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群馬県情報公開条例の解釈及び運用基準(11~14条)

更新日:2022年4月1日 印刷ページ表示

第4章 公文書の開示

第11条(開示請求権)関係

(開示請求権)

第11条 何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。

趣旨

本条は、開示請求権の根拠規定であり、開示請求権の内容及び手続については、この条例が定めることを明らかにするものである。

解説

「何人」には、自然人、法人のほか、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」(民事訴訟法第29条)等も含まれる。

(1)「何人も」とは、〔1〕交通・通信手段や情報網の発達により、人や物などの交流が広域にわたって行われているなど、県民のみを開示請求権者とするのでは不十分な場合が多いこと、〔2〕今後、他の都道府県において請求権者の住所要件を撤廃していくことが考えられ、群馬県と他の都道府県の相互主義を考慮すべきこと、〔3〕海外からの請求を排除する積極的な意義も乏しいことなどから、日本国民(法人)のほか、外国人(法人)にも開示請求権を認めることとしたものである。

(2)代理人による請求については、代理関係を明らかにする書類(委任状等)の提出を求めて確認するものとする。

(3)未成年者又は成年被後見人であっても、開示を受ける公文書の意義、内容等を理解でき、かつ、費用負担の能力があると認められる場合には、単独の開示請求を認めることとし、それ以外の場合においては、親権者等法定代理人が請求するものとする。

第12条(開示請求の手続)関係

(開示請求の手続)

第12条 開示請求は、次に掲げる事項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を実施機関に提出してしなければならない。

(1)開示請求をする者の氏名又は名称及び住所又は事務所若しくは事業所の所在地並びに法人その他の団体にあっては代表者の氏名

(2)開示請求に係る公文書を特定するために必要な事項

(3)その他実施機関が定める事項

2 実施機関は、開示請求書に形式上の不備があると認めるときは、開示請求をした者(以下「開示請求者」という。)に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。この場合において、実施機関は、開示請求者に対し、補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない。

趣旨

本条は、開示請求は所定の事項を記載した書面により行うべきことを定めるとともに、開示請求書に形式上の不備がある場合の補正の手続を定めるものである。

解説

1 開示請求書(第1項)

(1)開示請求権の行使という重要な法的関係の内容を明確にするため、開示請求は書面を提出して行わなければならないこととしている。したがって、電話又は口頭による開示請求は認められない。ただし、開示請求をしようとする者が、身体の障害などにより自ら開示請求書に記載することが困難であると認められるときは、職員が代筆するなど適当な方法により対応するものとする。

(2)書面の提出は、窓口持参が原則であるが、必要な要件が満たされているときは、郵送又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)による信書の送達(以下「郵送等」という。)、ファクシミリ又は電子申請システムによることができるものとする。

(3)電話、電子メール又は口頭による開示請求については、認めないものとする。

(4)本条第1項各号に掲げる事項は、開示請求書の必要的記載事項であり、これらの事項の記載が欠けている場合には、不適法な開示請求となり、第2項の補正を求めることになる。
また、各号列記はされていないが、開示請求書に当然に記載すべき事項として、開示請求先である実施機関の名称及び本条例に基づく開示請求であることを明らかにする記載が必要である。実施機関の名称は、「すべての実施機関」等の包括的な記載では足りず、請求者が請求に係る公文書を保有していると考える具体的な実施機関名を記載しなければならない。
なお、外国人にも開示請求権を認めるが、多様な言語による開示請求に対応するのは実施機関の負担が過重なため、開示請求書等は日本語で記載するものとする。

(5)開示請求書における様式上(規則別記様式第1号参照)の記載事項のうち、郵便番号、電話番号、法人その他の団体の場合の担当者氏名は必要的記載事項ではなく、これらの記載がなくとも不適法な請求となるものではないが、第2項の開示請求書の補正の求め、補正の参考となる情報の提供や、以後の通知、連絡などに際して必要とされる場合があるので、記載されることが望ましい。
なお、開示請求者の押印は不要である。

