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堅果類の豊凶調査及びツキノワグマ出没への影響

予算区分 : 県単  研究期間 : 平成19~21年度
担当:企画・自然環境係 片平篤行

1 はじめに

 ツキノワグマの出没による農作物被害は毎年発生し、時には人へ危害を加え、人との軋轢を軽減し、被害発生を未然に防ぐ有効な手段が求められている。一般にクマの出没には堅果類の豊凶が関係すると言われており、その因果関係を考察する事はクマの保護管理、出没対策を検討する上で重要である。 このため、堅果類の豊凶調査とこれを利用する時期のツキノワグマの行動調査を3年間実施した。

図-1 装着状況の画像
図-1 装着状況

2 調査方法

1 GPS首輪を利用した行動調査

 学術捕獲個体に首輪型GPSを装着(図-1)の上放獣し、放獣後はラジオテレメトリにより定期的な位置確認を行った。予定調査期間終了後にGPS首輪を回収し、得られた測位データ、活動量データ等により、行動圏や活動状況の分析を行った。

2 堅果類の豊凶調査

 調査地域は利根沼田地域とし、基準地域メッシュを5km四方の28区画に区分して、双眼鏡を使用した目視調査を行った。調査時期は不良な堅果が落果し、健全堅果の目視確認が可能となる、8月下旬から9月下旬までとした。調査木(ブナ、ミズナラ、コナラ、クリ、ミズキの5種)は、28区画にランダムに配置し、市町村道や林道から目視が可能な、樹形全体を確認できるものを選木した。調査内容は目視による豊凶確認、胸高直径・樹高の計測等である。評価方法は、調査木を2~6分割し、この分割内の豊凶状況を表-1により評価する方法とした。これにより各調査木の豊凶を計算し、表-2により28区画の豊凶指数を算出した。

表-1 豊凶判定基準
豊凶判定
0 無結実
1 数個確認できる
2 一部に疎に着果
3 全体に疎に着果
4 全体に密に着果
5 全体に過密に着果
 
表-2 豊凶指数(%)
凶作 0
大凶作 0~10
凶作 11~25
並作 不作 26~45
並作 46~65
豊作 豊作 66~85
大豊作 86~100
 
表-3 行動圏及び環境利用状況
  M080828雄 F090811雌 F090817雌 M071113雄
最外郭行動域 70.0km2 11.2km2 3.0km2 20.7km2
集中利用域 7.5km2 5.6km2 1.5km2  
活動面積/日 0.46km2 0.46km2 0.36km2  
主な利用植生 クリ・ミズナラ群落
チシマザサ・ブナ群団
チシマザサ・ブナ群団
カラマツ植林
チシマザサ・ブナ群団
カラマツ植林
 
調査期間 平成20年8月28日~平成20年10月31日 平成21年8月11日~平成21年11月6日 平成21年8月17日~平成21年9月16日 平成21年11月13日
年齢 3才 5才以上 5才以上 3才

3 結果及び考察

1 ツキノワグマの行動特性

(1)行動圏及び環境選択傾向

 4頭の調査個体から得られた行動圏等の分析結果は表-3のとおりである。平成21年の雌2個体(F090811、F090817)は、チシマザサ・ブナ群団のごく狭い範囲で活動していた。平成20年の雄1個体(M080828)については季節移動が見られ、7km離れた3つの集中利用域を広範囲に利用し、主にクリ・ミズナラ群落が優占していた。この雄個体は平成20年に凶作だったブナ林分をあまり利用していないことから、エサの豊凶状況が行動域に影響したと考えられる。雌の2頭は同時期に行動域が重複しており排他的ではなかった。

(2)日周活動傾向

 1日の活動時間は3頭共に調査期間を通して、日の出前後(5時~7時前後)と日の入り前後(16時~18時前後)に多くなる傾向があった(図-2)。日別活動時間については、M080828とF090811で有意に異なり、M080828は秋の深まりとともに活動時間が多くなるが、F090811については10月を境に一箇所にとどまり、活動量が著しく低下した。この理由としては、平成21年のブナの実りが十分であり、移動することなくエサを確保できたためと考えられる。なお、調査期間中の人家周辺への出没はM080828のみで見られ、9月中旬まで発生していたが、中旬以降の出没は見られなかった。

2 堅果類の豊凶調査

 3カ年継続して調査した本数は、ブナ247本、ミズナラ132本、コナラ117本である。樹種別の平均豊凶指数(図-3折れ線グラフ)を見ると、3樹種ともに豊凶推移には相関があり、19年と21年が類似し、20年にはすべての実りが悪くなっている。調査木別に豊凶の推移を見ると、ブナは3年連続して凶作が多いものの、ミズナラ、コナラは不作の翌年には並作以上に実りが復活しており、不作の連続するブナに比べ、ミズナラ、コナラは、より重要な餌資源であると考えられる。

3 堅果類の豊凶とツキノワグマの出没について

 出没状況を有害捕獲頭数で判断すると、その変化は図-3(棒グラフ)のとおりである。調査地域に限ると、豊凶状況が出没に影響していると読み取れる。また、堅果類の調査メッシュ毎の豊凶状況から、凶作地域における出没の増加が確認された。この結果は、詳細な豊凶調査を継続する事による、出没エリアの予測の可能性を示唆している。ツキノワグマの有害捕獲は例年8月に集中しており、異常出没の年は9月以降に出没が継続する傾向がある。この豊凶調査の手法は、始期が8月下旬となるため、8月の発生予測は困難であるが、短期間に集中して調査を実施することにより、9月以降の出没予測と事前の出没への注意喚起が可能になると考えられる。

図-2 活動時間割合
図-3 豊凶指数と捕獲頭数

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