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水試だより49号

更新日:2017年5月1日 印刷ページ表示

【巻頭】平成29年度水産試験場 試験研究の取り組み

水産試験場 場長 金谷 道行

水産試験場長顔写真

 このたび、水産試験場長を拝命いたしました金谷(かなや)と申します。微力ではありますが、しっかりと職責を果たしてまいりたいと考えておりますので、皆様の御指導、御協力をお願い申し上げます。
 さて、水産試験場では、県内の水産振興を目的に、試験研究、種苗生産、普及活動の大きく三つの業務を行っており、試験研究では、ブランド魚である「ギンヒカリ」と「ハコスチ」の育成、アユの冷水病対策などの成果をあげているところです。
 そこで、平成29年度の研究課題から、主な取り組みを紹介いたします。

食用大型ニジマス「ギンヒカリ」

 大型で肉質がよい3年成熟系のニジマスです。養殖環境に左右されずに未成熟が維持できる2年成熟率の低いギンヒカリを育成します。

遊漁用ニジマス「ハコスチ」

 ひきが強く姿形が良いので釣り人に人気のある魚として注目されています。これらの特徴をさらに引き立てたハコスチの選抜を行っていきます。

ワカサギの増殖

 ワカサギの多くは県外から移入された卵を使用しています。そこで、県内の湖沼から採卵し、自然条件で安定的にふ化させる技術の開発に取り組みます。

冷水病耐性アユ(江戸川系)

 水産試験場では漁協等関係機関の協力をいただき、放流前アユの冷水病保菌検査を行うほか、菌の感染経路についても研究を行ってきました。
 また、冷水病に強いアユの育成に取り組んでおり、江戸川(旧利根川)で獲れたアユに冷水病菌を感染させて生き残ったアユを親魚として、「江戸川系」を育成しました。
 飼育方法を改善することで、ようやく安定した飼育生産が見込まれるようになり、今年度は河川での放流試験を行い、効果を確認することとしています。

水圏生態系における放射性セシウム動態解析

 赤城大沼と榛名湖では、ワカサギの放射性セシウム濃度は低くなり、現在では持ち帰りも可能となっています。そのメカニズムを詳しく知るため、水圏生態系内の動態調査を引き続き行います。

 水産試験場ではこのほか、現場の問題を解決する研究を行っております。職員一同全力で取り組みますので、皆様の御協力を重ねてお願いいたします。

【特集】遊漁用ニジマス「ハコスチ」の開発で知事表彰

はじめに

知事表彰の受賞風景の写真
知事表彰の受賞風景

 平成29年3月30日、群馬県庁正庁の間で平成28年度群馬県業績職員等表彰式が行われ、遊漁用ニジマス「ハコスチ」の開発により水産試験場(川場養魚センタ-)が知事表彰を受賞しました。水産試験場における知事表彰は、平成17年に3年成熟系ニジマス「ギンヒカリ」の開発で受賞して以来です。

ハコスチとは

 ハコスチ(遊漁用ニジマス)はギンヒカリ(食用ニジマス)に続く群馬県の第2のブランド魚として、交配により水産試験場で開発されました。交配には、鰭が傷つきにくく飼育が容易とされる「箱島」系の雌と、引きが強くて姿形のきれいな「スチールヘッド」系の雄を用いました。
 場内試験でハコスチの特性を評価したところ、極めて強い引きを確認することができました。また、釣りやすさの比較試験から、餌釣りでは釣りやすいので子供から大人まで楽しみやすく、ルアーでは釣りにくいので玄人好みの活用が期待されています。さらに、河川や管理釣り場で試験的に放流したところ、引きの強さとその持続性により遊漁者から極めて高い評価が得られています。平成28年1月に遊漁用のニジマスとして「ハコスチ」という名称で商標登録され、現在は県内複数の河川と管理釣り場に放流されています。

ハコスチのポスター画像
図 ハコスチのポスター

ハコスチの活用

 ハコスチの強い引きを体感した遊漁者からは大きな支持が得られており、ハコスチを河川や管理釣り場で利用することにより遊漁者数の増加が期待されます。なお、さらなるハコスチ普及のため、県ではパンフレットやポスター(図)を作成しました。

今後について

 ハコスチの生産体制を整備し生産量の拡大をめざしています。これにより、ハコスチを目当てとした県内外の遊漁者の増加を実現し、遊漁料収入が増えるのみならず、関連した観光施設における収益の増加に繋がっていければと考えています。

(川場養魚センター 松岡栄一)

【水産行政から】水産用抗菌剤の取扱い方法の変更

背景

 養殖業において、細菌性疾病が発生した場合、有効な対策の一つとして水産用抗菌剤を使用することがあります。しかし、不適切な水産用抗菌剤の使用は薬剤耐性菌の発生を招き、水産用抗菌剤の効果を低下させる要因になります。
そこで、平成30年1月1日から、薬剤耐性菌の蔓延防止を図るため、これまでの取扱方法が国主導により変更されることになりました。なお、養殖業者が水産用医薬品を使用した際は、これまでどおり使用記録票を作成します。