(6)公文書を特定するために必要な事項については、実施機関の職員が、当該記載から開示請求者が求める公文書を個別具体的に識別できる程度の記載が必要である。しかし、開示請求をしようとする者は、求める情報が実施機関においてどのような形で存在しているかを知らず、的確な表示をするための情報を持っていないことが十分に予想されることから、実施機関は、開示請求をしようとする者が容易かつ的確に求める公文書を指し示すことができるよう、公文書を検索するための資料(文書ファイル基準表等)の提供を行う(第37条参照)。

(7)基本的に開示請求は1公文書ごとに行い、開示決定等も当該公文書ごとに行うものであるが、開示請求者の便宜を図るため、同一件名の複数の公文書又は関連する内容の複数の公文書を開示請求する場合は、1件の開示請求とすることができるものとする。

2 開示請求書の補正(第2項)

(1)「開示請求書に形式上の不備が認められるとき」とは、第1項の記載事項が記載されていない場合のほか、同項第2号の公文書を特定するために必要な事項の記載が不十分であるため開示請求に係る公文書が特定されていない場合を含む。

(2)「相当の期間」とは、群馬県行政手続条例(平成7年群馬県条例第44号。以下「行政手続条例」という。)第7条に規定する「相当の期間」と同義であり、当該補正をするために社会通念上必要とされる期間を意味し、個別の事案に即して、実施機関が判断する。

(3)第2項の規定により、相当の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合には、行政手続条例第7条により当該開示請求を拒否することができる。

(4)「補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない」とは、主として、公文書の特定が不十分である場合の実施機関の対応について規定したものである。公文書の特定は、開示請求の本質的な内容であり、開示請求者が行うものであるが、現実には、開示請求者が公文書を特定することが困難な場合が容易に想定されることから、実施機関に参考情報を提供する努力義務を課すことにより、開示請求制度の円滑な運用の確保を図ろうとするものである。

第13条(公文書の開示の原則)関係

(公文書の開示の原則)

第13条 実施機関は、開示請求があったときは、次条に規定する場合を除き、開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない。

趣旨

本条は、次条各号の非開示情報が記録されている場合を除き、実施機関に対し、開示請求に応じて公文書を開示しなければならない義務を規定することによって、「原則開示」の趣旨を明らかにするものである。

解説

(1)情報公開条例は、守秘義務との関係について明示的規定は置いていない。地方公務員は、地方公務員法第34条第1項等により、守秘義務を負っている。実施機関の職員に守秘義務を課す規定における秘密は、実質秘すなわち非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものと認められるものである(最高裁第二小法廷昭和52年12月19日決定、最高裁第一小法廷昭和53年5月31日決定)。実質秘を漏らした場合、地方公務員法第60条第2号等により刑罰を課されたり、同法第29条により懲戒処分を受けたりする可能性がある。

他方、情報公開条例は、非開示情報以外の公文書の開示を義務づけている。条例上、開示を義務づけられている情報を開示することは、地方公務員法第34条第1項等にいう漏洩行為には当たらず、守秘義務違反にはならないと解すべきである。条例第16条による裁量的開示の場合も同様である。

(2)地方自治法第100条、弁護士法第23条の2の規定等のように、法令の規定により実施機関に対して公文書の提出又は閲覧等を要求されることがある。これらの要求は、この条例に基づく請求とは異なるので、次条各号に該当するか否かによって当該要求の諾否を決定するものではなく、当該法令の趣旨、要求の目的、対象文書の内容等を考慮して諾否の判断を行うものである。したがって、次条各号に該当する情報であっても、提出等する場合もあり得る。

