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第2部第3章第1節 放射線対策

更新日:2015年3月21日 印刷ページ表示

第1項 空間放射線量調査

1 空間放射線量のモニタリング

(1)モニタリングポストによる監視

 モニタリングポストは、放射性物質の飛来を監視する「火の見やぐら」の役割を担っています。県では、平成2年度から衛生環境研究所の屋上、(地上21.8メートル)にモニタリングポストを設置し、継続して測定を行ってきています。
 平成23年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により、衛生環境研究所(前橋市上沖町)では一時的に空間線量の上昇が認められましたが(平成23年3月15日13時から14時:0.562マイクロシーベルト(注1)/時)、その後減少し、現在では0.02マイクロシーベルト/時程度と事故前の平常値の範囲内で安定して推移しています。
 平成24年3月には、モニタリングポスト(地上1メートル)を更に24基設置し、現在は25基で県内全域を常時監視しています。平成25年度の県内の状況(地上1メートル)は、0.010から0.128マイクロシーベルト/時の範囲で推移しています。

  • 注1 シーベルト:人体が受けた放射線による影響の度合いを表す単位。

(2)サーベイメータ等による測定

 モニタリングポストによる監視とは別に、県と市町村では、サーベイメータ(携帯用の放射線測定器)等により定期に生活圏を中心に放射線量率を測定しています。測定結果は地図化し、「群馬県放射線マップ」として公表しています。平成23年9月は、679地点で測定し、0.3以上0.4マイクロシーベルト/時未満の地点が全体の0.7%(5地点)、0.2以上0.3マイクロシーベルト/時未満の地点は全体の5.6%(38地点)ありました。平成25年11月は、1,124地点で測定した結果0.3以上0.4マイクロシーベルト/時未満の地点は無くなり、0.2以上0.3マイクロシーベルト/時未満の地点も、全体の0.1%(1地点)に減少し、全体的に空間放射線量率の減衰傾向が認められます。

2 汚染状況重点調査地域

 東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により大気中に放出された放射性物質が降下・沈着し、平均的な空間放射線量率が0.23マイクロシーベルト/時以上である地域については、放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、国が市町村ごとに「汚染状況重点調査地域」として指定することとされています。県内では平成23年12月28日付けで、桐生市、沼田市、渋川市、安中市、みどり市、下仁田町、中之条町、高山村、東吾妻町、片品村、川場村、及びみなかみ町の12市町村が指定を受けました。
 その後の詳細調査の結果、片品村とみなかみ町については、空間放射線量率が低いことが確認され、平成24年12月27日付けで指定が解除されました。
 「汚染状況重点調査地域」に指定されている10市町村のうち9市町村で「除染実施計画」が策定され、除染作業が実施されました。除染は、学校や公園等の子ども空間から優先的に実施され、順次住宅、公園・スポーツ施設、道路、農地等について実施されました。
 平成25年度中に多くの市町村で生活圏の除染が終了しました。
 除染実施計画策定市町村:桐生市、沼田市、渋川市、みどり市、下仁田町、中之条町、高山村、東吾妻町、川場村(安中市については、その後の詳細調査の結果、面的除染が必要な区域は確認されていません。)

第2項 放射能調査

1 上水道

(1)水道水の監視

 水道水中の放射性物質の監視については、従前から文部科学省委託事業である「環境放射能水準調査」の一環として年1回測定を行っていましたが、原子力発電所事故の発生を受けて、強化モニタリングとして毎日1回測定を行う体制となりました。概ね平成23年4月下旬を最後に放射性ヨウ素及び放射性セシウムは不検出が続いていたため、文部科学省の方針変更を受けて、平成24年1月からは3か月分の水道水を濃縮し、精度を100倍に高めた測定を行う体制へと移行しました。なお、平成25年度の測定結果は、セシウム134が0.00052から0.0010ベクレル(注2)/キログラム、セシウム137が0.0016から0.0027ベクレル/キログラムでした。

  • 注2 ベクレル:放射性物質が放射線を出す能力を表す単位です。1秒間に崩壊する原子核の数を表します。

(2)県内の水道水中の放射性物質検査の実施

 県内の水道水は、厚生労働省が示している「今後の水道水中の放射性物質のモニタリング方針について」に基づき、各水道事業者(市町村等)が定期に実施しているほか、県食品安全検査センターにおいて、同所の水道水について毎週1回の頻度で検査を実施しています。平成23年3月の原子力発電所事故発生以降、継続して検査を実施していますが、平成23年6月3日に検出されたのを最後に、放射性物質は検出されていません。

