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第2部第3章第5節 快適な生活環境の創造

更新日:2012年10月1日 印刷ページ表示

第1項 快適な環境の確保

1 景観の保全と形成

 景観は、地域の自然、歴史、文化や日常の様々な活動の結果として形成されるものです。
 そのため、良好な景観を形成するためには、自然や歴史的な景観の保全や利活用だけでなく、私たちが暮らす地域の景観を創造し、そのための活動を育成するとともに、阻害要因を除去する取組も重要になります。

(1)景観条例に基づく施策

 県では、平成5年に制定した景観条例に基づき、大規模行為(一定規模以上の建築や土地の形質変更など)の届出などにより、良好な景観づくりをすすめています。平成23年度には165件の届出がありました。

(2)市町村を中心とする景観行政の取組

 景観形成の取組は地域に根ざした活動が重要であるため、市町村が、景観法に基づく景観行政団体になって、景観計画を策定して積極的に景観施策を展開することが望まれます。平成23年度には、新たに下仁田町が景観行政団体になり、表2-3-5-1のとおり12市町村が景観法の下で景観行政に取り組んでいます。

(3)補助金の交付

 市町村が景観計画の策定や世界遺産の緩衝地帯を設定するための経費の一部を補助しており、平成23年度には、藤岡市、富岡市、下仁田町、中之条町に交付しました。

(4)新しい景観行政の推進

 従来の景観審議会と屋外広告物審議会を統合して、新たに景観審議会を平成22年3月に設置しました。今後、本県の景観行政推進の在り方などについて審議会の意見を聞きながら、積極的に景観行政を推進します。

表2-3-5-1 群馬県内の景観行政団体
市町村 景観行政団体 景観計画 景観条例
伊勢崎市 平成17年5月9日 平成19年3月策定 平成20年4月施行
富岡市 平成17年11月22日 平成20年12月策定 平成21年10月施行
高崎市 平成18年1月23日 平成21年3月策定 平成21年6月施行
太田市 平成19年9月1日 平成22年4月策定 平成23年1月施行
板倉町 平成20年8月1日 平成22年6月策定 平成22年10月施行
前橋市 平成21年4月1日 平成21年10月策定 平成22年7月施行
中之条町 平成21年8月14日 平成22年9月策定 平成23年1月施行
草津町 平成21年12月1日 検討中 検討中
高山村 平成22年3月9日 平成23年3月策定 平成23年4月施行
甘楽町 平成22年9月1日 平成23年1月策定 平成24年予定
川場村 平成22年10月28日 平成22年10月策定 平成22年10月施行
下仁田町 平成23年4月1日 平成23年9月策定 平成23年1月施行

2 屋外広告物の規制・誘導、美化推進

 良好な景観の形成や風致の維持、公衆に対する危害防止のために、看板や広告塔などの屋外広告物について、設置場所や形状・面積等を規制しています。また、規制を効果的に講じるため、屋外広告業者の登録制度を設けています。

(1)屋外広告物の管理事務

 県では、屋外広告物法及び屋外広告物条例に基づき、屋外広告物の設置場所、表示面積、高さ及び表示方法等の基準を設け、設置の許可事務を行い、良好な景観づくりを進めています。平成23年度には1,121件を許可しました。

(2)屋外広告業の登録事務

 平成16年の屋外広告物法の改正を受け、県では、平成18年度から屋外広告業者の登録制度を施行し、不良業者を排除するとともに、良質な業者の育成を進めています。平成23年度には360件の業者登録がありました。

(3)広告物の美化推進

 各土木事務所において、違反広告物の是正指導及び除却を行うとともに、平成23年度においても「屋外広告物美化キャンペーン」(9月1日~9月30日)を実施しました。

3 都市公園の整備

 都市公園は多目的な機能を持つ、都市の重要な生活基盤です。
 平時は緑あふれる県民の交流拠点として、自然とのふれあいやレクリエーション施設を通じて児童や青少年をはじめとする県民の心身の健康の維持増進に寄与し、住み良い生活環境を整えています。
 また、災害時には避難所としての機能はもちろん、復旧・救援の拠点としても都市住民の安全を確保する重要な役割を果たしています。
 平成23年度の都市公園事業は、県立公園として「つつじが岡公園」のリニューアル整備を進めたほか、敷島公園においても、野球場や陸上競技場の改修工事、園路照明設置工事等を実施しました。
 また、市町村の都市公園事業として、前橋市の前橋公園や高崎市の観音山公園をはじめ、5市2町の17か所で公園整備を実施しました。
 本県の都市公園の整備状況は、平成23年3月末現在で1,392か所、1,964ヘクタールが供用開始しており(榛名・妙義公園を除く)、都市計画区域内の一人当たりの都市公園面積は10.74平方メートル/人で、平成22年3月末に比べると約0.1平方メートル/人の増加となっています。

