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第2部第2章第3節 自然とのふれあいの推進

更新日:2015年10月8日 印刷ページ表示

第1項 ふれあいの「場」の確保

1 自然公園・森林公園

 自然とのふれあいに対する需要の高まりに伴い、自然公園に対する多様化した要求に応えるべく、公園利用と自然環境の保護・保全を考慮した施設の整備補修、維持管理を行っています。

(1)国立・国定公園

 4つの国立・国定公園(上信越高原・尾瀬・日光・妙義荒船佐久高原)における登山道や標識、避難小屋等の県有施設の管理・整備などを実施し、貴重な自然環境の保全と適正な利用に配慮しつつ、利用者の快適性向上に取り組んでいます。

(2)県立公園

 赤城・榛名・妙義公園では、公衆トイレの清掃や遊歩道の下草刈りなどについて地域住民が中心となって実施する地域密着型公園管理のほか、各種県有施設の管理・整備に取り組んでいます。
 県立公園は地域の貴重な観光資源となっていることから、その保護に努めるとともに、更なる利用を図っていきます。

(3)森林公園

 県内には7箇所の県立森林公園があり、森林浴や自然観察など、それぞれの公園で森林が持っている優れた自然環境を楽しむことができます。
 この森林公園をフィールドに、自然観察会や森林整備活動が催され、社会全体で森林を守る意識の醸成にもつながっています。
 このため、森林公園の園内整備はもとより、老朽化した施設や遊歩道の改修・修繕を行いました。
 また、引き続き良好な自然環境の保全に努めるとともに、多くの方に保健休養や学習の場を提供するため、各公園の魅力や特徴を生かした管理運営を行いました。

2 ぐんま天文台の運営

 ぐんま天文台は、群馬県人口200万人達成を記念して高山村に建設され、平成11年4月に開館されました。建設に伴い、県では美しい星空を守り将来を担う子供たちに伝えるために「ぐんま星空憲章」を制定しました。また、高山村では平成10年3月「村民の夜間の安全性や社会的活動に必要な照明を確保しつつ人工光の増加を抑制し、美しい星空と光環境を維持すること」を目的とした「光環境条例」を制定し、観測しやすい星空の維持に村ぐるみで協力いただいています。天文台でも駐車場を600メートル 離れた場所に設置するなど周辺の自然環境・光環境に配慮しながら、管理運営を行っています。
 恵まれた光環境の中、多くの県民が「大型望遠鏡による観望会」「流星群観察会」などの本物を体験できるイベントを通して自然と親しむことができます。また、県内の学校の天文分野の授業に対して、天体観察など本物とふれ合う体験を重視した支援を継続しており、好評を得ています。ぐんま天文台は直接体験の中から宇宙の不思議さに触れ、天文現象に興味をもち、科学的に考える機会がもてる施設です。平成26年度の来館者は27,976人でした。

(1)ボランティアによる星空案内

 「星空案内みちくさツアー」をはじめ、「アンドロメダ銀河を見よう」、「バレンタインはペア星を見よう」など、天文台ボランティア(総勢38名)は多くの自主企画を運営しています。平成26年度は時期を変えて年間14回企画し、合計で約1200名の参加がありました。道具も使わずに直接星空を眺めることは、天文事象はもちろん、身近な自然への興味・関心を一層深めたり、広げたりすることの第一歩です。そして、さらに詳しく調べたり、学んだりするために機器の活用へと発展していきます。
 また、天文台でのボランティア活動(より多くの来館者に星空に興味をもってもらえるよう支援する活動)は、自身の自己実現の場です。そして、この活動により、生涯にわたって学ぶ意欲を高めたり、継続したりしようとする意欲が芽生え、それがやがて生涯学習へと発展します。ぐんま天文台はそのボランティア活動を支援しつつ、事業に協力いただいています。

(2)昼間の星の観察会

 平成21年度から始めた土日祝日の11時30分から12時の天候のよい場合に実施しているミニイベントです。より多くの方々に星を観る機会を提供しようと開始しました。平成26年度の参加者は約700人でした。
 「星は夜にしか見えない」と思い込んでいたイベント参加者にとっては、実際に青い空に浮かぶ星が見えることは衝撃的です。そして、その体験がやがて「どうして昼間に星が見えるのか」と疑問に変化していきます。この過程が宇宙に関する興味・関心を広げ、さらには学びへのきっかけとなっていきます。また、昼間に星が見える理由を考えたとき、望遠鏡の「光を集める」働きを実感でき、望遠鏡等の機器を活用した観測についても興味・関心を深めていくことにつながります。
 このようにぐんま天文台では、かかわる人すべてに対して自然とふれあう場を提供しています。

