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須藤 茂さん
所在地 渋川市
受賞年度 平成28年
屋根施工法、割付、工作法及び曲げ工法の道具の考案に優れ、変形の屋根工法に卓越した技能を有している。また、豊富な経験と高度な技能を基に屋根施工に最適な工具や機材を自身で開発している。人材育成に関しては、職業訓練校において長年講師を務め、若年技能者の育成・指導を行うとともに、地域の小学校等において体験学習を実施し、ものづくりの裾野を広げる活動に尽力するなど、業界全体の発展に貢献している。
建築板金工 須藤 茂 さん
母の想いを胸に
図面作成
須藤さんの父は旧赤城村で板金業を営んでいたが、昭和22年のカスリーン台風の被害にあい、亡くなられた。残された須藤さんの母は、須藤さんが小学生のころから、特殊な技能をもった板金業を継ぐよう諭したという。その母の想いを胸に、中学卒業と同時に、板金職人に弟子入りした。住み込みで5年間厳しい修行を積み、板金の基礎と職人のしきたりを覚えた。27歳のときに独立し、その後、社名を現在の藤伸(とうしん)板金有限会社に改めた。「藤伸」には須藤さんの「藤」が「伸びる」という想いが込められている。
板金工のプロとして
双林寺鬼祈願式
須藤さんは、これまで、社寺仏閣の銅板屋根工事を手がけ、その数は20以上になる。渋川市の子持神社のほか、同市の双林寺での大屋根改修では、屋根面積400坪を銅板本瓦棒葺で施工、3.5mの高さの鬼飾りを取り付けた。「鬼飾りは、火災や疫病からお寺の本堂や檀家さんを守る守り神である」と須藤さんはいう。
また、社寺仏閣だけではなく、高山村のぐんま天文台も須藤さんの施工である。チタン鋼材を使用し、当時の最先端の加工方法でドーム型屋根の難工事を見事に完成させた。
伝統を守り、工夫を
自ら作成した「タガネ」
須藤さんは、拍子木一本で、銅板に鮮やかな折り目を付ける。「最近は、なんでも機械化されているが、伝統を守ることが大事」という。一方で、板金工具の「タガネ」は既製品ではなく、自らが使いやすいよう工夫し、作り上げた。
また、芸術家としての顔もあわせ持つ。銅板工芸会の工芸師として、地域の方々に銅板による絵画や工芸品づくりを指導するとともに、自ら作品づくりに精を出し、二科展などのコンクールに作品を出品する。須藤さんは「入選するのが楽しみ」という。
後進の育成
ものづくり体感事業
県板金工業組合の副理事長・技術委員長として、自らの職場に技能検定受検者を招き、その指導を行っている。須藤さんの技能の高さから県外からも教えを請う受検者もいるという。また、県技能士会連合会が主催する「ものづくり体感事業」では、県内各地の小学校に赴き、子ども達にものづくりの楽しさを教える。子ども達は、須藤さんの技に驚き、須藤さんは、「子ども達が作品を仕上げたときの喜ぶ顔を見られるのがうれしい」という。
若手技能者に向けてのメッセージ
- 昔ながらの伝統技術を大事に
- 経験豊かな技術で努力
- 頑張りぬくことが大事