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在上海日本国総領事館

1 調査先及び対応者

 在上海日本国総領事館 泉裕泰総領事 他

2 調査日時

 平成24年11月6日(火曜日)14時30分~15時45分

3 調査目的

 今後の観光誘客や企業支援等に係る国際戦略施策の審査・検討に必要不可欠な、中国における社会・経済情勢等について現地調査するとともに、議会の正式な委員会調査として訪問することで、行政と議会とが一体となって本県の国際戦略に積極的に取り組んでいる姿勢をアピールし、今後の現地事務所における事業展開に役立てる。

4 調査先概要

 在上海日本国総領事館は、上海市の他、江蘇省、浙江省、安徽省、江西省の1市4省を管轄とし、当該地域における7万人を超える在留邦人が、安全かつ快適に当地での生活を送ることができることと併せて、日系企業が当地における事業がより展開しやすくできるよう設置されている。
 また、現地の中国人の方々に対して、広報文化センターを設けて日本の紹介を行っている他、文化交流事業等を通して一人でも多くの方に日本を理解してもらい、日本を身近に感じてもらえるよう尽力している。

5 説明要旨

上海概況について

  • 上海在住長期在留邦人:約56,000人(1年前より12%増)
  • 上海に進出している日本企業:約8,800社(中国側の統計)
  • 上海日本商工クラブ会員:約2,400社(世界最大規模:北京の3倍以上)
  • 日本人学校の生徒:約3,000人(世界初の高等部も上海にあり)
    ※単身が多い重慶等に比べると家族連れの多い都市である。
  • 地方公共団体の事務所:36事務所(北京は3事務所)
    ※駐在員の派遣のみや、民間企業への業務委託等も含む。
  • 上海の総領事館におけるビザ発給件数:4年連続世界一(中国全体の約4割)
    ※上海にいると全体動向が把握できる。
  • 管轄する1市4省では、在留邦人約7万5千人、企業数2万社超と言われている。

6 主な質疑応答

質問:先の反日デモによる管轄内の影響等についてはどうか。

回答:暴力的なデモは蘇州で起きただけで、他の管内地域ではなかった。このようなことが2度と起こってはならないと思っている。被害を受けた企業側には国内法により救済措置もとられているが、再発防止に関して当局に対し申し入れしている。

質問:デモ発生の背景(要因)についてどう考えているか。

回答:今回は純粋な「反日デモ」ではなく、食事、水、住居、就職、社会保険等々、生活していくうえでの安心感がないことや、中央政府トップの問題などもあり、中国社会における国民不満が高まってきていることが要因にあると思う。なお、中長期的に見て、日本も中国もお互いにとって大切な国であるので、今後は良い関係を保っていかなければならないと考えている。

質問:観光誘客や物産振興に関する他の地方公共団体の動向等についてはどうか。

回答:非常に観光重視であり、一番頑張っているのは北海道で、次が九州、関東は下の方だと思う。特に九州は自治体間の連携も緊密であり、一体となって意欲的に取り組んでいる。中国人は本当は日本が好きであり、旅行者の9割がリピーターになっている。また、「温泉」も好きだが現実(本物)を知らないのが現状であって、今後いかに周知するかが課題である。

質問:今後、国が割れてしまうような心配はないのか。

回答:予想は難しいが、いつ崩壊しても驚かないというような心構えは持っている必要があると思う。情報をシャットアウトして安定化を図る体制がどこまで続くのか、常に危機感を持って注視する必要がある。

質問:企業進出に対する考えはどうか。

回答:20~30年後の中国のGDPは、恐らくもう1つ中国ができる程の規模になっていると思われるが、その時にどの企業がシェアを占めているか、そのためには今来ないと出来ませんということになる。日本は諸外国と比べて地理的にも恵まれている状況もあるが、軽い気持ちではなく、「30年後にこの国で一定のシェアを占めてやろう」というような意気込みで進出企業には頑張ってほしい。

質問:今、群馬県が上海事務所を設置しようとしているタイミングについてどう思うか。

回答:群馬県が上海に事務所を置いて、変化も多いと同時にチャンスもある中国・上海を見るのは良いことであり、むしろ遅いぐらいだと思っている。

質問:上海で活動するのにあたり人脈形成が遅れているとの思いもあるがどうか。

回答:群馬県には中国で大変に高い評価を受けている何人かの元総理もおり、政治的には他県にない非常に優れたものを持っているので、この人脈を活用するのも一手段であると思う。また、県ということで考えてみれば、地域レベルの交流も大切ではないかと思う。静岡県など、知事が出てきてトップ同士の交流などを非常にうまくやっている例もある。

質問:都市部と農村部との格差の実態はどうか。

回答:中国は常に「一枚岩」だと思われているが、必ずしもそうではなくバラバラである。都市に流れてきた農民(農民工)は、初代は都市部で厳しい労働に耐えてお金を貯め農村部に戻って家を建てるなどしたが、現世代は都市部で生まれ育ったため、自分たちは都市部の人間だと思っている。しかし、中国では戸籍のコントロールがあるため、彼らは農村戸籍のままであり、都市部における福利厚生等が受けられない等の現状にある。

質問:学生を含め、年代別の格差はどうか。

回答:近年は大学が多すぎて、卒業しても就職できないような状況になってきており、そうした就職予備軍の人々は「アリ族」、さらに悪化し「ネズミ族」と呼ばれている。また、中産階級の人たちも特権階級の批判をするようになってきている。特権階級の人たちが自らの特権を放棄せず、なかなか改革が進んでいかない深刻な現状がある。

質問:中国国内で農産物等の販路拡大を図る有効なアプローチ手段は何だと思うか。

回答:中国人は日本のものは何でも大好きであるが、その一番の理由は「安全」だからである。関税等の問題もあるが、おいしい農産物、特に果物は中国にはない。

質問:中国が尖閣諸島にこれほどこだわる理由は何であるのか。

回答:民族には、大きくなりたいという「膨張の欲求」があると思う。また、尖閣については経済的な面より、戦略的な面で重要だと捉えているのではないかと思う。

上海概況等について説明を受けるの画像
上海概況等について説明を受ける

泉総領事を交えての画像
泉総領事を交えて