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令和元年度公営企業会計決算審査意見書

更新日:2020年10月1日 印刷ページ表示

群監第131-1号
令和2年8月27日

群馬県知事 山本 一太 様

群馬県監査委員 丸山 幸男
群馬県監査委員 林 章
群馬県監査委員 井田 泉
群馬県監査委員 臂 泰雄

令和元年度群馬県公営企業会計決算審査意見について

 地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第30条第2項の規定に基づき審査に付された令和元年度群馬県公営企業会計の決算について審査した結果は、別紙のとおりです。
(以下、別紙)

第1 審査の概要

1 審査の対象

  • 令和元年度群馬県電気事業決算(企業局所管)
  • 令和元年度群馬県工業用水道事業決算(企業局所管)
  • 令和元年度群馬県水道事業決算(企業局所管)
  • 令和元年度群馬県団地造成事業決算(企業局所管)
  • 令和元年度群馬県施設管理事業決算(企業局所管)
  • 令和元年度群馬県病院事業決算(病院局所管)

2 審査の手続

 令和元年度の公営企業会計決算について、決算書類が事業の経営成績及び財政状態を適正に表示しているかを検証するため、財務諸表と関係帳票、証拠書類などを照合するとともに、地方公営企業法その他の関係法規に準拠して作成されているかの審査を実施した。
 また、事業が常に経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されているかどうか、経営の分析を行うとともに、関係職員から説明を求め、定期監査及び例月現金出納検査等の結果も考慮して慎重に実施した。

第2 審査の結果

 決算諸表は経営成績及び財政状態を適正に表示しており、その計数は正確である。
 事業の運営に当たっては、経営の基本原則に従って、経済性の発揮と、その本来の目的である公共の福祉の増進に意を用い、おおむね適正に運営されたものと認められた。

参考:定期監査等における指摘事項等の状況
監査結果 内容
指摘事項
(適正を欠くと認められ、改善を要するもの)
該当なし
注意事項
(軽易な誤りがあり、改善を要するもの)
  • 納付期限までに納付されていない未払診療費について、群馬県病院局財務規程に定める期限までに督促していなかったもの(病院局)
  • 競争入札により契約を締結すべきところ、随意契約により契約を締結していたもの(病院局)

1 事業運営

(1)企業局事業

ア 総括意見

 企業局所管の5事業全般にわたる経営状況をみると、経常収益は22,864百万円で前年度に比べ2,626百万円、13.0%増加し、経常費用は18,082百万円で前年度に比べ2,544百万円、16.4%増加した。経常収益と経常費用との差引は、4,782百万円の経常利益となり、前年度に比べ81百万円、1.7%増加した。
 当年度は、施設管理事業においてゴルフ場使用収益が126百万円減少した一方で、団地造成事業において分譲収益が2,937百万円増加したことなどにより経常収益が増加した。また、団地造成事業において造成原価が2,616百万円増加したことなどにより経常費用も増加した。
 この結果、経常収益の増加が経常費用の増加を上回ったため、全体としては3期ぶりに増収増益の決算となったものである。
 また、この経常利益に特別損益を加えた純損益は、前年度に比べ9,213百万円減少し、6,102百万円の純損失となった。これは、経常利益は増加したものの、水道事業において、新田山田水道及び東部地域水道を群馬東部水道企業団(以下「企業団」という。)へ無償譲渡したことに伴い、減損損失を計上したため、特別損失が13,620百万円増加したことによるものである。
 令和元年度が最終年度であった「群馬県企業局経営基本計画」(平成28~31年度)(以下「基本計画」という。)については、八ッ場発電所建設及び住宅団地分譲区画数を除き、全体的には、おおむね目標を達成できたといえる。今後も、各事業を将来にわたって安定的に継続していくため、効率的な経営に努めることが望まれる。
 なお、事業別の審査意見は次のとおりである。

