中部教育事務所だより 第38号(平成25年3月1日)
「学校性」を磨く
中部教育事務所長 松本 昭彦
昨年のオリンピックで、日本は計38個のメダルを獲得し、日本中を熱狂させた。入賞者は、80種目、179人にもなる。いつの世も、スポーツは我々に大きな感動を与えてくれる。
夢中になって何かに挑戦する姿、すべてを忘れてプレーに没頭する姿、そこには見栄も打算もない一人の人間の姿、人間性のすべてが描き出される。だからこそ、人々はその姿に感動し、結果にというより、その人間に対する賛美や賞賛を惜しまないのかもしれない。
人間性と言えば、趣味であるゴルフのルールは、第一章エチケットから始まる。「ゴルフゲームはプレーヤーの一人一人が他のプレーヤーに対しても心くばりをし、ゴルフ規則を守ってプレーするというその誠実さに頼っている。(JGAゴルフ規則)」、心くばりと規則遵守である。審判がいないだけに、ゴルフほど人間性が問われるスポーツはないだろう。
そう言えば、最近行ったコースに、「ホールアウトしたらすぐにクラブをもったままカートに乗り次のホールへ移動すること、スコアの確認や記載も次のホールで・・・」という注意書きがあった。次の組を待たせないような心くばりをマニュアルにしたもののようである。
この心くばりをマニュアルにする手法は古来からあったようで、先日、ある研修会で聞いた「江戸しぐさ」も同様であった。町づくりのために全国各地から集まった人たちが、各地方の方言や風習を超えて、お互いの生活を豊かにするために生まれたのが、江戸しぐさなのだそうだ。「肩引きしぐさ」「あいさつしぐさ」など、ちょっとした気遣いで、人は心地よく生活できる。「見て見ぬふり」は、子どもが転んでも立ち上がるまで見て見ぬふりをするという子育て視点の江戸しぐさだったようである。
確かに最近は、マニュアル時代である。何か問題が起きると「○○対応マニュアル」「○○管理マニュアル」等々、たくさんのマニュアルが作成される。具体化という点では効果的だが、マニュアルがあるからそれでいいというものではあるまい。
「肩引きしぐさ」「あいさつしぐさ」は、そのしぐさを日常的に繰り返すことで、他人に対する心くばりの心地よさを実感するからこそ意味のあるものとなる。このような心地よさを感じ取って、子どもたちは他のことに対する気配りや周囲の人への優しさを身に付けていくのである。形だけマニュアル通りにやらせるだけでは、子どもの能力を高めたり人間性を豊かにしたりすることはできないのだろう。
かつては、このような体験が子どもの生活のそこここにあった。しかし、現代の忙しい日々を考えれば、子どもに家事を分担させ自分の存在意義を感じさせるようにしている家庭はそう多くないだろう。近所の仲間との遊びやけんかを通して、自然に人と人との付き合い方や礼儀、社会のルールが身に付けられる地域がどれほどあるだろう。子供会が成立しない地区もあると聞いている。
今、学校は子どもたちの学力保障に懸命に取り組んでいる。そして、学校の努力は着実に成果を上げつつある。ただ、勉強で身に付けた「学力」だけで子どもたちは生きられない。家庭や地域で身に付けるべきものもたくさんある。自己肯定感や社会性など、子どもたちに足りないものがあるとすれば、このまま両者に任せっぱなしという訳にはいくまい。
積極的に子どもたちを地域や家庭にかえしていくことはもちろん、それぞれがどのような役割を担うのか、どのように不足する体験をお互いに補完していくのかを再確認する必要があるのではないだろうか。今、学校には家庭や地域と一体になって教育を考えていくための拠点、言わば子育てアカデミーとしての機能も期待されているように思う。
日本アマチュア選手権を6回優勝した中部銀次郎さんは「技術のほかに人間性であるとか自分自身を磨いていくことでゴルフは変わる。(プレーヤーは)スコアを磨くのではなく、ゴルフを磨いていくものではないか。」という言葉を残している。家庭や地域との一体化の他にも、未来を生きるために真に必要な「学力」とは何かを常に問い直すことも必要であろう。すべての子ども、すべての大人から信頼される学校経営を確立していくことも急務だと思う。
これからの学校や教職員には、授業づくりや学級づくり等、指導の充実を図るだけでなく、学校の本性、人間性ならぬ学校性を磨いていく発想と挑戦が求められている気がする。
【生涯学習係】
地域と学校のきずなづくり ~学校支援センターの充実に向けて~
学校訪問より
今年度より、学校支援センターのより一層の充実を図ることを目的に、地域連携のための学校訪問を実施しています。訪問したそれぞれの学校では、地域の実態に応じた特徴的な取組が行われていました。
