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第2部第4章第3節 有害化学物質による環境リスクの低減

更新日:2018年11月13日 印刷ページ表示

環境基準達成率

  • ダイオキシン類 大気 100.0%(20/20地点)
  • 公共用水域(水質)100.0%(12/12地点)
  • 公共用水域(底質)100.0%(9/9地点)
  • 地下水質 100.0%(7/7地点)
  • 土壌 100.0%(9/9地点)

第1項 有害化学物質対策

1 ダイオキシン類対策【環境保全課】

(1)ダイオキシン類の現状

「ダイオキシン類対策特別措置法*注1」では、ダイオキシン類をポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル*注2(コプラナーPCB)の総称と定義しています。
ダイオキシン類は、意図的に製造する物質ではなく、焼却の過程等で発生する副生成物です。環境中に広く存在していますが、その量は非常にわずかです。
私たちは、1日平均で体重1kg当たり約0.70pg-TEQ*注3のダイオキシン類を摂取していると推定されており、その大部分は食品経由といわれています*注4。この水準はダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI*注5)(体重1kg当たり4pg)を下回っているため、健康への影響はないと考えられます。
※1pg(ピコグラム)は、1兆分の1gに相当します。例えば、東京ドームを水でいっぱいにして角砂糖1個(1g)を溶かしたとき、その水1mlに含まれている砂糖の量がおよそ1pgです。

「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づく規制の結果、ダイオキシン類の排出量は着実に減少しています。国内の事業場からの総排出量(平成28年)は、平成9年比で約99%削減され*注6、環境基準の達成状況も非常に高い状態が継続しています。
県では、ダイオキシン類による汚染を防止し、環境リスクの低減を図り、安全な生活環境を確保するため、国が推進する対策等を勘案しながら1発生源対策、2ごみ減量化・リサイクル、3環境実態調査を総合的に推進しています。

(2)環境中のダイオキシン類調査結果

「ダイオキシン類対策特別措置法」により、大気、水質、水底の底質及び土壌の環境基準が定められています。平成29年度の県内の調査結果は表2-4-3-1のとおり(表は省略)です。全ての地点で環境基準未満でした。

(3)「ダイオキシン類対策特別措置法」の届出状況・立入検査

平成30年3月末日現在、本県における本法の届出状況は表2-4-3-2のとおり(表は省略)です。大気基準適用施設では、全体の約9割を廃棄物焼却炉が占めています。
県では、対象施設が適法に運用されているか確認するため、随時、立入検査を実施しています。平成29年度は大気基準適用44施設・水質基準対象3施設に立入検査を行い、その結果、2施設に対して口頭で改善指示を行いました。(前橋市、高崎市実施分を含む。)

*注1 ダイオキシン類対策特別措置法:平成11年7月12日制定、同年7月16日公布、平成12年1月15日より施行されました。
*注2 コプラナーPCB(コプラナーポリ塩化ビフェニル):ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
と類似した生理作用を示す一群のPCB 類です。「ダイオキシン類対策特別措置法」でいうダイオキシン類に含まれます。
*注3 TEQ(毒性等量Toxicity Equivalency Quantityの略):ダイオキシン類の中で最も毒性が強い2,3,7,8-TCDDの毒性を1とし換算した毒性等価係数(TEQ)を用いて毒性を評価するためのものです。
*注4 出典 日本人における化学物質のばく露量について(2017)(環境省環境保健部環境リスク評価室)
*注5 TDI(耐容一日摂取量 Tolerable Daily Intakeの略):人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される
一日あたりの摂取量であり、世界保健機構(WHO)や各国において科学的知見に基づいて設定されています。
*注6出典 ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)平成29年3月(環境省)

(4)施設設置者による測定結果

 施設設置者は、排出ガス、排出水及び燃え殻等のダイオキシン類による汚染状況について、年1回以上測定を行い、結果を県に報告することが義務付けられています。未報告の施設については、速やかに報告するよう指導しています。なお、県では県に報告された測定結果をウェブサイトで公表しています。
公表サイト:ダイオキシン類測定結果

2 アスベスト対策【環境保全課、保健予防課】

 アスベスト(石綿)は、天然の鉱物繊維で、熱や摩耗に強く、酸やアルカリにも変化しにくいという特性と経済的に安価であったことから、高度経済成長期をピークとして建築材料や工業製品などに幅広く大量に使用されてきました。
 しかし、アスベストの極めて微細な繊維を吸い込むことにより、人体に深刻な影響を与えることが確認されたため、現在では全面的に製造・使用等が禁止されています。また、平成18年3月には、国においてアスベストを原因とする健康被害者に対する救済制度が創設されました。
 アスベストを原因とする健康被害については、アスベストを吸い込んでから自覚症状等をきっかけとして発見されるまでの期間が非常に長いため(例:中皮腫では20から50年)、今後も長期的な視野に立って被害者の早期発見及び救済を図っていくことが必要です。
 また、環境保全の観点からは、今後、アスベストを使用した建築物の老朽化が進行し、建て替えの時期を迎えるため、解体時の飛散防止対策の徹底と解体に伴って大量発生が予測されるアスベスト廃棄物の処理施設の確保などが重要な課題となっています。
「大気汚染防止法」上、アスベストは特定粉じんとして扱われ、これを発生する施設として9種類の施設が届出の対象となっています。しかし、現時点でこれに該当する施設は県内に存在しません。
また、そのほかに、アスベストを含む建築物等の解体や補修の作業についても特定粉じん排出等作業として、規制されています。