イ 事業別意見
(ア)電気事業

 事業収支の状況をみると、総収益は7,926百万円で前年度に比べ6百万円、0.1%減少し、総費用は5,821百万円で前年度に比べ127百万円、2.1%減少した。これは主に、退職給付引当金繰入額の減等による一般管理費の減少、固定資産除却損の皆減などによるものである。
 この結果、純利益は2,105百万円で前年度に比べ121百万円、6.1%増加し、減収増益の決算となり、一定の純利益及び内部留保資金は確保されることになる。
 当年度は、平年と比較して多雨であり、河川流量が多かったことなどにより、水力発電所の電力量が増加したため、当年度の目標である841,092千kWhに対する供給率は103.7%となり、また、基本計画の目標も達成することができた。
 平成25年度から再生可能エネルギー固定価格買取制度の適用を受け、さらに、平成29年度からの売電契約の更改により販売電力料の平均単価が上昇したことなどにより、安定した電力料金収入の確保が図られている。
 しかし、平成25年4月に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」に基づき、平成28年4月に卸規制の撤廃や小売事業の全面自由化が実施され、さらに令和2年4月から送配電事業の分離が義務づけられたことなど、近年、電気事業制度の枠組が大きく変化している。
 このような状況のなか、今後も、電力の安定供給、効率的な事業運営、新規開発への取組及び地域との関係強化を図りつつ、着実な事業推進に努める必要がある。

(イ)工業用水道事業

 事業収支の状況をみると、総収益は2,206百万円で前年度に比べ165百万円、8.1%増加した。これは主に、東毛工業用水道における契約水量減量に伴う負担金を特別利益に計上したことによるものである。総費用は1,613百万円で前年度に比べ84百万円、5.5%増加した。
 この結果、純利益は593百万円で前年度に比べ81百万円、15.8%増加し、増収増益の決算となった。
 しかしながら、経常損益では、修繕費の増などにより営業費用が39百万円増加するなどしたため、経常利益は前年度に比べ114百万円、26.5%減少して314百万円となった。
 当年度の企業債及び他会計借入金の借入額は410百万円、償還額は703百万円、年度末の残高は7,516百万円で、前年度末に比べ3.8%減少したが、今後も長期間にわたって償還が続くため、償還資金の確保について留意する必要がある。
 令和元年度の年間契約水量は、渋川工業用水道はほぼ前年度並みであり、東毛工業用水道は前年度に比べ6.4%減少したが、基本計画の目標は、おおむね達成できた。
 今後も引き続き、老朽化した施設の計画的な改修、耐震化の推進などを通じて工業用水の安定供給を図るとともに、年間契約水量の目標を達成できるよう、受水企業の契約水量の維持や新規の受水契約獲得などの営業活動を強化して、収入の確保に努める必要がある。

(ウ)水道事業

 事業収支の状況をみると、総収益は11,497百万円で前年度に比べ4,787百万円、71.3%増加し、総費用は20,781百万円で前年度に比べ16,011百万円、335.7%増加した。これは主に、新田山田水道及び東部地域水道を企業団へ無償譲渡したことに伴い、両水道事業の固定資産に係る長期前受金の残額を特別利益に計上したこと及び固定資産の減損損失を特別損失に計上したことによるものである。
 この結果、前年度に比べ純損益は11,224百万円減少し、9,284百万円の純損失となり、増収減益の決算となった。
 また、経常損益では、修繕費の増などにより、営業費用が88百万円増加するなどしたため、経常利益は前年度に比べ53百万円、2.7%減少して1,862百万円となった。
 県央第一水道、新田山田水道、東部地域水道、県央第二水道の4施設の年間給水計画量に対する給水実績量は100.0%で、安定した水道用水供給が行われていると認められる。
 当年度の企業債の償還額は1,506百万円、年度末の残高は13,855百万円(無償譲渡した二水道分を除くと10,516百万円)で、前年度末に比べ9.4%減少したが、今後も長期間にわたって償還が続くため、償還資金の確保について留意する必要がある。
 今後も引き続き、老朽化した施設の計画的な改修、耐震化の推進などを通じて安全で安心な水道用水の安定供給を図られたい。
 また、給水量は基本計画の目標とする計画量を確保し、目標を達成した。引き続き、年間給水量の確保などにより経営の健全性維持に努められたい。

