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令和2年度群馬県感染症流行予測調査結果について

更新日:2021年12月28日 印刷ページ表示

 感染症流行予測調査事業では、定期予防接種の対象となっている疾患(ポリオ、インフルエンザ、日本脳炎、風しん、麻しん、ヒトパピローマウイルス感染症、水痘、B型肝炎、インフルエンザ菌感染症、肺炎球菌感染症、ロタウイルス感染症)について、予防接種法に基づき、次のような調査を行っています。

  • 感受性調査(疾患に対する免疫を国民がどれくらい保有しているか:集団免疫の現状把握)
  • 感染源調査(どのような型の病原体が流行しているか、あるいは流行する可能性があるか:病原体の検索)

 これらの結果と他のいろいろな疫学的情報(地域、年齢、性別、予防接種歴など)を併せて検討し、予防接種が効果的に行われているかを確認すること、さらに長期的な視野で疾患の流行を予測することを目的としています。
 この調査では、厚生労働省、国立感染症研究所、都道府県および都道府県衛生研究所などが、それぞれの地域に住んでいる方に事業の目的を説明し、同意が得られた場合に調査に御協力いただいています。
 群馬県では今年度、感受性調査として麻しん・風しん・インフルエンザについて、感染源調査として日本脳炎(ブタ)・インフルエンザ(ブタ)について調査しました。

感受性調査

 感受性調査では、さまざまな年代の方々の血液中に含まれる抗体の量を測定し、感染症に対抗できる免疫をどれくらい保有しているか調べます。
 今年度は、麻しん・風しん・インフルエンザの3疾患について、血液中に十分な抗体を持っている人の割合(抗体保有率)の調査を行いました。なお、本調査への同意の得られた0歳から69歳の計493名を調査対象者とし、調査にあたっては、健康診断あるいは医療機関受診時に採取した血液の残余を利用しました。
 本県で実施した調査の結果は以下のとおりです。

令和2年度群馬県感染症流行予測調査(感受性調査)の概要(PDFファイル:185KB)

麻しん

  • 対象:0~69歳の412名の血清
  • 方法:ゼラチン粒子凝集法(PA法)
  • 判定:PA法では、PA抗体価が1:16以上で陽性と判定しますが、1:16~1:64では十分な発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、麻しんに対して十分な免疫があると考えられている1:128以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:PA抗体価1:128以上の抗体保有率は全体の82.0%で、昨年度(88.0%)より低い保有率でした(図1)。年齢群別では、2-9歳、25-29歳で90%以上の抗体保有率を示しました。抗体価が1:16未満の抗体陰性者は全体の7.3%で、昨年度(4.3%)より高い結果でした。抗体陰性者の割合について年齢群別でみてみると、0-1歳が最も多く56.0%でした。また、4-9歳(4.3%)、10-14歳(3.3%)、15-19歳(2.9%)、20-24歳(5.9%)、30-39歳(5.4%)、40歳以上(5.5%)の6つの年齢群でも抗体陰性者が認められ、2-3歳、25-29歳では認められませんでした。

図1:麻しん結果グラフ画像

風しん

  • 対象:0~69歳の493名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
  • 判定:HI法ではHI抗体価が1:8以上の場合に陽性と判定しますが、1:8及び1:16では十分な風しんの発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、抗体価が1:32以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:HI抗体価1:32以上の抗体保有率は全体の76.1%で、昨年度(77.4%)と同程度でした。(図2)男女別では男性が74.1%、女性が79.0%であり、男性よりも女性の保有率が約5%高い結果でした。年齢群別では、25-29歳(男性91.7%、女性:81.8%)で男女ともに80%以上の抗体保有率を示しました。また、男女で10%以上の差が見られる年齢群もあり、0-3歳(男性:52.2%、女性:35.3%)、4-9歳(男性:66.7%、女性:100.0%)、10-14歳(男性:56.3%、女性:100.0%)、40-49歳(男性:88.0%、女性:76.5%)、50-59歳(男性:72.2%、女性:93.3%)では、特に性差が見られました。

図2:風しん結果グラフ画像

インフルエンザ

  • 対象:0~69歳の404名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
    インフルエンザの感受性調査では、今シーズン(2020/21シーズン)のインフルエンザ流行開始前であり、かつ当該シーズンのインフルエンザワクチン接種前に採取した血清について調査を実施しました。今年度は以下のインフルエンザウイルス4種類の抗原について調査しました。これら4抗原は、いずれも今シーズンのワクチン株として選定されている抗原です。
    A/広東-茂南/SWL1536/2019(H1N1)
    A/香港/2671/2019(H3N2)
    B/ビクトリア/705/2018[ビクトリア系統]
    B/プーケット/3073/2013[山形系統]
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合に陽性と判定されますが、インフルエンザの感染リスクを50%に抑える目安と考えられている抗体価1:40以上の対象者の割合を抗体保有率としました。
  • 結果:A/広東-茂南/SWL1536/2019(H1N1)(図3)
    今シーズン(2020/21)からワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は13.1%でした。年齢群別では、10-14歳(28.6%)で最も高い保有率を示し、次いで20-29歳(22.2%)、15-19歳(20.6%)でした。一方、50-59歳(9.8%)や60歳以上(8.7%)、0-4歳(6.8%)で低い保有率を示し、最も低い保有率を示したのは40-49歳(3.7%)でした。