(3)県営水道の監視体制

 企業局は水道用水供給事業者として4つの県営水道を運営しており、16市町村の経営する水道事業を通じて、県内の約160万人に水道水を供給しています。
 安全な水を供給するという事業者としての責務から、水質検査センター(太田市新田反町町)において、県営水道の浄水場ごとに、放射性ヨウ素、放射性セシウムについて週1回検査し、結果を公表しています。
 なお、平成25年度の測定では、放射性物質は検出されませんでした。

2 流通食品等

 県内に流通する食品の安全性を確認するために、放射性物質の検査を実施し、結果を速やかに情報提供しています。
 平成25年度は計120検体の検査を実施し、すべての検体で基準値を下回っていました。

3 県産農畜産物

(1)農産物

 県内で生産されている農産物については、定期的に放射性物質検査を実施し、安全性を確認しています。
 県内では、平成23年3月にホウレンソウ及びカキナが暫定規制値を超えたため、出荷規制の対象となりました。その後、検査によって安全確認されたため、平成23年4月には出荷規制は解除になりました。
 また、平成23年6月の検査で暫定規制値を超えたため出荷が制限されていた茶については、平成24年5月の検査で一部解除、さらに平成25年6月の検査で残りの地区の出荷制限が解除されました。
 平成25年6月以降、県内で生産されている農産物で出荷が制限されている品目はありません。
 平成26年度も引き続き、農産物の生産・出荷等の実態に応じて、出荷前又は出荷初期段階で定期的な検査を実施し、安全性を確認しています。

(2)牛肉

 平成23年7月8日に福島県産の牛肉から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことにより、牛肉の安全性への信頼性が揺らいだ状況となり、群馬県のみならず東日本各地で枝肉価格が暴落し畜産農家は大打撃を受けました。
 本県では県内のと畜場に出荷された肉用牛を対象として同年7月31日から県内で全頭検査を実施しています。これまで基準値を超過する牛肉が平成24年10月に1頭検出されましたが、その後は、飼養管理の徹底により、基準値を超える牛肉は検出されていません。
 平成25年度 検査頭数:14,133頭

(3)原乳

 原乳については、平成23年3月22日から県内全域が対象となるよう毎週2から3検体ずつ検査を継続しています。
 これまで、全ての検体が暫定規制値を大きく下回っています。
 平成25年度 検査回数:50回 検査数:140検体

(4)豚肉、鶏肉

 豚肉については月1回2検体ずつ、鶏肉については、四半期に1回2検体ずつ検査を行いましたが、いずれも未検出でした。

4 野生獣肉・きのこ

(1)野生獣肉

 県内各地で捕獲された野生獣肉については、環境調査及び食肉利用の面から検査を実施しています。なお、クマ・イノシシ・シカ及びヤマドリについては、原子力対策本部長から県内全域を対象として出荷制限の指示を受けています。
 また、検査結果については、県のホームページで公開しています。

(2) きのこ

 栽培されているきのこ類については、毎週定期的にモニタリング検査を行い、安全性を確認しています。また、安全なきのこ生産を推進するため、きのこ原木やほだ木等の生産資材を対象とする指標値(きのこ原木・ほだ木の放射性セシウム50ベクレル/キログラム、菌床等の放射性セシウム200ベクレル/キログラム)の確認検査等を実施しています。

5 各種飼料等

(1)平成25年産飼料作物、牧草等への対応について

 牛乳や肉類の安全性を確保するために、前年度に引き続き、永年生牧草及び稲わらについて、放射性物質検査を実施しました。その結果、いずれの品目においても、飼料の暫定許容値を超過した放射性物質は検出されなかったことから、飼料としての利用が可能となりました。
 なお、この他の飼料作物等については、前年度の検査結果から検査の対象とはなりませんでした。

(2)永年生牧草地の除染(草地更新)について

 飼料の暫定許容値を超過した牧草を生産した永年生牧草地について、飼料としての利用を再開するためには除染(草地更新)が必要であることから、平成25年度も、前年度に引き続き約54ヘクタールの除染(草地更新)を行いました。(前年度からの累計面積:245ヘクタール)。

