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海外展開事業者インタビュー第7弾 海外にチャレンジ!(別邸仙寿庵 常務取締役 久保 英弘氏) 

掲載日:2015年2月18日 印刷ページ表示

日本の上質なおもてなしを世界に!~富裕層の海外誘客に取り組む仙寿庵久保常務の挑戦!~

 みなかみ町に世界の富裕層が訪れる旅館があります。別邸「仙寿庵」。美しい谷川山麓を望み、静かで優雅な空間を提供するこの旅館は、世界的権威を誇るホテルとレストランの会員組織である「ルレ・エ・シャトー」にも群馬県で唯一登録されるなど、世界の高級ホテルと肩を並べる存在でもあります。

 「本物」を求める世界の富裕層をいかに群馬に惹きつけるか。久保常務にお話を伺いました。

ゼロからの海外誘客

現在、別邸「仙寿庵」には海外からのお客様がどのくらい来ていますか。

 年間500~600人が訪れています。国別では、香港が一番多く、次いで台湾、シンガポールなどアジア圏が多くなっています。

 また、2012年には、「ルレ・エ・シャトー」に加盟させていただきました。これは、「おもてなし」「質の高い料理」など5Cで表される厳格な評価基準を全てクリアした施設のみが加盟を認められる、フランス発の世界的権威を誇るホテルとレストランの会員組織で、世界中に顧客がいます。このことで、欧米からのお客様も増加傾向にあります。お客様のほとんどが個人旅行客で、現在、団体のツアーの受入れは香港のみです。
 この香港の受入れは、県の招へいで2007年に旅館を見に来た香港の有名な美食家でコラムニストの方との出会いがスタートでした。旅館を気に入ってくれ、定期的に団体客を送ってくれるなど顧客になっています。

外観写真ルレエシャトロゴ画像

海外誘客に取り組んだきっかけは何ですか。

 当旅館は1997年にオープンして以来、稼働率は100パーセント近くで、また全体の7~8割のお客様がリピーターとなってくれています。しかし、その顧客の皆様の高齢化も進んでおり、旅行に出かける回数も減ってきています。

 また、日本では人口減少が進んでおり、そうすると今後必然的に富裕層の数も減ります。

 これからのことを考えたときに海外のお客様に目を向けて力を入れていこうと思いました。

 最初は手探りで、まず何ができるかと考えた時に、言葉の問題を解決しようと思い、英語のホームページの作成からスタートしました。また、館内の案内標記も日本語と英語の表記にすることとし、パンフレットにも英語表記を掲載しました。

 最初はどこに発信して良いのかも分かりませんでした。まず、役場に勤めていた先輩に相談した際に頂いたのが香港の方の招致の話であり、ここから本格的に海外誘客が始まりました。

 併せてスタッフ教育も始め、ミーティングの中で英語の1日1フレーズの練習を始めました。また、現在、韓国人のスタッフを1名雇っています。本当はもっと多くの外国の方を採用したいと思っていますが、ビザの関係で上手くいっていません。

韓国人スタッフとの写真
韓国人スタッフと

世界の富裕層をぐんまに呼び込む

ターゲットとしている国はありますか。

 仙寿庵では主なターゲットを欧米の方としています。アジアと欧米の旅行者では旅行のスタイルが異なります。日本人やアジア人は一泊で名所をたくさんまわる傾向がありますが、欧米の方は何泊も同じ場所に滞在し、その土地に触れ、良さを見つける旅を求める傾向にあります。そのような旅を求める方をターゲットにしたいと思っています。

 宿泊される多くのお客様は観光地をまわらず、旅館でのんびりすごし、周辺を散策し、自然や地域に触れて過ごします。そのため、特に周辺の観光案内等は行っていません。

 当館の魅力は自然との一体感です。美しい自然と土壁等の日本の伝統技術を用いた非日常的な空間を提供することで、心からリラックスしてほしいと思っています。

 また、系列の旅館「たにがわ」では、アジア圏の国々をターゲットにしています。最近では、タイや台湾からのお客様が増えています。みなかみ町がこの両国の誘客に力をいれており、その成果が出始めていると感じています。また、旅館「たにがわ」は世界的に利用されている旅行サイト「トリップアドバイザー」の賞をいただいたことで、多くの方に見ていただいています。

海外誘客にあたってどのような広報活動をしているのでしょうか。

 当旅館は日本の旅行会社には加盟せず、独自で営業活動を行っています。

 現在は「ルレ・エ・シャトー」に登録したことで、そのガイドブックが52ヵ国528施設のお部屋に置かれ多くの方の目にとまっています。顧客の中には「ルレ・エ・シャトー」の登録店しか利用しないという方も多くいます。現在、日本には15施設しかなく、日本に来たときの選択肢の一つにしていただいていると思っています。

