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【INTERVIEW05】自然養鶏の価値を広げる挑戦 自然恵みファームズ株式会社 田中崇士さん
更新日:2026年3月16日
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自然恵みファームズ株式会社 田中崇士さん

東京で会社員としてキャリアを重ねてきた田中崇士さんが選んだ次の舞台は、人と自然が共生する自然養鶏の世界でした。
結婚や子育てをきっかけに地域と向き合い、義父の始めた自然養鶏場との出会いを機に、「次世代につなげていきたい」という思いから事業を継承。
今回は、自然養鶏との出会いから技術の継承、価値観を社会へ広げる挑戦まで、その歩みに迫ります。
結婚や子育てをきっかけに地域と向き合い、義父の始めた自然養鶏場との出会いを機に、「次世代につなげていきたい」という思いから事業を継承。
今回は、自然養鶏との出会いから技術の継承、価値観を社会へ広げる挑戦まで、その歩みに迫ります。
東京での会社員生活から、養鶏業への転身

元々、東京のコールセンター運営会社に長く勤めていましたが、2014年の結婚をきっかけに、妻の地元である利根沼田地区に移住しました。移住後も約7年間は東京の会社に勤め、新幹線で通勤する生活を続けていました。会社では、企画や人事を中心に担当していました。
転機が訪れたのは、40歳手前で子どもが生まれた頃でした。このまま会社員として働き続けることも一つの選択肢でしたが、移住先の地域で生き生きと働く人たちの姿を目にし、「何か目的があって社会に貢献し、還元できることを見つけていきたい」という思いが芽生えました。そうした中で出会ったのが、義父が始めた養鶏場です。
その養鶏場は、もともと沼田市のパイロット事業としてスタートし、自然養鶏という手法に取り組んできました。積極的な宣伝はせず、口コミ中心で30年近く全国に卵を届けてきた場所です。
鶏は驚くほど活き活きとしており、卵の味も臭みがなく、旨味だけが残る澄んだ味わいで、これまで知っていたものとはまったく違いました。ただ、続ける中で、運営側も顧客も同じように年齢を重ね、事業の終了を検討する時期を迎えていました。
私は「これをなくしてはいけない」と強く感じました。自然養鶏は、環境に無理をかけず、鶏たちが本来の力で生きられる持続可能なやり方です。ただ、その分非常に手間がかかるため、全国でも珍しく、担い手は年々減ってきています。
このままでは、この味も、この技術も、いずれ消えてしまう。それはあまりにももったいない。だから私は、事業と技術を引き継ぐ決断をしました。思いだけで終わらせず、きちんとビジネスとして成立させ、次の世代へとつないでいきたいと考えたのです。
転機が訪れたのは、40歳手前で子どもが生まれた頃でした。このまま会社員として働き続けることも一つの選択肢でしたが、移住先の地域で生き生きと働く人たちの姿を目にし、「何か目的があって社会に貢献し、還元できることを見つけていきたい」という思いが芽生えました。そうした中で出会ったのが、義父が始めた養鶏場です。
その養鶏場は、もともと沼田市のパイロット事業としてスタートし、自然養鶏という手法に取り組んできました。積極的な宣伝はせず、口コミ中心で30年近く全国に卵を届けてきた場所です。
鶏は驚くほど活き活きとしており、卵の味も臭みがなく、旨味だけが残る澄んだ味わいで、これまで知っていたものとはまったく違いました。ただ、続ける中で、運営側も顧客も同じように年齢を重ね、事業の終了を検討する時期を迎えていました。
私は「これをなくしてはいけない」と強く感じました。自然養鶏は、環境に無理をかけず、鶏たちが本来の力で生きられる持続可能なやり方です。ただ、その分非常に手間がかかるため、全国でも珍しく、担い手は年々減ってきています。
このままでは、この味も、この技術も、いずれ消えてしまう。それはあまりにももったいない。だから私は、事業と技術を引き継ぐ決断をしました。思いだけで終わらせず、きちんとビジネスとして成立させ、次の世代へとつないでいきたいと考えたのです。
自然と共生する、自然養鶏の取り組み

