ワラ堆肥
    前年秋~早春にかけて1トン施用する。
  • 家畜ふん堆肥
    基肥窒素成分量の2~3割の施用量が望ましく、その窒素成分量を減肥する。
    田植の1ヶ月前までの施用が望ましい。特に湿田では秋~冬期の散布が望ましい。
  • ワラ類
    稲ワラ・麦稈を全量(約500キログラム/10アール)すき込む。
    分解促進のため、窒素成分3~4キログラム/10アール(硫安または石灰窒素)を出来るだけ早くすき込んでおく。
    また、土壌の強還元化を防止するため、間断や水管理を十分に行う。
  • 土壌改良資材(10アールあたり)
    ケイカル100~150キログラムを耕起前に施用する。
  • 中間追肥(10アールあたり)
    出穂前30~50日頃ケイ酸カリ30キログラム程度、または塩化カリ10キログラム程度を施用する。

注)施用量は地力や気象条件、生育量等を考慮して加減する。

3 高温登熟障害発生予防対策(注意喚起)

(1)時期別指導内容

  1. 時期別に気象情報に基づいた栽培技術資料を作成し、技術指導を徹底する。
  2. 梅雨明け後~収穫前までを「警戒期間」とする。
  3. 警戒期間中に「高温に関する気象情報(気象庁)」が発表された場合は、県関係課、試験研究機関、関係機関・団体と協議し、品質への影響が懸念されるときは、「高温に関する気象情報に伴う水稲の栽培技術対策(技術支援課)」を発表する。

指導内容は、通常時の指導に加え、「(2)高温時の水稲栽培指導方法」により、被害の発生予防に努める。

通常時

 田植前
 暖候期予報等に基づく事前指導(土づくり)
 ↓
 田植時
 暖候期、3ヶ月、1ヶ月予報等に基づく指導(田植時期、作期分散)
 ↓
 出穂前(梅雨明け後)
 1ヶ月、週間予報、高温に関する気象情報等に基づく指導(中間追肥・穂肥)
 ↓
 出穂後
 アメダスを随時確認し、最高気温30度以上、最低気温25度以上の場合は、水管理等の指導を徹底
 ↓
 収穫前
 アメダスを随時確認し、気象経過に基づく指導(適期収穫)
 ↓
 収穫時
 適期収穫の現地指導

※出穂前(梅雨明け後)から収穫前までが「警戒期間」
 警戒期間中に
「高温に関する気象情報に伴う水稲の栽培技術対策(技術支援課)」が発表された場合は、下記の「高温時の水稲栽培指導方法」を実施する。

(2)高温時の水稲栽培指導方法)

1)関係機関との連携(技術支援課・農業事務所)

 技術支援課は、関係機関・団体、農業事務所は、市町村、JA、農業共済組合を対象とした緊急対策会議の開催等により、気象状況、水稲の生育状況に応じた栽培技術について、情報の共有および周知を図る。

2)栽培技術資料のホームページへの掲載(技術支援課・農業事務所)

気象状況、水稲の生育状況に応じた栽培技術を、技術支援課及び各農業事務所ホームページに掲載する。

3)栽培技術資料の配付(農業事務所)

 気象状況、水稲の生育状況に応じた栽培技術資料を、市町村、JA、農業共済組合、生産組織等に配布する。

4)栽培研修会の開催(農業事務所)

 農業者、市町村、JA等を対象とした栽培研修会を開催し、気象状況、水稲の生育状況に応じた栽培技術の徹底を図る。

4 収穫前の品質低下状況の把握

 「出穂期~出穂後20日間の日平均気温の平均値が27度以上」となったときは、関係機関と連携し、収穫前にサンプリング調査を実施し、品質低下の状況を確認するとともに、適期 収穫指導を徹底する。