麦わら煙公害に関する対策資料
[1] 水稲における麦わらの全面すき込み
[2] 大豆への麦わらの全面すき込み
[3] 小麦わらのアンモニア処理による牛への飼料化
[4] 小麦わらの家畜糞混合による発酵促進
[5] 施設キュウリでの小麦わら利用事例
[6] 梨園での小麦わら利用
[7] 桑園での麦わら敷き込み
[8] 麦わらを利用した太陽熱消毒法による土壌病害虫の防除
[1] 水稲における麦わらの全面すき込み
1.麦わら処理手順
自脱型コンバイン(カッター)10センチメートル切断
↓
改良資材散布
↓
耕耘逆転ロータリー
↓ ← 施肥
入水 深水
↓
代かき ひたひた水
2.作業上の注意事項
- 切断麦わらをほ場一面にならす。
- 耕耘をていねいにし、麦わらをすき込む。
- 基肥に硫安を10kg(キログラム)/10アール増施する。
- 代かきは、代かきハロー等を使い、ひたひた水でていねいに作業を行う。
- 田植え10日後、水を入れかえる。
- 生育むらが生じた場合は、追肥する。
具体的には普及センターに相談して行って下さい。
[2] 大豆への麦わらの全面すき込み
1.麦わら処理手順
自脱型コンバイン(カッター)10センチメートル切断↓
硫安又は石灰窒素散布
↓
耕転
↓
施肥 播種
2.作業上の注意事項
- 切断麦わらをほ場一面にならす。
- 耕耘をていねいにし、麦わらをすき込む。
- 基肥に硫安を10kg(キログラム)/10アール、又は石灰窒素20kg(キログラム)を施用する。
ただし、石灰窒素は播種2週間以上前に施用する。
[3] 小麦わらのアンモニア処理による牛への飼料化
1.アンモニア処理
- 小麦わらをロールベーラーやコンパクトベーラーで梱包する。
- ビニールを敷いた上に台座を敷き、麦わら梱包を積み上げ、最後にビニールで被覆し密封する。麦わら水分は30%前後が望ましい。
- 小麦わらの重量に対し2%のアンモニアガスを添加する。
- 処理期間(密封)は2~3週間とする。
- 給与にあたってはガスぬきを行う。
- アンモニアは毒性がある可燃性ガスのため取扱いに注意する。
2.アンモニアガス添加による効果
(1)粗タンパク含有量が多くなり、消化率も向上する。
処理 | 粗タンパク | 粗脂肪 |
粗繊維 |
粗灰分 |
---|---|---|---|---|
アンモニアガス2%添加 |
6.5 |
1.6 |
44.2 |
6.9 |
無処理 |
2.8 |
1.6 |
41.5 |
7.5 |
(2)水分がやや高い(約40%)ものでもカビの発生を防げる。
(3)家畜の嗜好性が良い。
(4)保存性が高まる。
3.処理費用(1キログラム当たり)
アンモニアガス 6円
被覆ビニール 7円
─────────
計 13円
アンモニアガス6円、被覆ビニール7円、計13円の処理費用になります。
注1)スノコ、ビニールホースは、廃物を利用。
2)被覆ビニール(0.2ミリメートル)は数回使用可 。
(わら類のアンモニア処理)
1.アンモニア処理のメカニズム
- わら類をアンモニア処理すると → 植物細胞壁の変化→結果消化しやすくなる。
- アンモニア自体による窒素付与 → ルーメン微生物の消化活動の活性化。
このことから →アンモニア処理されたわら類は消化率が向上する。
↓
《利点》
- 消化率が1~2割向上。
- 家畜の摂取量が3~5割向上。
↓
家畜の嗜好性が低い低質粗飼料でも摂取量等の向上が期待され、特に、わら類での利用価値が高まる。
[4] 小麦わらの家畜糞混合による発酵促進
1.方法
- 小麦わらをカッターで細断する。
- 細断したわらをマニュアローダーで家畜糞と混合する。
- 発酵が始まったらマニュアローダーで数回切り返す。
2.効果
高水分の家畜糞、特に乳牛の糞は、そのまま堆積しておくといつまでも腐熟しないので、細断した小麦わらと混合すると発酵が促進され、さらに麦わら堆肥の肥料成分量が高まる。
項目 |