(3)本条例でいう「開示」とは、公文書の内容をあるがままに示し、見せることである。よって、開示・非開示の判断は、専ら開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されているかどうかによって行われる。また、一般的な情報公開制度の下では、何人に対しても等しく開示請求権を認めるものである。したがって、開示請求者が何人であるか、又は開示請求権者が開示請求に係る公文書に記録されている情報について利害関係を有しているかなどの個別的事情があっても、当該公文書の開示決定等の結論が異なるものではない。ただし、開示決定された公文書の開示の実施に当たり、公文書の保存、技術上の観点から、原本での閲覧を認めることが困難である場合等においては、一定の制約があり得る(第22条参照)。

(4)開示請求書の記載が公文書の一部の情報のみの開示を求めているような内容になっていたとしても、当該公文書の全体を対象として特定する必要がある(最高裁第三小法廷平成17年6月14日判決(平成13年(行ヒ)第263号)は、「本件条例が、本件条例に基づく公開の請求の対象を「情報」ではなく「公文書」としていることは明らかである。したがって,本件条例に基づき公文書の公開を請求する者が、…記録されている情報の面から公開を請求する公文書を特定した場合であっても、当該公文書のうちその情報が記録されている部分のみが公開の請求の対象となるものではなく、当該公文書全体がその対象となるものというべきである。」と判示する。)。ただし、請求者から明確な意思表示があれば、当該公文書の一部をページ単位で特定することも可能である。

第14条(非開示情報)関係

(非開示情報)

第14条 実施機関は、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合は、当該公文書を開示してはならない。

趣旨

本条は、開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合は、当該公文書を開示してはならない旨定めるものである。

解説

(1)原則開示のルールの下では、非開示情報に該当するとして例外的に非開示の決定がなされた場合、その非開示決定の妥当性を立証する責任は実施機関が負うものである。

(2)本条各号の非開示情報は、保護すべき利益に着目して分類したものであり、ある情報が各号の複数の非開示情報に該当する場合があり得る。また、例えば、ある個人に関する情報について、第2号のただし書の情報に該当するため同号の非開示情報には該当しない場合であっても、他の号の非開示情報に該当し非開示となることはあり得る。よって、ある情報を開示する場合は、本条の非開示情報のいずれにも該当しないことを確認することが必要である。

(3)本条各号で用いられている「公にすること」とは、秘密にせず、何人にも知り得る状態におくことを意味する。本条例では、何人も開示請求ができることから、開示請求者に開示するということは、何人に対しても開示を行うことが可能であるということを意味する。したがって、本条の各号において非開示情報該当性の判断をする場合、各号に規定された「おそれ」の有無等については、「開示請求者に開示することにより」ではなく、「公にすることにより」判断することとしている。

(4)非開示情報該当性は、時の経過、社会情勢の変化、当該情報に係る事務・事業の進行状況等の事情の変更に伴って変化するものであり、開示請求があった都度判断しなければならない。このような変化は、「おそれ」が要件となっている非開示情報の場合に顕著であると考えられる。一般的には、ある時点において非開示情報に該当する情報が、別の時点においても当然に非開示情報に該当するわけではない。なお、個々の開示請求における非開示情報該当性の判断の時点は、開示決定等の時点である。

第14条第1号(法令秘情報)

(1)法令等の定めるところ又は実施機関が法律若しくはこれに基づく政令により従う義務を有する各大臣その他国の機関の指示により、公にすることができないとされている情報

趣旨

本号は、法令若しくは条例の定めるところにより公にすることができない情報は、この条例によっても開示できないことを確認的に規定するとともに、各大臣その他国の機関からの法的拘束力をもった指示により公にすることができないとされている情報については、開示しないことを定めるものである。

解説

(1)「法令等の定めるところ…により、公にすることができないとされている情報」とは、法令等の規定で明らかに開示することができない旨が定められている情報のほか、法令等の趣旨、目的から開示をすることができないと認められる情報を含むものであり、例えば次のようなものをいう。

