本文
平成28年度群馬県歳入歳出決算審査意見書
群監第131-2号
平成29年9月13日
群馬県知事 大澤正明 様
群馬県監査委員 丸山幸男
群馬県監査委員 林章
群馬県監査委員 橋爪洋介
群馬県監査委員 星名建市
平成28年度群馬県歳入歳出決算の審査意見について
地方自治法第233条第2項の規定に基づいて審査に付された平成28年度群馬県歳入歳出決算及び同附属書類について審査した結果は、別紙のとおりです。
第1 審査の概要
1 審査の対象
平成28年度歳入歳出決算の審査対象は、次のとおりである。
- 平成28年度群馬県一般会計
- 平成28年度群馬県母子父子寡婦福祉資金貸付金特別会計
- 平成28年度群馬県農業改良資金特別会計
- 平成28年度群馬県県有模範林施設費特別会計
- 平成28年度群馬県小規模企業者等設備導入資金助成費特別会計
- 平成28年度群馬県用地先行取得特別会計
- 平成28年度群馬県収入証紙特別会計
- 平成28年度群馬県林業改善資金特別会計
- 平成28年度群馬県流域下水道事業費特別会計
- 平成28年度群馬県公債管理特別会計
- 平成28年度群馬県中小企業振興資金特別会計
- 平成28年度群馬県新エネルギー特別会計
2 審査の手続
平成28年度一般会計及び特別会計の決算審査に当たっては、審査に付された歳入歳出決算、同事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書について、(1)決算の計数は、正確であるか、(2)予算は、議会の議決の趣旨に沿い、適正かつ効率的に執行されているか、(3)収入支出等の事務は、関係法規に準拠し、適正に処理されているか、(4)財産の取得、管理及び処分は、適正になされているか、等に主眼をおき、関係帳票及び証拠書類等と照合し、関係者から説明を求めるとともに、定期監査及び例月現金出納検査等の結果も考慮に入れて慎重に実施した。
3 審査結果及び意見
審査結果
平成28年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算並びにそれぞれの附属書類を審査した結果は、次のとおりである。
決算の計数は、関係帳票、証拠書類及び指定金融機関の収納・支出の各計数と合致し、正確であることが認められた。
また、予算の執行、収入支出等の事務、並びに財産の取得、管理及び処分に関する事務は、関係法規に準拠し、おおむね適正に行われたものと認められた。
審査意見
(1)平成28年度の県内経済状況及び県の財政状況
平成28年度における本県の経済状況をみると、輸送用機械が北米需要の好調を背景に生産・輸出において前年度に引き続き高水準を維持し、また、雇用・所得環境が緩やかに改善するもとで個人消費も底堅く推移するなど、緩やかな回復基調にある。
このような県内経済情勢の中、県税収入は前年度に比べ64億1,454万円(2.6%)の増と5年連続で増加したものの、国庫支出金が79億5,959万円(8.5%)、地方消費税清算金が77億8,138万円(10.2%)の減となり、一般会計の歳入は197億2,223万円(2.6%)の減少となった。
一方、歳出については、農政費が152億7,689万円(45.0%)、諸支出金が94億2,090万円(10.7%)の減となるなど、一般会計全体で203億8,386万円(2.8%)減少した。また、県債残高は前年度に比べ71億796万円(0.6%)増加しており、県財政は依然として厳しい状況が続いている。
(2)審査意見
平成28年度の一般会計及び特別会計の歳入歳出決算審査における、財務に関する事務等の執行についての意見は次のとおりである。今後の県民福祉の増進に努めるため、財政の健全化及び適正な予算執行に一層努めるよう強く望むものである。
ア 県債について
県債発行額は、一般会計が962億8,400万円、特別会計が254億6,338万円で、合計1,217億4,738万円となり、前年度に比べ23億8,842万円(1.9%)減少した。
年度末の県債残高は1兆2,697億6,595万円となり、前年度に比べ71億796万円(0.6%)増加した。ただし、元利償還金の全額が翌年度以降の地方交付税の基準財政需要額に算入される臨時財政対策債を除いた年度末の県債残高は7,033億6,607万円となり、前年度に比べ85億5,826万円(1.2%)減少した。
プライマリーバランス(基礎的財政収支)についてみると、臨時財政対策債を含めた額では177億8,216万円と、3年連続の黒字となった。また、臨時財政対策債を除いた額は247億1,273万円であり、前年度に比べ48億4,710万円(16.4%)減少したものの、17年連続の黒字となった。