最初は、会社員時代に休みの日を使い、技術やノウハウを教えてもらうところから始めました。2023年に事業を引き継ぎ、自然恵みファームズ株式会社を設立しました。
私たちが行う自然養鶏とは、鶏の生理生態に則り、鶏にできることは鶏に任せ、鶏の欲求を妨げない理想的な環境を整え、少しだけ手助けをする飼い方です。日々、鶏の状態や気候、環境を見ながら、餌の配合や飼育環境を整える作業は非常に手間と根気のいる仕事です。それにより鶏が本来持つ生命力を最大化し、心身ともに健康になることにつながります。
結果として、私たちにとって健康で美味しい卵を産んでくれるのです。根底にあるのは、安心・安全で美味しい、本物の食べ物を作り、お届けしたいという思いです。
まず、鶏が暮らす環境ですが、鶏舎はすべて南向きに配置し、季節の太陽光が鶏舎の隅々に届くよう設計しています。日光の当たり方にまで配慮した環境です。
床には土の上に腐葉土や藁などを敷き込み、土着微生物などの有用菌が活躍できる環境を整えています。これにより、鶏の習性を利用して藁と微生物を撹拌することで、腐敗せず分解が促進されます。鶏舎からまったくにおいがしないことに、訪れた方が驚かれることもよくあります。
また、鶏の食べ物として、群馬県産のトウモロコシをはじめ、熊本の天然鰹粉や北海道の真昆布など、全国各地から卵の美味しさと鶏の健康を両立できる原料を取り寄せています。私たちが食べても美味しいと感じるものばかりです。もちろん化学物質や保存料は一切使用していません。
食事は季節や気候、鶏の様子や食べた量などを見ながら時間や量を調整し、適度な空腹時間が生まれるようにしています。その方が胃腸に良く、健康的な成長を促すことができます。
私たちが行う自然養鶏とは、鶏の生理生態に則り、鶏にできることは鶏に任せ、鶏の欲求を妨げない理想的な環境を整え、少しだけ手助けをする飼い方です。日々、鶏の状態や気候、環境を見ながら、餌の配合や飼育環境を整える作業は非常に手間と根気のいる仕事です。それにより鶏が本来持つ生命力を最大化し、心身ともに健康になることにつながります。
結果として、私たちにとって健康で美味しい卵を産んでくれるのです。根底にあるのは、安心・安全で美味しい、本物の食べ物を作り、お届けしたいという思いです。
まず、鶏が暮らす環境ですが、鶏舎はすべて南向きに配置し、季節の太陽光が鶏舎の隅々に届くよう設計しています。日光の当たり方にまで配慮した環境です。
床には土の上に腐葉土や藁などを敷き込み、土着微生物などの有用菌が活躍できる環境を整えています。これにより、鶏の習性を利用して藁と微生物を撹拌することで、腐敗せず分解が促進されます。鶏舎からまったくにおいがしないことに、訪れた方が驚かれることもよくあります。
また、鶏の食べ物として、群馬県産のトウモロコシをはじめ、熊本の天然鰹粉や北海道の真昆布など、全国各地から卵の美味しさと鶏の健康を両立できる原料を取り寄せています。私たちが食べても美味しいと感じるものばかりです。もちろん化学物質や保存料は一切使用していません。
食事は季節や気候、鶏の様子や食べた量などを見ながら時間や量を調整し、適度な空腹時間が生まれるようにしています。その方が胃腸に良く、健康的な成長を促すことができます。
感覚を仕組みに、技術を未来に

自然養鶏という仕事を始めて、最初に実感したのは「手順では説明できない仕事」だという現実でした。工場のように同じ工程をなぞれば同じ結果が出る世界ではありません。餌の量、湿度、鶏の動き、トサカの色など、すべての状況を見ながら、その都度判断が求められます。まさに職人の世界です。
会社員時代は、業務内容から応対の判断分岐まですべてを可視化・分析したうえで業務を設計・運営していました。顧客満足度や生産性など、数値に基づき設計通りの成果が常に求められていました。
その経験から、先人たちが残してくれた「技術・価値」を個人の勘や属人的なものにせず、手順や仕組みとして再現できる形にしたいと考えています。今のままでは、それらの技術を定量的に残せず、自然養鶏そのものが失われてしまう可能性があるからです。
一見、職人技は当人の天性の能力や感性が重要だと考えがちですが、実際に行っていることはいたって合理的です。感覚的な表現の裏には、それぞれの条件に対する理論に基づいた要素が必ず存在します。
