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第2部第3章第4節 有害化学物質による環境リスクの低減

更新日:2015年3月21日 印刷ページ表示

環境基準達成率

ダイオキシン類

  • 大気 100.0%(20地点中20地点)
  • 公共用水域(水質)100.0%(14地点中14地点)
  • 公共用水域(底質)100.0%(11地点中11地点)
  • 地下水質 100.0%(7地点中7地点)
  • 土壌 100.0%(9地点中9地点)

敷地境界基準値の達成状況

アスベスト

  • 大気 100.0%(2地点中2地点)

第1項 有害化学物質対策

1 ダイオキシン類対策

(1)ダイオキシン類について(注1)

 ダイオキシン類対策特別措置法(注2)では、ダイオキシン類をポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(注3)(コプラナーPCB)の総称と定義しています。
 ダイオキシン類は、意図的に製造する物質ではなく、焼却の過程等で発生する副生成物です。環境中に広く存在していますが、その量は非常にわずかです。
 私たちは、1日平均で体重1キログラム当たり約0.85ピコグラムのダイオキシン類を摂取していると推定されており、その99%は食品経由と言われています。この水準はダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI(注4))(体重1キログラム当たり4ピコグラム)を下回っているため、健康への影響はないと考えられます。

1ピコグラム(pg)は、1兆分の1グラムに相当します。例えば、東京ドームを水でいっぱいにして角砂糖1個(1グラム)を溶かしたとき、その水1シーシーに含まれている砂糖の量がおよそ1ピコグラムです。

  • 注1 出典:環境省ダイオキシン対策室パンフレット(2012)
  • 注2 ダイオキシン類対策特別措置法:平成11年7月12日制定、同年7月16日公布、平成12年1月15日より施行されました。
  • 注3 コプラナーPCB(コプラナーポリ塩化ビフェニル):ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)と類似した生理作用を示す一群のPCB類です。ダイオキシン類対策特別措置法でいうダイオキシン類に含まれます。
  • 注4 TDI(耐容一日摂取量 Tolerable Daily Intakeの略):人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される一日あたりの摂取量であり、世界保健機構(WHO)や各国において科学的知見に基づいて設定されています。

(2)ダイオキシン類を出さないために

 本県では、ダイオキシン類による汚染の拡大を防止し、環境リスクの低減を図り、安全な生活環境を確保するため、国が推進する対策等を勘案しながら(1)発生源対策、(2)ごみ減量化・リサイクル、(3)環境実態調査を総合的に推進しています。
 群馬県の生活環境を保全する条例では、野焼きや小型焼却炉での焼却に規制を設け、みだりに焼却をさせないよう指導しています。また、焼却炉等に係る国の排出基準も平成14年12月1日から強化されています。
 現在の日本におけるダイオキシン類の排出量のうち、特にPCDD及びPCDFについては、その約9割が身の回りのごみや産業廃棄物を焼却するときに出ると推定されています。つまり、ダイオキシン類が発生する原因は、日々の生活でごみを排出する私たち一人一人にもあるのです。
 ダイオキシン類を減らすためには、市町村の分別回収に協力するなど、ごみの再利用やリサイクルなどを推進することも大切です。

(3)環境中のダイオキシン類調査結果

 ダイオキシン類対策特別措置法により、大気、水質、水底の底質及び土壌の環境基準が定められています。
 平成25年度の県内の調査結果は、すべての地点で環境基準未満でした。

(4)ダイオキシン類対策特別措置法の対象施設

 県では、対象施設が適法に運用されているか確認するため、随時、立入検査を実施しています。平成25年度は大気基準適用64施設・水質基準適用16施設に立入検査を行い、その結果、大気基準適用1施設に対して口頭で改善指示を行いました。

(5)施設設置者による測定結果

 施設設置者は、排出ガス、排出水及び燃え殻等のダイオキシン類による汚染状況について、年1回以上測定を行い、結果を県に報告することが義務付けられています。未報告の施設については、速やかに報告するよう指導しています。なお、本県では県に報告された測定結果をウェブサイトを通して公表しています。
(公表ページ ダイオキシン類測定結果

2 シックハウス対策

 新築やリフォームした住宅に入居した人のシックハウス症候群が問題となりました。その原因は以下の点が挙げられています。

  • 住宅に使用されている建材、家具、日用品などから様々な化学物質が発散
  • 住宅の気密性が高くなった
  • ライフスタイルが変化し換気が不足しがち

(1)国の対応

 国はその対策として、平成14年7月に建築基準法を改正し、平成15年7月に施行されました。その内容は、ホルムアルデヒド(注1)に関する建材、換気設備の規制とクロルピリホス(注2)の使用禁止です。具体的には(1)内装仕上げの制限、(2)換気設備設置の義務付け、(3)天井裏などの制限です。
 また、全部で13種の特定の揮発性有機化合物について、室内濃度指針値を個別に設定しています。