(エ)団地造成事業

 事業収支の状況をみると、総収益は5,694百万円で前年度に比べ2,841百万円、99.6%増加し、総費用は5,248百万円で前年度に比べ2,756百万円、110.6%増加した。これは主に、分譲収益及び造成原価がそれぞれ増加したことによるものである。
 この結果、純利益は446百万円で前年度に比べ85百万円、23.7%増加し、増収増益の決算となった。
 経常損益では、前年度に比べ237百万円、91.4%増加して、496百万円の経常利益となった。
 当年度の状況は、産業団地の分譲面積は約24.6ヘクタール(その他団地の分譲面積を含めると約26.6ヘクタール)、住宅団地の分譲区画数は6区画(商業用地を含めると7区画)であった。基本計画では、平成28年度から令和元年度までの間に、新規産業団地の造成面積は80.7ヘクタール、産業団地(その他団地及び受託工事を含む。)の分譲面積は60ヘクタール、住宅団地(商業用地を除く。)の分譲区画数は70区画とする目標を定めていたが、新規産業団地の造成面積は76.3ヘクタールでおおむね目標を達成することができ、産業団地の分譲面積は約115.1ヘクタールで目標を達成することができた。その一方で、住宅団地の分譲区画数は32区画であり、目標を達成することができなかった。
 当年度の企業債の償還額は439百万円で、年度末の残高は427百万円となっており、順調に償還が進んでいる。
 なお、産業団地については、在庫面積が減少していることから、企業や市町村の様々なニーズに対応した造成に努め、在庫を確保する必要がある。また、住宅団地分譲については、依然として低調であることから、住宅団地の販売増加に向け、より一層努力することが望まれる。

(カ)施設管理事業

a 全体

 事業収支の状況をみると、総収益は736百万円で前年度に比べ132百万円、15.2%減少し、総費用は697百万円で前年度に比べ10百万円、1.4%増加した。これは主に、ゴルフ場事業において使用収益が減少したことやゴルフ場管理費が増加したこと、賃貸ビル事業において賃貸収益が減少したことによるものである。
 この結果、全体の経常利益及び純利益は39百万円で、前年度に比べ142百万円減少し、減収減益の決算となった。
 なお、当年度の電気事業会計から借り入れた借入金の償還額は163百万円、年度末の残高は1,262百万円で、前年度末に比べ8.9%減少したが、今後も長期間にわたって償還が続くため、償還資金の確保について留意する必要がある。
 今後の事業の運営に当たっては、以下の事業別に記された留意点を踏まえ、取り組むことを望むものである。

b 格納庫事業

 格納庫事業については、修繕費の減などにより、格納庫管理費が減少したことから、19百万円の純利益を計上した。
 また、新たに1社が入居したことにより、基本計画の目標を達成している。
 今後も、短期貸付など、施設の空きスペースの有効活用に努める必要がある。

c 賃貸ビル事業

 賃貸ビル事業においては、新たに2団体が入居したものの料金改定(値下げ)に伴い賃貸収益が7百万円減少したことなどにより、前年度と同様に純損失となり、前年度に比べ損失額は7百万円増加した。
 基本計画では、令和元年度の公社総合ビルの入居率は80%を目標としており、おおむね目標を達成している。
 今後も新規入居者の確保並びにホール及び会議室の利用者の増加に向け、営業活動の更なる充実を図る必要がある。

d ゴルフ場事業

 ゴルフ場事業においては、37百万円の純利益を計上したものの、前年度に比べ138百万円、79.0%減少した。これは、指定管理者に対して、台風第19号により、営業できなかった期間に相当する納付金の額及び指定管理者が負担した施設復旧費用を、納付金の年額から減額したことから、使用収益が126百万円減少したことなどによるものである。
 基本計画では、令和元年度のゴルフ場利用者数は250,000人を目標としていたが、台風第19号による被災や新型コロナウイルス感染症の影響などにより、当年度の利用者数は231,432人と目標を下回った。しかし、18ホール当たり利用人員は県内ゴルフ場の平均を上回った。
 ゴルフ場利用者数の維持及び増加に向けて、今後も利用者サービスのより一層の向上を図る必要がある。
 また、台風第19号により被災して復旧が困難となった上武ゴルフ場の今後のあり方について、早急に検討する必要がある。

