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令和5年度群馬県感染症流行予測調査結果について

更新日:2024年3月12日 印刷ページ表示

感受性調査

 感受性調査では、さまざまな年代の方々の血液中に含まれる抗体の量を測定し、感染症に対抗できる免疫をどれくらい保有しているか調べます。
 令和5年度は、麻しん・風しん・インフルエンザの3疾患について、血液中に十分な抗体を持っている人の割合(抗体保有率)の調査を行いました。なお、本調査への同意の得られた0歳から70歳の計412名を調査対象者とし、調査にあたっては、健康診断あるいは医療機関受診時に採取した血液の残余を利用しました。
 本県で実施した調査の結果は以下のとおりです。

令和5年度群馬県感染症流行予測調査(感受性調査)の概要 (PDF:595KB)

麻しん

  • 対象:0~70歳の412名の血清
  • 方法:酵素免疫測定法(EIA法)
  • 判定:検査キットの添付文書に従い、EIA抗体価が4.0以上の場合は陽性、EIA抗体価が2.0未満の場合は陰性、EIA抗体価が2.0以上で4.0未満の場合は判定保留としました。
  • 結果:EIA抗体価4.0以上の抗体保有率は全体の80.6%でした(図1)。年齢群別では、2-3歳、40歳以上で90%以上の抗体保有率を示しました。抗体価が2.0未満の抗体陰性者の割合は全体の7.5%でした。抗体陰性者の割合について年齢群別でみると、0-1歳が最も多く52.4%であり、ほとんどの年齢群で抗体陰性者が認められましたが、4-9歳の年齢群では抗体陰性者が認められませんでした。

図1:麻しん結果グラフ画像

風しん

  • 対象:0~70歳の412名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
  • 判定:HI法ではHI抗体価が1:8以上の場合に陽性と判定しますが、1:8及び1:16では十分な風しんの発症予防ができない可能性があると考えられています。そこで、HI抗体価が1:32以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:HI抗体価1:32以上の抗体保有率は全体の61.7%で、昨年度(71.4%)より低い結果でした。(図2)年齢群別では、35-39歳(78.8%)で最も高い保有率を示し、次いで40歳以上(69.0%)、4-9歳(68.4%)でした。HI抗体価が1:8未満の抗体陰性者の割合は全体の6.1%であり、昨年度(4.6%)より高い結果でした。抗体陰性者の割合について年齢群別でみると、0-3歳が最も多く30.2%でした。また、4-9歳(5.3%)、20-24歳(3.1%)、30-34歳(1.8%)、35-39歳(6.1%)、40歳以上(7.1%)の5つの年齢群でも抗体陰性者が認められ、10-14歳、15-19歳、25-29歳では認められませんでした。

図2:風しん結果グラフ画像

インフルエンザ

  • 対象:0~70歳の412名の血清
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
    インフルエンザの感受性調査では、今シーズン(2023/24シーズン)のインフルエンザ流行開始前であり、かつ当該シーズンのインフルエンザワクチン接種前に採取した血清について調査を実施しました。今年度は以下のインフルエンザウイルス4種類の抗原について調査しました。これら4抗原は、いずれも今シーズンのワクチン株として選定されている抗原です。
    A/ビクトリア/4897/2022(H1N1)
    A/ダーウィン/9/2021(H3N2)
    B/プーケット/3073/2013(山形系統)
    B/オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合に陽性と判定されますが、1:40未満では重症化が予防できない可能性があると考えられるため、抗体価1:40以上の場合を抗体保有としました。
  • 結果:A/ビクトリア/4897/2022(H1N1)(図3)
    今シーズン(2023/24)からワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は2.4%でした。年齢群別では、10-14歳(6.5%)で最も高い保有率を示し、次いで5-9歳及び15-19歳(共に6.1%)、20-29歳(2.5%)、30-39歳(1.1%)でした。0-4歳、40-49歳、50-59歳、60歳以上では抗体保有者を認めませんでした。

図3:インフルエンザA/ビクトリア/1/2020(H1N1)結果グラフ画像

 結果:A/ダーウィン/9/2021(H3N2)(図4)
 昨シーズン(2022/23)からワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は1.5%でした。昨年度(5.1%)と比較すると、抗体保有率は低下しました。年齢群別では、10-14歳(10.9%)で最も高い保有率を示し、次いで40-49歳(3.8%)でした。一方、そのほかの年齢群では、1:40以上の抗体保有者を認めませんでした。

図4:インフルエンザA/ダーウィン/9/2021(H3N2)結果グラフ画像

 結果:B/プーケット/3073/2013(山形系統)(図5)
 昨シーズン(2022/23)に引き続き、ワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は41.5%で、4抗原の中で最も高い保有率でした。昨年度(51.9%)と比較すると抗体保有率は低下しました。年齢群別では、30-39歳(63.6%)で最も高い保有率を示し、次いで15-19歳(51.5%)でした。一方、最も低い保有率を示したのは0-4歳(14.6%)でした。

