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【INTERVIEW03】伊勢崎銘仙に新しい価値を添えて 株式会社Ay 村上采さん
更新日:2025年8月8日
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株式会社Ay 村上采さん
「文化を織りなおす」—この言葉をコンセプトに掲げるカルチャーブランド「Ay(アイ)」を手がけるのが、村上采さんです。
群馬県伊勢崎市の伝統織物「伊勢崎銘仙」との出会いを原点に、アフリカやアメリカでの経験を経て、自らのルーツを再解釈し、ビジネスに昇華させてきました。
地域の文化を発信し、世界とつなげる、その挑戦の歩みに迫ります。
群馬県伊勢崎市の伝統織物「伊勢崎銘仙」との出会いを原点に、アフリカやアメリカでの経験を経て、自らのルーツを再解釈し、ビジネスに昇華させてきました。
地域の文化を発信し、世界とつなげる、その挑戦の歩みに迫ります。
伊勢崎銘仙との出会い

私は1998年、群馬県伊勢崎市で生まれました。今の事業の原点でもある「伊勢崎銘仙」との出会いは、中学生のときのことです。授業で伊勢崎銘仙について学ぶ機会があり、実際にその着物を着て銀座を歩くというイベントにも参加しました。
自分の地元に誇れる文化があることを知って、本当に衝撃的でした。ただ単純に、着物を着ることや、その背景にある文化に触れるのが純粋に楽しいと感じていたので、まさか将来の仕事につながるとまでは思いもしませんでした。
その後、15歳でアメリカに単身留学しました。そこで、アジア人に対する人種差別に直面したことは、今でも強く印象に残っています。それをきっかけに、自分のアイデンティティをどう発信するかを意識するようになりました。
日本人としての自分を、正しく理解してもらうためには、、自分からコミュニケーションを取らないと伝わらない現実に気づいたのです。
そこで助けになったのが留学の際に持参した銘仙でした。現地の人たちはその着物を見ると驚き、興味を示してくれました。私を「アジア人」という大きなくくりではなく、「日本人」として理解してもらい、さらには群馬や伊勢崎のことを発信するコミュニケーションのきっかけになったのです。着物が、言葉を超えた「文化的な共通言語」のように感じた瞬間でした。
自分の地元に誇れる文化があることを知って、本当に衝撃的でした。ただ単純に、着物を着ることや、その背景にある文化に触れるのが純粋に楽しいと感じていたので、まさか将来の仕事につながるとまでは思いもしませんでした。
その後、15歳でアメリカに単身留学しました。そこで、アジア人に対する人種差別に直面したことは、今でも強く印象に残っています。それをきっかけに、自分のアイデンティティをどう発信するかを意識するようになりました。
日本人としての自分を、正しく理解してもらうためには、、自分からコミュニケーションを取らないと伝わらない現実に気づいたのです。
そこで助けになったのが留学の際に持参した銘仙でした。現地の人たちはその着物を見ると驚き、興味を示してくれました。私を「アジア人」という大きなくくりではなく、「日本人」として理解してもらい、さらには群馬や伊勢崎のことを発信するコミュニケーションのきっかけになったのです。着物が、言葉を超えた「文化的な共通言語」のように感じた瞬間でした。
コンゴでの経験から見えた思い

大学では、国際協力や国際関係学を専攻しました。ゼミや研究室を探す中で、アフリカ・コンゴ民主共和国で活動するプロジェクトを見つけ、そこへの参加が大きな転機になりました。
2019年に渡航し、現地のシングルマザーの方たちとコンゴの伝統的な模様の生地を使った服づくりをしました。それを日本で販売するというビジネスを自ら立ち上げたのです。現地の課題を見つけ、ビジネスを通じて人とつながり、地域の課題解決や魅力発信につなげる—そんなモデルを築くことができました。
その後、コロナ禍で海外での活動が難しくなり、物流も止まってしまうなど、非常に厳しい状況が続きました。同じタイミングで群馬に戻ることになり、自分自身と向き合う時間が取れたことが、結果的に大きな転換期となりました。
「自分はこれからいったい何をしていきたいのか?」と改めて考え直したとき、これまで培ってきた異文化の経験を活かし、地域の魅力を再解釈して多くの人に届けたいという思いに気づきました。そして、地元に目を向けたとき、銘仙が衰退しているという現実を痛感したのです。これこそが、今のブランドを立ち上げるきっかけになりました。
2019年に渡航し、現地のシングルマザーの方たちとコンゴの伝統的な模様の生地を使った服づくりをしました。それを日本で販売するというビジネスを自ら立ち上げたのです。現地の課題を見つけ、ビジネスを通じて人とつながり、地域の課題解決や魅力発信につなげる—そんなモデルを築くことができました。
その後、コロナ禍で海外での活動が難しくなり、物流も止まってしまうなど、非常に厳しい状況が続きました。同じタイミングで群馬に戻ることになり、自分自身と向き合う時間が取れたことが、結果的に大きな転換期となりました。
「自分はこれからいったい何をしていきたいのか?」と改めて考え直したとき、これまで培ってきた異文化の経験を活かし、地域の魅力を再解釈して多くの人に届けたいという思いに気づきました。そして、地元に目を向けたとき、銘仙が衰退しているという現実を痛感したのです。これこそが、今のブランドを立ち上げるきっかけになりました。
「文化を織りなおす」—「Ay」での活動