〔1〕明文の規定をもって開示が禁止されている情報

〔2〕目的外の使用が禁止されている情報

〔3〕手続の公開が禁止されている調停等に関する情報

〔4〕個別法により守秘義務が課されている情報

〔5〕その他法令等の趣旨・目的から、開示をすることができないと明らかに認められる情報

(2)「実施機関が法律上若しくはこれに基づく政令により従う義務を有する各大臣その他国の機関の指示により、公にすることができないとされている情報」とは、例えば、法定受託事務における各大臣からの指示(地方自治法第245条の7)等法的拘束力のあるものをいう。

第14条第2号(個人情報)

(2)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項をいう。次条第2項において同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報

ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報

ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員、地方独立行政法人の役員及び職員並びに公社の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名(当該公務員等の氏名を公にすることにより、当該公務員等の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除く。)並びに当該職務遂行の内容に係る部分

趣旨

本号は、個人に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。

解説

1 本文

(1)個人に関する情報については、個人のプライバシーなどの権利利益を害するおそれがあるものに限って非開示情報とする方式(プライバシー保護型)を採用している県もあるが、いわゆるプライバシーの概念は、法的にも社会通念上も必ずしも確立したものではないことから、本条例では、個人の権利利益の十分な保護を図るため、特定の個人を識別できる情報は、原則として非開示とする方式(個人識別型)を採用している。しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を超えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、特定の個人を識別することができるもの(以下「個人識別情報」という。)を原則非開示とした上で、個人の権利利益を侵害せず非開示にする必要のないもの、及び個人の権利利益を侵害しても開示することによる公益が優先するため開示すべきものを、本号イからロで例外的事項として限定列挙している。

(2)「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。

(3)個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別情報を一般的に非開示とし、本号本文の判断に当たり、原則として、公務員等に関する情報と非公務員等に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、特に非開示とすべきでない情報を本号ハにおいて除外している。

(4)「個人」には、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。生前に本号により非開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適当であるからである。

(5)「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人その他の団体に関する情報と同様の要件により非開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外している。

(6)「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号等)などが挙げられる。氏名以外の記述等においては、単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することとなる場合が多いと考えられる。また、群馬県個人情報保護条例(平成12年条例第85号)第2条第1項第2号に規定する「個人識別符号」に該当する旅券番号、自動車運転免許証番号、国民健康保険等の被保険者証の記号・番号及び保険者番号等については、無条件で「その他の記述等」に該当する。

(7)「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報全体である。

(8)「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」とは、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別可能となるものについても、個人識別情報として非開示情報となるという趣旨である。

照合の対象となる「他の情報」としては、公知(周知)の情報や、図書館などの公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれると解する。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。

照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に適切に判断することが必要となる。

(9)個人識別性の判断に当たっては、厳密には個人識別情報ではないが、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から個人識別性を認めるべき場合がある。例えば、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合がこれに当たる。

(10)「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、実施機関が保有する個人情報の大部分は個人識別情報であり、これを非開示とすることで、個人の権利利益の保護は基本的には十分確保されると考えられるが、中には、匿名の作文や無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められたりするものがあり得ることから、補充的に非開示情報として規定したものである。

2 イ

(1)個人識別情報であっても、一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。

(2)「法令等の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は「公にされている情報」には該当しない。

(3)「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。

当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。

(4)「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることを意味するが、現に公知(周知)の事実であることまでは必要としない。

過去に公にされたものであっても、時の経過により現に公衆が知り得る状態に置かれていなければ、開示決定等の時点では公にされているとはいえない場合があり得る。

(5)「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上、通例、公にされるものも含まれる。

3 ロ

(1)人の生命、健康その他の基本的な権利利益を保護することは、実施機関の基本的な責務である。

非開示情報該当性の判断に当たっては、開示することの利益と開示されないことの利益との調和を図ることが重要であり、個人情報についても、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、それを開示する必要性と正当性が認められることから、当該情報を開示しなければならないこととするものである。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活及び財産の保護についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である。

(2)人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(第16条)により図られる。

4 ハ

(1)公文書には、公務遂行の主体である公務員の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、県の諸活動を説明する責務を全うするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で、公務員についても、個人としての権利利益は十分に保護する必要がある。

