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武井 國八さん

更新日:2023年8月1日 印刷ページ表示

武井 國八さんの画像

所在地 太田市

受賞年度 平成25年
大規模屋根の銅板葺き施工、鬼板造りにおいて、自ら改良した道具を使用し、手作りで加工する技能に卓越しており、これまでに100件以上の寺社建築実績がある。


建築板金工 武井 國八 さん

夫婦の絆

「おっかーが苦労した」の画像
「おっかーが苦労した」

26才の時、埼玉県妻沼市から太田市へ移ってきた。当時は板金工として資金繰りも厳しく、11坪の平屋に親子6人と職人2人が寝泊まりしていた。食事の支度など、奥さんの負担も多く、夫婦二人三脚の生活だった。

太田市へ来た頃は、バイクも車もなく、夜中の3時頃、リヤカーに梯子や道具を積んで家を出て、現場に7~8時に着くということもあった。それを考えると「今の時代は恵まれている」と、当時の苦労を笑顔で振り返る。

この頃は板金の材料がなく、ペンキの一斗缶を加工して屋根に利用していたという。その後、亜鉛鉄板が登場するが、銅はまだまだ高級な材料だった。

武井さんが銅板を利用するキッカケは雨どいで、その後屋根でも使うようになった。

若い頃からの夫婦の絆が、群馬県知事表彰、(社)日本建築士会連合会会長表彰、中央職業能力開発開発協会会長表彰など、さまざまな受賞歴につながっている。

銅は色

大洞赤城神社の画像
大洞赤城神社

銅は、なまし(加熱後、常温に戻したときに、その形になるよう冷却すること)が強すぎるとボロボロになり、足りないと固くて延びない。そこを色で判断するという。当然、そこまでいくには経験が必要だ。

武井さんが最初に手掛けた社寺建築は昭和45年の大洞赤城神社造営屋根工事だった。当時、父親と一緒にした仕事は良い経験ができた。だが、親子でも「見て覚えろ。」という職人気質の父親から教えてもらうのは苦労した。また、大変厳しい父親で、口より先に手が出ることもあった。仕事の話しは一杯お酒をついでから聞き出したという。

現在までに、100棟以上の社寺建築を手掛けている武井さんだが、12月の寒い時期に完工した大洞赤城神社は、今でも印象に残っている社寺のひとつである。その他、太田市の明王院の銅板葺き・江文神社の銅板葺き・冠稲荷内八坂神社の大型鬼板も印象深い。

「自分でやってみないとわからない。」こうして武井さん自身もいろいろな経験をして「名工」と呼ばれるようになった。

受け継いで欲しい技術

仕事場にての画像
仕事場にて

鬼板造りは、まず鬼の図面を描き、彫刻師に掘ってもらう。その型板に罫書き(けがき)で記号を施し打ち出し作業に入る。打ち出しの際には、銅をなまして打ち出し、打ち込みを数回繰り返す。ものによってはその仕上げは1ミリ以下になることもある。

最近では彫刻師が少なくなっているため、掘ってもらった型板をジュラルミンとアルミで葺いて、末代まで残るようにしている。木は痩せるので、このような加工が必要だという。

現在、多くなっている機械加工の製品と手造りでは「重みが違う。」という。手造りの鬼板は下から見上げると、陰が浮き出て、あたたか味を感じられる。

手造りの技法であるため、なまし作業で使用する鞴(ふいご)をはじめ、打ち出し作業で使用する鑽(たがね)、坊頭(ぼうず)ハンマーなどの道具も手造りである。

武井さんは、先人が築いてきた技法と自ら考案した技法を合わせて、後進の育成に当たっている。

まずは道具から

良く言う事を聞く道具類の画像
良く言う事を聞く道具類

道具が言う事を聞いてくれないことがある。いいものを造るには、まずは言うことを聞いてくれる道具から造らなくてはならない。

「よくできた鑽(たがね)は、自分で動いてくれる。」

少しずつ研いで油をつけながら鑽を良い道具に仕上げていくと、こういうことが起こるという。逆に、はさみが研ぎ方によって逆戻りしてしまうような言うことを聞かない道具になることもある。

武井さんにとって道具は「外科手術の器具と同じ」なのだ。頭の中に道具が全部入っている。順番も決まっていて、必要な道具に自然と手が伸びるという。

また、職業訓練校ではとにかく基礎を教えている。例えば、はさみの使い方では「親指は曲がらないように親が支えている。人差し指は方向性を決める。中指、薬指、小指とみんなで協力すれば、ものは上手に切れる。」と若者たちを指導する。

若手技能者に向けてのメッセージ

若手技能者に向けてのメッセージの画像

「とにかく今は仕事がなくても、自分でやってみる。」

「いつか時代が変わり、お客が変わる。」

「鬼の造り方、打ち出しの出し方、習っていることが役立つときが必ずくるよ。」

「現場へ連れて行って実技を教えたい。」

フォトギャラリー

めずらしい柱の手造り根巻たくさん飾られている表彰状太田市安養寺町の明王院

太田市新島町の江文神社きりしんビジネスマッチングフェアに出展した作品太田地区高等職業訓練校にて若手の教育