4 緑化の推進

 森林や緑は、水源の涵養・国土保全・地球温暖化の防止等さまざまな機能を持ち、私たちの豊かな生活を支え、多くの恵みを与えてくれます。
 緑化は従来から家庭や地域、市町村で取り組まれていますが、社会情勢の変化とともに、県民や行政、NPO法人等が一緒に、あるいは役割を分担して緑化・森林整備の展開を図る取組もなされてきています。
 県では、森林や緑の持つ公益的機能を十分に発揮させ、緑豊かで暮らしやすい生活環境づくりを推進するため、植樹祭等各種イベントの開催や緑の募金活動などを通じて広く県民に緑化思想の高揚を図るとともに、身近な環境の緑づくりを推進しました。
 また、県緑化センターを運営し、見本林管理や各種緑化講座の開催など緑化技術の指導・普及を実施しました。

5 環境美化活動

 空き缶やペットボトル、たばこの吸殻など、ポイ捨てによるごみの散乱は、私たちに最も身近な環境問題でもあり、全国的にも大きな社会問題となっています。
 この問題は、私たち自身のモラルやライフスタイルにも関わることから、一朝一夕に解決し得ない困難な問題となっています。
 そのため、県では、環境美化の意識を啓発し、快適で住みよい「美しい郷土群馬県」をより一層推進するために「春・秋の環境美化運動」をはじめとして、様々な施策を展開しています。

(1)春の環境美化運動(5~6月)実施状況

 県では、平成23年5月1日から6月30日を春の環境美化月間と定め、市町村やボランティア団体等と連携して、県内各地において清掃活動や啓発活動を実施しました。
 春の環境美化運動の実施結果

  • 清掃活動29市町村 75,145人
  • ごみ収集総量 196,161キログラム

 また、群馬県の生活環境を保全する条例で定める「環境美化の日(5月30日)」及び関東甲信越静環境美化推進連絡協議会が提唱する「一斉清掃日(5月29日)」にちなみ、みなかみ町水紀行館周辺を県クリーン重点地区に設定し、清掃活動を実施しました。

(2)秋の環境美化運動(9~10月)実施結果

  • 清掃活動28市町村 130,340人
  • ごみ収集総量 255,280キログラム

(3)各種啓発事業の実施

ア ポイ捨て防止標語コンテストの実施
 県と群馬県環境美化運動推進連絡協議会は、空き缶等の散乱防止と次代を担う子どもたちの環境意識を啓発する目的として、標語コンテストを実施しました。また、優秀作品を「関東甲信越静環境美化推進連絡協議会」が行う標語コンテストに出品しました。

  • 対象 県内の小学生・中学生・高校生
  • 応募数 11,219点

イ ポイ捨て防止啓発品の作成配布
 ポイ捨て防止を呼びかけるティッシュを作成し、春・秋の環境美化運動等で配布しました。

6 公害紛争処理・公害苦情相談

 公害に係る紛争では、司法制度(裁判)による解決以前に、簡易迅速・少ない費用で行政的解決を図るため、昭和45年に公害紛争処理法が制定され、公害紛争処理制度が確立されました。
 この法律に基づき、国の公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等においては、公害紛争についてのあっせん、調停、仲裁及び裁定の制度を設けています。
 また、公害苦情相談員制度を設けることによって、苦情の適切な処理を図っています。