学校訪問の中で、多くの学校で話題になったことについて紹介します。
<学校支援センターのイメージの共通理解を>
学校支援センターの目的は、設置当初は地域の教育力を活用して学校の教育活動を充実させることでした。しかし、教育基本法の改正等を受け、これからの学校支援センターは、双方向のつながりを強めて、地域全体で子どもたちを育てる環境を作るという視点が求められています。つまり、「学校が支援を受けるためのセンター」から「地域と学校のきずなづくりを進めるセンター」へと意識改革をしていくことが必要です。
<運用機能を充実させていくために>
事務所では、今年度、「運用機能の充実」を重要課題として取り組んできました。訪問した小学校では、すべての学校で地域の教育力を生かした特色ある活動が行われていました。中学校でも、数は少ないものの、職場体験学習や部活動支援など、地域の教育力を生かした活動が行われていました。
しかし、年間活動計画の整備や活動記録簿の管理等に課題がありました。人が替わっても、また誰がどの学年を担当しても、よい活動を計画的に、また継続して行っていけるようにするために、これらを整備していくことが大切です。
事務所WEBページにおいて、年間活動計画等の参考例を紹介していますので、ご覧いただき、ぜひご活用ください。
<地域コーディネーターの適任者が見つからない>
訪問した学校での協議の中で、「地域コーディネーターの適任者がいない」という話題をよく聞きました。もちろん、適任のコーディネーターを得て充実した活動を行っている学校もありますが、人選に苦労している学校も少なくありません。
事務所としては、適任者が見つからない場合の対策として、コーディネーターの機能を分担する方法を推進しています。活動ごとに担当者を明確にすることや、ボランティアリーダーにコーディネートの一部を担当してもらうことなどが考えられます。さらに、それぞれの活動におけるコーディネートの流れやつながりが可視化できるような形にまとめていくことが大切だと考えています。
<中学校での活動を充実させていくために>
中学校では、地域人材の授業への活用が難しい実態があります。事務所では、生徒の社会性を育てるという視点から、生徒の地域行事への参加を推進しています。その際、生徒が企画や運営に関わることで、地域の人々との交流も深まり、地域のきずなづくりにも役立つと考えます。
各地域の活動を紹介します!
吉岡町の取組
吉岡町では、「郷土を愛する子どもを育てたい」という地域の願いの下、町立図書館を中心に、地域に伝わる民話を基に紙芝居を作成しました。そして、図書館読み聞かせボランティアが、町内すべての小中学校や保育園等で読み聞かせを実施し、児童生徒に伝える活動が展開されています。

渋川市伊香保中地区の取組
渋川市では、中学校区ごとに三者連携推進協議会を立ち上げ、学校・家庭・地域が連携した活動が行われています。
伊香保中地区では、学校・家庭・地域の他に支所や公民館も関わり、「伊香保の町をきれいにする活動」や「花いっぱい運動」、伊香保中地区の特徴的な取組である「スケート教室」などが行われています。これらの活動は、学校の教育力を高めるだけでなく、地域の活力の高まりや地域コミュニティーの意識の高まりにつながっています。

おめでとうございます
今年度、各種表彰で受賞された方々をご紹介します。
文部科学大臣表彰
前橋市立大胡東小学校学校支援センター(学校支援活動)
伊勢崎市立殖蓮第二小学校「うえにの森」(学校支援活動)
前橋市立岩神小学校(早寝早起き朝ごはん運動)
前橋市総社公民館(優良公民館表彰)
群馬県教育委員会表彰
前橋市立岩神小学校PTA(優良PTA表彰)
伊勢崎市立宮郷小学校PTA(優良PTA表彰)
伊勢崎市立第一中学校PTA(優良PTA表彰)
渋川市渋川西部公民館(優良公民館表彰)
第34回少年の主張中部地区大会 最優秀賞
下山 美姫さん(伊勢崎二中)
阿久津結菜さん(伊勢崎三中)
高橋 呼春さん(渋川中)
松口奈津美さん(榛東中)
※高橋さんは、県大会最優秀賞受賞
【学校教育係 指導担当】
これからの特別支援教育の在り方
発達障害等のある子ども一人一人は、小さい頃から医療や保健、療育などの教育以外の分野とつながっていることが多く、その支援には、組織を構築することで、各分野の専門性の恩恵を受けることができます。また、本人が生涯にわたって地域の中で暮らして行くことを考えると、地域の中に本人の生活全体を支援するネットワークをいかに構築していくかが大切になります。その意味においても地域の様々な関係機関が連携し合っていくことが非常に重要になってきます。そこで、中部教育事務所としても、昨年度は「医療との連携」、そして、本年度は「福祉との連携」を核として、研修会を実施してきました。
