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令和3年 報告

更新日:2021年10月15日 印刷ページ表示

第1 職員の給与

1 職員給与の実態

 本委員会の勧告の対象となる職員は、群馬県職員の給与に関する条例(昭和26年群馬県条例第55号)、群馬県公立学校職員の給与に関する条例(昭和31年群馬県条例第41号)、群馬県一般職の任期付研究員の採用等に関する条例(平成13年群馬県条例第8号)及び群馬県一般職の任期付職員の採用等に関する条例(平成14年群馬県条例第62号)の適用を受ける職員であり、これらの職員は、その従事する職務の種類に応じ、行政職、公安職、研究職、医療職、教育職など14の給料表の適用を受けている。
 本委員会は、これらの職員について、本年4月1日現在における「令和3年職員給与等実態調査」を実施したが、その概要は、参考資料「1 職員給与関係」のとおりである。
 その結果によると、民間給与との比較を行っている行政職給料表又は事務職給料表の適用を受ける職員(本年度の新規学卒の採用者を除く。以下「一般行政職員」という。)の人数は4,715人、平均年齢は43.8歳で、平均給与月額は372,717円となっている。

(参考資料第1表~第10表)

2 民間給与の実態

 本委員会は、職員給与と県内の民間給与との精密な比較を行うため、企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の民間事業所のうちから、層化無作為抽出法によって抽出した179の事業所を対象に「令和3年職種別民間給与実態調査」を実施した。
 なお、本年は、昨年同様、新型コロナウイルス感染症に対処する医療現場の厳しい環境に鑑み、病院は調査対象から除外した。
 この調査では、一般行政職員と類似すると認められる事務・技術関係22職種の約7,200人及び研究員、教員等の32職種約200人について、本年4月分として個々の従業員に実際に支払われた給与月額等を詳細に調査した。
 本年の調査結果の概要は、参考資料「2 民間給与関係」のとおりである。

(参考資料第11表~第24表)

3 職員給与と民間給与との比較

(1)月例給

 本委員会は、「職員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」の結果に基づき、職員にあっては一般行政職員、民間にあってはこれと類似すると認められる事務・技術関係職種の従業員について、役職段階、学歴及び年齢階層を同じくする者同士の4月分の給与額をそれぞれ対比し、精密に比較(ラスパイレス方式)を行った結果、職員給与が民間給与を70円(0.02%)上回っていた。

職員給与と民間給与との較差
民間給与(A) 職員給与(B) 較差(A)-(B)(円)
(((A)-(B))/(B)×100)(%)
372,647円 372,717円 -70円(-0.02%)

(注)民間、職員ともに、本年度の新規学卒の採用者は含まれていない。

(2)特別給

 本委員会は、これまで民間における賞与等の年間支給割合(月数)を算出し、これを職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数と比較した上で、0.05月単位で改定を勧告してきている。
 前記の「令和3年職種別民間給与実態調査」の結果、昨年8月から本年7月までの1年間において民間事業所で支払われた賞与等は、年間で所定内給与月額の4.30月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数(4.45月)が民間における賞与等の年間支給割合(月数)を0.15月分上回っていた。

(参考資料第21表)

4 物価及び生計費

 総務省の調査による本年4月の前橋市における消費者物価指数は、参考資料「4 労働経済関係」のとおり、前年同月比0.5%の下落となっている。
 また、本委員会が同省の家計調査を基礎として算定した本年4月の前橋市における標準生計費は、参考資料「3 生計費関係」のとおり、2人世帯で171,580円、3人世帯で184,600円、4人世帯で197,680円となっている。

(参考資料第25表、第26表)

5 人事院の給与に関する勧告等

 人事院は、本年8月10日、国会及び内閣に対し、職員の給与に関する報告及び勧告を行うとともに、公務員人事管理に関する報告を行い、併せて、「国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出(以下「意見の申出」という。)」を行った。その概要は、参考資料「5 人事院勧告等の概要」のとおりである。

6 本年の給与改定

 本年の職員給与及び民間給与の実態とその比較、物価及び生計費の状況並びに人事院勧告等の概要は、以上のとおりである。
 本委員会は、これらの内容を総合的に勘案し、検討した結果、職員の給与改定について、以下のとおり判断した。

(1)月例給

 本年4月における職員給与と民間給与とを比較した結果、職員給与は民間給与を70円(0.02%)上回っている。
 本委員会は、このような状況を踏まえ、地方公務員法に定める給与決定原則に従い、職員の給与、民間給与の実態、物価及び生計費並びに人事院報告の内容等を勘案し総合的に検討した結果、職員給与と民間給与との較差が極めて小さいことから、月例給の改定を行わないことが適当であると判断した。

