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繊維工業試験場 中期ビジョン

-連携によるイノベーションの創出を目指します-

(平成29年度~平成31年度)

1.現状とこれからの展望

1.繊維産業の状況

 我が国の繊維産業の製品出荷額は、平成3年をピークとし、平成26年は約3.8兆円とピーク時の1/3を下回っている状態である(※注1)。製品出荷額の減少に合わせ、90年代以降、輸入浸透率が増加し、平成25年には数量ベースで約96%に達するなど、国内基盤の消失が懸念される状況にある。
 本県においても、平成26年の繊維産業の製品出荷額は556.3億円と、国内と同様に、ピーク時の1/3を下回っている。加えて、本県の繊維関連企業は、企業数も減少しており、平成26年の事業所数は323と、10年前と比較して半減している状況である(※注1)。
 こうした現状については、競争激化による原価引き下げ圧力、それによる海外調達の増加、結果として企業の減少を招くといった課題が指摘されるところである(※注2)が、こうした状況を打開する道筋として、海外展開の拡大はひとつの方策である。国内市場の縮小が続く中で、例えば、ファッション市場においては、平成32年までに中華圏市場で約60兆円の拡大が予想される(※注3)など、アジアを中心に海外市場の成長余地はまだまだ見込まれ、これを積極的に取り込むことが、今後の企業の生き残り、自立化にとって重要である。
 そして、企業が自立化を果たすための源泉は何より、製品開発であり、また、それを支える技術力である。桐生をはじめとする繊維産地には、優れた技術や積極的な販路開拓により、高い競争力を有し、厳しい状況下においても力強く事業を継続している企業が少なくない。産地企業の最近の動きとして、ホームファッションの分野に新たな活路を見出すため、織り、編み、刺繍及び加工の各企業が共同でクッションを開発する「桐生クッション」プロジェクトなど、企業が連携して新しい製品開発を行う試みも始動している。さらには、新たなビジネスプランによって創業した企業もあり、後継者不足に悩む繊維業界にとって、将来の明るい兆しである。
繊維産業にチャンスをもたらす追い風も吹きつつある。
 「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録を契機に、素材としての絹が見直され、本県の「シルク製品」が改めて注目を集めている。また、近年、遺伝子組換え技術により新しいシルクを作り出す動きがはじまっており、本県においても新たなブランドシルクとして期待されている。
 平成28年、本県はベトナムの間で「経済交流に関する覚書」を締結した。成長著しい東南アジア市場を取り込み、本県の優れた繊維製品の輸出を拡大する足がかりとなる可能性もある。さらに、平成32年に開催を控えた東京オリンピック・パラリンピックは、和装文化をはじめ我が国の魅力を世界に発信する好機であり、繊維産業にとっても、大きな起爆剤となることが期待される。

  • (※注1) 平成26年工業統計調査(従業員4人以上)
  • (※注2) 繊維産業の減少及び今後の展開について(平成25年経済産業省)
  • (※注3) ファッション業況調査及びクールジャパンのトレンド・セッティングに関する波及効果・波及経路の分析(平成25年経済産業省)

2.現行ビジョンの概括

 現行ビジョン(平成26~28年度)では、「成果の見える、期待に応える試験場を目指す」ことをテーマに掲げ、各種の業務に取り組んだ。主な取組みの成果及び数値目標の達成状況は次のとおりである。
 これらの結果は、本ビジョンが展望するこれからの3年間において、引き続き、継承、発展させる成果の芽であり、次のステップである。

(1)取組みの概括

(繊維企業への着実な支援)
 品質の維持・向上及び試作開発を支援する依頼試験、依頼加工、企業が抱えるさまざまな問題に対応する技術相談など、企業支援に欠くことのできない基幹的な業務を迅速かつ丁寧に実施した。
 また、各種研修や講演会等による人材育成、情報提供等のほか、「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」をはじめとする補助金獲得のための積極的な支援を行った。