図5:インフルエンザB/プーケット/3073/2013(山形系統)結果グラフ画像

 

 結果:B/オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)(図6)
 昨シーズン(2022/23)からワクチン株に選定されたウイルスであり、本調査株に対する全体の抗体保有率は2.2%であり、昨年度(1.5%)と同程度でした。年齢群別では、50-59歳(11.8%)で最も高い保有率を示し、次いで60歳以上(8.3%)、5-9歳(3.0%)、20-29歳(2.5%)でした。一方、0-4歳、10-14歳、15-19歳、30-39歳、40-49歳の5つの年齢群では抗体保有者を認めませんでした。

図6:インフルエンザB/オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)結果

感染源調査

 感染源調査では、人や動物の体中あるいは環境中に病原体(感染症の原因)が存在しているか、存在している場合にはどのような種類かを調べます。
 令和5年度は、県内産のブタを対象に日本脳炎・インフルエンザの2疾患について、調査を行いました。
 本県で実施した調査の結果については以下のとおりです。

日本脳炎(ブタ)

 日本脳炎とは、主にコガタアカイエカが日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸血し、その後ヒトを刺すことによって起こる感染症です。ヒトが発症した場合は、重篤な急性脳症を起こすこともあります。
 日本脳炎の抗体価が高い場合は、そのブタが日本脳炎に感染している可能性が高いと考えられます。全体のブタの抗体保有率が上昇している場合、感染したブタを蚊が吸血し媒介することによって、ヒトに感染するリスクが高くなります。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計80頭の血清
  • 調査期間:令和5年6月9日から9月25日まで(計8回)
  • 方法:赤血球凝集抑制試験法(HI法)
  • 判定:HI法の抗体価が1:10以上の場合を陽性と判定し、さらに1:40以上の場合には2-メルカプトエタノール(2-ME)処理をします。なお、2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは直近で日本脳炎ウイルスに感染したと考えられます。
  • 80頭について調査を実施したところ、HI抗体価1:10以上を示したブタは4頭(5.0%)でした。4頭とも、1:40以上を示したため、2-ME処理を実施したところ、1頭が2-ME感受性抗体陽性となりました。(表1)
表1 ブタの日本脳炎ウイルスHI抗体・2-ME感受性抗体保有状況
採血日 頭数 HI抗体価 2-ME感受性抗体
※注2
<10 10 20 40 80 160 320 640≦

陽性数
※注1

抗体陽性率 処理数 陽性数 抗体陽性率
6月9日 10 10               0 0.0%      
6月19日 10 10               0 0.0%      

7月10日

10 10               0 0.0%      
7月24日 10 10               0 0.0%      
8月7日 10 10               0 0.0%      
8月25日 9 9               0 0.0%      
9月11日 11 10                1  1 9.1% 1 1 100%
9月25日 10 7         1 1 1 3 30.0% 3 0 0%
合計 80 76 0 0 0 0 1 1 2 4 5.0% 4 1 25%

※注1 抗体価1:10以上を陽性とする。
※注2 2-メルカプトエタノール(2-ME)処理は、HI抗体価1:40以上で実施する。2-ME感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは直近で日本脳炎ウイルスに感染したと考えられる。2-ME処理を行った血清の抗体価が未処理の血清と比較して3管(8倍)以上低かった場合を陽性、2管(4倍)低かった場合を疑陽性、不変または1管(2倍)低かった場合を陰性と判定する。

インフルエンザ(ブタ)

 ブタは、ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの両方に感染することがあり、ブタの体内でウイルスが変異すると新しいインフルエンザウイルスが発生する可能性があります。そこで、新たなインフルエンザウイルスの出現監視を目的として調査を実施しています。

  • 対象:県内のと畜場へ出荷された県内産肥育豚(6ヶ月齢)計100頭(予定)の鼻腔拭い液
  • 調査期間:令和5年11月から令和6年2月まで(計5回)
  • 方法:細胞培養法
  • 判定:ウイルスが細胞で分離された場合には、ウイルス同定検査を実施します。
  • 結果:インフルエンザウイルスは分離されませんでした。

謝辞

 感受性調査の実施にあたり、調査へ同意し検体を御提供いただいた0~70歳の412名の対象者の皆様、及び検体収集に御尽力いただいた各学校の先生方、公立藤岡総合病院、地域医療機能推進機構群馬中央病院、国立病院機構高崎総合医療センター、前橋赤十字病院、県立小児医療センター、公益財団法人群馬県健康づくり財団、その他各関係機関の皆様に厚く御礼申し上げます。
 また、感染源調査の実施にあたり、ブタの検体採取に御協力いただいた株式会社群馬県食肉卸売市場及び群馬県食肉衛生検査所の皆様に深謝いたします。

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