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【INTERVIEW02】「新しい当たり前」となる教育の実現を目指して 一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん

更新日:2025年8月8日 印刷ページ表示
一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん(1)

一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん

「教育の新しい「当たり前」を作りたい」――そんな思いを抱いてキャリアを重ねてきた横田さんは、28歳でついに教育系の一般社団法人を設立しました。

東京でマーケティングリサーチの仕事を経験したのち、群馬県のキャリア教育系ベンチャー企業に転職。地域とのつながりを大切にしながら、少しずつ自分の理想を形にしています。

今回は、彼女がなぜ地方での事業展開を選び、どのようにその一歩を踏み出したのかを伺います。

教育への思い

一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん(2)
高知県出身で、高校までは地元で過ごしました。中高時代の先生がとにかく印象的で、授業だけでなく、生きる上で大切なことも教えてくれました。その影響もあり、自分もそのような存在になりたいと自然に思い、教育の道を志すようになりました。

なぎなた競技をやっていたこともあり、体育教員を目指して日本女子体育大学へ進学しました。卒業後は高知に帰るつもりでいたので、「4年間という限られた時間で人脈や経験をすべて得て、地元に戻ろう」と貪欲に考えて行動していました。

なぎなた部では副主将として東日本大会優勝やインカレベスト4を経験。部活、勉強、教職課程、学外イベントなどに全力で取り組んだ4年間でした。

教育実習と就職活動を並行して進める中で、学校教育だけが教育ではないと気づきました。教室の外にも学びはある。そこであえて教育業界ではなく、様々な業界を知ることができる都内のマーケティングリサーチ会社に就職しました。専門だったインタビュー調査を通して多様な業界や人の価値観に触れられ、とても刺激的でした。

数年勤めた後、やはり教育の仕事がしたいと思い、群馬県のキャリア教育系ベンチャー企業に転職。大企業からベンチャーへの転職は大きな決断でしたが、地方の教育に取り組みたいという想いが後押しとなりました。

地域企業や行政、地域の高校生や大学生、若者と関わりながら働ける環境は魅力的でした。一方で、「もっと深い部分までアプローチする教育がしたい」という思いが再燃し、会社に勤めながら、自ら法人を立ち上げることを決めました。

「新しい当たり前」となる教育モデルを目指して

一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん(3)
2023年5月、「一般社団法人コマンドアール」を設立しました。名前の由来はMacBook(PC)のショートカットキー「Command+R」(更新)から。これまでの公教育に加え、変化が大きいこの時代に「新しい当たり前」となる教育モデル、機会を作りたかったんです。

設立メンバーは、ITと教育・メディア・子どもの権利・福祉や不登校支援など、各分野のプロフェッショナルを含む計6名です。事業を推進する際のメンバー構成は非常に重要だと考えており、未来のビジョンが近いと思う方々に声をかけたら、ありがたいことに承諾率は100%でした。全員が「今できること」よりも「何を実現したいか」を大切にしています。

コマンドアールでは現在、主に中高生を対象に、自分の個性や価値観に気づける教育プログラムを提供しています。学校という空間ではなかなかできない、「自分と他者の違いが当たり前で楽しいことだ」と理解できる体験を作っています。

例えば、ワークショップを通じて、「違いを楽しむ」「自分で意図的に選ぶ」という感覚を、楽しみながら自然に身につけられるよう工夫しています。学校生活では他者と比較されがち(しがち)ですが、学外で人の違いを客観的に見る機会を通して、自分の個性を大切にすることを伝えたいです。

群馬というフィールドの可能性

一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん(4)
現在、拠点は群馬県前橋市です。転職で群馬に来た際、「すごく良い場所だ」と感じました。東京から近く自然も豊かで、人も温かく歓迎してくれます。地元愛が強く、何かを始めようという前向きな雰囲気があります。理想の教育には最高の場所だと思いました。

群馬は北関東の中でも大学が多く、選択肢が豊富です。高校と大学の連携も進んでおり、地域に根ざした教育が実現しやすい土壌があります。一方で、せっかく育った優秀な若者が進学や就職で東京に出て、そのまま戻らない現状もあります。

とても魅力いっぱいの群馬県なのに、「選択肢がない」という理由で若者が都内へ流出してしまうのはもったいないと思うんです。

だから私は教育モデルづくりを通して、「地元にいたい」「地元でも挑戦できる」と思える環境づくりに貢献します。自分ひとりでは難しいため、必要な機関と連携しながら仕組みづくりを進めていきます。

教育の未来へ、これからのビジョン

一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん(5)
今後はビジョンを実現するために、大学院へ進学する予定です。教育業界ではあまり知られていませんが、SCB理論(地域コミュニティブランド理論)を研究し、群馬をフィールドに実証実験をしていきたいと考えています。最終的には大学教授として群馬県に戻り、講義と研究の両方を進める計画です。

SCB理論は、地域資源の有効活用、新たなビジネスモデルの創出、地域コミュニティの活性化に貢献する可能性を秘めており、すでに大手企業では研修として採用され始めています。私は、この理論および手法を大学の講義やフィールドワークに取り入れ、教養として身につけた若者が地元で活躍することで、人口減少や衰退が進む地方において非常に大きな役割を果たしていくと考えています。

一般社団法人コマンドアールは、気軽に参加できるワークショップの顔も持たせながら、研究を実践に移すフィールドとして活用します。将来的には地域の中高生が大学で学び、再び地域に戻って子どもたちに還元する――そんな“共育の循環”をつくっていきたいと考えています。

やりたいというその気持ちは、あなただけのもの

もし、これから起業を考えている方がいるとしたら、1つ伝えたいことがあります。それは、「何かをやってみたい」と思うその気持ちは、本当にあなただけものだ、ということです。誰かに合わせて小さくしたり、無理に大きく見せようとする必要はありません。

あと、いきなり「起業」しなくてもよくて。その前にできることは、実はたくさんあります。例えば、まずは小さくワークショップを開いてみるとか、人を集めて話してみるとか。それだけでも、やってみたら多くの学びがあります。どんなに小さな一歩でも、自分の気持ちをカタチにするための大切な練習になります。

だからこそ、今「やってみたい」と感じていることがあるなら、その気持ちをとことん大切にしてほしい、行動してみてほしいです。起業は難しそうに思えるかもしれませんが、起業のカタチも様々です。ぜひ、まずは「小さく動き出すこと」から始めてみてください。心から応援しています。
一般社団法人コマンドアール 横田奈穂さん(6)

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