ただ、自然を相手にする世界では非常に多くの要素が複雑に絡み合うため、言語化するのは非常に難しいのも事実です。
それでも、誰がやっても同じ結果になるとまではいかなくても、ある程度仕組みや判断基準を明確にすることはできると思います。ロジックをしっかり構築し、次世代に伝えられる形にしていくことが私の使命だと考え、今まさに試行錯誤を続けているところです。
会社員時代は、業務内容から応対の判断分岐まですべてを可視化・分析したうえで業務を設計・運営していました。顧客満足度や生産性など、数値に基づき設計通りの成果が常に求められていました。
その経験から、先人たちが残してくれた「技術・価値」を個人の勘や属人的なものにせず、手順や仕組みとして再現できる形にしたいと考えています。今のままでは、それらの技術を定量的に残せず、自然養鶏そのものが失われてしまう可能性があるからです。
一見、職人技は当人の天性の能力や感性が重要だと考えがちですが、実際に行っていることはいたって合理的です。感覚的な表現の裏には、それぞれの条件に対する理論に基づいた要素が必ず存在します。
ただ、自然を相手にする世界では非常に多くの要素が複雑に絡み合うため、言語化するのは非常に難しいのも事実です。
それでも、誰がやっても同じ結果になるとまではいかなくても、ある程度仕組みや判断基準を明確にすることはできると思います。ロジックをしっかり構築し、次世代に伝えられる形にしていくことが私の使命だと考え、今まさに試行錯誤を続けているところです。
価値観を広げ、社会へつなぐ

今後、ビジネスとして広げていく上でのテーマは、「私たちの提供する価値を共有できるお客様と、どのように出会っていくか」という提供価値の認知拡大だと考えています。
私たちがつくっている卵は、原料や飼い方、環境に徹底的にこだわり、安心・安全で健康的、そして美味しいものを実現しています。その分、一般的な卵より価格は高くなります。
現在の主な販売層は、口コミや飲食・購入体験を通じて出会った方々で、約9割が定期購入のお客様です。加えて、ミシュランの星付きレストランをはじめとする、こだわりを持つ飲食店でも継続的にご利用いただく機会が増えてきています。
ただ、商品特性上、ネット広告やマスメディアでPRすれば効率的にお客様と出会えるというものではありません。文章や映像だけでは価値が伝わりづらいのです。
だからこそ、まずは「どれだけ触れてもらえるか」「実際に食べてもらえるか」といった顧客体験こそが何より重要だと考えています。そのため、ターゲットとなるお客様の集客が見込めるマルシェへの出店や、都内や地元の食料品店での試食販売に取り組んでいます。
さらに、味だけでなく、私たちの世界観や価値観をどう体験してもらえるかも非常に大切だと考えています。今後は、農場の環境を体験できるイベントの開催や、価値観を伝えるワークショップ、農家レストランの運営など、こちらから能動的に発信し、知ってもらう取り組みを進めていく予定です。
そして長期的には、そうした価値観を大切にしてくださる方々に向けて、卵に限らず、農畜産物や体験サービスなど、私たちのベースとなる価値観を軸に事業を広く展開していきたいと考えています。
私たちがつくっている卵は、原料や飼い方、環境に徹底的にこだわり、安心・安全で健康的、そして美味しいものを実現しています。その分、一般的な卵より価格は高くなります。
現在の主な販売層は、口コミや飲食・購入体験を通じて出会った方々で、約9割が定期購入のお客様です。加えて、ミシュランの星付きレストランをはじめとする、こだわりを持つ飲食店でも継続的にご利用いただく機会が増えてきています。
ただ、商品特性上、ネット広告やマスメディアでPRすれば効率的にお客様と出会えるというものではありません。文章や映像だけでは価値が伝わりづらいのです。
だからこそ、まずは「どれだけ触れてもらえるか」「実際に食べてもらえるか」といった顧客体験こそが何より重要だと考えています。そのため、ターゲットとなるお客様の集客が見込めるマルシェへの出店や、都内や地元の食料品店での試食販売に取り組んでいます。
