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第2部第3章第1節 公益性の高い森林の保全

更新日:2016年10月20日 印刷ページ表示

主な指標と実績

  • 保安林面積(累計)233,782ヘクタール
  • 治山事業施工面積 52ヘクタール
  • 森林経営計画区域内の林道・作業道新設延長 347キロメートル(平成23年度からの累計)
  • 守るべき松林における松くい虫被害量(被害材積)582立方メートル
  • 森林ボランティア団体会員数 5,046人

第1項 公益的機能の高い森林づくり

1 間伐等の推進

 森林は、木材や多様な林産物を生産しながら、水源の涵(かん)養、土砂の流出や崩壊の抑制、二酸化炭素の固定、生物多様性の保全、防風・騒音緩和など生活環境の保全、癒やしやレクリエーションの場を提供するなど、多様な公益的機能を発揮しています。
 スギやヒノキなどの人工林では、植栽後の樹木の成長を促すための下刈りや、樹木の成長に応じて生育密度を調整する「間伐」などの施業を適切に行うことにより、木材としての利用価値を高めるとともに、森林の健全性が高まり、公益的機能の高度発揮が期待されます。
 しかしながら、適切に間伐が行われていない森林では、本数が過密になって林内が暗くなり、下層植生が衰退して防災機能や生物多様性の低下を招くほか、樹木の生育不良により、木材生産機能をはじめとする様々な機能が低下してしまいます。
 県では、森林所有者等が実施する間伐等の施業実施を支援しているほか、森林環境の保全に係る県民税均等割の超過課税による「ぐんま緑の県民税」制度を平成26年度から導入し、放置されて荒廃した森林の間伐促進など、公益的機能の高い森林づくりを推進しています。

2 治山事業の推進

 平成27年7月20日、みなかみ町では1時間に100ミリを超える雨量が観測されるなど、近年、台風の大型化や局地的な集中豪雨の頻発により、山地災害の発生する危険性が高まることが懸念されています。
 治山事業は、森林の維持造成を通じて、森林の持つ公益的機能を発揮させることにより、山地に起因する災害から県民の生命・財産を保全するとともに、水源の涵(かん)養や生活環境の保全等を図るうえで重要な事業であり、県民の安全・安心な暮らしの実現のために必要不可欠です。

(1)治山施設による山地災害防止・軽減

 荒廃した山地や荒廃のおそれの高い保安林、地すべりが発生した地域等において、治山事業を実施しています。荒廃渓流の土砂流出を抑制するための治山ダム工、崩壊斜面を安定させるための土留工、地すべりを防止するための施設等を設置することにより、公益的機能の高い森林づくりを進め、荒廃山地の復旧及び山地災害の予防に努めました。
 平成27年は7月から9月にかけて台風や豪雨等によって県内で20箇所の山地災害が発生しましたが、緊急性が高い8箇所において復旧整備を行いました。その他の箇所についても計画的に事業を実施する予定です。

3 保安林の適正な管理・保全・指定の推進

 水源の涵(かん)養、山地災害の防止など、私たちの暮らしを守るうえで特に重要な役割を果たしている森林を、国や県が保安林に指定しています。保安林では、その働きが損なわれないように、立木の伐採や土地の形質変更を制限したり、治山事業によって適切に手を加えるなど、保安林としての機能を維持・増進するために必要な管理を行っています。
 平成27年度末現在、本県の保安林面積は23万ヘクタールで、林野面積の約55%、県土面積の約37%を占めています。

4 林地開発許可制度の適正な運用

 保安林以外の民有林については、1ヘクタールを超える開発行為に対する許可制度を通じて森林の土地の適正な利用の確保を図っています。
 また、保安林を含めた民有林について森林保全巡視指導員及び森林保全推進員(ボランティア)による森林パトロールを実施し、各種森林被害の予防及び森林被害等に対する適切な応急措置を行うとともに、森林所有者や入山者に対し森林の適切な保護や管理について指導を行っています。

第2項 持続利用可能な森林づくり

1 利用間伐の促進

 間伐を適切に実施することは、森林の健全性を高め、森林の持つ多様な公益的機能を高度発揮させるうえで重要です。
 また、間伐の際に発生する間伐材を運び出して利用することにより、樹木が吸収した二酸化炭素を木材として固定し続けることができるだけでなく、間伐材を販売して中間収入を得ることにより、森林所有者が森林を手入れする費用の負担を軽減し、その後の適切な森林管理の継続と木材資源の循環利用につなげていくことができます。
 間伐で伐った木を運び出すにはコストがかかるため、森林の状態や地形・道路条件等によっては採算が合わず、間伐材を森林内に残置することも少なくありません。そのため、間伐を行う森林をなるべく集約してまとめ、林内路網の整備や高性能林業機械の活用などとあわせて施業の効率化を図ることにより、利用間伐を促進しています。
 平成27年度に中間見直しを行った県の森林・林業基本計画(改定版)において、「林業県ぐんま」の実現を加速するため、平成31年度に年間2,000ヘクタールの利用間伐を目標面積として掲げ、森林所有者の林業経営支援や施業集約化の促進、間伐材の用途拡大などに取り組んでいます。