実質公債費比率についてみると、28年度は11.7%と前年度に比べ0.4ポイント低下した。
臨時財政対策債を除いた年度末の県債残高は前年度に比べ減少しているが、累積した県債残高は、後年度に公債費として大きな財政負担となり、財政構造の一層の硬直化を招くことから、自主財源の確保とともに、既存事業の徹底した見直しなどによる歳出削減に努め、県債残高の抑制に引き続き取り組むよう望むものである。
(注)県債残高は、満期一括償還方式による県債の元金償還に備えた減債基金への積立額(平成28年度は426億6,667万円)を差し引いていない。
イ 収入未済について
収入未済額は、一般会計が48億4,467万円、特別会計が2億8,372万円で、合計51億2,839万円となり、前年度に比べ7億8,240万円(13.2%)減少した。
収入未済額のうち、県税の収入未済額は42億3,494万円であり、全体の約8割を占めている。主なものは個人の県民税37億6,284万円であるが、前年度に比べ3億7,752万円(9.1%)減少しており、県税全体の収入未済額も5億889万円(10.7%)減少した。これは、市町村と連携した徴収対策、組織的な債権管理の徹底及び全所体制による徴収対策を継続してきた成果である。
しかし、依然として多額の収入未済がある状況であり、負担の公平と財源確保の観点から、収入未済額の圧縮に向けて引き続き適切な事務処理に努められたい。
また、県税以外では、県営住宅使用料や母子父子寡婦福祉資金貸付金などでそれぞれ1億円を超える収入未済額が残っている。収入未済額の圧縮に向けて、新規滞納の発生防止を図るとともに、回収困難な債権については負担の公平性に十分に留意しつつ債権整理を行うなど、適正な債権管理について全庁的な取り組みを進めるよう望むものである。
ウ 工事の監督業務について
平成27年度から28年度にかけて実施した工事に関する行政監査において、工事の監督業務について確認したところ、複数の監督員を指定するとされているにもかかわらず監理監督員が指定されていなかった工事、監督員の変更の通知がされていなかった工事、段階確認を実施するとされているにもかかわらずその一部が実施されていなかった工事、施工中に提出されるべき書類が適切な時期に提出されていることが確認できなかった工事等が確認された。
公共工事によって整備される公共施設は、経済活動を支えるとともに県民生活の安心・安全や財産を守るために必要不可欠なものであり、その品質の確保は極めて重要であることから、工事の監督業務を着実に遂行するとともに、その改善に向けて検討を行うことを望むものである。
(参考)定期監査等における指摘事項等の状況
区分 | 実施機関数 | 留意改善事項 | |||
---|---|---|---|---|---|
指摘事項 | 注意事項 | 検討事項 | 計 | ||
定期監査 | 297機関 | 2件 | 16件 | 1件 | 19件 |
随時監査 | 10機関 | 0 | 0 | 0 | 0 |
計 | 307機関 | 2件 | 16件 | 1件 | 19件 |
監査結果 | 件数 | 内容 |
---|---|---|
指摘事項 (適正を欠くと認められ、改善を要するもの) |
2件 |
|
注意事項 (軽易な誤りがあり、改善を要するもの) |
16件 |
|
検討事項 (事務の効率化等の面から検討を要するもの) |
1件 |
|
(過年度会計に関する事項を含む。)
第2 決算の概況
1 総括
(1)歳入歳出決算状況
平成28年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算は、次の表のとおりである。
区分 | 予算現額 (円) |
収入済額 (円) |
支出済額 (円) |
収入支出差引 残額(円) |
予算現額に対する比率 | |
---|---|---|---|---|---|---|
収入(%) | 支出(%) | |||||
一般会計 | 758,026,363,599円 | 724,829,116,878円 | 716,439,053,643円 | 8,390,063,235円 | 95.6% | 94.5% |
特別会計 | 156,169,450,943円 | 156,837,136,128円 | 154,795,239,856円 | 2,041,896,272円 | 100.4% | 99.1% |
合計 | 914,195,814,542円 | 881,666,253,006円 | 871,234,293,499円 | 10,431,959,507円 | 96.4% | 95.3% |