  • 注1 ホルムアルデヒド:揮発性有機化合物で建材や家具の接着剤等に用いられ、シックハウス症候群の原因物質と考えられています。
  • 注2 クロルピリホス:毒性の強い有機リン系化合物でシロアリ駆除剤等に用いられ、シックハウス症候群の原因物質と考えられています。

(2)県の対応

 県では平成13年度からホルムアルデヒド簡易測定器を12台購入し、県民への貸出しを行ってきましたが、建築基準法による対策強化、貸出件数の減少により平成19年度に貸付業務を終了しました。現在は「ぐんま住まいの相談センター」で、シックハウス対策の周知、化学物質測定機関の紹介を行っています。

3 アスベスト対策

 アスベスト(石綿)は、天然の鉱物繊維であり、熱や摩耗に強く、酸やアルカリにも変化しにくいという特性と経済的に安価であったことから、高度経済成長期をピークとして建築材料や工業製品などに幅広く大量に使用されてきました。
 しかし、アスベストの極めて微細な繊維を吸い込むことにより、人体に深刻な影響を与えることが確認されたため、現在では全面的に製造・使用等が禁止されています。一方で、アスベストを原因とする健康被害者に対する救済制度が創設されました。
 アスベストを原因とする健康被害については、アスベストを吸い込んでから自覚症状等をきっかけとして発見されるまでの期間が非常に長いため(例:中皮腫では30年から50年)、今後も長期的な視野に立って被害者の早期発見及び救済を図っていくことが必要です。
 また、環境保全の観点からは、今後、アスベストを使用した建築物の老朽化が進行し、立て替えの時期を迎えるため、解体時の飛散防止対策の徹底と解体に伴って大量発生が予測されるアスベスト廃棄物の処理能力の向上などが重要な課題となっています。
 大気汚染防止法上、アスベストは特定粉じんとして扱われ、これを発生する施設として9種類の施設が届出の対象となっています。しかし、現時点でこれに該当する施設は国内に存在しません。
 また、その他に、アスベストを含む建築物等の解体や補修の作業についても「特定粉じん排出等作業」として、大気汚染防止法で規制されています。

(1)国の対応

 国は、アスベストの使用や飛散防止措置等に関して、1970年代から労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物処理法などの関係法令による規制を段階的に強化し、平成24年年には労働安全衛生法の改正により、アスベストの製造・使用・譲渡等を全面的に禁止しました。また、平成25年には大気汚染防止法の改正により、建築物等の解体時におけるアスベストの飛散防止対策が強化されました。

(2)県の対応

 県は、関係課や地域機関において、県民等からのアスベストに関する相談や質問に対応するとともに、保健予防課と各保健福祉事務所において国が創設した健康被害者に対する救済制度の申請受付を行っています。
 また、アスベストの飛散を防止し、アスベスト廃棄物の適正な処理が行われるよう、大気汚染防止法や廃棄物処理法などに基づく監視・指導を行っています。

(3)県内のアスベスト解体工事

 吹付け等飛散性アスベストが使用された建築物等を解体・改造・補修する場合は、事前に大気汚染防止法上の届出の必要があります。県では、この届出のあった全ての現場に立ち入り、飛散防止対策が適正に行われているかを確認しています。
 なお、平成25年度は47件の届出がありました(政令市である前橋市及び高崎市への届出19件分を含む)。

(4)大気中のアスベスト濃度

 県内の大気環境中のアスベスト調査に係る総繊維数濃度について一般環境2地点、飛散性アスベスト(特定粉じん)排出等作業現場3現場(18地点)で測定を行った結果、全ての地点でアスベスト使用施設の敷地境界基準値(10本/リットル)を下回っていました。

4 食品の安全性の確保

 食品の中には、食物連鎖を通じて蓄積されたもの、環境に由来して食品に残留したもの、本来その食品を組成するもの等、様々な化学物質などが含まれる可能性があります。
 こうした化学物質などの中には、一定量を超えて摂取し続けると人の健康に危害をもたらすものがあり、これを防ぐために、食品衛生法により様々な基準が設けられています。

(1)食品安全試買検査の実施

 県内で販売・消費されている食品を消費者(食品表示ウォッチャー)の視点から買い上げを行い、その食品の残留農薬や重金属等の検査を実施することにより安全性の確認を行い、検査結果は速やかに情報提供しています。平成25年度は残留農薬検査41検体、食品添加物検査107検体、放射性物質検査18検体、重金属検査など30検体の試買検査を実施し、すべての検体で衛生食品法の基準に違反するものはありませんでした。

第2項 有害化学物質の適正管理の推進

1 PRTR法に基づく情報の収集・公開

(1)PRTR制度の背景

 現在の私たちの生活は、多種多様な化学物質を利用することで成り立っています。
 しかし、同時に多種多様な化学物質が、人や生態系に悪影響を及ぼすおそれがありますが、一つ一つの物質に個別の基準を設けるなどして規制するには限界があります。そのため、平成11年に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(注)が公布され、PRTR制度が導入されました。

