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特集2 原子力発電所事故による本県の放射性物質調査について

更新日:2011年10月5日 印刷ページ表示

 福島第一原子力発電所事故により、県内においても放射性物質による健康への不安、農産物の出荷制限や風評被害など多方面にわたり影響が出ています。
 そうしたことから、県では県民の安全・安心な生活を確保するため、以下の項目について放射性物質の測定を定期的に実施し、県ホームページ(空間放射線量等)で公表しています。
 なお、以下の項目については、6月末時点の結果を記載しています。

1.空間放射線

(1)モニタリングポストによる測定

 モニタリングポストは衛生環境研究所(前橋市上沖町)に設置してあり、放射性物質の飛来を監視する「火の見やぐら」の役割を担っています。このため、周囲の影響を受けにくい研究所の屋上、地上21.8メートルに固定されています(写真)。この位置での測定は平成2年度から継続して行われており、過去のデータとの比較が可能です。
 原子力発電所事故前には0.02マイクロシーベルト/時間前後でしたが、事故後に線量の急激な上昇が見られ、最高値は3月15日13~14時の0.562マイクロシーベルト/時間でした。6月下旬現在では0.03マイクロシーベルト/時間程度で安定して推移しています。

(2)サーベイメータ等による測定

 モニタリングポストではカバーできない地表付近の放射線量を県内各地において、サーベイメータ等の携帯型測定器を用いて測定しています。県内数カ所の定点観測に加え、およそ100カ所での測定も併せて行いました。測定結果は0.054~0.650マイクロシーベルト/時間(測定高さ1メートル)で、南部の平野部が低く、北部を中心とした山沿いが比較的高い傾向を示しました。
 さらに一部地域の土壌中の放射性核種を深度別(0~5センチメートル5~20センチメートル)に分析しました。自然放射性核種の他、人工核種である放射性セシウムが検出され、自然放射線核種が深さによらずほぼ一定濃度である一方、放射性セシウムの多くが0~5センチメートルの浅い部分に存在していました。また、発電所事故前からシートで覆われていた土壌からは放射性セシウムは検出されませんでした。こうしたことから、県内における放射線量は発電所事故の影響により上昇したと考えられます。

2.水道水

 前橋市上沖町の県衛生環境研究所の水道水について、3月18日から毎日1回測定しています。測定結果は、放射性ヨウ素131については、最大9.3ベクレル/キログラム、放射性セシウム134及び137については、それぞれ最大1.2ベクレル/キログラムでしたが、4月28日以降(6月3日を除く)は不検出が続いています。
 また、県央第一水道事務所、新田山田水道事務所、東部地域水道事務所の3箇所の水道水について、3月18日から概ね週2回の間隔で測定しています。測定結果は、放射性ヨウ素131については、震災直後に最大62ベクレル/キログラムでしたが、3月28日以降は不検出が続いています。放射性セシウム134及び137については、測定開始から不検出が続いています。
 いずれも、「長期にわたり摂取した場合の健康影響を考慮して設定した指標値(放射性ヨウ素300ベクレル/キログラム、放射性セシウム200ベクレル/キログラム)」を大きく下回っており、また、「乳児による水道水の摂取を控える暫定的な指標値(放射性ヨウ素100ベクレル/キログラム)」からも大きく下回っているため、飲用に支障はありません。

3.農業関係

(1)農産物(野菜、果実、畜産物、きのこ類、水産物など)

 農産物について定期的に検査を実施し、県産農産物の安全性を確認しています。
 3月20日の検査では、ほうれんそうについては、放射性ヨウ素が2080~2630ベクレル/キログラム、放射性セシウムが268~310ベクレル/キログラム、カキナについては、放射性ヨウ素が1910ベクレル/キログラム、放射性セシウムが555ベクレル/キログラムという結果でした。したがって、ほうれんそうについては放射性ヨウ素が、カキナについては放射性セシウムが、それぞれ暫定規制値(放射性ヨウ素2000ベクレル/キログラム、放射性セシウム500ベクレル/キログラム)を超えたため、出荷規制の対象となりましたが、その後3回連続して検査した結果、全て暫定規制値以下となり、4月8日に解除になりました。
 また、5月25日の検査では、茶(生葉)については、放射性ヨウ素は検出せず、放射性セシウムが780ベクレル/キログラム、6月29日の検査では、茶(荒茶)については、放射性ヨウ素は検出せず、放射性セシウムが1010ベクレル/キログラムという結果でした。それぞれ食品衛生法上の暫定規制値(放射性セシウム500ベクレル/キログラム)を上回る放射性物質が検出されたため、出荷自粛を要請しました。

(2)牧草

 家畜に給与する牧草等について、原乳や肉類の安全性を確保するため、定期的に検査を行っています。
 東毛及び中・西毛地域において、原発事故後から5月9日までの間に刈り取った牧草等について検査した結果、放射性ヨウ素は検出せず~60ベクレル/キログラム、放射性セシウムが80~750ベクレル/キログラムでした。放射性ヨウ素については、暫定許容値(放射性ヨウ素70ベクレル/キログラム)以下でしたが、放射性セシウムについては、暫定許容値(放射性セシウム300ベクレル/キログラム)を上回ったことから、乳用牛・肉用牛への給与自粛を要請しました。

(3)土壌(農用地)

 県内8市町村(前橋市、高崎市、伊勢崎市、館林市、沼田市、みどり市、下仁田町、嬬恋村)の農業用地について、4月1日から2日に土壌採取し検査を行った結果、土壌から移行が推定される玄米中の放射性セシウムの含有量が5.8~56.9ベクレル/キログラムで、暫定規制値(放射性セシウム500ベクレル/キログラム)以下でした。

(4)土壌(飼料畑)

 原乳や肉類の安全性を確保するための参考として、県内6カ所の飼料畑(放牧地を含む)における土壌について、4月26日以降、計4回(6月末時点)の検査を行いました。検査結果は、放射性ヨウ素が検出せず~10ベクレル/キログラム、放射性セシウムが10~90ベクレル/キログラムでした。

4.下水汚泥

 県内6水質浄化センター(奥利根、県央、桐生、西邑楽、利根備前島、平塚)について、5月5日から概ね2週間間隔で検査を実施しています。検査結果(5月5日~6月24日検査結果まで)は、放射性ヨウ素131については、検出せず~130ベクレル/キログラム、放射性セシウム134については16~400ベクレル/キログラム、放射性セシウム137については21~470ベクレル/キログラムでした。
 また、6水質浄化センターから排出される下水汚泥については、福島県において放射性物質が検出された後、5月2日から原発事故以前に行っていたセメントやスラグ等への利活用を中止し、従前に利活用のため搬出していた肥料工場等へ運び、工場内に貯留保管しています。
 その後、6月17日以降、安全性が確認された汚泥の一部はセメント原料として利活用を始めたところです。また、肥料工場等で貯留保管しているものについては、6月24日に農水省から示された肥料利用の方針に従い、適正に対応していきます。