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松田 計夫さん

更新日:2023年8月1日 印刷ページ表示

松田 計夫さんの画像

所在地 高崎市

受賞年度 平成22年
建築板金工として、特に銅板葺き屋根の施工法に優れた技能・技術を有している。また、組合の活性化と職業訓練指導員、一級技能士として後継者の指導育成を通じて業界の発展に努めている。


建築板金工 松田 計夫 さん

仕事の鬼

「屋根の縁が見せ場であり急所」の画像
「屋根の縁が見せ場であり急所」

「屋根の平は誰がやってもそんなに変わらない。屋根の縁が一番の見せ場であり急所」。建築板金の世界に入って60年。銅板ぶき屋根の施工で卓越した技術を有し、妙見寺(高崎市)や西林寺(前橋市)のほか、草津の老舗旅館である山本館や草津ホテルなど数多くの仕事を手掛けてきた建築板金工・松田計夫さん。既製品を使わず一枚の金属板から屋根材や雨どいなどを作り上げ、高所や急傾斜の屋根に取り付ける危険な作業まで全てをこなす。「現場は一つ一つすべて違う。何をどうするか、現場に行くと頭に入ってくる」。

昼は現場、夜は作業場という毎日を送る松田さんを「仕事の鬼」と妻の豊子さん。一方で家族思いの一面を嬉しそうに話す。「酒も遊びもしない。仕事が終わればまっすぐに帰ってくるし、余ったお金はきちんと家に戻してくれる。最高の夫」。

悔しさをばねに

銅板屋根の葺き替え (上→下)の画像
銅板屋根の葺き替え (上→下)

「トタン屋がどういう仕事をするのか分からなかった。入って初めて分かった」。親の勧めで中学校を卒業して間もなく、前橋市で建築板金業を営んでいた親戚の家に住み込みで入った松田さん。朝の雑巾がけに始まりトイレの汲み取りや掃除・洗濯など一通りの雑用をこなしながら、親方の仕事を見て覚えた。「給料は道具の購入に充てた。遊ぶ金も着るものを買う金もなかった」。町で高校へ進学した同級生と行き会いそうになると横道へ逃げ込んだ修業時代。「みじめな格好を見られたくなかった。自分も高校に行って勉強をしたかった」と振り返る。

そんな悔しさをばねに、松田さんは一人黙々と修業を続け技術を身に付けていった。「1年目は親方に言われるがままに仕事をしたけれど、2年3年と経つにつれ自分の仕事が出来るようになり面白くなっていった。周りが高校を卒業するころには、一人前に何でも出来る自信がついて嬉しかった」。

現場が教えてくれる

夫婦二人三脚の日々を笑顔で振り返るの画像
夫婦二人三脚の日々を笑顔で振り返る

修業に入ってから15年後、親方が亡くなったことを機に従業員を引き連れ実家のある高崎市に戻った松田さん。次々と仕事が舞い込み、昼は現場で工事をし、夜は自宅にある作業場で図面を引き材料の加工をした。県外の建設現場にも出向き、家に戻れない日が続いたこともあったという。そんな松田さんを妻の豊子さんは懸命に支え続けた。事務仕事のほか県の建築板金工業組合の仕事の手伝いや板金の仕事も手伝い、夫婦二人三脚で会社を切り盛りした。松田さんは「材料費などの支払いは一度も待ってもらったことがない。それも女房がきちんと管理してくれていたから」と豊子さんに厚い信頼を寄せる。

これまで数多くの仕事を手掛けてきた松田さんだが、出来なかった仕事はないという。「家で夜中までいくら考えても分からなかったことでも、現場でやっているうちに自然と仕事が収まってしまう。現場が教えてくれる」。

住宅がある限り

「みなさんに恵まれている」の画像
「みなさんに恵まれている」

現代の名工に選ばれた理由について「みなさんに恵まれているから今の自分がある。運が良かった」と答える松田さん。これまで仕事の傍ら40年にわたり県の建築板金工業組合で理事長などの役員を務めてきた。現在も組合のOB会や地域の集まりに積極的に参加し、日ごろから公私を問わず人付き合いを大切にしている。「時間があるときに板金で作った壺やお面を皆さんに差し上げることが最近の楽しみ」。

また、松田さんは職業訓練指導員や技能検定員も務め、後進の育成にも尽力してきた。しかし「私が仕事を覚えたときには既製品はなかったが、今は既製品が多くなり技術がなくても仕事ができてしまう。それに技術を覚えたくてもそういう仕事自体がない」と危機感を抱いている。その中で「いくら不景気といっても仕事はあると思う。住宅がある限り」と希望を見出す重要性を訴える松田さん。「たとえ仕事を辞めても現代の名工であることは一生変わらない」―半世紀以上にわたり培ってきた技と絆の大切さを生涯かけて伝えていく。

若手技能者に向けてのメッセージ

若者へのメッセージ

「真面目に仕事を覚える」

「仕事は手で覚える。習うだけではできない仕事がある」

「親方に小言を言われながら仕事をすると、できる仕事もできない」

「原寸を測って原寸で描くことが大事」

「大人になっても友達は大切」

フォトギャラリー

お面 左:ひょっとこ 右:おたふく屋根の葺き替えに最低限必要な道具銅板に打ち出した馬の絵銅板屋根の上て゛自作の六角あんこう(雨と゛い)一枚の銅板から作り上げた壺