(3)平成26年産飼料作物、牧草等への対応について

 牛肉や牛乳の安全性を確保するため、平成26年産永年生牧草及び前年度に除染(草地更新)を行った永年生牧草を対象に、放射性物質検査を実施しています。

6 農地土壌等

 県産農畜産物の安全性を確保し、生産者が安心して営農に取り組めるよう、平成23年4月から県内の農地土壌を対象とした放射性物質にかかる土壌調査に取り組んでいます。

(1)モニタリング定点調査

 モニタリング定点調査では、県内の農地土壌における放射性セシウム濃度の平成23年度以降の推移を把握するため、平成24年度から継続的な土壌調査を実施しています。平成25年度は、県内88地点で調査を実施したところ、各地点の濃度は21から777ベクレル/キログラム乾土の範囲で、平均すると170ベクレル/キログラム乾土でした。
 各地点の放射性セシウム濃度は、約2年半の間に平均39%減少していました。このことは放射性セシウムの崩壊による物理的減衰(約29%)以上に減少したことを示しています。その理由については、同一ほ場内のばらつきのほかに、風雨によるほ場からの流亡・流入などの自然要因や、ほ場管理の違いなど人為的要因の差による可能性が考えられます。
 モニタリング定点調査の結果は、県のホームページで公開しています。

(2)詳細調査(水稲)

 詳細調査(水稲)では、放射性セシウムの玄米への移行低減対策のひとつであるカリ施用の効果の検証を目的として、施肥指導を行うとともに、玄米中の放射性セシウム濃度と土壌・耕作管理状況等に関する詳細な調査を実施しています。平成24年度は県内55地点、平成25年度は県内49地点で調査を実施したところ、玄米中の放射性セシウム濃度は全ての地点で不検出または基準値(100ベクレル/キログラム)以下でした。
 玄米への放射性セシウムの移行低減については、既存の知見と同様にカリ施用の有効性を示し、水稲栽培後の土壌の交換性カリ含量が25ミリグラム/100グラム乾土以上では、玄米の放射性セシウム濃度はおおむね不検出でした。
 2年間の調査結果から、カリ肥料を施用し土壌の交換性カリ含量を適正に管理することで玄米の放射性セシウム濃度を十分に低く抑えられることが検証できました。詳細調査(水稲)の結果は、県のホームページで公開しています。

7 下水汚泥

 福島第一原子力発電所の事故に起因し、県が管理する流域下水道終末処理場(奧利根、県央、西邑楽、桐生、利根備前島、平塚)から発生する下水汚泥より放射性物質が検出されています。
 特に、事故直後の平成23年5月から6月に発生した下水汚泥から放射性物質が検出されたため、肥料化して一時保管した後、下水汚泥の取り扱いについて、国の方針が決定したことにより、平成24年10月末までに産業廃棄物として処分を完了しました。
 現在、流域下水道終末処理場から発生する下水汚泥には、微量な放射性物質が検出されていますが、セメント・肥料の原材料基準を満たしていることから、再資源化を行っています。
 なお、下水汚泥に含まれる放射性物質濃度については、県民への情報提供のため、平成23年5月からは約2週間に1回、平成25年10月からは検出濃度の低下により、月1回のペースで検査結果をホームページで公表しています。

平成25年度 検査結果

  • セシウム134:0ベクレル/キログラムから21ベクレル/キログラム
  • セシウム137:0ベクレル/キログラムから46ベクレル/キログラム

第3項 放射性物質を含む廃棄物の処理

1 指定廃棄物の処理

(1)指定廃棄物の現状

 指定廃棄物とは、平成24年1月1日に完全施行された放射性物質汚染対処特措法において、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故により放出された事故由来放射性物質についての放射能濃度(放射性セシウム134と137の合計値をいう。)が8,000ベクレル/キログラムを超える廃棄物であって環境大臣が指定したものをいいます。
 環境省によれば平成25年度末で、群馬県内には、浄水発生土が約672.8トン、下水汚泥焼却灰が約513.9トン、計約1,186.7トンが指定廃棄物として指定され、保管されています。これら指定廃棄物の処分は、国が責任をもって行うものとされています。

(2)指定廃棄物の処理方針

 指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内で行うこととされています。
 国により、各県毎に、指定廃棄物の最終処分場の候補地選定手順等の検討がされています。

2 放射性物質汚染廃棄物処理状況監視

 県では、放射性物質汚染対処特措法に基づく特定一般廃棄物処理施設である焼却施設からの排出ガス及び最終処分場からの排出水の放射能濃度の基準の適合状況を監視するため、対象となる処理施設において放射性物質の測定を行いました。
 測定は、焼却施設は9施設の排出ガスを、最終処分場は16施設の放流水を対象に行い、全ての施設において基準に適合していました。

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