本文
松井 正志さん
所在地 昭和村
受賞年度 平成27年
ワイヤ放電加工機とプログラミングを駆使した、高精度歯車の金型加工において卓越した技能を有し、金型組み込み調整についても他の追随を許さない技能を有している。また、技能検定取得推進の責任者として、社内・社外に多くの技能検定合格者を輩出するなど、後進育成についても積極的に携わり、キヤノングループ内においても高く評価されている。
数値制御金属工作機械工 松井 正志 さん
金型一筋
金型組込み調整
松井さんは、工業高校在学中に旋盤作業やフライス盤作業を学び、卒業後は金型製作に携わり、キヤノン電子(株)でも入社後金型製作部門を一筋に歩んできた。一眼レフカメラの絞りの口径精度アップと安定した回転を得るために使用する高精度歯車を、ワイヤ放電加工機とプログラミングを駆使して加工する。
プロの技
超高精度歯車
ワイヤ放電加工とは、加工する金属に電極を近づけて稲妻を飛ばし、金属を溶かして加工する手法である。ワイヤ放電の電極線は通常0.2ミリメートルのものを使用するが、松井さんは0.1ミリメートルから0.07ミリメートルの髪の毛程度の電極線を使用し、部品を加工する。これほどまでに細い電極線を使いこなすのは至難の業であり、これができる技能者は非常に少ない。加工で培った知識と経験から、一眼レフカメラに使われるシャッター羽根、絞り羽根の高精度型組込みも行っている。
多いときには、年間数十の型を作成するという。一方でプリンターの金型などのメンテナンスも行う。「いろいろな部署から様々な要求がくる。それがやりがいにつながる。」と内に秘めた高い志がうかがえる。
いかに精度を高めるか
カメラの内部
加工した部品は、ダイヤルゲージという測定器を使って自らが測定する。部品の組み合わせで設計値を保証するため、最終的には手作業で3/1000ミリメートルを実現する。「この仕事で最も難しいところはいかに精度を高めるかというところ」と松井さんはいう。また、カメラという精密機器に大敵のバリと呼ばれるぎざぎざした加工跡を最少限にし、「ゴミがはいってしまうと映像やシャッター音にも影響する。」とその加工作業には細心の注意を払う。松井さんの技能は、カメラのみならずスキャナー、レーザービームプリンターにも使われ、それらの画像品質の向上に大きく貢献している。
名匠の技能向上の想い
「キヤノンの名匠」バッジ
キヤノングループ十数万人のうち、現役では30数名にしか与えられていない「キヤノンの名匠」の称号をもつ。技能検定については、松井さん自身、仕上げ職種3作業、放電加工職種1作業で1級、さらに放電加工職種では特級に合格している。事業所内で一時低調であった技能検定の受検を推進し、すべての部署で技能士を輩出した実績を持つ。「合格が目標ではない。合格することが技能を持っている一つの目安になる。次の目標は、多能工を育て、県の複合技能認定と職種最上位級を目指していきたい。」と後進の育成についても熱心に取り組む。秩父事業所の技能検定受検者も松井さんの指導を仰ぐ。事業所の枠を超え、後進に惜しみない指導を行っている。
若手技能者に向けてのメッセージ
「自分には向かないと思ったことでも、続ければ、楽しく思えるようになる」
「表に出ない地味な金型が国内産業の多くを支えている」
「目標をたて、多くの経験を積んでほしい」