(1)公害審査会

 昭和45年11月に設置された公害審査会における最近の調停事件の状況は表2-3-5-2のとおりです。

(2)公害苦情相談員

 公害に関する苦情は、地域に密着した問題であるとともに、公害紛争に発展する可能性もあるため、迅速な処理が必要となります。
 このため、昭和45年11月に群馬県公害苦情相談員設置要綱を制定し、関係する地域機関に公害苦情相談員が、住民からの苦情相談に応じ、苦情の解決のために必要な調査、指導及び助言等を行っています。
 公害苦情相談員は、以下の地域機関に合計34名が設置されています。

  • 環境事務所及び環境森林事務所
  • 農業事務所
     農業振興課
     家畜保健衛生課
  • 土木事務所

(3)公害苦情の状況

 平成23年度において公害苦情相談員及び市町村の公害担当課で、新規に受理した公害苦情の件数は1,555件でした。
 典型7公害に関する苦情を種類別にみると、大気汚染(396件)、騒音(202件)、悪臭(189件)、の順となっています。
 苦情を受付機関別にみると、市町村での受付が87.9パーセント、県での受付が12.1パーセントとなっています。
 なお、処理にあたっては、関係機関との連携により対応しています。

表2-3-5-2 調停事件一覧(平成以降)
事件名 終結年月 終結区分 事件の概要
平成2年(調)第1号事件 5年2月 打切り 板金工場の騒音、悪臭等による被害に対する慰謝料及び施設改善等要求
平成2年(調)第2号事件 4年4月 打切り 産業廃棄物処理施設に係る車両の出入りに伴う騒音、振動等による被害に対する慰謝料及び音量制限等請求
平成2年(調)第3号事件
平成3年(調)第1号事件
(調停参加申立事件)
4年1月 取下げ ドライクリーニング工場の騒音、悪臭等による被害に対する施設改善等請求
平成3年(調)第2号事件
平成3年(調)第4号事件
(調停参加申立事件)
5年5月 取下げ 鉄骨工場の騒音に対する施設改善及び操業時間制限要求
平成3年(調)第3号事件 5年11月 打切り 産業廃棄物処理業者等に対する産業廃棄物不法投棄に関する損害賠償請求
平成4年(調)第1号事件 5年10月 調停成立 調停成立 鍍金工場のガス、悪臭等による被害に対する損害賠償、慰謝料請求及び操業停止要求
平成5年(調)第1号事件 6年3月 打切り ゴルフ場建設に伴い、将来発生するおそれがある被害等を防止するための建設差止め要求
平成8年(調)第1号事件 8年5月 打切り ゴルフ場建設に伴い、将来発生するおそれがある被害等を防止するための計画変更要求
平成8年(調)第2号事件 9年12月 打切り 墓地建設に伴い、将来発生するおそれがある被害等を防止するための建設差止め要求
平成9年(調)第1号事件 9年12月 打切り 自動車修理工場の騒音、悪臭による被害に対する防止対策と作業時間の制限要求
平成10年(調)第1号事件 11年6月 打切り 工場の冷却塔等の騒音に対する防音対策及びダイオキシン対策として焼却炉の運転停止等要求
平成15年(調)第1号事件
平成15年(調)第2号事件
(調停事件の併合)
16年1月 打切り 養豚場からの糞尿が地下浸透して、杉を枯らしたことについての損害賠償請求等
平成17年(調)第1号事件 18年6月 打切り 織物工場からの震動により健康被害を受けているとして、震動低減設備の設置等要求
平成20年(調)第1号事件 21年1月 打切り モーターレジャー施設からの騒音により健康被害を受けているとして、騒音の発生源についての事業方法・施設の改善等要求
平成21年(調)第1号事件 21年10月 打切り 隣家の自然冷媒ヒートポンプ給湯機から発生する低周波音等により、健康被害等を受けているとして、当該給湯機を申請人の迷惑にならない場所へ移設するよう要求
平成23年(調)第1号事件 23年11月 取下げ 水路工事の不良及び道路の振動により、擁壁及びブロック塀にひびが入ったなどとして、
損害賠償等を請求

7 公害防止組織

(1)公害防止管理者等制度

 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律により、製造業等で公害を発生するおそれのある施設が設置されている工場には、公害防止の仕事をまとめる公害防止統括者、公害防止の専門知識や技能を持った公害防止管理者及び公害防止主任管理者を選任することを義務付け、企業内での公害防止の自主管理体制の整備の強化を図っています。
 さらに、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の適用を受けない工場においても、大気汚染や水質汚濁等公害の発生源となるおそれのある工場には、群馬県の生活環境を保全する条例により、公害防止責任者の設置を義務付けています。
 県では、環境月間において公害防止管理者等選任工場を対象に公害防止総点検運動を実施し、公害防止意識の高揚を図りました。

