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令和4年台風11号に対する農作物の技術対策

更新日:2022年9月2日 印刷ページ表示

 猛烈な勢力の台風11号は、1日9時現在、宮古島の南にあって、南西に進んでいます。しばらく南寄りに進んだ後、明日2日(金曜日)は動きが遅くなり、3日(土曜日)以降は北上に転ずる見込みです。
 来週は東シナ海を北上して、九州など西日本に接近する予想となっています。その後の進路によっては、本県への影響も考えられるので、最新情報に注意するとともに、農作物や農業施設の管理について対策を徹底してください。

1.共通事項

  • 事故防止の観点から、台風接近時のほ場見回りは避け、大雨や強風が収まってから行うこと。
  • 局地的な大雨が予想され、ほ場が冠水する恐れもあるので、速やかに排水ができるように備えること。これまで冠浸水したことのある地域については、前例を参考にして重点的な対応を図ること。
  • 河川及び用水の増水並びに土砂災害の恐れがあるところでは、作業の安全確保を第一としつつ、適切に対応すること。
  • 薬剤散布にあたっては、農薬ラベルに記載されている使用基準や注意事項を必ず守り、正しく使用すること。

2.普通作物

(1)水稲

ア 事前対策

  • 既に成熟期となっており、収穫可能な場合は、台風接近前に収穫する。
  • 大雨に対応できるよう、用排水路の点検・補修整備を行う。
  • 風雨による影響を軽減させるため、台風前は湛水状態としておく。

イ 事後対策

  • 台風通過後のフェーン現象(高温・乾燥・強風)による品質低下を防ぐため、風がやむまで湛水管理とする。
  • 冠水時や土砂が流入した場合は、速やかに排水、排出し、生育の回復を図る。
  • 倒伏した場合は、速やかに排水し、成熟状況を見極めて早めに収穫する。成熟期まで期間がある場合は、できる限り株を引き起こし、穂が水面や田面に接触しないようにする。収穫期に穂発芽等の品質低下が認められる場合は、刈り分けを行う。

(2)大豆

ア 事前対策

  • 水田では用排水路の点検・補修整備を行い、ほ場への水や土砂の流入を防止する。また、ほ場内に排水溝を整備するなどの対策を講じておく。

イ 事後対策

  • 冠水及び滞水したほ場は、速やかに排水し、根の機能回復を図る。

3.工芸作物

(1)コンニャク

ア 事前対策

  • 土砂の流出入防止のために排水溝を手直しするとともに、必要に応じて土のうなどを設置する。
  • 腐敗病や葉枯病等の罹病株は、軽微なものでも伝染源となりやすいため、あらかじめ取り除いておく。

イ 事後対策

  • 滞水、土砂の流入があった場合は、湿害や根腐病の発生を助長するため、速やかに排水する。
  • 強風により倒伏した場合は、早急に地上部を起こして小葉柄の反転を手直しする。その後、ただちに病害の発生を防止するため、ボルドー液を散布する。ただし、被害面積が大きく手直しに時間を要する場合、ボルドー液散布を優先させる。

(2)タラノキ

ア 事前対策

  • 倒伏が予想される風当たりの強いほ場では、予め杭とロープ等で固定する。
  • 土砂の流出入防止のために排水溝を手直しするとともに、必要に応じて土のうなどを設置する。

イ 事後対策

  • 強風による倒伏は、新梢が屈曲しないうちにできるだけ早めに手直しする。
  • 滞水、土砂の流入があった場合は、湿害の発生を防止するため速やかに排水する。

4.野菜

(1)事前対策

  • ハウスの被覆資材などで傷んでいる箇所は、風雨が吹き込まないように修復しておく。また、緩んでいるマイカー線の張り直しや基礎の杭等の補強を行う。
  • 湿害の発生しやすいほ場では、周囲に排水溝を設け、速やかに排水できるようにしておく。また、ハウス内に雨水が流入しないように、土のう積み等の防水対策を図る。
  • 露地野菜の支柱や誘引線、ほ場まわりの防風網はあらかじめ補強しておく。
  • 果菜類等で収穫期に達しているものは、やや早めに収穫し、被害を最小限に抑える。

(2)事後対策

  • ハウス施設やほ場に浸水した場合は、早期に排水溝を掘り排水に努める。
  • ハウスや防風網を点検して、損傷箇所があれば早めに補修する。
  • 茎葉の損傷は、湿度の上昇により病害の発生が助長されるので、適用農薬を散布する。
  • 天候回復後、草勢回復のために追肥や葉面散布を行う。
  • 排水後、土壌表面が固くしまっているほ場では、土壌が乾燥して、ほ場に入ることが可能になったら、浅く中耕する。
  • 果菜類では、被害を受けた果実を摘果し、着果負担を軽くさせて草勢回復を図る。
  • 露地ナスなどの倒伏した果菜類の株は可能な限り起こすとともに、支柱等へ誘引を行う。またネギが倒伏した場合も丁寧に起こし、軟白部が曲がるのを防ぐ。
  • 育苗中や生育中の果菜類などでは、台風通過後に天気が急激に回復すると、ハウス内が高温となるので、天窓やサイド換気を速やかに行う。また、遮光ネットを利用して、強光による葉焼けを防止する。
  • 収穫した野菜は、傷み等がないかよく確認しながら調製作業を行い、流通中に発生する荷傷みや腐敗の発生防止に努める。