この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職及び氏名」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ特定の公務員が識別される結果になるとしても、当該公務員個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除き、個人に関する情報としては非開示とはしないこととする趣旨である。

なお、独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員及び職員については、独立行政法人等及び地方独立行政法人が行政を担う主体であり、その役員及び職員については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)においても公務員と同様の取扱いをしていることから、本号においても公務員と同様に取り扱うこととする。また、公社の役員及び職員についても、公社が広い意味での県行政を補完する業務を行っていることから、公務員と同様に取り扱うこととするものである。

(2)「公務員等」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方など公務員等以外の個人情報である場合がある。このように一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに非開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての非開示情報該当性と他の個人にとっての非開示情報該当性が別個に検討され、いずれかが非開示情報に該当すれば、当該部分は非開示とされることになる。

「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員及び地方議会議員並びに独立行政法人等、地方独立行政法人及び公社の役員及び職員等を含む。また、公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、公務員等であった当時の情報については、本号ハの規定は適用される。

(3)「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。

(4)本号ハは、具体的な職務の遂行と直接の関連を有する情報を対象とし、例えば、公務員等の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は管理される職員の個人情報として保護される必要があり、本号ハの対象となる情報ではない。

なお、「休暇情報等」でも、特定の日に職務に従事していなかったこと、職務専念義務が免除されていたこと、欠勤していたこと等の情報は本号ハに該当する可能性がある。ただしこの場合にも、年次有給休暇、病気休暇などの休暇の種別や、職務専念義務免除の個別具体的な内容、欠勤の理由等は本号ハに該当せず非開示情報として取り扱う(最高裁第二小法廷平成15年11月21日判決(平成12年(行ヒ)第334号))。

(5)「そのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名」は、職務の性質上、個人の権利利益を害するおそれが強いと実施機関が判断した職にある公務員を保護するために設けたものである。これに該当する職にある者として、警察本部告示(平成14年群馬県警察本部告示第1号)において、「警部補以下の階級にある警察官及びこれに相当する警察職員をもって充てる職」が指定されている。

5 本人からの開示請求

本条例の開示請求制度は、何人に対しても請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、個人識別情報等(本号本文)であれば、本号イからハ又は公益上の理由による裁量的開示(第16条)に該当しない限り、非開示となる。

なお、本人情報の開示請求については、群馬県個人情報保護条例を参照のこと。

6 食糧費支出に係る公文書の開示の取扱い

公文書の開示等に関する条例においては、公務員の職・氏名についても個人情報に該当し非開示とされていたが、食糧費支出に関しては、行政の透明性確保のため、平成8年5月24日付広第5号(食糧費支出に係る公文書の開示取扱について(通知)総務部長から各実施機関(議会、公安委員会及び警察本部長は除く。)及び各所属長あて)により、会議に伴う弁当、茶菓子及び式典、イベントに伴う飲食等については、相手方を含めた出席者の職・氏名を開示することとし、また、意見交換、情報収集、交渉、協議、打合せ等に伴う飲食についても相手方を含めた出席者の職・氏名は原則開示としてきたところである。

群馬県情報公開条例においては、本号ハにより、職務の遂行に係る公務員の職・氏名は、当該公務員の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除き、開示されるものである。

また、公務員以外の食糧費支出の伴う会議等出席者の職・氏名については、前述の通知により平成8年6月1日以降に作成・取得した公文書(決裁・供覧済みのものに限る。)の原則開示が統一的に行われ、すでに定着したものであるので、本号イの「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当すると考えられる。よって、食糧費支出に係る公文書に記載されている公務員以外の出席者の職・氏名についても、原則として、非開示とする個人情報には当たらないと解する。なお、会議等の内容によっては、公務員・公務員以外を問わず、第6号等他の非開示情報に該当することはあり得る。

第14条第3号(法人等事業情報)

(3)法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び公社を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの

ロ 実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

趣旨

本号は、法人等に関する情報の非開示情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。

解説

1 本文

(1)「法人その他の団体」には、株式会社等の会社、一般財団(社団)法人、公益財団(社団)法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等(民事訴訟法第29条)も含まれる。

国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び公社については、その公的性格にかんがみ、法人等とは異なる開示・非開示の基準を適用すべきであるので、本号から除き、その事務又は事業に係る非開示情報は、第6号等において規定している。

(2)「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報など、法人等と何らかの関連性を有する情報を指す。

なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。

(3)「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、(2)に掲げた法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益などについて非開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号で規定しているものである。

(4)本号のただし書は、第2号ロと同様に、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないとするものである。この場合には、現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害などとの明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害などの発生が予想される場合もあり得る。

(5)法人等を代表する者が職務として行う行為に関する情報は、第2号の個人情報ではなく、法人等の事業に関する情報として非開示情報該当性を判断する必要がある。この点について、最高裁第三小法廷判決(平成15年11月11日 平成10年(行ヒ)第54号)は、次のように述べる。「法人等を代表する者が職務として行う行為等当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報については、専ら法人等に関する情報としての非公開事由が規定されているものと解するのが相当である。したがって、法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報は、(個人情報)に当たらないと解すべきである。そして、このような情報には、法人等の代表者又はこれに準ずる地位にある者が当該法人等の職務として行う行為に関する情報のほか、その他の者の行為に関する情報であっても、権限に基づいて当該法人等のために行う契約の締結等に関する情報が含まれると解するのが相当である。」

2 イ

(1)「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を指す。

(2)「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。

(3)「その他正当な利益」とは、ノウハウ、信用等、法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。

(4)「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々なものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある。

なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

(5)本号イに該当する可能性のある情報の会社における具体例としては、製造工程、製造方法など生産・管理のプロセスに関する情報であって、公にすることにより当該情報が競争相手に知られる蓋然性が高いなど正当な利益を害するおそれがある情報、資金調達状況など通常一般に入手できない財務に関する情報、販売計画など販売上の戦略が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの、雇用方針など経営方針が明らかにされ又は具体的に推測される情報で通常一般に入手できないもの等が挙げられる。

なお、これらの例は他の法人等においても同様に考えることができるが、法人により根拠法令・適用法令が異なるため、本号イに該当する範囲もおのずと異なることに留意する必要がある。

3 ロ

(1)本号は、法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、非開示情報として保護しようとするものであり、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護しようとするものである。なお、実施機関の情報収集能力の保護は、別途、第6号等の非開示情報の規定によって判断されることとなる。

(2)「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」には、実施機関の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、実施機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、実施機関がこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれ得る。

(3)「要請」には、法令等に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、実施機関が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。

(4)「公にしない」とは、本条例に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんのこと、第三者に対しても当該情報を提供しないという意味である。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。

(5)「条件」については、実施機関の側から公にしないとの条件で情報の提供を申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から実施機関の情報提供要請に対して公にしないとの条件を付すことを申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては黙示的なものも含まれる。

(6)「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、それらが属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。

(7)公にしないとの条件を付すことの合理性の判断は、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して行うものであるが、必要に応じその後の変化も考慮するものである。したがって、公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、本号ロには当たらない。

第14条第4号(公共安全情報)

(4)公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報

趣旨

本号は、公共の安全等に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。

解説

(1)公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために国及び地方公共団体に課せられた重要な責務であり、情報公開制度においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。

そこで、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示とし、その判断の司法審査に当たっては、実施機関の裁量を尊重することとするものである。

(2)「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。なお、県民の防犯意識の啓発、防犯機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報については、本号に該当しない。

「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。

「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)などのために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。刑事訴訟法によれば、犯罪捜査の権限を有する者は、検察官、検察事務官及び司法警察職員であり、司法警察職員には、一般司法警察職員と特別司法警察職員とがある。

「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備などの活動を指す。

「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法第1編第2章に規定された死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、本号に該当する。