一般会計の決算額は、予算現額7,580億2,636万3,599円に対して、収入済額は7,248億2,911万6,878円、支出済額は7,164億3,905万3,643円で、収入支出差引残額(形式収支)は83億9,006万3,235円となっている。
特別会計の決算額は、予算現額1,561億6,945万943円に対して、収入済額は1,568億3,713万6,128円、支出済額は1,547億9,523万9,856円で、収入支出差引残額は20億4,189万6,272円となっている。
(2)前年度との比較
平成28年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算を前年度と比べると、次の表のとおりである。
区分 | 予算現額 (円) |
収入済額 (円) |
支出済額 (円) |
収入支出差引 残額(円) |
翌年度へ繰り越す べき財源(円) |
実質収支額 (円) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
一般会計 | 平成28年度 | 758,026,363,599円 | 724,829,116,878円 | 716,439,053,643円 | 8,390,063,235円 | 5,099,188,738円 | 3,290,874,497円 |
平成27年度 | 774,459,719,588円 | 744,551,344,663円 | 736,822,918,372円 | 7,728,426,291円 | 4,303,000,405円 | 3,425,425,886円 | |
増減額 | -16,433,355,989円 | -19,722,227,785円 | -20,383,864,729円 | 661,636,944円 | 796,188,333円 | -134,551,389円 | |
特別会計 | 平成28年度 | 156,169,450,943円 | 156,837,136,128円 | 154,795,239,856円 | 2,041,896,272円 | 5,961,985円 | 2,035,934,287円 |
平成27年度 | 163,520,373,600円 | 163,095,288,784円 | 160,624,027,930円 | 2,471,260,854円 | 403,252,571円 | 2,068,008,283円 | |
増減額 | -7,350,922,657円 | -6,258,152,656円 | -5,828,788,074円 | -429,364,582円 | -397,290,586円 | -32,073,996円 | |
合計 | 平成28年度 | 914,195,814,542円 | 881,666,253,006円 | 871,234,293,499円 | 10,431,959,507円 | 5,105,150,723円 | 5,326,808,784円 |
平成27年度 | 937,980,093,188円 | 907,646,633,447円 | 897,446,946,302円 | 10,199,687,145円 | 4,706,252,976円 | 5,493,434,169円 | |
増減額 | -23,784,278,646円 | -25,980,380,441円 | -26,212,652,803円 | 232,272,362円 | 398,897,747円 | -166,625,385円 |
一般会計においては、収入済額は前年度に比べ197億2,222万7,785円(2.6%)、支出済額は前年度に比べ203億8,386万4,729円(2.8%)のそれぞれ減少となっており、実質収支額は32億9,087万4,497円で、前年度に比べ1億3,455万1,389円(3.9%)の減少となっている。
また、特別会計においては、収入済額は前年度に比べ62億5,815万2,656円(3.8%)、支出済額は前年度に比べ58億2,878万8,074円(3.6%)のそれぞれ減少となっており、実質収支額は20億3,593万4,287円で、前年度に比べ3,207万3,996円(1.6%)の減少となっている。
2 一般会計
(1)歳入
収入済額は7,248億2,911万6,878円で、前年度に比べ197億2,222万7,785円(2.6%)の減少となっている。なお、予算現額に対する収入率は95.6%、調定額に対する収入率は99.3%となっている。収入済額の主なものを款別構成比でみると、県税が34.7%で最も大きく、次いで地方交付税17.5%、県債13.3%、国庫支出金11.8%の順になっている。