(1)国の対応

国は、アスベストによる健康被害を防止するために1970年代から「労働安全衛生法」、「大気汚染防止法」及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などの関係法令による規制を段階的に強化してきました。平成18年には、「労働安全衛生法施行令」の改正により、アスベスト含有率0.1重量%超の製品の製造・使用・譲渡等を禁止し(代替困難な製品を除く。)、平成24年には一部製品に対する猶予措置も撤廃し、アスベスト0.1重量%超の製品の製造等が全面禁止となりました(平成30年に石綿分析用試料等に限り製造等禁止物質から除外)。また、平成26年には、「大気汚染防止法」及び「石綿障害予防規則」が改正され、建築物等の解体時における事前調査が義務化されるなどアスベストの飛散防止対策も強化されてきました。

(2)県の対応

県は、関係課や地域機関において、県民等からのアスベストに関する相談や質問に対応するとともに、国が創設した健康被害者に対する救済制度の申請受付を行っています。
また、解体事業者におけるアスベストの飛散防止対策を徹底するために、平成29年度から解体現場の立入検査を強化しました。さらに、解体事業者の会社事務所も訪問し、法令事項の遵守について指導・啓発を行っています。

(3)県内のアスベスト解体工事

吹付けアスベスト等飛散性アスベストが使用された建築物等を解体・改造・補修する場合は、事前に「大気汚染防止法」上の届出の必要があります。県では、この届出のあった全ての現場に立ち入り、飛散防止対策が適正に行われていることを確認しています。
なお、平成29年度は84件の届出がありました(政令市である前橋市及び高崎市への届出27件分を含む。)。

(4)大気中のアスベスト濃度

県内の大気環境中のアスベスト調査に係る総繊維数濃度について一般環境2地点で測定を行いました。どちらの地点も1本/Lを下回っていました*注7。

*注7 本調査は、「アスベストモニタリングマニュアル(第4.0版)」に基づいて行われており、総繊維数濃度が1本/Lを超過した場合は、電子顕微鏡で物質を同定し、アスベスト繊維数濃度を求めることとされています。
*注8 特定粉じん発生施設を設置する工場・事業場の敷地境界基準として石綿濃度10本/Lが定められています。

3 食品の安全確保【食品・生活衛生課】

食品の中には、食物連鎖を通じて蓄積されたもの、環境に由来して食品に残留したもの、本来その食品を組成するもの等、様々な化学物質などが含まれる可能性があります。
こうした化学物質などの中には、一定量を超えて摂取し続けると人の健康に危害をもたらすものがあり、これを防ぐために、「食品衛生法」により様々な基準が設けられています。

(1)流通食品の安全検査の実施

県内で販売・消費されている食品の検査を実施することにより安全の確認を行い、検査結果は速やかに情報提供しています。平成29年度は放射性物質検査102検体、重金属検査50検体、その他14検体、計166検体の検査を実施し、全ての検体で「食品衛生法」の基準に違反するものではありませんでした。

4 シックハウス対策【住宅政策課】

新築やリフォームした住宅に居住する人の化学物質過敏症がシックハウス症候群として社会問題化したことから、平成14年7月に「建築基準法」が改正されました。これに伴い、下記資材の使用制限等が義務付けられ、新築や増築する建物はこれに対応しています。

  1. クロルピリホス(シロアリ駆除剤)使用禁止
  2. ホルムアルデヒド(建材等接着剤)使用制限
  3. 24時間換気設備の設置

また、厚生労働省により屋内汚染物質として、ホルムアルデヒドを含む13種の揮発性有機化合物の室内濃度指針値が個別に設定されています。
改正法施行後10年以上が経過し、ホルムアルデヒドの使用制限等は着実に進んでいますが、24時間換気設備の有効性は継続して情報提供していく必要があります。
県では、群馬県住宅供給公社内の「ぐんま住まいの相談センター」において、シックハウス対策を周知するとともに、屋内の化学物質を測定・分析する機関を案内しています。

第2項 有害化学物質の適正管理の推進

1 化管法に基づく情報の収集・公開【環境保全課】

(1)PRTR制度の背景

現在の私たちの生活は、多種多様な化学物質を利用することで成り立っています。
それら化学物質は、人や生態系に悪影響を及ぼすおそれがありますが、一つ一つの物質に個別の基準を設け、規制するには限界があります。そのため、平成11年に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律*注9」が公布され、PRTR制度が導入されました。