窒素全量 | リン酸全量 | カリ全量 | 水分 |
利用率 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
窒素 | リン酸 | カリ | ||||||
豚糞 |
新鮮物 |
0.95 |
1.76 |
0.17 |
73.0 |
70 |
70 |
90 |
発酵物 |
1.81 |
5.18 |
0.95 |
31.0 |
70 |
70 |
90 |
|
乾燥 |
3.73 |
4.41 |
4.08 |
16.0 |
70 |
70 |
90 |
|
牛糞 |
新鮮物 |
0.37 |
0.36 |
0.17 |
80.2 |
30 |
60 |
90 |
乾燥物 |
2.42 |
2.64 |
0.45 |
15.5 |
30 |
60 |
90 |
[5] 施設キュウリでの小麦わら利用事例
1.耕種
- 春作播種:12月 定植:1月 収穫:2~6月施肥:基肥、有機配合、改良材小麦わら 30アール分(1.5トン)
- 秋作
播種:7月 定植:8月 収穫:9~12月
施肥:基肥、有機配合、改良材
牛ふん堆肥(2.5トン)
2.利用法
結束小麦わら(麻ひも)を水が通るよう井げた状に野積みし、十分かん水をして春作定植前に半ぐされ状になったところで全面散布しすき込む。
3.効果
- 麦わらは徐々に腐熟し長期の有機質供給源となる。
- 土壌の通気性、保水力、土壌硬度を改善する。
- 樹勢の衰えが少ないため、収量、A品率が向上する。
[6] 梨園での小麦わら利用
1.耕種
- 品種 幸水、豊水、二十世紀
- 敷わら 7月 10アール当たり600キログラム
- 基肥 11月 改良材を施用
- 追肥 6月
- 礼肥 9~10月
2.利用法
- 袋かけ終了後、小麦わらを全面に敷く。
- 敷わらは、11月に基肥とともにロータリーですき込む。
3.効果
- 小麦わらは、敷わらとして雑草防除および干害防止に効果が高い。敷わらにより、かん水2回分と同程度の効果がみられる。
- 土が軟らかくなるとともに、腐植の補給に役立つ。
[7] 桑園での麦わら敷き込み
1.利用法
- 桑園10アールに小麦わら30アール分(1.5トン)を敷く。
- 春蚕収穫後、桑園の畦間へ敷き、冬期にロータリーですき込む。
2.効果
- 敷わらにより土の流失を防ぎ、干害と雑草の発生を防ぐ。
- 小麦わらを施用した桑は、生育ならびに葉質がよい。
- 有機物の施用、異常気象の際に効果を発揮する。
[8] 麦わらを利用した太陽熱消毒法による土壌病害虫の防除
1.処理対象
ハウス及び一部の露地
2.処理期間
7月中・下旬~8月中・下旬(約30日間)
3.処理方法と手順
- 前作物の残渣を処理し、ロータリーで耕起砕土する。
- 麦わらを3~5センチメートル程度にカッターで切断し10アール当たり1~2トン全面に散布し、わらがぬれる程度に散水する。
- 石灰窒素を10アール当たり80~100キログラム散布し、ロータリーで有機物、土壌と良く混和する。
- 培土機で小畦を立て、畑地では十分散水した後、ポリエチレンまたはビニール(使用したものでよい)で全面を被覆する。水利の良いところでは被覆後畦間にかん水する。その後ハウスでは全体を密閉し、露地では小トンネルをかける。密閉中、乾燥する場合は1~2回水分を補給する。
4.処理効果と対象病害虫
区分 | 処理効果の程度 | 対象病害虫 |
参考事項 |
---|---|---|---|
ハウス | 効果顕著なもの | キュウリつる割病 ナス半身萎ちょう病 ナス根腐萎ちょう病 ピーマン疫病 エンドウ立枯病 キュウリ・トマトネコブセンチュウ イチゴネグサレセンチュウ |
|
発病抑制、軽減効果の高いもの |
トマト褐色根腐病及び黒点根腐病 |
菌密度の高い場合は数年継続処理する。 |
|
露地 | 効果顕著なもの | ネギ黒腐菌核病 |
マルチ |
発病抑制、軽減効果の高いもの |
アブラナ科 根こぶ病 |