(3)ここでいう「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防・鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。

刑事訴訟法以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、独占禁止法違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、本号に含まれる。

また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や、被疑者・被告人の留置・勾留に関する施設保安に支障を生じるおそれがある情報も、本号に含まれる。

一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の、一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報は、本号に該当するものではなく、第6号等により開示・非開示が判断されることとなる。

(4)「その他の」公共の安全と秩序の維持とは「犯罪の予防」、「犯罪の鎮圧」、「捜査」、「公訴の維持」又は「刑の執行」のほか、平穏な市民生活、社会の風紀、その他公共の安全と秩序を維持するために必要な活動をいう。

(5)「支障を及ぼすおそれがある」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序を維持するための諸活動が阻害される、若しくは適正に行われなくなる、又はその可能性がある場合をいう。

(6)実施機関の第一次的判断

「支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」としているのは、本号に規定する情報に該当するかどうかの判断に当たっては、実施機関の裁量を尊重するという趣旨である。すなわち、本号に規定する情報の開示・非開示の判断には、犯罪などに関する将来予測としての専門的・技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから、司法審査の場においては、裁判所は実施機関の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かを審理・判断するのが適当であるとして規定したものである。

なお、「相当の理由がある」か否かについて述べられた判例には、次のものがある。

「その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。」(最高裁大法廷昭和53年10月4日判決)

(7)具体例

対象となる公文書は、捜査機関が作成又は取得したものに限らず、開示請求を受けた実施機関自らが作成し、又は捜査機関等から取得したものも該当する場合がある。

本号に該当する情報は、例えば次のようなものをいう。

  • 犯罪の捜査等の事実又は内容に関する情報
    • 麻薬覚せい剤協力調査に関する情報
  • 犯罪捜査の手法、技術、体制等に関する情報
    • 犯罪捜査等に用いる機材等の性能に関する情報
  • 情報提供者、被疑者、捜査員等関係者に関する情報
  • 犯罪の予防、鎮圧に関する手法、技術、体制等に関する情報(犯罪の目標となることが予想される個人の行動予定、施設の所在や警備の状況に関する情報を含む。)
    • 火薬庫台帳
    • 毒物・劇物台帳
    • 麻薬・覚せい剤・大麻の取扱業者名簿
    • 庁舎警備業務日誌
  • 被疑者・被告人の留置・勾留に関する情報

第14条第5号(審議検討情報)

(5)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人及び公社の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

趣旨

本号は、審議、検討等情報の非開示情報としての要件を定めるものである。

解説

(1)開示請求の対象となる公文書は、決裁、供覧等の手続を終了したものに限られないことから、県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人及び公社の内部又は相互間における意思決定前の審議、検討又は協議の段階において作成又は取得された文書であっても、組織的に用いるものとして現に保有していれば対象となるものである。

このように、開示請求の対象となる公文書の中には、実施機関等としての最終的な決定前の事項に関する情報が少なからず含まれていることになるが、このような情報を意思決定前であるということで一律にすべて非開示とすることは、県がその諸活動を説明する責務を全うするという観点からは適当ではないので、これらの実施機関等の意思決定等への支障が看過し得ない程度である場合に限り、非開示とすることとしたものである。

(2)「審議、検討又は協議に関する情報」とは、県の機関等の事務又は事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策などの選択肢に関する自由討論のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は実施機関が開催する有識者、関係法人等を交えた研究会などにおける審議や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成又は取得された情報をいう。

(3)「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、公にすることで、外部からの圧力や干渉などの影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したもので、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。

例えば、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」としては、審議、検討等の場における発言内容が公になることにより、発言者やその家族に対して危害が及ぶことが危惧され、発言を抑制してしまうおそれが考えられる(この場合には、第14条第4号等の非開示情報に該当する可能性もある。)。また、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」としては、実施機関等の内部における政策の検討が不十分な段階での情報が公になり、外部からの圧力により当該政策が不当な影響を受けるおそれが考えられる。