3 ぐんま昆虫の森

 ぐんま昆虫の森は、平成17年8月に桐生市新里町に開園されました。敷地面積約45ヘクタールの園内には、雑木林や棚田、小川、畑など様々な環境を含む里山が再現され、身近な昆虫を観察することができます。また、昆虫観察館では、様々な昆虫に関する写真や標本、生体の展示に加え、クラフト体験を行っています。
 この施設では、緑あふれる里山の自然環境の中で、子どもから大人までの幅広い世代が、昆虫をはじめとする様々な動植物とふれあい、生命、自然、環境について学習することができます。
 自然と人間が調和した新しい社会「自然と人にやさしい群馬」の創造に寄与するための施設です。
 平成26年度の入園者は、99,838人でした。

(1)学校利用の促進

 理科や自然・環境についての学習を行う小学校等を支援するため、教員向け利用説明会や個別の下見などに対応するほか、「学校団体利用の手引き」を配布しています。また、学校利用に際して、野外に観察ポイントを設置するなど、学習ニーズに合わせたきめ細かなプログラムの相談に応じています。その結果、平成26年度は、487団体、30,494人の利用がありました。

(2)県民参加型事業

 昆虫の森では、多くの県民が整備や管理運営に参画できる県民参加型事業として、様々な取り組みを行っています。
 自然観察の解説や昆虫飼育及びクラフト体験指導、田植えや稲刈りなどをボランティアの協力により実施しています。
 平成26年度は、民話や養蚕、もちつき体験などを地元有志に、かやぶき民家の維持管理を地元老人クラブに依頼しました。また、園内の一部を株式会社ミツバ(桐生市)と協定を締結し、下草刈りなどの森林整備活動を実施しました。さらに、地元商工会主催のイベント、県内大学の吹奏楽部や地元有志の音楽会などを開催しました。

4 自然史博物館の運営

 自然史博物館は、豊富な展示物と映像、多くのジオラマ、タッチ式の情報端末等を用いて地球の生い立ちや生命の進化の歴史、群馬県の豊かな自然と現状を紹介しています。また、子どもから大人まで、楽しみながら自然について学べる国内でも有数規模を誇る参加体験型博物館です。さらに、県内の自然や古環境を学術調査し、その成果を研究論文やウェブ、講座等を用いて公開しています。加えて、県民やマスコミ等からの問い合わせにお
答えする機関でもあります。平成26年度の来館者数は223,515名でした。

(1)常設展

 「地球の時代」、「群馬の自然と環境」、「博物学者の部屋」、「自然界におけるヒト」、「かけがえのない地球」の5つのコーナーで計3,393点の標本を展示しています。特に、「群馬の自然と環境」では、群馬の自然を標高別に4つの地域に分け、代表的な生態系を、多くの動植物や、地質・岩石等の標本とともにジオラマで紹介しています。また、「群馬県レッドデータブック」をもとにした絶滅種・絶滅危惧種のラベルや、特定外来生物等のラベル
を色分けして表示し、群馬の生物多様性の現状をわかりやすく説明しています。さらに、高層湿地の貴重な自然が残されている尾瀬については、ジオラマや写真だけでなく、尾瀬シアターで映像を駆使して紹介しています。「かけがえのない地球」では、自然環境を見つめ、守り、子孫に伝えることの大切さが学べるよう環境学習に特化した展示を行っています。
 また、第45回企画展終了後に、同企画展で委託製作したザトウクジラの胸ビレ(前肢)実物大模型をペルー産ナガスクジラ類全身骨格化石の奧に移設しました。

(2)企画展等の実施

 平成26年度は、「むし 虫 ウォッチング2・潜入 昆虫ワールド」「闇夜の動物たち」「根も葉もない植物の話」「カラー魚拓展・山本龍香の世界」を開催しました。
 「むし 虫 ウォッチング2・潜入 昆虫ワールド」では、外骨格をもった節足動物の仲間で、世界の様々な気候、環境に適応している種多様性が非常に高い昆虫について紹介しました。手のひらからあふれる大きさの外国産昆虫を多数展示し、身近な昆虫であるカブトムシやアゲハを100倍の大きさにした模型を配置し、人と昆虫の大きさが逆転する世界を創り出しました。また、飛ぶ瞬間を捉えたスーパースロー映像、特殊なカメラを用いて撮影した巨大昆虫の世界を紹介しました。
 「闇夜の動物たち」では、昼行性な活動を行っている我々ヒトが、普段目にすることのない夜に行動する動物たちの生活を紹介しました。夜の闇にはヒトが測り知ることのできない世界があります。黄昏時から夜明けまで、闇夜に生きる動物たちの生活を紹介し、自然への知見を深める機会を提供しました。
 「根も葉もない植物の話」では、動物とは大きく異なる体制の見慣れた存在である植物について紹介しました。植物は形態的な可塑性が高く、しばしばクローン成長を行うため、その形態は千変万化で、奇想天外な形態を示すものや、ある器官が別の器官の役割を代替することも多いのです。本展示では、珍奇な形態をする植物や身近な植物を通して、形を変えることによって幅広い環境へ適応できるようになり、多様性を高めていった過程を解説しました。