5.果樹

(1)事前対策

  • 多目的防災網や防風ネットの緩んでいるワイヤ-やひもは張り直し、ネットがずれたり、飛ばされないように補強する。また、防災網や防風ネットが破れている部分を補修する。
  • ブドウ等の雨除け施設は、ビニールが飛ばされないように補強するか、場合によっては除去する。
  • リンゴのわい化栽培では、トレリスの隅柱や中柱の横ぶれや架線の張り等を点検し、必要に応じて締め直す。
  • リンゴのわい性台樹は根域が狭く倒れやすいので、支柱にしっかり固定し、倒伏を防止する。
  • モモ等の立木性果樹では、主枝や亜主枝等の太枝が折損しないよう支柱で固定する。
  • 幼木は倒木しやすいので、丈夫な支柱を立て、ひもで固定しておく。
  • 高接ぎした樹では、接いだ部分から折れやすいので添え木をする。
  • 園内に水が溜まらないように排水溝を掘るなど、十分な排水対策を行う。
  • 収穫が可能な果実については、台風接近前に収穫しておく。

(2)事後対策

  • 果実のすり傷、葉の裂傷等から病害発生のおそれがある場合は、速やかに適用薬剤を散布する。なお、薬剤散布にあたっては使用基準を厳守する。
  • 浸水、滞水している園では、速やかに排水溝を掘るなど排水に努める。
  • 倒伏や傾いた樹であっても、回復可能なものは出来るだけ早く起こし、盛土、支柱で固定するとともに、地下部とのバランスをとるために適宜枝の切りつめを行う。
  • 枝が裂けた場合は、針金、ボルト等で固定する。回復不能な場合は切り落とし、切り口に塗布剤を塗る。
  • 枝の損傷や落葉が甚だしい樹では、果実肥大や品質が低下するので、再度着果数の見直しを行う。
  • 落葉が激しい場合は、幹や太枝に石灰乳等の白塗剤を塗布し、日焼けを防止する。
  • 樹勢回復のための追肥は、二次伸長、不時開花を防ぐために被害直後には行わず、礼肥の時期となってから樹勢に応じて施用する。

6.花き

(1)事前対策

  • ハウスの被覆資材など傷んでいる箇所は、風雨が吹き込まないように修復しておく。また、ゆるんでいるマイカー線の張り直しや基礎の杭等の補強を行う。
  • 湿害の発生しやすいほ場では、周囲に排水溝を設け、速やかに排水できるようにしておく。また、ハウス内に雨水が流入しないように、土のう積み等の防水対策を図る。
  • 倒伏しやすいキク等の切り花では、十分に土寄せを行うとともに、フラワーネットや支柱を補強しておく。

(2)事後対策

  • 冠水、浸水したほ場では、速やかな排水に努めるとともに、肥培管理を的確に行い生育の回復を図る。
  • ハウスや支柱等栽培施設を点検して、損傷箇所があれば早めに補修する。キクなどの電照施設においては、速やかに作動状況の点検を行い、電照処理等が確実に行われるよう確認する。
  • 茎葉に付着した土砂は動力噴霧機等で洗い流し、生育促進を図る。
  • 切り花類等で株元が土砂で埋まって深植え状態になったものは、早期に土砂を取り除き天候の回復を待って浅く中耕する。
  • 切り花類の倒伏したものは、できるだけ早く起こし、茎や花穂の曲がりを防ぐ。
  • 枝物類・切り花類では、強風によって折損した茎葉の整理と薬剤散布を的確に行い、病害の発生を防止する。
  • 台風通過後は吹き返しの強風に充分注意する。
  • ハウス施設では、台風通過後に天気が急激に回復すると、ハウス内が高温となるので、天窓やサイド換気を速やかに行う。また、遮光ネットの利用などにより強光による葉焼けやしおれを防止する。

7.畜産

(1)飼料作物

ア 事前対策

  • 草地や飼料畑に水や土砂が流入する恐れがある場合は、浸水防止や排水対策を実施する。
  • 飼料イネ・飼料用米については、水稲の項を参照。

イ 事後対策

(ア)飼料用トウモロコシ
  • ほ場に滞水している場合は、速やかに排水溝を設けて排水を行い、湿害による生育不良を最小限にくい止める。
  • 倒伏及び茎の損傷等が著しく回復が期待できない場合は、青刈り利用またはサイレージ利用とする。
  • 倒伏したものを青刈り利用する場合は、飼料給与に注意を払う。若刈りのものを一度に多量給与する事は避け、乾草等を併用しながら給与量を調節する。また、サイレージとして詰め込む場合は、発酵品質改善のために乳酸菌、糖蜜、ふすま等を添加して品質向上に努める。刈り取りに際しては、土砂等の夾雑物の混入を極力避ける。
(イ)ソルガム
  • 基本的にトウモロコシと同様に対応する。
(ウ)牧草類
  • 台風の風による被害は比較的少ないものと考えられるが、生育が進み草丈が伸びているものは倒伏が心配される。この場合は速やかに刈り取りを行い、茎葉の汚染状況を見ながら利用する。