(4)「不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、県民の誤解や憶測を招き、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が公にされることによる県民への不当な影響が生じないようにするという趣旨である。

(5)「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合を想定したもので、事務又は事業の公正な遂行を図るとともに、県民への不当な影響が生じないようにするという趣旨である。

例えば、施設などの建設計画の検討状況に関する情報が開示されたために、土地の買い占めが行われて地価が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得るおそれや、違法行為の事実関係についての調査中の情報が開示されたために、結果的に違法・不当な行為を行っていなかった者が不利益を被るおそれがないようにすることをいう。

(6)上記(3)、(4)及び(5)のおそれの「不当に」とは、審議、検討等の途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保などへの支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と非開示にすることの利益とを比較衡量した上でなされる。

(7)審議、検討等に関する情報については、意思決定が行われた後は、一般的には当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の非開示情報に該当する場合は通常少なくなるものと考えられる。

しかし、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われるなど審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合もあり、このような場合には、意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は他の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が行われるものであることに注意が必要である。

また、当該審議、検討等に関する情報が公になると、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、県民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えたりするおそれがある場合は、本号に該当する。

なお、専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実又はこれに基づく分析等を記録したものについては、審議、検討等に関する情報であっても、意思決定が行われた後は本号に該当する可能性が低いものと考えられる。

第14条第6号(事務事業情報)

(6)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの

イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ

ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ

ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ

ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ

ホ 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

趣旨

本号は、事務又は事業に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。

解説

1 本文

(1)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社(以下「県の機関等」という。)が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非開示とする合理的な理由がある。しかし、県の機関等が行う事務又は事業は広範かつ多種多様であり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある事務又は事業の情報を事項的にすべて列挙することは技術的に困難であり、実益も乏しい。そのため、各機関に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを「次に掲げるおそれ」としてイからホまで例示的に掲げた上で、これらのおそれ以外については、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」として包括的に規定した。

(2)「次に掲げるおそれ」としてイからホまで掲げたものは、県の機関等に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的なものである。これらの情報のほかにも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業に関する情報であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものなど、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のある情報はあり得る。

(3)「当該事務又は事業の性質上」とは、適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するに当たっては、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法などに照らして行うという趣旨である。

(4)「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」については、実施機関に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務又は事業がその根拠となる規定又はその趣旨に照らして公益的な開示の必要性などの種々の利益を考慮した上での「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。

「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。

2 イ

(1)「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいう。

「検査」とは、法令等の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格・等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。

「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態で確保することをいう。

「試験」とは、人の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。

「租税」には、国税、地方税がある。「賦課」とは、公租公課を特定の人に割り当てて負担させることをいい、「徴収」とは、租税その他の収入金を取り立てることをいう。

(2)上記の監査等は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価、判断を加えた上で、一定の決定を伴うことがある事務である。

これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報や試験問題などのように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽を容易にしたりするなどのおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とするものである。また、事後であっても、例えば、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当する。

3 ロ

(1)「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。

「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。

「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいい、訴訟、行政不服審査法に基づく審査請求、その他の法令に基づく不服申立てがある。

(2)県の機関等が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。

これらの契約等に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を事前に公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるおそれや、交渉や争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とするものである。

4 ハ

(1) 県の機関等が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)の成果については、社会、県民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員がその発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。

(2) 調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、〔1〕知的所有権に関する情報や調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く県民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがある場合、〔2〕試行錯誤の段階の情報で、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報を非開示とするものである。

5 ニ

県の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で、当該組織の独自性を有するものである。

人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報を非開示とするものである。

6 ホ

県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業をいう。)又は独立行政法人等、地方独立行政法人若しくは公社に係る事業については、企業経営という事業の性質上、第3号の法人等に関する情報と同様な考え方でその正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがある情報を非開示とするものである。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、また、その開示の範囲は第3号の法人等とは当然異なり、その事業に関する情報の非開示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。