カルチャーブランド「Ay」は、「文化を織りなおす」というコンセプトのもと、文化に向き合い新しい価値を添えて発信しています。
具体的には、伊勢崎銘仙の着物をほどいて、プロクリーニングを経て仕立て直すというアップサイクルを行っています。着物市場が縮小している状況を変えたいと考え、日常に取り入れやすい洋服やアクセサリーを開発しています。
立ち上げ当初から、地元・群馬の工場やデザイナーとの連携を大切にしてきました。群馬で作ったものを、県内外、さらには海外にも届けていきたいという思いが根底にあるからです。
商品開発では、お客様からの要望を実現できるように努力しています。たとえば、お手入れしやすく家庭でも洗濯可能なジャカード織りのワンピースを開発したのも、ニーズに応える中で生まれたアイデアです。
また、企業様向けのカルチャープロデュース事業にも取り組んでいます。銘仙をパッケージに活用した新商品開発など、さまざまな要望に合わせて、地域資源を活かした提案を行っています。アパレルブランドとしてのみでなく、地域課題に寄り添いながら、ブランディングやマーケティング、デザインといった幅広い領域での取り組みを今後も進めていきます。
具体的には、伊勢崎銘仙の着物をほどいて、プロクリーニングを経て仕立て直すというアップサイクルを行っています。着物市場が縮小している状況を変えたいと考え、日常に取り入れやすい洋服やアクセサリーを開発しています。
立ち上げ当初から、地元・群馬の工場やデザイナーとの連携を大切にしてきました。群馬で作ったものを、県内外、さらには海外にも届けていきたいという思いが根底にあるからです。
商品開発では、お客様からの要望を実現できるように努力しています。たとえば、お手入れしやすく家庭でも洗濯可能なジャカード織りのワンピースを開発したのも、ニーズに応える中で生まれたアイデアです。
また、企業様向けのカルチャープロデュース事業にも取り組んでいます。銘仙をパッケージに活用した新商品開発など、さまざまな要望に合わせて、地域資源を活かした提案を行っています。アパレルブランドとしてのみでなく、地域課題に寄り添いながら、ブランディングやマーケティング、デザインといった幅広い領域での取り組みを今後も進めていきます。
10年、20年先と続くブランドに、新たな挑戦