さらに、味だけでなく、私たちの世界観や価値観をどう体験してもらえるかも非常に大切だと考えています。今後は、農場の環境を体験できるイベントの開催や、価値観を伝えるワークショップ、農家レストランの運営など、こちらから能動的に発信し、知ってもらう取り組みを進めていく予定です。
そして長期的には、そうした価値観を大切にしてくださる方々に向けて、卵に限らず、農畜産物や体験サービスなど、私たちのベースとなる価値観を軸に事業を広く展開していきたいと考えています。
まずは自分の軸をぶらさずに

これから群馬県内で新しい挑戦を始める方に伝えたいのは、「最終的な意思決定者であるという覚悟を明確に持つこと」です。事業は一人で完結しないことがほとんどです。だからこそ、自分の軸が定まっていないと、一緒に事業を進める仲間も、応援してくれる周囲の方々も動きづらくなってしまいます。
私であれば、「健康で美味しいものを持続的に生み出したい」「自然との関係の中で、命の循環を実現していきたい」というところに軸を置いています。
実際、新しいことに挑戦すると、周囲の反応はさまざまです。私自身、心が折れそうになるような言葉もたくさんもらいました。それでも続けてこられたのは、本当に自分のことのように考えて支援してくれる人、応援してくれる人がいたからです。
同じ志を持つ方々との出会いにも勇気づけられました。私は2022年に、沼田市が運営する「ぬまた起業塾」を受講しました。ビジネスプランを学ぶだけでなく、同じ志を持つ起業家仲間とのネットワーキングの機会にもなりました。
飲食業や旅館業など、業種の異なる方々との交流を通じて、自分にはない視点やアイデアを得たり、時には新たなビジネスが生まれることもあります。そうした前向きな接点が生まれやすい環境に身を置けたことは、自分にとって大きな糧となりました。
最後になりますが、起業はマラソンだとよく思います。自分の思いを信じながら、人とのつながりを大切にし、小さいことでも着実に挑戦を積み上げ続けていきたいと思います。
私であれば、「健康で美味しいものを持続的に生み出したい」「自然との関係の中で、命の循環を実現していきたい」というところに軸を置いています。
実際、新しいことに挑戦すると、周囲の反応はさまざまです。私自身、心が折れそうになるような言葉もたくさんもらいました。それでも続けてこられたのは、本当に自分のことのように考えて支援してくれる人、応援してくれる人がいたからです。
同じ志を持つ方々との出会いにも勇気づけられました。私は2022年に、沼田市が運営する「ぬまた起業塾」を受講しました。ビジネスプランを学ぶだけでなく、同じ志を持つ起業家仲間とのネットワーキングの機会にもなりました。
飲食業や旅館業など、業種の異なる方々との交流を通じて、自分にはない視点やアイデアを得たり、時には新たなビジネスが生まれることもあります。そうした前向きな接点が生まれやすい環境に身を置けたことは、自分にとって大きな糧となりました。
最後になりますが、起業はマラソンだとよく思います。自分の思いを信じながら、人とのつながりを大切にし、小さいことでも着実に挑戦を積み上げ続けていきたいと思います。
プロフィール
会社所在地:群馬県沼田市下川田町5192−1 天空の鶏舎<外部リンク>
公式ホームページ:群馬の平飼い卵なら自然恵みファームズ | 群馬の北毛エリアでこだわりの有精卵と農業体験を提供する会社です。<外部リンク>
ショッピングサイト:shizen megumi farmers′ Market | 群馬の北毛エリアでこだわりの有精卵や加工品を販売する自然恵みファームズのショッピングサイトです。<外部リンク>
インスタグラム:子持生命卵 自然恵みファームズ株式会社(@shizen_megumi_farms) • Instagram写真と動画<外部リンク>
公式ホームページ:群馬の平飼い卵なら自然恵みファームズ | 群馬の北毛エリアでこだわりの有精卵と農業体験を提供する会社です。<外部リンク>
ショッピングサイト:shizen megumi farmers′ Market | 群馬の北毛エリアでこだわりの有精卵や加工品を販売する自然恵みファームズのショッピングサイトです。<外部リンク>
インスタグラム:子持生命卵 自然恵みファームズ株式会社(@shizen_megumi_farms) • Instagram写真と動画<外部リンク>