(2)産業環境保全組織

 産業公害を防止するために、公害防止管理者等が設置された工場又は事業場が会員となり、県内10地区に産業環境の保全に関する連絡協議会が、自主的に組織されています。
 また、各地区の協議会や商工会議所連合会等の関係団体計25団体が集まり、群馬県産業環境保全連絡協議会が組織されています。これらの協議会では、環境保全活動事例発表会や研修会、会員相互及び行政機関との情報交換・交流事業などを行い、より良い環境づくりに努めています。

8 融資制度の導入・充実

 環境生活保全創造資金は、公害防止や廃棄物対策、さらには循環型社会づくりや地球環境問題に取り組む中小企業者を支援する融資制度です。
 昭和43年度に「公害防止対策資金」として発足し、制度内容の充実とともに、平成11年4月に「環境保全創造資金」、平成15年4月に「環境生活保全創造資金」へと改称しました。
 平成23年度における融資実績は、7件、6,368万円でした。近年の融資状況は表2-3-5-3、平成24年度における制度概要は表2-3-5-4のとおりです。

表2-3-5-3 近年の融資状況(新規融資分)(単位:件、千円)
  公害防止施設整備資金 産業廃棄物処理施設整備資金 産業廃棄物処理施設整備資金
(再生利用施設整備資金)
低公害車導入整備資金 資源有効利用施設整備資金 環境GSエコ企業改修資金 合計
年度 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
21 1件 30,000千円 0 0 0 0 3件 19,400千円 0 0 1件 14,000千円 5件 63,400千円
22 1件 18,000千円 0 0 3件 168,970千円 3件 13,900千円 0 0 3件 22,200千円 10件 223,070千円
23 1件 10,000千円 0 0 0 0 5件 16,680千円 0 0 1件 37,000千円 7件 63,680千円
表2-3-5-4 制度概要
名称 対象者 対象事業 支援内容等 担当部署
公害防止施設整備資金 中小企業者、中小企業団体
  1. 公害防止施設の設置(移転含む)
  2. 土壌・地下水汚染防止又は処理事業
  3. アスベスト除去対象事業
  • 限度額5,000万円
  • 利率年1.9%(保証付1.6%)以内
  • 融資期間
    7年以内(工場移転、アスベスト除去10年以内)うち据置期間1年以内
環境保全課
低公害車導入整備資金 中小企業者、中小企業団体 電気自動車・ハイブリッド自動車等の低公害車及び附帯施設の導入
  • 限度額1億円
  • 利率年1.9%(保証付1.6%)以内
  • 融資期間
    10年以内 うち据置期間1年以内
環境政策課
資源有効利用施設整備資金 中小企業者、中小企業団体 資源有効利用施設の整備
  • 限度額5,000万円
  • 利率年1.9%(保証付1.6%)以内
  • 融資期間
    7年以内(建物の新築又は改築10年以内) うち据置期間1年以内
環境政策課
産業廃棄物処理施設整備資金 中小企業者、中小企業団体
  1. 産業廃棄物を処理するための施設整備
  2. 産業廃棄物を再生利用するための施設整備
  • 限度額
    1)5,000万円
    2)7,000万円
  • 利率年1.9%(保証付1.6%)以内
  • 融資期間
    7年以内(建物の新築又は改築10年以内) うち据置期間1年以内
廃棄物・
リサイクル課
環境GS企業エコ改修資金 環境GS事業者として認定を受けている中小企業者(個人・会社)
  1. 省エネルギーのための設備導入・改修
  2. 温室効果ガス排出量削減に寄与できる施設の導入・改修
  3. 新エネルギー設備の導入・改修
  • 限度額
    省エネ率10%以上の改修工事2,000万円、自己資金調達型ESCO事業1億円、エネルギーの使用の合理化に資する施設等の設置1億円、新エネルギー設備の設置又は改修工事2,000万円
  • 利率年1.9%(保証付1.6%)以下
  • 融資期間
    10年以内 うち据置期間1年以内
環境政策課
その他の融資制度 中小企業パワーアップ資金 中小企業者
  1. ISO14001認証取得に係る申請料、審査料、コンサルタントに対する委託料等の運転資金
  2. 環境保全・保護に関連する設備・製品等の開発・製造を行う事業に必要な設備・運転資金
  3. RoHS指令対応に係る設備・運転資金
  • 限度額
    2億円(うち運転資金5,000万円)
  • 利率年1.9(保証付1.6または1.5)%以下
  • 融資期間
    設備12年以内 うち据置期間2年以内
    運転7年以内 うち据置期間1年以内
    ※平成21年度から、上記据置期間の1年(八ッ場ダム対策関連の場合は2年)延長を可能とする特例措置を実施している。(~平成25年3月31日)
商政課
NPO活動支援整備資金 特定非営利活動法人
  1. 特定非営利活動を推進する上で必要な施設及び一般事務機器等の設備資金
  2. 特定非営利活動を行う上で必要な運転資金
  • 限度額 1)2,000万円 2)500万円
    (2のみ知事の特認あり)
  • 年利率1.9%以内
  • 融資期間
    1)建物10年以内、設備7年以内 うち据置期間1年以内
    2)5年以内 うち据置期間1年以内
NPO・多文化
共生推進課