(2)特別給

 職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数が民間における賞与等の年間支給割合(月数)を0.15月分上回っていることから、民間における賞与等の年間支給割合(月数)に見合うよう、職員の期末手当・勤勉手当の年間支給月数の引下げ改定を行う必要がある。
 年間支給月数の引下げ分については、民間の賞与等の支給状況、人事院勧告等を踏まえ、期末手当から差し引くことが適当である。
 また、再任用職員、任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当についても、同様に年間支給月数を引き下げる必要がある。

7 育児休業制度の改正に併せた期末・勤勉手当の取扱い

 本委員会は、人事院が意見の申出を行った育児休業の取得回数制限の緩和について、本県においても検討を進める必要があることを第2・3において報告している。
 この検討に併せて、給与面においては、期末手当及び勤勉手当における在職期間等の算定に当たって、承認に係る期間が1か月以下である育児休業の期間は手当の対象となる期間から除算しないこととしている現行の取扱いを維持した上で、子の出生後8週間以内における育児休業の期間と、それ以外の育児休業の期間を合算しないこととすることを検討する必要がある。

第2 職員の勤務条件等

1 意欲と能力のある人材の確保

 近年、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や若者の就業意識の多様化などにより、県職員採用試験等の受験者数は減少している。一方で、地方公共団体は、新型コロナウイルス感染症への対応や、デジタルトランスフォーメーションの推進等の新たな行政課題に適切に対応し、引き続き質の高い公共サービスを効率的・効果的に提供することが求められている。このような状況から、意欲と能力のある人材を確保することは、喫緊の課題となっている。
 これまで本委員会においては、採用パンフレットの配布に加え、ホームページやSNS等を活用した効果的な広報活動の充実を図るとともに、一部職種については合格発表日の前倒しや受験資格の見直し、専門的な知識が必要な職種については追加募集の実施など、必要な人材の確保に向けた様々な取組を行ってきた。
 特に、昨年度からは新型コロナウイルス感染症に対応するため、従来の対面式に加えてオンライン就職説明会を新たに実施するほか、職員採用関連動画を作成しホームページに掲載するなど、積極的な情報発信に取り組んでいる。
 本委員会においては、今後もこうした取組を継続していくとともに、新たな行政課題に的確に対応するため、これまで以上に多様な人材を確保できるよう検討を行う必要がある。任命権者においても、一人でも多くの学生や社会人等に県行政の魅力ややりがいを効果的に発信するなど、必要な人材を確保する取組を継続的に進めていくことが重要である。

2 時間外勤務の縮減

 時間外勤務の縮減は、職員の心身の健康保持や公務能率の向上の観点から極めて重要な課題であるとともに、仕事と家庭の両立支援の推進や人材確保にも資するものであり、強くその実現が求められている。
 任命権者においては、これまで長年にわたり様々な取組を実施してきており、知事部局等では、令和元年度から時間外勤務命令を行うことができる上限が設定されたところであるが、新型コロナウイルス感染症や豚熱等の緊急事態に対して限られた人員で対応せざるを得ない状況により、時間外勤務が大幅に増加している所属もある。
 新型コロナウイルス感染症については、その発生から1年以上の長期にわたり対応してきているが、その収束は未だに見通せない状況である。
 このような状況を踏まえ、任命権者においては、機動的な人員配置、既存業務の徹底した見直しや、業務の効率的な執行等に取り組んできたところである。引き続きこれらの取組を行ってもなお恒常的な長時間の時間外勤務が見込まれる場合には、職員の健康保持を第一に考え、業務量に見合った人員を速やかに確保する必要がある。
 また、教育委員会では、昨年4月に施行された群馬県立学校の教育職員の業務量の適切な管理等に関する規則(令和2年群馬県教育委員会規則第11号)において、いわゆる時間外在校等時間の合計時間について上限が定められたところであり、引き続き教育職員の勤務時間を適正に把握するとともに、新型コロナウイルス感染症やICT教育推進への対応を含む新たな業務が増加していることから、一層の長時間勤務の解消に向けた取組を行っていく必要がある。
 本委員会としては、各任命権者において、職員の健康の確保に最大限の配慮を行うことを改めて求めたい。

3 妊娠、出産、育児等と仕事との両立支援

 職員が性別にかかわりなく育児等に取り組める職場環境づくりの推進は、優秀な人材の確保やキャリア形成の支援等の観点から極めて重要な課題である。
 国においては、昨年5月に「少子化社会対策大綱」が閣議決定され、男性の育児休業取得や育児参加を促進するための取組を総合的に推進することとされた。また、本年6月に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律(令和3年法律第58号)」が成立し、男性の育児休業取得のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組が創設されており、男性職員の育児に伴う休暇・休業の取得促進の取組を一層進めることが求められている。
 知事部局等においては、男性職員の育児に伴う休暇・休業の取得促進について、「配偶者出産休暇の取得」、「男性職員の産休5日以上取得」、「合計1か月以上の育児に伴う休暇・休業の取得」の3つの項目の達成率100%を目標とした取組を推進している。これらの目標が確実に達成されるために、任命権者においては、業務分担の見直しや必要に応じて代替職員を確保するなど職員がこれらの制度を利用しやすい環境を整備するとともに、職員においては、当該休暇・休業の意義を踏まえた上で計画的な取得に努めることが重要である。
 なお、人事院が意見の申出を行った育児休業の取得回数制限の緩和及び当該措置と一体的に講じることとしている休暇・休業等に関する各種措置については、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のための勤務環境整備に資するものと認められることから、今後の国の動向等を注視しつつ、本県においても検討を進める必要がある。
 併せて、本県において本年4月から創設された不妊治療のための特別休暇についても、人事院の報告を踏まえ、制度の拡充を検討する必要がある。