(伝統技術から先端テクノロジーまで幅広い研究開発を推進)
 ふい絹を効果的に使用した表情豊かなシルク製品の開発(27年度「ものづくり日本大賞」優秀賞受賞)など、群馬県産地のブランド力向上に寄与する研究開発に取り組んだ。
 また、「がん特区」における取組みとして、ナノファイバー上に血液中のがん細胞を濃縮する新たな診断方法の研究開発、さらには「製品開発のための研究会」の活動を通じて、ウエアラブルセンサーやアルギン酸繊維を用いた機能性繊維製品の開発を進めるなど、健康・医療分野を中心に、次世代産業分野への展開を図った。

(群馬らしさを持つ歴史的産地をバックアップ)
 「世界遺産関連絹製品開発研究会」の活動として、複数年にわたり「絹製品開発・販路支援事業」を行い、オリジナル県産シルク製品の開発や販路開拓を支援した。
 また、インターンシップ事業においては、ロンドン芸術大学・文京学院大学伝統工芸プログラム(28年度)に協力し、産地の持っている製造技術と若い感性のデザインを融合した、新たな製品開発の可能性を見出す試みに取り組んだ。

(繊維に特化した試験研究機関としての基盤を強化)
 紫外線オートフェードメーターなどの老朽化した試験機器の更新、平面ゼータ電位測定装置、赤外線サーモグラフィーなどの新規設備を、国の交付金等を積極的に活用して導入し、将来にわたり継続的な技術支援が行えるよう機能の充実を図った。
 さらに、信州大学繊維学部と連携協定を締結し(27年度)、繊維に特化した試験研究機関としての基盤を強化した。

(2)数値目標の達成状況

  • 依頼試験・加工の手数料は、27・26年度ともに目標額に僅かに達せず、28年度は目標額を上回った。技術相談、企業訪問は、各年度ともに目標を上回った。
  • 研究費の獲得は、受託研究、公募型共同研究及び外部資金研究の合計で、27・26年度ともに目標を達成したが、28年度は僅かに達しなかった。
  • 特許等の出願件数は、28年度において、実績をあげることができなかった。
  • 研修・講演会開催件数は、各年度ともに目標を達成した。
(数値目標の達成状況)
目標項目 現状 平成26年度 平成27年度 平成28年度
依頼試験・加工の手数料収入(千円) 目標 8600 8600 8600
実績 8331 8307 8669
技術相談(件) 目標 3200 3200 3200
実績 3447 3554 3495
企業訪問(件) 目標 200 210 220
実績 262 250 2748
研究費の獲得(千円)(※注4) 目標 10000 10450 10900
実績 10734 10904 10739
特許等の出願(件) 目標 2 2 2
実績 2 3 0
専門技術研修及び講演会の実施(件) 目標 7 7 7
実績 9 7 8
  • (※注4) 研究費の獲得は外部資金、公募型共同研究、受託研究の合計

3.利用企業の意向

 当場の主な利用企業に対し、試験場の取り組むべき課題や方向性についてヒアリング調査を実施した。寄せられた声を整理した結果は次のとおりである。

第1は、「研究開発」への期待である。
 常に新しい機能や性能を有した新製品開発が企業の維持・発展に必要であることは、各企業にとって、共通の認識・課題といえる。
 そのほか、試験場との共同研究や補助金獲得のための支援、信州大学や群馬大学をはじ
め大学との連携に対する期待も多かった。

第2は、「ブランド力」及び「商品化能力」の育成や強化に対する期待である。
 これには、下請け体質からの脱却のみならず、納入先の企画力低下により、商品提案力の強化が必要になっていることが背景にあると考えられる。
そのほか、関連する講演会・研修会の開催、デザイン・ファッション系大学等との連携を求める声もあった。

第3は、「人材育成」への期待である。
 各企業には、自社の製造工程に関する研修は、OJTとして実施している。しかし、中小・零細企業が多くを占める繊維企業にとって、繊維全般の基本的な知識や、自社で対応していない前後の工程についての基礎研修を行うことは容易でなく、試験場での取組みの充実に期待を寄せている。
 そのほか、伝統工芸技術・技能の伝承、「絹」を活かした製品開発やブランド化、客観的な「機能性評価」等について期待する声があった。