(2)病院局事業

 事業収支の状況をみると、総収益は28,987百万円で、延べ入院患者数が減少し入院収益が減少したことなどにより、前年度に比べ45百万円、0.2%減少した。総費用は29,830百万円で、給与費が増加したこと、高額な薬剤や診療材料の使用により材料費が増加したこと、委託料等の経費が増加したことなどにより、前年度に比べ667百万円、2.3%増加した。
 この結果、純損失は843百万円となり、赤字額は前年度に比べ712百万円増加した。
 病院別にみると、精神医療センターは137百万円の純利益となり、前年度に引き続き黒字決算となった。心臓血管センターは139百万円、がんセンターは601百万円、小児医療センターは239百万円の純損失となり、赤字決算となった。
 県立病院は、それぞれの専門分野において高度専門医療を担い、施設整備や高額医療器械導入などの設備投資が行われており、その財源として発行した企業債の残高は17,414百万円となっている。前年度に比べ残高は994百万円減少しているものの、今後、多額の償還資金が必要となることに加え、人口減少、新型コロナウイルス感染症の影響による受診控えなどにより、病院経営は依然として厳しい状況が続くことが予想される。
 このような経営環境の中、医療技術の向上を図り、県民に安全で安心な高度・専門医療サービスの提供を続けていくためには、人材の確保及び定着並びに職員の資質向上に向けた取組を強化することに加え、地域医療連携などによる病床利用率の向上など、経営の健全化に向け、より一層経営改善に努める必要がある。
 今後の事業運営に対しては、次の事項を望むものである。
 (上記において表示した各病院の金額・比率は、病院局総務課分として計上された収益及び費用を各病院に振り分けて算出したものである。(総務課は管理部門であり、医業を実施していないため))

ア 経営の健全化を図るための取組について

 県立病院の経営の健全化については、平成30年3月に「第四次群馬県県立病院改革プラン」(平成30~令和2年度)(以下「第四次改革プラン」という。)を策定し、患者増へつながる魅力ある高度・先進医療への挑戦や一歩踏み出した収支改善の取組を推進し、一般会計繰入金を抑制しながら、計画期間内において経常収支を黒字化させることを目標としている。
 第四次改革プランで定めた令和元年度の経常収支、医業収支の目標数値と決算数値とを比較すると、両収支とも決算数値は目標数値には及ばず、患者1人当たりの診療単価の増等により医業収益が増加したものの、純損失は843百万円となり、収支改善の兆しが見られた昨年度から712百万円収支は悪化した。
 現金預金は前年度に比べて1,074百万円減少しており、各月末残高の状況についても、ほぼ全ての月において前年度を下回っていた。今後はより計画的な予算執行に努められたい。
 上記の状況から第四次改革プランに定めた目標の達成には厳しい状況であり、更なる病院運営の効率化と経営改善に努められたい。

イ 高度先進医療従事者の確保と資質の向上について

 県立病院には、地域における高度先進医療を担う役割がある。高度で専門性の高い医療を推進するためには、これを支える人材の育成が必須であり、医療従事者の確保と資質の向上を、第四次改革プランにおいて重点的に取り組む項目の一つとしている。
 がんセンターは平成30年10月に県内で初めてがんゲノム医療連携病院に指定され、令和元年度末までに61件について専門家の委員会(エキスパートパネル)が実施された。また令和元年6月に導入された手術支援ロボットは、同年度末までに55件の手術で活用されている。一方、医師の退職の影響により令和元年12月から「頭頸科」において新規患者の受入れを停止する状況となっている。
 新しい治療法や高度医療器械等が十分にその機能を発揮し、県民に高度な先進医療を安定的に提供することができるよう、また、必要な医療サービスの提供を維持できるよう、引き続き、医師、看護職員をはじめとする専門性の高い医療従事者の確保及び定着に努めるとともに、研修などによる在職医療従事者の育成及び資質の向上に努める必要がある。

ウ 安全・安心な医療の提供について

 近年の医療事故に係る報道により、県内の医療機関における医療の透明性、医療に関わる場所での安全性について、県民の意識が高まっている。
 また、第四次改革プランにおいて取り組む重点項目の一つに、安全・安心な医療の提供を挙げている。
 県立病院において、平成30年度に発生した医療事故及びヒヤリ・ハット事例の報告件数は、医療事故が11件で前年度と比べ9件減少し、ヒヤリ・ハット事例が4,906件で前年度と比べ890件減少した(令和元年度公表)。
 医療事故が減少した要因は、危険レベルの低い事例も報告するよう徹底したことで、軽微な事例についても分析・調査を行い細かな改善策が積み上がったことによるものである。
 このような成果がある一方で、小児医療センターにおいて重大な医療事故が発生していることから、再発防止策の徹底と安全・安心な医療の提供のための更なる取組に努められたい。
 今後も地域の拠点病院として、県民が安心して安全な医療を受けられるように、職員の意識を向上させるとともに、徹底した医療安全対策に取り組む必要がある。

令和元年度群馬県公営企業会計決算審査意見書(全文)(PDF形式)

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