第2項 文化財の保護

1 文化財の指定、登録、選定

 わが国の文化財は、豊かな自然環境のもとで、長きにわたる先人の営みによって形作られてきました。文化財保護行政の目指すところは、有形無形の様々な文化遺産とそれらが守り伝えられてきた事実を、その環境とともに後世に伝えていくことにあります。国・県・市町村は、それらのうち特に重要なものを法的に保護し、またその質と価値を高めるための保存整備を行っています。これによって、文化財の価値を正確に分かりやすく社会に還元することができ、人々の地域に対する理解と関心の深化へと繋がっていきます。
 文化財は、有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群、保存技術、埋蔵文化財の8つに分類されますが、それぞれの中で重要なものや保護が必要なものが指定、登録、選択、選定され、法的な保護や整備が行われます。
 文化財の保護と整備に関する近年の特徴としては、従来の静的保存のほかに動的保存という考え方が出てきたこと、単体の文化財のみならず周辺の歴史景観や環境も保護し整備する方針が打ち出されたこと、文化財を生かした地域づくりの取組がしやすいように法制度が整備されたことが掲げられます。これにより、歴史文化遺産と環境を重視した、総合的な地域づくりへの取組が各地で始まりつつあります。市町村にとっては、こうした取組が地域の振興や再生への有益な手段として、今後の施策の柱となっていくものでもあります。

2 自然環境の保護に結びつく文化財の保護

(1)名勝・天然記念物

 文化財のうち、名勝・天然記念物は自然環境及び自然景観の保護に直結しています。
 現在、県で指定する名勝・天然記念物としては、動物繁殖地や植物など計102件にのぼっています。
 また、国の名勝・天然記念物には24件が指定され、名勝妙義山(富岡市、安中市、下仁田町)や楽山園(甘楽町)、特別天然記念物尾瀬(片品村)等々、内容は多岐にわたります。日本列島中央部に位置する本県は、山岳地帯と平野部からなり、変化に富んだ地形及び気候条件のもと、全国的に特筆すべき名勝・天然記念物の宝庫と言えます。
 天然記念物のうち、動物の種として地域を定めず指定されているものは、国指定が96件、県指定が5件あります。国指定の動物種のうち、特に本県で生息が確認できる野生動物は、カモシカやヤマネ、イヌワシなどです。県指定天然記念物はヒメギフチョウやミヤマシロチョウなど、いずれも蝶が指定されています。
 これらの動物のうち、特別天然記念物に指定されているカモシカは、保護地域が設定されており、保護地域及び周辺地域の生息状況、生息環境調査を毎年実施しています。また、保護地域周辺での食害を防止するため、防護柵の設置といった施策も用意されています。