(2)PRTR制度の目的と特徴

PRTR制度の主な目的は、次の2点とされています。

  • 事業者による化学物質の「自主的な管理」の改善を促進する。
  • 環境保全上の支障を未然に防止する。
    この制度は、従来からの手法である「規制」は最低限とし、あくまで事業者の「自主的」な取組によって化学物質による環境リスクの低減を図る点が特徴となっています。

(3)PRTR制度の仕組み

 対象となる化学物質を製造又は使用等している事業者は、大気、公共用水域、土壌及び事業所内埋立など環境中に排出した化学物質の量と廃棄物として処理するために事業所外へ移動させた化学物質の量を自ら把握し、県(高崎市内の事業者にあっては高崎市)を経由して国に毎年届け出ます。
 国は事業所からの届出データを整理・集計するほか、届出要件に該当しない事業者や届出対象となっていない家庭や農地、自動車などから排出されている対象化学物質の量を推計し、両データを併せて公表します。これらのデータを利用して、県民、事業者、行政が、化学物質の排出の現状や対策の内容、進み具合について話し合いながら、協力して化学物質対策を進めていくことが、期待されています。
 なお、公表されたデータは、次のホームページから入手することができます。
[環境省]
PRTRインフォメーション広場<外部リンク> http://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html
[経済産業省]
化学物質排出把握管理促進法<外部リンク> http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/

(4)排出量・移動量の集計結果

 平成30年3月に平成28年度分の排出量等のデータが、国から公表されました。
ア 届出データ
a 届出事業所数
 県内の届出事業所数は、前年度より2件多い782件となり、全国の34,668件の約2.3%を占めています。そのうち約4割をガソリンスタンド等の燃料小売業が占めていました。(全国と同傾向)
 b 届出排出量・移動量
 県内の届出排出量は約4.3千トンで、全国の約2.8%を占め、排出量順で15番目でした。
 全国及び県内の排出量・移動量は、表2-4-3-5に示すとおり(表は省略)です。大気への排出量の割合が高く、群馬県の場合は排出量全体の約99%を占めています。大気及び公共用水域への排出量は、近年は横ばい状態です。排出量の多い物質は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン*注10の順となっています。
イ 届出外(推計)排出量データ
 県内の届出外排出量は、届出排出量の約1.5倍となっています。
 また、届出外排出物質の上位3物質は、クロロピクリン*注11、トルエン、キシレンの順となっています。

 PRTR制度により得られたデータは県が行う化学物質調査の基礎として活用されています。また、リスクコミュニケーション(110ページ参照)への活用も図っていきます。

*注9 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律:平成11年7月13日公布、平成12年3月30日より施行されました。「化学物質排出把握管理促進法」又は「化管法」などと略されます。
*注10 トルエン、キシレン、エチルベンゼン:いずれも人や生態系に悪影響を及ぼすおそれがある物質で、溶剤・洗浄剤などに用いられています。
*注11クロロピクリン:農薬(土壌消毒剤)の成分です。目や皮膚を刺激するほか、のどや呼吸器を冒し、吐き気や咳を生じます。

(5)化学物質大気環境調査

 PRTR制度による届出データの集計結果に基づき、環境への影響を調査するため、排出量の多かった地域で夏季及び冬季の年2回、大気環境調査を行いました。調査対象は、排出量の上位5物質(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロエチレン)で、平成29年度の調査結果(年2回の調査結果における平均値)は表2-4-3-7のとおり(表は省略)です。
 調査した全ての地点において、環境基準又は室内濃度指針値を超過する濃度は検出されませんでした。

2 リスクコミュニケーションの推進【環境保全課】

(1)リスクコミュニケーションとは

 現代社会においては、事業活動等に伴って様々なリスクが発生します。例えば、化学物質を使用する場合、その化学物質が環境中へ排出されることで生態系や私たちの健康に悪影響を与える可能性(リスク)が発生します。このようなリスクのことを特に「環境リスク」といいます。このリスクを地域全体で減らすためには、住民・事業者・行政が情報を共有し、取組を進めることが重要です。このように、様々な立場から意見交換を行い、意思疎通と相互理解を図りながら環境リスクを減らすための取組を「リスクコミュニケーション」といいます。

(2)県の取組

 県では、住民・事業者・行政が一体となって環境負荷を減らすこと等を目指して、リスクコミュニケーションを推進しています。その一環として平成29年度には、県民向け講座である「ぐんま環境学校(エコカレッジ)」において、PRTR制度及びリスクコミュニケーションに関する説明を行いました。リスクコミュニケーションの普及を目指し、今後も啓発を継続していきます。

リスクコミュニケーションに関する情報は、次のホームページから入手することができます。
[群馬県](「リスクコミュニケーションについて」ホームページ)
[環境省]化学物質やその環境リスクについて学び、調べ、参加する<外部リンク>
[経済産業省]リスクコミュニケーション<外部リンク>
[独立行政法人製品評価技術基盤機構]化学物質のリスクコミュニケーション<外部リンク>

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