収入済額が前年度に比べて増加した主なものは、県税64億1,453万8,856円(2.6%)及び地方交付税31億446万3,000円(2.5%)であり、減少した主なものは、国庫支出金-79億5,958万8,515円(-8.5%)、地方消費税清算金-77億8,138万2,345円(-10.2%)、繰越金-72億4,624万7,208円(-48.4%)及び地方譲与税-54億198万8,123円(-15.0%)である。
収入未済額は48億4,466万8,324円で、主なものは県税42億3,494万3,640円(構成比87.4%)である。
(2)歳出
支出済額は7,164億3,905万3,643円で、前年度に比べると、203億8,386万4,729円(2.8%)の減少となっている。なお、予算現額に対する執行率は94.5%となっている。
支出済額の主なものを款別構成比でみると、教育費が23.4%で最も大きく、次いで健康福祉費16.9%、公債費14.5%、県土整備費13.0%の順になっている。
支出済額が前年度に比べて増加した主なものは、健康福祉費58億1,694万5,082円(5.1%)、県土整備費42億5,968万8,917円(4.8%)及び公債費11億9,731万1,957円(1.2%)であり、減少した主なものは、農政費-152億7,689万1,405円(-45.0%)、諸支出金-94億2,090万4,935円(-10.7%)及び環境森林費-24億5,599万3,177円(-14.3%)である。
翌年度繰越額は390億4,621万6,555円で、前年度に比べると、57億4,916万1,956円(17.3%)の増加となっている。増加した主なものは、農政費24億8,305万6,504円(170.7%)、教育費17億3,886万2,600円(4,938.4%)及び県土整備費16億139万294円(6.5%)であり、減少した主なものは、健康福祉費-4億2,377万1,400円(-14.0%)、企画費-2億3,852万6,720円(-56.7%)及び総務費-2億2,431万2,020円(-87.1%)である。
不用額は25億4,109万3,401円で、前年度に比べると、17億9,865万3,216円(41.4%)の減少となっている。不用額の主なものは、健康福祉費10億2,694万6,810円及び総務費3億1,828万4,679円である。
3 特別会計
(1)歳入
各特別会計の収入済額の合計額は1,568億3,713万6,128円で、前年度に比べると62億5,815万2,656円(3.8%)の減少となっている。なお、予算現額に対する収入率は100.4%、調定額に対する収入率は99.7%となっている。
収入済額が前年度に比べて増加した主なものは、用地先行取得特別会計34億8,073万1,047円(682.9%)、小規模企業者等設備導入資金助成費特別会計9億5,951万1,148円(191.7%)及び流域下水道事業費特別会計2億8,676万9,266円(3.4%)であり、減少した主なものは、中小企業振興資金特別会計-97億9,313万8,615円(-17.2%)、公債管理特別会計-6億2,951万7,477円(-0.7%)及び収入証紙特別会計-2億9,326万1,012円(-4.6%)である。
収入未済額は2億8,372万2,449円で、主なものは、母子父子寡婦福祉資金貸付金特別会計1億9,550万483円及び林業改善資金特別会計6,994万551円であり、主に貸付金元利収入である。
(2)歳出
各特別会計の支出済額の合計額は1,547億9,523万9,856円で、前年度に比べると58億2,878万8,074円(3.6%)の減少となっている。なお、予算現額に対する執行率は99.1%となっている。
支出済額が前年度に比べて増加した主なものは、用地先行取得特別会計35億1,086万8,369円(240,041.2%)、小規模企業者等設備導入資金助成費特別会計10億3,200万9,246円(297.5%)及び流域下水道事業費特別会計6億876万2,376円(7.8%)であり、減少した主なものは、中小企業振興資金特別会計-97億9,313万8,615円(-17.2%)、公債管理特別会計-6億2,951万7,477円(-0.7%)及び収入証紙特別会計-2億8,048万7,494円(-4.7%)である。
不用額は8億8,674万9,102円で、主なものは、収入証紙特別会計3億4,079万1,955円、用地先行取得特別会計1億7,770万5,035円、流域下水道事業費特別会計1億6,756万5,238円及び母子父子寡婦福祉資金貸付金特別会計1億6,487万3,844円である。