2.基本方針

1.本ビジョンのテーマ

 前項まで、繊維産業の状況や現行ビジョンにおける取組状況、さらには企業の当場への期待等について概観した。これらを踏まえ、本ビジョンのテーマを次のとおりとする。

「連携によるイノベーションの創出を目指します」

2.取組みの基本的な考え方

上記のテーマを掲げる基本的な考え方は次のとおりであり、当場は、この認識に立って、今後の施策に取り組んでいく。

(研究開発支援)
 厳しい繊維産業の現状を克服し、繊維産業に吹く追い風をしっかりと捉えていくためには、企業の成長の源泉である新商品開発、そのための研究開発を支援していくことが重要である。
特に、絹をはじめ、本県らしさや産地の魅力を発信する高い付加価値を持った製品開発、また、繊維関連技術を次世代産業分野(健康科学、環境・新エネルギー等)に応用する研究開発を重点に取り組む。

(商品化支援)
 世界遺産登録を契機とした絹への注目、東京オリンピック・パラリンピックの開催、ローカルブランディングによる地域振興など、新商品開発によりチャンスを広げる機運は高まりつつある。
 試作支援や製品評価はもとより、大学をはじめとする関係機関との連携により、ブランド化や新たなマーケットに向けた商品開発を支援する。

(人材育成支援)
 産地企業の存続、発展のため、高齢化の進展による後継者の不足に対応するとともに、高い発信力と感性を持った人材の輩出に貢献していく必要がある。
専門技術研修や要望に応じたオーダーメイド方式の受託研修、繊維大学等への講師派遣を実施する。特に、当場の強みでもある保有設備を活用した実践的な研修の充実を図る。

(外部機関との連携強化)
 繊維に関する支援機関が減少する中で、企業が求める支援を行うには、当場のみならず、企業、大学、他の試験研究機関など、外部資源を積極的に活用していくことが重要である。すでに協定を締結している信州大学繊維学部とは、大学の技術シーズを地域企業の製品開発につなげる橋渡しを行い、外部資金等による共同研究を推進する。
 また、広域関東圏で、繊維に関係する公設試験研究機関が連携して、地場繊維産業の支援強化を図れるような取組みについて検討を進め、可能なものから実施する。
他機関との連携関係を縦横に広げ、当場が、ハブ機能を持った連携拠点となって、”新たな価値の創造”(イノベーション)を実現する場となること目指す。

3.事業の実施方針

1.技術支援

(1)依頼試験・加工、技術相談

 企業からの依頼試験・加工や技術相談は、当場の最も基本的な業務である。とりわけ、桐生の地において、産地企業と顔の見える関係を築いてきた当場にとって、親切、丁寧な対応は、失ってはならない強みでもある。繊維専門の試験研究機関として、しっかりと役割を果たすべく、きめ細かな対応に万全を期していく。
 また、当場を利用したことのない繊維企業にとどまらず、他産業の関連企業の開拓に積極的に取り組み、新たな利用者の増加を図っていく。

(2)情報収集及び情報提供

 適切な支援を行うためには、何より利用企業の現状やニーズを把握することが必要である。そのため、さまざまな機会を通じ、企業訪問・企業との対話を積極的に行い、技術課題や企業動向についての情報収集を図る。
 また、最新技術や試験場での研究成果等について、ホームページ、業務報告書、情報誌「せんい技術情報」及びファクス&メール情報等により、積極的に情報提供していく。
 さらに、繊維工業技術振興会と協力し、技術講演会や技術セミナー等を積極的に開催し、新しい技術や素材、市場動向などについて、最新の情報を提供する。

2.研究開発

(1)繊維の新分野へ応用

 国内繊維市場においては、農業、環境、建築土木、自動車、航空宇宙など幅広い産業において、産業用資材としての繊維の活用が進んでいる。
 これまで、当場では、繊維技術を応用して、血液中のがん細胞を濃縮する新たな診断方法の開発や褥瘡予防のためのウエアラブルセンサーをはじめとした医療・健康分野、不燃性ガスの発生によりこれまでの常識を変える消火カーテン等の防災・生活分野、畜舎等を対象とした防臭ネット等の農業・環境分野など、非衣料分野における研究開発を着実に進めてきた。こうした成果をさらに進化させるとともに、これまで以上に、新たな研究開発に果敢に挑戦し、繊維企業の新分野への進出を支援する。
 支援にあたっては、当場のノウハウや知見に加え、関係機関の連携、コーディネートの強化を通じて、外部資源を有効に活用し、より効果的な事業展開を図る。