(3)情報システム

 自然に関する情報発信センターとして、博物館に蓄積されている豊富な情報を館内の情報コーナーやWebを通じて提供しています。また、世界の博物館と情報を共有するネットワークに参加し、収蔵資料の情報を他の博物館や研究者に提供しています。

(4)調査研究

 群馬の貴重な自然を調査し県民に紹介するため、県内をいくつかの地域に区分して、職員の専門分野を活かした調査・研究を実施しています。平成26年度は、平成23年度から25年度までの「上野村地域総合学術調査」を継続し、上野村での事象を考察する上で必要不可欠な近隣地域の調査を「奥多野及び周辺地域学術調査」として行いました。担当分野別調査研究19本、大学や専門機関等との連携による調査研究40本等、県内を中心に多方面で調査研究を進めています。調査研究の公開としては、「群馬県立自然史博物館研究報告19号」の発行、研究論文18本、学会発表20本等があります。

(5)教育普及事業

 野外へ出て豊かな自然を観察する「ファミリー自然観察会」や、地域の自然や科学をテーマとした「講演会」、県内の遠隔地で博物館資料を展示する「移動博物館」等、多くの事業を実施することで、県民の方々に自然に親しむ機会を提供するとともに、人と自然との関わりを理解し、自然を愛する心を育む場を提供しています。また、小中学生を対象にした「ミュージアムスクール」や、高校生を対象とした「高校生学芸員」等において、野外調査を基本とした活動をとおして、自然に関心を持つ次世代の人材育成を行っています。平成26年度は、教育普及事業および学校への支援の総計で、延べ55,966名の参加者を得ています。

第2項 ふれあいの「機会」の提供

1 森林環境教育の推進

 森林の持つ公益性や多面的機能に対する県民の関心、森林や環境を大切にする意識を高めるため、森林環境教育を推進しています。憩の森・森林学習センターでは、子供から大人まで幅広い年代を対象にしたイベントや講座などを年間を通して開催しました。
 また、県立森林公園等をフィールドにした県民参加型の森林環境教育イベントの企画プログラムを募集し実施する「森の体験ふれあい事業」を行い、森林の特徴や機能について、幅広く学ぶ場を提供しました。

2 利根川水系上下流交流事業

(1)流域連携

 水資源を安定的に確保するための水源林の保全、水源地域対策、水質保全などの課題は、流域全体で取り組んでいかなければ解決できません。
 本県は、日本一の流域面積を持つ利根川の上流県「水源県ぐんま」として、下流域の自治体や住民と協力・連携しながらこれらの課題に取り組んでいます。

(2)利根川水系上下流交流事業

 水源地域への理解を深め、水の大切さについて考えてもらうため、本県と東京都とで利根川水系上下流交流事業を行っています。その中のひとつ「夏休み水のふるさと体験会」では、都県の親子が水源地域へ訪問して、ダムや森林の役割を学びながら、上流(群馬県)と下流(東京都)との交流を促進しています。

3 グリーン・ツーリズム推進

 農村地域に滞在しながら、「自然、文化、人々との交流」を楽しむグリーン・ツーリズムを推進し、都市住民が農村生活体験を通じて自然とふれあい、同時に農村地域の活性化にも繋がるような機会づくりに取り組んでいます。
 平成26年度は5回のグリーンツーリズム・キャラバンを実施し、都市と農村の交流機会の充実を図るとともに、地域連携システムの整備や人材育成講座の開催により、農村地域の受け入れ体制整備を支援しました。

4 食農体験

 次世代を担う子どもたちに、農業や食料の大切さを伝え、賢い消費者づくり、将来の農業の担い手づくりにつながる「食農教育」に取り組んでいます。

(1)食農教育サポート事業

 毎年、食農教育フォーラムを開催し、「食」と、それを支える「農」の大切さを伝えています。
 また、学校給食への地場産(県産)農産物の利用拡大を進めるため、地場産農産物の利用促進策に関する検討や地場産農産物を利用したメニュー集の利用促進に努めています。