  • 注 特定化学物質への環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律:平成11年7月13日公布、平成12年3月30日より施行されました。「PRTR法」または「化管法」などと略されます。

(2)PRTR制度の目的と特徴

 PRTR制度の主な目的は、PRTR法において、次の2点とされています。

  • 事業者による化学物質の「自主的な管理」の改善を促進する。
  • 環境保全上の支障を未然に防止する。

 この法律は、従来からの手法である「規制」は最低限とし、あくまで事業者の「自主的」な取組によって化学物質による環境リスクの低減を図る点が特徴となっています。

(3)PRTR制度の仕組み

 対象となる化学物質を製造又は使用等している事業者は、大気、公共用水域、土壌及び事業所内埋立など環境中に排出した化学物質の量と廃棄物として処理するために事業所外へ移動させた化学物質の量を自ら把握し、都道府県(高崎市内の事業者にあっては高崎市)を経由して国に毎年届け出ます。
 国は事業所からの届出データを整理・集計するほか、届出要件に該当しない事業者や届出対象となっていない家庭や農地、自動車などから排出されている対象化学物質の量を推計し、両データを併せて公表します。
 公表されたデータは、次のホームページから入手することができます。
[環境省]PRTRインフォメーション広場<外部リンク>
[経済産業省]化学物質排出把握管理促進法<外部リンク>

(4)排出量・移動量の集計結果

 平成26年3月に第12回目(平成24年度分)の排出量等のデータが公表されました。

ア 届出データ
a 届出事業所数

 県内の届出事業所数は802件で、全国の36,504件の約2.2%を占めています。そのうち約4割をガソリンスタンド等の燃料小売業が占めていました(全国と同傾向)。

b 届出排出量・移動量

 県内の届出排出量は約4.7千トンで、全国の約2.9%を占め、排出量順で14番目でした。
 全国及び県内の排出量・移動量は、大気への排出量の割合が高く、群馬県の場合は排出量全体の約99%を占めています。排出量の多い物質は、上からトルエン、キシレン、エチルベンゼン(注)となっています。

  • 注 トルエン、キシレン、エチルベンゼン:いずれも人や生態系に悪影響を与えるおそれがある物質で、溶剤・洗浄剤などに用いられます。
イ 届出外(推計)排出量データ

 県内の届出外排出量は、届出排出量の約1.4倍となっています。
 また、県内の届出外排出物質の上位3物質は、クロロピクリン(注1)、トルエン、AE(注2)の順となっています。
 PRTR制度により得られたデータは県が行う化学物質調査の基礎として活用されています。また、リスクコミュニケーションへの活用も図っていきます。

  • 注1 クロロピクリン:農薬(殺虫剤)の成分です。目へ皮膚を刺激するほか、のどや呼吸器を冒し、吐き気や咳を生じます。
  • 注2 AE:ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数が12から15までのもの及びその混合物に限る)の略称で、主な排出源は洗浄剤です。皮膚からは吸収されにくい性質があります。

(5)化学物質大気環境調査

 PRTR制度による届出データの集計結果に基づき、環境への影響を調査するため、排出量の多かった地域で夏季及び冬季の年2回、大気環境調査を行いました。調査対象は、排出量の上位5物質(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロエチレン)です。
 調査したすべての地点において、環境基準又は室内濃度指針値を超過する濃度は検出されませんでした。
 なお、過去の調査でトリクロロエチレンが環境基準を超過する結果が検出された地点については、発生源と考えられる事業者に対して指導を行うとともに、トリクロロエチレン濃度の監視を継続しています。

2 リスクコミュニケーションの推進

(1)リスクコミュニケーションとは

 現代社会においては、事業活動等に伴って様々なリスクが発生します。例えば、化学物質を使用する場合、その化学物質が環境中へ排出されることで生態系や私たちの健康に悪影響を与える可能性(リスク)が発生します。このようなリスクのことを特に「環境リスク」と言います。このリスクを地域全体で減らすためには、住民・事業者・行政が情報を共有し、取組を進めることが重要です。このように、様々な立場から意見交換を行い、意思疎通と相互理解を図りながら環境リスクを減らすための取組を「リスクコミュニケーション」と言います。

リスクコミュニケーションに関する情報は、次のホームページから入手することができます。

(2)県の取組

 群馬県では、住民・事業者・行政が一体となって環境負荷を減らすこと等を目指して、リスクコミュニケーションを推進しています。
 多くの事業者がリスクコミュニケーションについて前向きな意見を持っているものの、知識・スキル不足等が障害となり、実際に実施するのが困難であるというのが現状です。また、リスクコミュニケーションについて、名前は知っているものの、実施内容等については未だ認知度が低いのが現状です。
 県では、平成25年度に環境GSマネージャー研修会において、リスクコミュニケーションに関する説明を行いました。リスクコミュニケーションの実施を目指し、今後も普及・啓発を継続していきます。

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