(2)史跡、重要文化財及び登録有形文化財建造物の保護

 現在県内には、史跡は国指定46件、県指定85件、重要文化財(建造物)は国指定21件、県指定53件、国登録有形文化財(建造物)が302件所在し、それぞれ歴史景観が保たれています。また一部で史跡公園等に整備され、学習及び憩いの場ともなっています。
 これら県内の国・県指定の史跡等には、広大な領域を有し、自然景観が展開する例も少なくありません。こうした自然環境と歴史景観が共存している例として、岩宿遺跡(みどり市)や金山城跡(太田市)などがあります。また山間地に重要文化財の仏堂や社殿が佇み、周囲の自然環境と調和した歴史的風致が守られている例として、妙義神社や榛名神社などがあります。近代の文化遺産も、国重要文化財の碓氷峠鉄道施設(安中市)や国登録文化財のわたらせ渓谷鐵道関連施設(桐生市、みどり市)は山間地の自然の景観の中に溶け込んでおり、国史跡・国重要文化財の富岡製糸場や国登録文化財の桐生市内の織物工場の建物などは、それぞれ今後のまちづくりの核となる歴史景観を形成しています。

(3)文化的景観および伝統的建造物群の保護

ア 文化的景観
 人々の生活又は生業、地域の風土の中で形成された景観で、我が国の国民の生活・生業の理解のために不可欠のものです。日常の風景として見過ごされがちでしたが、棚田や水郷など自然と人との調和の中で長い年月をかけて形成されてきた価値ある景観です。県内では板倉町において利根川・渡良瀬川合流域の水場景観の保護に取り組んでおり、平成23年9月には国の重要文化的景観に選定されました。県もこの取組を支援しています。
イ 重要伝統的建造物群保存地区
 町並みや農村集落など歴史的建造物が群として良好に保存された場所です。県内には中之条町と桐生市の2か所に所在します。
 中之条町六合赤岩地区は平成18年に北関東で初めて選定されました。旧六合村に所在し、養蚕農家集落とともに、墓地、お宮やお堂、耕作地、そして山林などで構成される広大なエリアを占めます。平成23年度は、重要な構成要素に対する保存修理事業等に補助を行っています。
 桐生市の桐生新町地区は、平成24年7月に選定されました。近代桐生の繁栄をものがたる数多くの町屋や蔵、織都桐生を象徴するノコギリ屋根の織物工場など、多彩な歴史的建造物の町並みが展開します。今後の建造物の修理・修景や環境整備に対して県も支援する予定です。

(4)文化財保存事業に対する補助

 平成23年度は、国及び県指定文化財を良好な状態で保存するための事業や、学習や憩いの場として活用するための整備事業など、文化財保存修理等事業に対し補助を行いました。

ア 県指定文化財
 14件の保存修理、保護養生等整備活用事業に対して補助金を交付しました。
イ 国指定文化財
 15件の保存修理及び整備活用事業並びに5件の史跡等買上げ事業に対して補助金を交付しました。
ウ 防災設備保守点検等事業
 個人・法人が所有する7件の重要文化財(建造物)の防災保守点検等に対して補助金を交付しました。
エ 埋蔵文化財調査
 14市町村が行う埋蔵文化財発掘調査及び1件の埋蔵文化財保存活用整備事業に対して補助金を交付しました。

3 指定等文化財に対する施策

 文化財保護課では、県内文化財の保護・管理のため、主に次の各種業務を行っています。

(1)史跡の保護・管理

 県内に所在する国の史跡のうち、史跡観音山古墳(高崎市)及び史跡上野国分寺跡(高崎市・前橋市)については県で管理運営を行っています。
 両史跡は、本県の古代を語る上で欠くことができない県民共有の歴史文化遺産として保護、活用されています。また、住宅密集地における緑地帯として、生活環境の向上や環境保全にも役立っています。

(2)文化財パトロール

 国・県指定等文化財及び重要な埋蔵文化財包蔵地の維持管理に万全を期するため、県で委嘱した文化財保護指導委員(平成23年度:31名委嘱)が定期的に巡視し、保存状態を確認し県に報告します。報告は、県において保存修理事業計画立案の際の資料とします。

(3)群馬県文化財保護審議会の運営

 県文化財保護審議会では、県内文化財の保存及び活用等に関する重要事項についての調査・審議を行うほか、県内文化財のうち特に重要なものについては県の指定文化財とするよう、県に対し答申をします。