5 水生生物とその生息環境の理解促進

 川や湖沼などの水辺環境は単に水がある場所ではなく、たくさんの植物や動物など生き物が生息し育つ場であり、子供達が水生生物と接する絶好の機会を与えてくれるとともに、生態系を理解する上でも貴重な学習フィールドといえます。
 しかしながら、子供達が日常生活の中で川や湖沼へ行って自然に親しむ機会は極端に少なくなっており、水辺環境での遊びの中で自然発生的にできていた環境教育が衰退してしまうことが心配されています。
 そこで、県では漁業協同組合や市民団体などが行っている水生生物の観察会や希少魚等の保護活動、子供釣り教室など子どもたちに水辺環境と接する機会を与え、水生生物とその生息環境の理解促進に役立つ活動を支援しており、平成26年度は16箇所で活動が実施されました。

第3項 ふれあいを深めるための「人材」の育成

1 青少年の自然体験活動推進

 北毛青少年自然の家は、昭和43年4月、県下4番目の青年の家として設置され、青年の家と少年自然の家の機能を併せ持つ青少年健全育成施設として「北毛青年の家」の名称で運営されてきました。
 施設は、子持山・小野子山の鞍部に位置し、約15ヘクタールの広大な敷地と300名を収容する教育キャンプ場・体育館・総合グラウンド・野外施設等を有しています。豊かな緑に恵まれた自然環境の中で、野外活動や登山、オリエンテーリング、各種スポーツなどの体験に最適の場です。
 妙義青少年自然の家は、昭和46年8月に「妙義少年自然の家」の名称で設置されました。妙義山の自然林の中に位置し、豊かな自然に囲まれ、四季をとおして野鳥をはじめ多くの動植物の姿が見られます。近くには、日本三奇勝の一つに数えられる石門群のほか、妙義神社、さくらの里、富岡市立妙義ふるさと美術館や自然史博物館などがあります。
 東毛青少年自然の家は、昭和54年秋に「東毛少年自然の家」の名称で開所しました。大間々扇状地の中に連なる八王子丘陵のほぼ中央に位置し、アカマツ、コナラ、クヌギ林に囲まれた中にあります。八王子丘陵は、古生層を始め、金山流紋岩、藪塚凝灰岩などから構成されており、動植物の種類も多く自然観察に適しています。近くには、茶臼山ハイキングコース、スネークセンター、石切り場、北山・西山古墳、岩宿遺跡などの学習環境にも恵まれ、多くの団体が利用しています。

(1)自然体験事業

 各施設とも前述の資源を活かした自然体験事業を展開しています。例えば、野外炊事、テント泊等の体験活動や登山、動植物観察、星座観察等の自然体験活動があげられます。
 これらの活動を通して、子どもたちの感受性や自主性、社会性を育てています。また、親子で取り組む自然体験事業では、親子の協働作業・共通体験により親子の絆を深めたり、自然体験不足といわれて
いる保護者世代への自然体験活動の普及・啓発を図っています。
 また、夏季休業中には県内の小中学生を対象に、3泊4日の長期キャンプを開催しています。これは、子どもたちの社会性や生きる力を育むため、異年齢集団を編成し、テント泊や野外炊事等の生活プログ
ラム、動植物観察や冒険プログラム等を実施しているものです。

平成26年度主な主催事業
施設 概要
北毛青少年自然の家
  • 親と子の紅葉山歩き
  • 親と子の星空の夕べ
  • 北毛ふれあい塾(餅つき、焼まんじゅう等)

妙義青少年自然の家

  • 野外料理とテント泊
  • しめ縄づくりとおきりこみづくり
  • 野焼きバウムクーヘンづくり
東毛青少年自然の家
  • 親子キャンプ
  • 焼きまんじゅうづくり
  • 石がま焼きピザづくり

3所

  • ぐんまキッズアドベンチャー(長期キャンプ)
  • 自然の家オープンデー

(2)ボランティア事業

 ボランティア事業は、「青少年ボランティア体験」と「青少年ボランティア講座」にわけられます。「青少年ボランティア体験」は青少年を対象に、自然の家でボランティア活動に取り組むものです。施設設備や自然環境の整備や手入れ、施設利用者への指導補助、主催事業における指導や補助をとおして青少年の社会性を涵養しています。
 「青少年ボランティア講座」では、自然体験活動をとおして、地域社会の一員として、温かで住みよい地域づくりや地域を支える人づくりに貢献する青少年を育成しています。
 平成26年度実績

  • 青少年ボランティア体験 561名
  • 青少年ボランティア養成 56名

(3)青少年自立支援事業

 青少年自立支援事業では、様々な要因により社会とうまく関われない青少年に、自然体験や生活体験等様々な体験活動の場を提供し、忍耐力や協調性、社会性を育むとともに心の居場所づくりを行っています。また、保護者への支援も併せて行っています。

 平成26年度実績 502名

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