新たな変更点

1 使用指導書

 食用となる養殖魚の細菌性疾病を治療するための抗菌・抗生物質を購入する際には使用指導書が必要となります。
 なお、パイセスや水産用イソジン等の消毒剤、水産用マゾテン等の駆虫剤の購入には使用指導書は不要です。

2 水産用抗菌剤の購入手順

(1)使用指導書の発行申請

 養殖業者が水産用抗菌剤を購入する際は、水産試験場職員等の魚類防疫員や獣医師に使用記録票を添えて使用指導書の発行を申請します。

(2)使用指導書の交付

 魚類防疫員や獣医師は、魚病診断や過去の魚病発生事例をもとに使用指導書を養殖業者へ交付します。

(3)水産用抗菌剤の購入

 養殖業者は、医薬品販売業者に使用指導書の写しを提出し、水産用抗菌剤を購入します。

 本件に関する詳細な内容等については、蚕糸園芸課水産係または水産試験場までお問い合わせ下さい。

(蚕糸園芸課水産係 神澤裕平)

【試験研究から】カワウの漁業被害に関する調査

背景

営巣中のカワウの写真
写真 営巣中のカワウ

 昭和50~60年代において、群馬県内へのカワウの飛来はまれに目撃される程度でした。しかし、平成2年頃から県内へのカワウの飛来数は増加し、平成9年以降には営巣地(写真:1と2は親鳥、3~5は幼鳥)とねぐらが確認されるようになりました。それに伴い、魚類の食害による漁業被害と営巣地やねぐら周辺における鳴き声や糞尿による生活環境被害が顕著になりました。群馬県では平成12年から追い払いを中心としたカワウの漁業被害軽減対策、平成20年からはカワウ捕獲推進事業を開始しました。さらに、カワウの適正管理を行うために平成26年3月に群馬県カワウ適正管理計画が策定され、翌27年3月に第二種特定鳥獣管理計画・第一期計画に移行し、対策を推進しています。そこで、水産試験場と行政(蚕糸園芸課)がこれまで実施したカワウの漁業被害軽減対策について解説します。

カワウの生息状況調査

 県内の30ヶ所において、7、9および12月にカワウの飛来数を調査しています。平成20年以降には700から1,000羽程度が県内に生息していることが分かりました。この調査を基に漁業被害額と被害量を算定したところ、117~188百万円と125~197トンと見積もられ、大きな被害をもたらしていることが明らかになりました。

カワウの採食特性の解明

 カワウの採食場所選択に関し、県内における郊外の2河川および都市近郊の2河川の計4河川でカワウへの接近可能距離(FID)を調べました。同時にカワウの出現場所近辺の単位努力量あたりの漁獲量(CPUE)を求めて餌場としての価値の指標とすると共に、調査区内の通行量調査を行いカワウが人慣れする機会の目安としました。郊外河川におけるFIDは都市近郊河川のよりも大きい結果となりましたが、4河川の間で餌の量とFIDの関係はありませんでした。また、河川間のFIDと通行量には対応関係が認められました。カワウにとって無害な人と接する機会が増えることで人慣れが促進され、短縮されたFIDが摂餌成功率の向上に寄与することが示唆されました。

カワウの漁業被害軽減技術の開発

 飼育下のカワウを用いて設置型防除具(かかし)に対する忌避効果を評価しました。カワウは威嚇した人の服装の違いを認識できること、また、過去に受けたストレス経験を連想させる視覚(服装)や音などの刺激を組み合わせてカワウを威嚇することは、その忌避行動を増大・延長させるのに有効な手法であることが分かりました。以上のことから、カワウの駆除や追い払い時には、作業従事者の服装を可能な限り統一することが望ましく、これと同一の服装をさせたマネキン人形をかかしとして設置し、銃器や花火の音を発生させることができれば、設置型防除具の忌避効果を向上させることが可能になります。

カワウの胃内容物調査

 カワウ捕獲推進事業で県内各地の河川において捕獲されたカワウの胃内容物を調査しました。アユは夏季に捕獲されたカワウから確認されましたが、ウグイやオイカワを始めとしたコイ科魚類が優占種であることが明らかになりました。

今後について

 このように水産試験場は行政と一体となってカワウの生態解明、漁業被害状況の把握および被害軽減対策を講じてきました。今後も漁業資源を守るために、カワウの追い払いや駆除といった水際対策を継続し、漁業被害の軽減を図っていきます。

(水産環境係 鈴木究真)

平成29年度職員の配置

  • 場長 金谷道行
  • 次長(総務係長) 戸塚正幸
  • 主席研究員 久下敏宏
  • 総務係 係長 戸塚正幸(次長兼務)、富山摂子、青柳久仁子
  • 水産環境係 係長 新井肇、鈴木究真、鈴木紘子、渡辺峻
  • 生産技術係 係長 田中英樹、垣田誉志史、清水延浩、湯浅由美、重田英男
  • 川場養魚センター センター長 松岡栄一、松原利光、星野勝弘、山下耕憲

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