(4)開発関連埋蔵文化財試掘調査

 国・県及び国県が設立した公社公団が実施する開発に対し調整を行います。埋蔵文化財の所在や範囲を確認するために工事前に試掘調査を実施します。平成23年度は県内各地で65件実施しました。

(5)文化財保護に係る諸手続

 国県指定文化財の移動、現状変更許可申請、き損届・復旧届などに係る諸手続き、未指定文化財の国または県指定への手続きや既指定文化財の追加指定手続き、埋蔵文化財包蔵地への開発及び発掘調査にかかる手続き、刀剣に係る審査及び手続き等を行います。

4 歴史的まちづくりへの支援

 近年、歴史・文化を生かした地域づくりを実現するための制度が整備されつつあります。
 平成20年、文化庁・国土交通省・農林水産省の三省庁共管により、歴史まちづくり法(正式名称:地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律)が施行されました。人々の伝統的な活動と、歴史的建造物(国指定文化財が条件)及びその周囲が一体となった良好な環境(歴史的風致)を維持向上させ、後世に継承できるまちづくりを国が支援するものです。この法律により、核となる文化財とその周辺もあわせて整備することが可能となり、景観の乱れを修景するなど歴史的景観の維持・向上への取組がしやすくなりました。
 県内では甘楽町において、名勝楽山園を中心に旧小幡藩城下町など周辺文化財を含めた歴史的風致維持向上計画が国に認定され(平成22年3月)、歴史的景観を活かしたまちづくりに取り組んでおり、県もこれを支援しています。

第3項 地産地消の推進

1 地産地消の推進

 地産地消を推進し、消費者と生産者の相互理解を促進することで食と農の距離を縮めた「顔の見える関係」を構築します。また、地元の良質な食材を使った豊かな食生活を実現を目指します。
 なお、推進母体は平成16年7月に設置した「ぐんま地産地消県民運動推進会議」とし、地産地消の推進に官民一体となって取り組みます。

(1)地産地消の県民運動推進

 地産地消を県民運動として推進するため、推進母体である「ぐんま地産地消県民運動推進会議」の運営を行うとともに、関係団体による関連イベントの開催を支援しました。

(2)地産地消サポート

 県では、県産農産物等の地産地消を促進するため、県産農産物やその加工品等の販売や利用をしている小売店・旅館・飲食店等を「ぐんま地産地消推進店」として認定したほか、県産の食材を積極的に利用している企業や団体を「ぐんま地産地消協力企業・団体」として登録しました。また、これら推進店等を対象に啓発資材の配布等を行いました。

(3)農産物直売所の活性化

 県内農産物直売所の活性化対策の基礎データとするため、農産物直売所・朝市に対する実態調査を行いました。また、農産物直売所をテーマとした全国会議への参加等による先進事例収集や、放射性物質の検査結果等の情報提供に努めました。

(4)食と観光の連携推進

 本県産農産物のブランド化、消費拡大を図るため、県産農産物、地産地消推進店、農産物直売所を紹介した冊子を発刊しました。
 

第4項 環境共生住宅の推進

1 環境対応型県営住宅の整備

 平成17年2月に京都議定書が発効し、我が国は「京都議定書目標達成計画」(平成17年4月閣議決定)に基づき地球温暖化対策を推進してきたところです。平成20年3月には、この「京都議定書目標達成計画」が改正され、増加傾向にある民生部門からの二酸化炭素排出量の削減を強力に進めるため、追加対策として住宅・建築物の省エネルギー性能の向上が挙げられています。
 これらを受けて平成20年5月に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」が改正され、住宅・建築物の省エネルギー対策の強化がはかられているところです。群馬県でも、今後とも住宅・建築物の分野における省エネルギー対策を推進する必要がありますが、その一環として、環境対応型県営住宅の整備が位置付けられています。
 具体的には次のとおりです。

ア 省エネルギー基準の強化
 新築の県営住宅の断熱性能について、次世代省エネルギー基準の最上位である「等級4」を満たすことを義務付けます。
イ 再生可能エネルギーの導入
 太陽光、水力・小水力、バイオマス等の再生可能エネルギーについて、電力供給対策として発電設備の導入に努めます。
ウ 屋上緑化等の設置
 電力需要対策として節電効果が期待できる屋上緑化、壁面緑化等の設置に努めます。

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