ブランドを立ち上げてから5年が経ちましたが、決して順風満帆だったわけではありません。小売業の限界や、「もっと売り上げを伸ばさなければ」という焦りを感じたこともありました。
ときには、「もうやめてしまおうか」と思い悩む日もありました。しかし、そういうタイミングを乗り越えると、その先には違う景色がきっと待っている—そうした思いから、あと少し、もう少しだけ頑張ってみようという気持ちでここまで来ました。
アパレル業界はトレンドの移り変わりが非常に早い一方で、銘仙は伝統的な価値を普遍的に持つものでもあります。この両者間でジレンマを感じることもありますが、それでも私は、「Ay」を長期的に10年、20年と続くブランドに育てていきたいと考えています。
そのためにも、今後は企業様向けのBtoB事業をより戦略的に広げていく予定です。これまで商品開発・販売で築き上げてきたブランド力や認知度も、そのフィールドでは大きな強みになります。「ブランド+α」の必要性を実感しながら、プロデュース事業のほか、大企業とのコラボレーションなど、アパレル以外の幅広い分野にも挑戦していきたいと考えています。
また、現在は主に国内での展開にとどまっていますが、今後は海外進出も視野に入れ動いています。実は今年10月、パリ・ファッションウィーク期間中に、ランウェイとショールームへの出展が決まりました。海外バイヤーとのネットワークづくりや、海外メディアへの広範囲な認知を目的としています。世界中から多くの人が集まるイベントですので、今からとても楽しみです。
ときには、「もうやめてしまおうか」と思い悩む日もありました。しかし、そういうタイミングを乗り越えると、その先には違う景色がきっと待っている—そうした思いから、あと少し、もう少しだけ頑張ってみようという気持ちでここまで来ました。
アパレル業界はトレンドの移り変わりが非常に早い一方で、銘仙は伝統的な価値を普遍的に持つものでもあります。この両者間でジレンマを感じることもありますが、それでも私は、「Ay」を長期的に10年、20年と続くブランドに育てていきたいと考えています。
そのためにも、今後は企業様向けのBtoB事業をより戦略的に広げていく予定です。これまで商品開発・販売で築き上げてきたブランド力や認知度も、そのフィールドでは大きな強みになります。「ブランド+α」の必要性を実感しながら、プロデュース事業のほか、大企業とのコラボレーションなど、アパレル以外の幅広い分野にも挑戦していきたいと考えています。
また、現在は主に国内での展開にとどまっていますが、今後は海外進出も視野に入れ動いています。実は今年10月、パリ・ファッションウィーク期間中に、ランウェイとショールームへの出展が決まりました。海外バイヤーとのネットワークづくりや、海外メディアへの広範囲な認知を目的としています。世界中から多くの人が集まるイベントですので、今からとても楽しみです。
これから起業を考えている方へ

今、起業を考えているみなさんにまずお伝えしたいのは、「自分がやりたい事業を明確にすること」の大切さです。私の場合は、地元の文化である伊勢崎銘仙を広く発信したいという思いがあり、それが群馬で起業するきっかけとなりました。
群馬のような地方と東京とでは、それぞれにメリットとデメリットがあります。たしかに東京は人も情報も集まりやすく、資金調達の面でも有利です。しかし、地方だからこそ活かせる強みもあります。だからこそ、自分のやりたい事業と照らし合わせて、どこで始めるかをしっかりと見極めてほしいと思います。
また、特に若い世代の方には、「自信がなくても、未知の分野であったとしても、チャンスがあれば行動してみること」の大切さを伝えたいです。その積み重ねによって、何かがつながることもあるかもしれません。なかったとしても、そうした経験がいつか何かの形になることもあるはずです。
私自身も、テクノロジー系のイベントにはできるだけ参加するように心がけています。たとえば今後「テクノロジー×銘仙」という新しい可能性が生まれるかもしれません。若いうちはとにかく経験の蓄積が大切だと考えています。目先のコスパは気にせず、ぜひともいろいろな場に積極的に足を運んでみてほしいですね。
群馬のような地方と東京とでは、それぞれにメリットとデメリットがあります。たしかに東京は人も情報も集まりやすく、資金調達の面でも有利です。しかし、地方だからこそ活かせる強みもあります。だからこそ、自分のやりたい事業と照らし合わせて、どこで始めるかをしっかりと見極めてほしいと思います。
また、特に若い世代の方には、「自信がなくても、未知の分野であったとしても、チャンスがあれば行動してみること」の大切さを伝えたいです。その積み重ねによって、何かがつながることもあるかもしれません。なかったとしても、そうした経験がいつか何かの形になることもあるはずです。
私自身も、テクノロジー系のイベントにはできるだけ参加するように心がけています。たとえば今後「テクノロジー×銘仙」という新しい可能性が生まれるかもしれません。若いうちはとにかく経験の蓄積が大切だと考えています。目先のコスパは気にせず、ぜひともいろいろな場に積極的に足を運んでみてほしいですね。
プロフィール
会社所在地:群馬県前橋市千代田町1丁目14-18(前橋オフィス)<外部リンク>
※事前予約制で商品をご試着・ご購入いただけます。
公式ホームページ:Ay(アイ)公式HP<外部リンク>
インスタグラム:𝐀𝐲 / アイ 伊勢崎銘仙(@with__ay) <外部リンク>
X(旧Twitter):𝐀𝐲(アイ) カルチャーブランド<外部リンク>
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公式ホームページ:Ay(アイ)公式HP<外部リンク>
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