(2)外部資金の積極的活用

 研究開発の充実に向けては、最新の試験・研究機器の整備は欠くことのできない要素である。もとより、当場は開所以来40年近くを経過して、施設や試験機器の老朽化が目立っており、機器の更新・導入は喫緊の課題である。機器整備計画に基づき、計画的な更新を進めているものの、厳しい財政事情の中で、大型・高額機器をはじめ、その更新は容易な状況ではなく、今後の機器整備には、外部資金を有効に活用していくことが重要である。このことは、高度な研究開発を可能とするための研究資金についても同様である。
 近年は、地方創生の推進を目的とした交付金など、地域活性化の観点から、国の制度も活発となっており、さまざまな機会を捉え、環境整備や研究開発の充実にアプローチしていく必要がある。そのため、場内の体制整備も含め、情報収集力、事業化する企画力、課題に即応する機動力を強化し、外部資金の積極的な活用を図っていく。

3.商品化支援

(1)高付加価値商品の開発支援

 商品化のための試作支援や製品評価のため、依頼加工や依頼試験を引き続き行うほか、商品企画力やブランド化を図ることをねらい、大学等の教育機関など幅広い関係機関との連携により、高い付加価値を持った商品開発を支援する。
 さらに、県産絹のブランド化や、新たなマーケットに向けた商品開発を進めるため、若手人材や企業との連携関係の構築を目指す。
また、売れるものづくりを目指し、当場と企業、大学で構成した「製品開発のための研究会」の活動を充実し、得意分野や多様な視点を活かした新製品開発支援に取り組む。

(2)商品化のための技術支援

 試作や商品販売に係る技術資料作成等に取り組むとともに、民間企業と協働して新たな製品開発や販路支援を行った、オリジナル県産シルク製品の開発プロジェクトの成果や経験を今後の商品化支援方策に活かす。

4.人材育成

(1)各種研修事業の実施

 高齢化による後継者の不足や、新たな商品や技術を生む知恵やアイデアが今後の繊維産業を左右する大きな課題となる中で、繊維産業を担う人材の育成が急務である。
 このため、専門技術研修、企業からのオーダーメイド方式により、個別の要望に対応する受託研修の充実を図る。さらに、桐生繊維大学などへの講師派遣により、広く繊維知識の普及に貢献するとともに、産地の理解者と地元繊維企業の就業者を増やすため、学生のインターンシップを積極的に受け入れていく。

(2)繊維人材と産地の交流推進

繊維・ファッション系の大学等と連携し、当場が保有する設備、技術を活用した実践的な技術開発や製品開発に取り組む研修事業を実施し、次代を担う繊維人材を育成するとともに、産地との交流を活発化する。

4.数値目標等

 本ビジョンの期間において、達成を目指す数値目標は次のとおりである。

(1)3カ年の数値目標

3カ年の数値目標一覧
目標項目 平成29年度 平成30年度 平成31年度 備考
技術相談(件) 3400 3600 3800  
企業訪問(件) 240 270 300  
研究費の獲得(千円)(※注5) 11000 11500 12000  
商品化支援(件) 10件/3年間 新規目標
特許等の出願(件) 6件/3年間  
専門技術研修及び講演会の実施(件) 10 10 10 受託研修新規

(※注5) 研究費の獲得は外部資金、公募型共同研究(企業負担1/2)、受託研究の合計

(2)顧客満足度調査の実施

 数値目標による事業の進捗評価を補完し、その結果を当場の運営にフィードバックするため、「繊維工業試験場利用に関するアンケート調査(CS調査)」を毎年度実施する。
 アンケートは、依頼試験・依頼加工、技術相談利用者に対して行い、目的の達成度及び満足度等について調査する。

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