 また、JALのファーストクラスや高級旅館に置かれているガイドブックの「The Ryokan Collection」にも登録しております。

 この他にも、外国の旅行会社のインターネットページに掲載の働きかけを行ったり、インターネットで海外から申込ができるようにする等取り組んでいます。このような取り組みから、メールや電話で直接申込が来るようにもなりました。対応は英語が話せる日本人スタッフが行います。

 その他、群馬県やみなかみ町と一緒に行う観光PR活動や、旅館組合の青年部でも活動しています。

 旅館組合の青年部では、駐日大使を誘客する取り組みも行いました。ヨーロッパの大使館を中心に自ら営業をしました。成果はこれからですが、観光はPRをしたからすぐ誘客につながる訳ではありません。地道なPR活動の積み重ねが、数年後の成果につながると思っています。長期的な視点を持ち、取り組みたいと思っています。

どのような経緯で「ルレ・エ・シャトー」に登録することになったのですか。

 私が、学生時代にバックパッカーでヨーロッパを旅行したときに、名だたるホテルの多くに「ルレ・エ・シャトー」のマークが掲げられているなと思っていました。その後、修善寺にある「あさば」という旅館に宿泊したときに、「ルレ・エ・シャトー」のガイドブックがお部屋に置いてありました。そこには全国の名だたる旅館が載っており、これはすごいと思いました。このマークは世界に認められている施設にあり、ベンチマークになっているのだと感じました。

 外国人にとって、海外でどこのホテルが良いのかなんてわかりません。また、旅行会社の勧めるホテルは、その会社の人が決めたものです。第三者が厳しい基準で認めている施設であることは旅館選びの際にとても安心できることだと思います。
「ルレ・エ・シャトー」に加盟している旅館にちょうど知り合いがいたことから、その方の紹介を受け、審査を依頼し、登録して頂くことができました。

久保常務:写真

上質な旅館での滞在を世界の人へ

外国人観光客の宿泊に当たって工夫していることはありますか。

 外国人を受け入れるにあたって、英語で完璧に接客するなど環境ばかり整える必要はないと思っています。接客はハートトゥハートであり、英語でマニュアル的に対応をするよりも、スタッフがどれだけこのお客様に心を砕いて対応できるかが重要です。旅の楽しさは現地の人とのふれあいです。

 お部屋毎に英語の案内などはしていますが、日本の「おもてなし」を感じてもらうため、挨拶などは、日本語で日本人と同じように接客しています。

 また、日本人も同様ですが、リピーター対策としては、何回来ても違う体験ができるよう、前回と違う部屋を提供したり、常連様にはその嗜好に合わせたものを提供するなど工夫しています。

 また寝ることにもこだわっており、枕の高さや布団の堅さもお選びいただいています。また布団になじみのないお客様には厚みのあるマットレスも用意し、快適に過ごして頂くよう配慮しています。

海外誘客にあたって大変だったことはありますか。

 営業活動をするにあたっては、以前、単独で国内の旅行展に2年連続で出展したことがあります。しかし、成果がほとんどありませんでした。1年目は出展している120社すべてに写真を持ち、挨拶して回りましたが反応はゼロ。2年目は旅行会社に無料招待の案内をしましたが、反応があったのは2社だけでした。他国は、国がお金を出して大々的に誘致活動に取り組んでいます。よいスタッフ教育にはなりましたが、一旅館だけの営業には限界を感じました。

 そのため、現在は県や町、青年部として地域の取り組みと一緒に活動をしています。しかし、そのような中でも積極的にPRをしないと、海外ではやる気のない人として見られてしまいます。前に前に出て、余計なくらいアピールしていくことで、成果が出てくると感じています。

チャレンジする原動力は何ですか。

 大きなモチベーションの一つはスタッフの笑顔です。スタッフが気持ちよく、楽しく働くことが質の高いサービスには不可欠です。そのためにも旅館のブランド力を高めて魅力を増やしていくことに取り組んでいます。その一つが外国人誘客であり、インターナショナルな世界に認められた旅館で働いているんだという喜びや誇りをスタッフにもってもらいたいと思っています。

 また、多くのスタッフが県外出身者であり、この地域の魅力を知ってもらうためにも、お祭りなど、地域のイベントに積極的に参加してもらっています。

 日本の旅館の良さを多くの方に体験して味わってもらうため、少しずつですが、基盤づくりをしたいと思っています。

今後の夢はありますか。

心からくつろげてゆったりできる旅館づくりをしていくとともに、それを継承し続けることが私の使命だと思っています。この地域や、自然環境があるからこそ私たちが旅館を営むことができます。それを守り、次の世代につないで行きたいと思っています。

建物と周辺の写真

(2014年12月取材)

久保英弘氏のプロフィール写真

プロフィール

久保英弘

別邸仙寿庵 常務取締役
1971年みなかみ町生まれ
大学卒業後、食品卸の会社に営業職で勤務後、家業の旅館業を継ぐ。
趣味は旅行、スキー、トライアスロンなど。2001年フランスのバルトランス世界選手権にテレマークスキーで出場経験をもつ。