2 森林経営計画区域内における林道・作業道の整備

 間伐面積の8割以上が切捨間伐であり、伐採した木が林内に放置されている状況です。県では森林環境の保全と森林資源の適正利用を図るため、木材の搬出を伴う森林整備が実施される森林経営計画区域内の林道・作業道整備を推進しています。

(1)林道・作業道の整備

 地域資源である県産木材を利用することは、地域の森林が再び育成される森林循環へとつながります。そして健全に育成された森林は、水源の涵(かん)養や県土の保全などの公益的な機能を発揮して人々に多大な恩恵をもたらします。
 県産木材の生産と利用を進めるには、木材運搬のコストを下げるための林道や作業道が必要不可欠です。
 林道は林業関係者や森林のレクリエーション利用等、森林とのふれあいを求める人々が通行する恒久的な道路で、木材生産や森林整備を進める上で幹線となるものです。
 作業道は、木材生産や森林整備のために林業機械が走行する道路で、簡易な構造で整備が行われています。

3 集約化による計画的かつ効率的な施業の推進

 民有林では、5ヘクタール以下の所有者が90%を占めるなど、森林の所有規模は小さく、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を行うことは困難な状況です。そこで、効率的に施業を行うことができ、コストダウンを図ることが可能な集約化施業を推奨しています。集約化施業は、林業事業体などが隣接する複数の森林所有者から路網の作設や間伐等の施業を受託し、一括して作業を行う方法です。
 集約化することで、一作業箇所の事業量が増加し、機械化による作業の効率が上がることになります。集約化施業を計画的かつ効率的に行うためには、高性能林業機械の導入が欠かせません。県では、高性能林業機械の導入支援をしています。
 平成27年度の調査では、168台の高性能林業機械が導入されて、効率的な施業が進んでいます。

第3項 森林を支える仕組みづくり

1 森林病害虫、気象害、林野火災対策

(1)森林病害虫

 本県の森林に大きな被害をもたらす森林病害虫として、アカマツやクロマツが枯れる「マツ枯れ」と、コナラやミズナラなどが枯れる「ナラ枯れ」があります。「マツ枯れ」は、マツノマダラカミキリが運んでくるマツノザイセンチュウが、「ナラ枯れ」はカシノナガキクイムシが運んでくるナラ菌が、元気なマツやナラに入り込んで枯らしてしまう病気です。
 県内のマツ枯れ被害は、昭和53年頃から発生し、平成4年頃の被害が最も多く、現在でも赤城山や太田の金山、館林の多々良沼周辺などで多く発生しています。
 被害にあったマツは、そのままにしておくと、マツノマダラカミキリが増えたり、枯れたマツが風で倒れる危険もあるため、できる限り伐採しています。
 また、マツ枯れ跡地には、シノなどが生えてしまうため、自然に元の姿に戻ることはありません。
 このように荒廃した森林は、野生動物が隠れやすくなるため、森林被害の増加も考えられます。
 できるだけ早く、次の世代の木を植えて森林を再生する必要があります。
 最近では、ボランティアによる植栽も行われるようになりました。今後も市町村や森林ボランティアと協力して、マツ枯れ被害が広がらないよう、またマツ枯れ跡地の森林の再生が進むよう努めます。
 ナラ枯れ被害は、平成22年度にみなかみ町で初めて確認されました。平成26年度には県内での被害が一旦終息しましたが、平成27年度に再発が確認され、予断を許さない状況です。
 シイタケ栽培の盛んな本県にはコナラ林がたくさんあります。ドングリの木でもある大切なナラが無くなってしまわないよう、被害の発生状況などの調査を行い、早期発見と被害拡大の防止に努めています。平成27年度の守るべき松林における松くい虫被害量(材積)は582立方メートルでした。

(2)気象害

 異常気象と呼ばれる大規模な気象災害が、いつの間にか「当たり前」になりつつあります。
 本県でも、夏の台風や集中豪雨による水害や風害、冬の寒風害などが毎年のように発生しています。
 被害が発生した森林は、そのままにしておくと大変危険です。少しでも早く元の姿に戻るよう、被害木を整理して植え直し、森林の再生に努めています。

(3)林野火災対策

 平成27年の林野火災発生件数は16件で、平成26年に比べ半減しましたが、過去5年間の平均発生件数は年間30件、被害面積は平均約48ヘクタールで横ばいの傾向にあります。
 季節的には、湿度の低い1月から5月にかけて多く発生しており、原因が特定できないものを除くと、たき火やたばこの火の不始末など、人為的なものが出火原因のほとんどを占めています。
 このため、県では、予防対策として、山火事予防運動実施期間(3月1日から5月31日まで)に、巡視活動、広報車によるパトロールと注意喚起、山火事用心のポスターの掲示などを関係機関と連携を図りながら実施しています。

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