事務所主催の特別支援教育研修会
管内特別支援・療育連携協議会(就学指導連絡協議会)
【第1回】
[期日] 平成24年5月31日(木)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 講話:特別支援教育室 近藤 千香子 指導主事、協議・情報交換
【第2回】
[期日] 平成24年9月13日(木)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 発表:前橋市子ども課 畔上 猛 副主幹・玉村町教育委員会学校教育課 高橋 幸伸 指導係長、協議・情報交換
本協議会は、保健・福祉・教育の関係機関の担当者を対象として、関係機関の効果的な連携協力による特別支援教育・療育の充実に資することをねらいとして2回実施しました。本年度は、福祉事務所との共同開催で、各市町村の特別支援教育や療育の取組状況や特定の子どもを想定した事例を基に、それぞれどのような関わりをもち、他機関との連携をどのように図れそうか等について、情報交換・協議を行いました。
第1回目の会議では、学校現場の先生方にも参加していただき、各市町村の支援状況の様子やその課題等明らかにする中で、関係機関とのより良い連携の在り方について協議を深めることができました。
また、第2回目の会議では、事例を基にして(1)前橋・伊勢崎・渋川2グループ(2)榛東村・吉岡町・玉村町の1グループ、計3グループに分かれて、具体的にどのような取組ができるのかを考えたり、事務所の専門相談員とのつながり方を確認したりすることができました。そして、保健関係者や福祉関係者の立場から助言もいただき、関係機関の効果的な連携の在り方について更に理解を深めることができました。
2回の協議会を通して様々な機関の考え方や取組を共有することができ、改めて連携の大切さを実感するとともに、今後の相談しやすい関係づくりのきっかけとなりました。

管内特別支援教育コーディネーター研修会
[期日] 平成24年 6月29日(金)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 講義:前橋市立岩神小学校特別支援コーディネーター 柿沼 紀子 教諭、協議(パネルディスカッション)
本研修会は、特別支援教育コーディネーター(1・2年目)としての専門性を高めることをねらいとして、ベテランコーディネーターによる「学校教育から見た特別支援教育コーディネーターの役割」についての講義、及び「特別支援教育コーディネーターとして考えていくこと~「連携」というキーワードを中心に~」についてのパネルディスカッションを行いました。
講義を通して、(1)コーディネーターに求められる役割や資質・能力、(2)今後の課題と方向について等の理解を深めることができました。また、5人のパネリストを招いて、(1)関連機関との連携、(2)校内体制(校内委員会)の充実、(3)個別の教育支援計画の充実、(4)ネットワーク作り、(5)支援会議の充実等について、事前に提出してもらった参加者からの質問事項を整理した内容を基にパネルディスカッション形式で協議を行うことを通して、1・2年目のコーディネーターの役割について理解を深めることができました。
管内特別支援教育推進研修会
[期日] 平成24年 8月 1日(水)
[会場] 伊勢崎市民プラザ
[内容] 講演:臨床心理士 安田 淑美 様
本研修会は、教職員等を対象とした特別支援教育に関する講演を通して、発達障害等に対する理解を更に深め、各学校・園における特別支援教育の一層の推進を図ることをねらいとして、「福祉の側面から見た特別支援教育のあり方~幼小中の連携を考える~」についてのご講演をいただきました。
(1)発達障害についての理解、(2)その子の目線に立った支援のポイント、(3)幼小中の発達段階を踏まえた支援の在り方、(4)保護者への支援、(5)参加者からの質問に対する回答など、教師の視点の切り替えや具体的な支援の方法について福祉的な側面を踏まえて、理解を深めることができました。
事務所主催の研修会
管内小・中学校初任者研修(前橋市を除く)
【 第1回 】
[期日] 平成24年 5月22日(火)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 所長講話、講義・演習、班別協議
【 第2回 】
[期日] 平成24年10月9日(火)
[会場] 国立赤城青少年交流の家