4 勤務環境の整備

(1)多様で柔軟な働き方の推進

 新型コロナウイルス感染症への対応を契機として、官民を問わず多様で柔軟な働き方が広がってきている。
 在宅勤務については、新型コロナウイルス感染症の防止対策にとどまらず、多様で柔軟な働き方の実現やワークライフバランスの充実、災害発生時の行政機能の維持等の観点からも有効であることから、実施方法等の柔軟化のほか、所属長の率先実施や在宅勤務推進週間の設置等、推進のための取組が行われている。一方で、在宅勤務のための通信機器等の環境整備が十分とは言えないことや、県民に直接接する窓口相談等、在宅勤務になじまない業務も多いことなどの課題がある。
 また、本年4月からは、「時差出勤」及び「休憩時間の弾力化」が制度化されている。
 各任命権者は、多様で柔軟な働き方の推進に資するこれらの取組の効果を十分に検証し、新型コロナウイルス感染症の収束後も引き続き定着させていくため、一層の取組を推進していく必要がある。

(2)心の健康づくりの推進

 職員が心の健康を保持することは、職員本人やその家族にはもちろんのこと、公務能率を向上させ、質の高い県民サービスを行っていく上でも、重要な課題である。
 メンタルヘルス対策については、これまでも任命権者において、各種取組を総合的・体系的に推進しているところであるが、依然として長期の病気休暇の取得や休職をしている職員が一定数おり、また、新型コロナウイルス感染症への対応等、前例がない困難業務への直面等により、心の不調を訴える職員の増加が強く懸念される。
 このような状況を踏まえ、今後も、ストレスチェック制度の有効活用等により職員自身のストレスへの気付きを促すとともに、職員が一人で悩みを抱え込むことのないよう、各種健康相談の積極的な周知等を一層進めていくことが重要である。加えて、長時間労働を行った職員に対し、産業医による面接指導等を適切に実施していく必要がある。また、管理監督職においては、日頃から、職員との意思疎通を積極的に図り、職員の心身の状況等を適切に把握することが求められる。

(3)ハラスメント防止対策

 職場におけるハラスメントは、職員の尊厳を傷つけ、その能力の発揮を妨げるとともに、職場の活力と機能の低下をもたらすものである。
 ハラスメントについては、これまでも「ハラスメント防止対策ハンドブック」の作成や、「懲戒処分の指針」の一部改正によるパワー・ハラスメントに関する規定の整備等、各種のハラスメント防止対策が講じられてきたが、職員の勤務意欲の向上や心身の健康、働きやすい職場環境を実現するため、引き続き対策を充実・強化し、有効に機能させる必要がある。

5 定年の引上げ及び能力・実績に基づく人事管理の推進

(1)定年の引上げ

 国は、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための「国家公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第61号)」を国会に提出し、本年6月に成立した。同時に、国家公務員の定年を基準としてその定年を条例で定めている地方公務員については、同様の措置を講ずることをその内容とする「地方公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第63号)」が成立し、両法律ともに令和5年4月から施行されることとなった。
 定年の引上げは、雇用と年金の接続が確実に図られる一方で、人事管理の根幹に関わるものであり、職員の給与体系や採用計画、さらには組織活力を維持するための方策等、検討すべき課題が多岐にわたる状況であるが、任命権者においては、これらの諸課題について、本県の実情を踏まえて丁寧に検討し、遺漏なく所要の準備を進める必要がある。

(2)能力・実績に基づく人事管理の推進

 能力・実績に基づく適切な人事管理は、より一層職員の士気を高め、その能力を最大限に発揮させるとともに、人材育成に資するものであり、組織活力を向上させるためにも重要である。
 また、能力・実績に基づく人事管理を更に推進していくためには、公平性や納得性の高い人事評価制度の運用や管理職員のマネジメント能力の向上が求められる。
 今年度から、各任命権者において、標準を上回る評価の昇給への反映が全職員に拡大されているが、人事評価制度に対する職員の理解を深めていくことが一層重要となっており、任命権者においては、引き続き人事評価制度の趣旨を踏まえた効果的な研修の実施等、積極的な取組を行っていく必要がある。
 なお、国においては、「人事評価の改善に向けた有識者検討会」(内閣人事局)の報告書を受けて人事評価制度の改正に向けた検討が行われているところであり、本県もその動向を注視していく必要がある。

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