(2)畜舎及び付属施設等

ア 事前対策

  • 畜舎の風雨被害を防止するため、屋根や窓、入り口の点検を行い、必要があれば補修や補強等を実施する。雨や風が畜舎内に吹き込まないように戸締まりを行う。
  • 停電に備えて、必要な発電機(リース)等の手配をしておき、搾乳作業やバルククーラーの冷却、給餌・給水に支障のないように対策する。
  • 堆肥舎やハウスかく拌処理施設への風雨被害を防止するため、施設の事前点検を実施し、窓や入り口は戸締まりを行う。雨水の施設内流入や尿汚水が流出しないよう施設及び堆肥の管理を行う。
  • 飼料庫、農業機械・器具格納庫は、風雨被害を防止するため点検を行い、必要があれば補修や補強を実施する。飼料、農業機械・器具は雨にさらされないよう管理する。

イ 事後対策

  • 雨が畜舎内に吹き込んだ場合は、敷料等の交換を行って畜舎内を乾燥状態に保つ。
  • 畜舎内外の消毒を徹底し、疾病等の未然防止に努める

8.養蚕

(1)事前対策

  • 蚕室は点検し、傷んでいる箇所があれば補修・補強を行い、雨や風が室内に吹き込まないよう対処する。特にパイプハウス等の簡易飼育室は、風で飛ばされないよう補強を行う。

(2)事後対策

  • 壮蚕飼育にあたっては、適正な蚕座面積、除湿、通風換気に注意し、蚕座内環境の向上に努める。
  • 浸水、冠水の被害を受けたほ場は、速やかに排水を図るとともに、病害虫の発生原因となる冠水した条桑は伐採して廃棄する。
  • 桑葉が損傷した場合は、葉質が劣化しやすいため、貯桑管理に注意するとともに、1回当たりの給桑量を少なくして給桑回数を増やす。
  • 新植した桑の倒木は、早急に起こして根回りに土寄せして固定する。

9.作業者の暑熱対策

(1)高温による影響

 熱中症は以下のような症状を段階的に呈する。

熱中症の分類
分類 症状 対応
1度
  • めまい、失神「立ちくらみ」の状態(熱失神とも呼ぶ)。
  • 筋肉痛、筋肉の硬直 筋肉の「こむら返り」のことで、その部分の痛みを伴う。
  • 大量の発汗
  • すぐに涼しい場所へ移り体を冷やし、水分を与える。
  • 誰かがそばに付き添って見守り、改善しない場合や悪化する場合は病院へ搬送する。
2度
  • 頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、体がぐったりする、力が入らないなど
  • 自分で水分・塩分を摂れないときは、すぐに病院へ搬送する。
3度
  • 意識障害、けいれん、手足の運動障害 呼び掛けや刺激への反応がおかしい、体にガクガクと引きつけがある、まっすぐに歩けないなど。
  • 高体温 体に触ると熱いという感触。
  • すぐに病院へ搬送する。

(2)高温時の対策

  • 「新しい生活様式」における熱中症予防として、屋外で人と十分な距離(2メートル以上)を確保できる場合は、適宜マスクをはずす。
  • 日中の気温が高い時間帯を外して作業を行うとともに、休憩をこまめにとり、作業時間を短くする工夫を行う。
  • 水分をこまめに取り、汗で失われた水分を十分に補給する。大量の発汗がある場合は、スポーツ飲料などの塩分濃度0.1%~0.2%程度の水分を摂取する。
  • 帽子の着用や汗を発散しやすい服装にする。
  • 作業場所には日よけを設け、できるだけ日陰で作業するように努める。
  • 屋内の作業では、遮光や断熱材の施工等により、作業施設内の温度が急激に上昇しないようこころがけるとともに、風通しをよくし、室内の換気に努める。
  • 気温の状況に応じ、適度に扇風機やエアコンを使用する。
  • 一人作業は極力避ける。やむを得ない場合は、家族や周囲の人に作業予定を伝えておく。

10.落雷による被害の回避

 雷鳴が聞こえるなど雷雲が近づく様子があるときは、落雷が差し迫っているので、速やかに安全な場所へ避難する等、雷から身を守る対策をとる。

(1)安全な場所への避難

 畑などの開けた場所や尾根などの高いところなどは、人に落雷しやすくなるので、できるだけ早く安全な空間に避難する。
 鉄筋コンクリート建築、自動車(オープンカーは不可)の内部は比較的安全な空間である。また、木造建築の内部も基本的には安全であるが、全ての電気器具、天井・壁から1メートル以上離れれば更に安全となる。

(2)近くに安全な空間が無い場合

 電柱、煙突、鉄塔、建築物などの高い物体のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4メートル以上離れたところ(保護範囲)に退避する。
<注>避雷設備のないあずま屋(屋根と柱だけで壁のない建物)や掘建て小屋、テント内、高い木の近くは、かなり危険!