[内容] 野外実習A.P、ウォークラリー
【 第3回 】
[期日] 平成25年1月29日(火)
[会場] 管内幼稚園
[内容] 園長講話、講義、保育参観・体験

管内小・中学校10年目経験者研修(前橋市を除く)
【 第1回 】
[期日] 平成24年8月3日(金)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 所長講話、道徳についての講義と演習
【 第2回 】
[期日] 平成24年10月18日(木)
[会場] 伊勢崎市立第三中学校、伊勢崎市立宮郷第二小学校、玉村町立玉村中学校、榛東村立北小学校
[内容] 校長講話、道徳公開授業、授業研究会、班別協議
臨時的任用教員及び非常勤講師研修会
[期日] 平成24年 5月11日(金)
平成24年 5月17日(木)
平成24年 5月23日(水)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 講義、演習
管内小学校生徒指導主任研修会
[期日] 平成24年 5月24日(木)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 講義、情報提供、班別演習
中部地区学校安全教育推進研修会
[期日] 平成24年 5月29日(火)
[会場] 玉村町文化センター
[内容] 講演:全国学校安全教育研究会会長 板橋区立高島第一小学校校長 矢崎良明 様、班別協議
PTA指導者研修会
[期日] 平成24年 6月23日(土)
[会場] 生涯学習センター
[内容] 講演会、事例発表
青少年赤十字中部地区連絡協議会
[期日] 平成24年 7月11日(水)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 講話及び実践発表:日赤群馬県支部青少年赤十字担当主幹 田村吉廣 様
少年の主張中部地区大会
[期日] 平成24年 8月11日(土)
[会場] 榛東村立榛東中学校体育館
[内容] 少年の主張発表会

第2回スクールカウンセラー連絡協議会
[期日] 平成24年 9月20日(木)
[会場] 群馬県前橋合同庁舎
[内容] 講義、班別協議
地区別人権教育研究協議会(前橋市を除く)
[期日] 平成24年10月31日(水)
[会場] 榛東村立南小学校、伊勢崎市立境西中学校
[内容] 公開授業、授業研究会、演習
管内町村教科別授業研究会
<数学>
[期日] 平成24年10月 3日(水)
[会場] 玉村町立玉村中学校
[内容] 公開授業、授業研究会
<体育>
[期日] 平成24年11月29日(木)
[会場] 吉岡町立明治小学校
[内容] 公開授業、授業研究会

外国語指導助手研修講座
[期日] 平成25年 2月 1日(金)
[会場] 渋川市立渋川北中学校
[内容] 研究授業、研究協議
県・文部科学省研究指定校の発表会
第76回全国学校歯科保健研究大会
[期日] 平成24年10月25日(木)26日(金)
[会場] 群馬音楽センター他
[内容] 表彰式、基調講演、シンポジウム、領域別研究協議会、領域別研究協議会【保育所(園)幼稚園部会】、研究発表校:前橋市立まえばし幼稚園
【学校教育係 人事担当】
1 平成24年度に改正された主な条例・規則等
◎「臨時的任用教職員の休暇の取扱い」等について
- 正規教職員と同様に配偶者出産休暇を付与しました。
- 臨時的任用教職員に付与される休暇についての周知を図るために「休暇の付与日数」欄を設けました。
- 臨時的任用教職員の任用開始時及び終了時における年金・健康保険の加入及び離脱の届出手続きについては、職務専念義務免除扱いとなりました。
2 教員免許更新制
◎旧免許状の最初の修了確認期限(平成26年3月31日)となる対象者(第4グループ)について
- 次の生年月日にあたる者が対象となります。
昭和33年4月2日~昭和34年4月1日
昭和43年4月2日~昭和44年4月1日
昭和53年4月2日~昭和54年4月1日 - 更新講習の受講期間は、平成24年2月1日~平成26年1月31日となりますので、計画的に受講を済ませてください。また、修了認定期限が平成27年3月31日の者についても、平成25年2月1日より更新講習の受講ができます。
各係直通電話の利用について
各係への連絡は、直通電話をご利用ください。
総務係:027-232-6607
学校教育係(人事担当):027-232-6416
学校教育係(指導担当):027-232-6454
生涯学習係:027-232-6512
代表電話:027-232-6511
FAX:027-232-4586