2012年秋以降のツキノワグマの出没予測について
~ツキノワグマの出没情報と堅果類の豊凶状況からみた出没の予測~
ツキノワグマの大量出没は平成18(2006)年、平成22(2010)年に全国的に発生しています。この年は県内でも出没が相次ぎ、人身被害が発生するなど大きな問題となっています。
群馬県内の今後のツキノワグマの出没について、2つの方法により分析したところ、秋以降の出没増加が予想されます。
クマとの被害に遭わないよう、山等への外出の際は十分御注意下さい。
1 ツキノワグマの出没パターンによる分析
旧沼田市内で発生するツキノワグマの出没情報を基に、出没月日と出没標高の相関を解析しました。方法は横軸に出没月日、縦軸に出没標高をとり、そこに形成されるパターンを分析しています。
過去の出没傾向の分析の結果、今年の出没パターンは凶昨年の傾向を示しており、今後も広い標高域で出没が続発することが予測されます。
<並作年・豊作年>
堅果類並作・豊作年として平成16(2004)年、平成19(2007)年のパターンを示しています。並作・豊作年には出没数が少なく、クマの出没標高は400メールより下がることはありませんでした。
この場合、9月以降の出没はないか、極端に減少する事がわかりました。


<凶作年>
凶作年の出没パターンとして、大量出没のあった平成18(2006)年、平成22(2010)年の相関図を示しています。凶作年には出没数も多く、標高400メールよりも低い位置で発生しています。
この場合、9月以降も高頻度に低標高域で出没が続発し、11月にかけて出没標高が更に下がる傾向が見られます。


<今年の出没傾向>
9月3日までの出没状況では、凶作年のパターンを示しています。今後も広い標高域で出没が続発することが予測されます。
なお、県内各地での出没標高は400メール限らず、人里近くでも出没が多くなることを示しています。

2 堅果類の豊凶調査結果(利根沼田地域)からの分析
堅果類の代表でもあるブナは6~7年の周期で大豊作があり、その翌年は大凶作になることが知られています。大豊作後の凶作として平成18年が上げられ、この年は人家や農地周辺で出没が長引いたことから、ツキノワグマが大量に捕獲されました。
今年度はブナがこの大凶作にあたり、実りが悪くなっています。利根沼田地域における豊凶調査の結果、ブナ無し、ミズナラ不作、コナラ不作、クリ不作となり、実りが良い状況ではありませんでした。
このため、山に戻ってもエサが少ないとから、秋以降の出没が続くことが予想されます。
(なお、林業試験場で行った「堅果類の豊凶調査とツキノワグマ出没への影響」の研究から、実りの悪い年には出没や農作物被害が多くなることがわかっています)
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