図3:インフルエンザA/広東-茂南/SWL1536/2019(H1N1)結果グラフ画像

  • 結果:A/香港/2671/2019(H3N2)(図4)
    今シーズン(2020/21)からワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は53.2%で、4抗原の中で最も高い保有率でした。年齢群別では、15-19歳(76.5%)で最も高い保有率を示し、次いで20-29歳(74.6%)、10-14歳(71.4%)、30-39歳(71.0%)で高い保有率を示しました。一方、60歳以上(21.7%)では比較的低い保有率を示し、最も低い保有率を示したのは0-4歳(13.6%)でした。

図4:インフルエンザA/香港/2671/2019(H3N2)結果グラフ画像

  • 結果:B/ビクトリア/705/2018[ビクトリア系統](図5)
    今シーズン(2020/21)からワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は2.5%で、4抗原の中で最も低い保有率でした。年齢群別では、40-49歳(11.1%)で最も高い保有率を示し、次いで15-19歳(5.9%)、50-59歳(3.9%)でした。一方、0-4歳、5-9歳、10-14歳、20-29歳、30-39歳、60歳以上の6つの年齢群では抗体保有者を認められませんでした。

図5:インフルエンザB/ビクトリア/705/2018 [ビクトリア系統]結果グラフ画像

  • 結果:B/プーケット/3073/2013[山形系統](図6)
    昨シーズン(2019/20)に引き続き、ワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は41.8%で、昨年度(46.1%)と比較すると抗体保有率は少し低くなりました。年齢群別では、15-19歳(64.7%)で最も高い保有率を示し、次いで30-39歳(57.0%)、20-29歳(54.0%)、5-9歳(50.0%)で比較的高い保有率を示しました。一方、60歳以上(17.4%)では比較的低い保有率を示し、最も低い保有率を示したのは0-4歳(15.9%)でした。

図6:インフルエンザB/プーケット/3073/2013[山形系統]結果グラフ画像

感染源調査

 感染源調査では、人や動物の体中あるいは環境中に病原体(感染症の原因)が存在しているか、存在している場合にはどのような種類かを調べます。
 今年度は、県内産のブタを対象に日本脳炎・インフルエンザの2疾患について、調査を行いました。
 本県で実施した調査の結果については以下のとおりです。

日本脳炎(ブタ)

 日本脳炎とは、主にコガタアカイエカが日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸血し、その後ヒトを刺すことによって起こる感染症です。ヒトが発症した場合は、重篤な急性脳症を起こすこともあります。
 日本脳炎の抗体価が高い場合は、そのブタが日本脳炎に感染している可能性が高いと考えられます。全体のブタの抗体保有率が上昇している場合、感染したブタを蚊が吸血し媒介することによって、ヒトに感染するリスクが高くなります。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計80頭の血清
  • 調査期間:令和2年7月13日から9月28日まで(計8回)
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合を陽性と判定し、さらに1:40以上の場合には2-メルカプトエタノール(2-ME)処理をします。なお、2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは直近で日本脳炎ウイルスに感染したと考えられます。
  • 結果:80頭について調査を実施したところ、HI抗体価1:10以上を示したブタは4頭(5.0%)でした。そのうち、1:40以上のブタは1頭確認されたため、2-ME処理を実施し、2-ME感受性抗体陽性となりました。(表1)
表1 ブタの日本脳炎ウイルスHI抗体・2-ME感受性抗体保有状況
採血日 頭数 HI抗体価 2-ME感受性抗体※注2
<10 10 20 40 80 160 320 640≦ 陽性数※注1 抗体陽性率 処理数 陽性数 抗体陽性率
7月13日 9 9               0 0.0%      
7月20日 11 10 1             1 9.1%      
8月3日 10 10               0 0.0%      
8月12日 10 10               0 0.0%      
8月24日 10 10               0 0.0%      
9月4日 10 10               0 0.0%      
9月18日 10 9   1           1 10.0%      
9月28日 10 8 1           1 2 20.0% 1 1 100.0%
合計 80 76 2 1         1 4 5.0% 1 1 100.0%

※注1 抗体価1:10以上を陽性とする。
※注2 2-メルカプトエタノール(2-ME)処理は、HI抗体価1:40以上で実施する。2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは直近で日本脳炎ウイルスに感染したと考えられる。2-ME処理を行った血清の抗体価が未処理の血清と比較して3管(8倍)以上低かった場合を陽性、2管(4倍)低かった場合を疑陽性、不変または1管(2倍)低かった場合を陰性と判定する。

インフルエンザ(ブタ)

 ブタは、ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの両方に感染することがあり、ブタの体内でウイルスが変異すると新しいインフルエンザウイルスが発生する可能性があります。そこで、新たなインフルエンザウイルスの出現監視を目的として調査を実施しています。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計101頭の鼻腔拭い液
  • 調査期間:令和2年11月から令和3年2月まで(計5回)
  • 方法:細胞培養法
  • 判定:ウイルスが細胞で分離された場合には、ウイルス同定検査を実施します。
  • 結果:インフルエンザウイルスは分離されませんでした。

謝辞

 感受性調査の実施にあたり、調査へ同意し検体を御提供いただいた0~69歳の493名の対象者の皆様、及び検体収集に御尽力いただいた各学校の先生方、桐生厚生総合病院、公立藤岡総合病院、地域医療機能推進機構群馬中央病院、国立病院機構高崎総合医療センター、前橋赤十字病院、県立小児医療センター、公益財団法人群馬県健康づくり財団、一般財団法人全日本労働福祉協会、その他各関係機関の皆様に厚く御礼申し上げます。
 また、感染源調査の実施にあたり、ブタの検体採取に御協力いただいた株式会社群馬県食肉卸売市場及び群馬県食肉衛生検査所の皆様に深謝いたします。

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