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本文

議第11号議案(平成30年)

林業県ぐんま県産木材利用促進条例

目次

 前文
 第一章 総則(第一条―第九条)
 第二章 県産木材の利用の促進に関する指針(第十条)
 第三章 県産木材の利用の促進に関する施策(第十一条―第十六条)
 第四章 県産木材の利用の促進のための体制(第十七条―第十九条)
 附則
 群馬県は、県土の約三分の二を森林が占めており、豊かな森林資源に恵まれ、森林面積、林野率ともに「関東一の森林県」である。
 本県の森林は、首都圏の水がめとして豊かな水を育み、洪水や土砂災害を防ぎ、地球温暖化の防止や木材をはじめとする林産物の供給など、県民共有の貴重な財産として、多面的な機能を発揮している。
 本県では、戦後造林された人工林の多くが、伐採して木材として利用できる大きさに成長し、森林資源が量的に充実している。一方で、高齢林の増加と若齢林の減少が進行し、持続可能な森林経営や将来にわたる木材の安定供給に支障を来たしかねない状況にある。
 また、本県の林業及び木材産業を巡る情勢は、木材価格が長期にわたって低迷し、森林所有者が経営意欲を持てず、豊かな森林資源を十分に活用できていない状況にあり、加えて公共建築物等への利用も十分とはいえない。県内の木材需要も、外国産木材が半数以上を占める状態が続いており、県産木材の割合はいまだ低いままである。
 まさに今、豊富な森林資源を活用し、森林の若返りを進めていくための、「関東一の森林県」から「関東一の林業県」へと飛躍する積極的な取組が求められている。
 本県の素材生産量は、関東地方で三番目に留まっており、ここから「関東一の林業県」に飛躍するためには、林業及び木材産業を活性化し、官民が協力して県全体で県産木材の利用を促進していく必要がある。このことは、山村地域の振興と県内経済の活性化にも大きく寄与する。
 ここに、県民共有の貴重な財産である森林を適切に整備・保全し、そこから生産される県産木材を積極的に利用することで、「林業県ぐんま」の実現を加速させ、県民の安全で安心な暮らしや快適で豊かな生活環境を創造するとともに、森林を豊かで健全な姿で次代に引き継いでいくことを決意し、この条例を制定する。

第一章 総則

目的

第一条 この条例は、県産木材の利用の促進に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民等、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者及び建築等関係事業者の役割を明らかにするとともに、県産木材の利用の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県産木材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって林業及び木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、併せて、森林の有する多面的機能の持続的な発揮及び快適で豊かな県民生活の実現に寄与することを目的とする。

定義

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 県産木材 県内で生産され、又は加工された木材をいう。
二 森林の有する多面的機能 県土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、県民の保健及び休養、地球温暖化の防止、林産物の供給等の森林の有する多面にわたる機能をいう。
三 森林所有者 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第二項に規定する森林所有者をいう。
四 林業事業者 森林において森林施業(造林、保育、伐採その他の森林における施業をいう。以下同じ。)の事業を行う者をいう。
五 木材産業事業者 木材の加工又は流通の事業を行う者をいう。
六 建築等関係事業者 住宅、住宅以外の建築物、公共土木施設その他の工作物(以下「建築物等」という。)の設計又は施工の事業を行う者をいう。
七 関係団体 第三号から前号までに掲げる者が組織する団体をいう。

基本理念

第三条 県産木材の利用の促進は、林業及び木材産業の持続的かつ健全な発展が県内経済の活性化に不可欠であることに鑑み、その経済的価値の向上が図られるよう行われなければならない。
2 県産木材の利用の促進は、造林、保育、伐採及び利用を繰り返すことによる森林資源の循環的な利用により、本県の豊かな森林資源が枯渇することなく次の世代に引き継がれるとともに、森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう計画的に行われなければならない。
3 県産木材の利用の促進は、木材の優れた特性を生かすことにより、県民の快適な居住環境の形成及び県民に癒やしをもたらす生活環境の創造に資するよう行われなければならない。

県の責務

第四条 県は、前条に規定する基本理念にのっとり、県産木材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。
2 県は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、国及び市町村との緊密な連携に努めるものとする。

県民等の役割

第五条 県民及び事業者(以下「県民等」という。)は、日常生活及び事業活動を通じて、県産木材の積極的な利用に努めるとともに、県及び市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

森林所有者の役割

第六条 森林所有者は、その所有する森林の適切な整備及び保全に努めるとともに、県及び市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

林業事業者の役割

第七条 林業事業者は、自らの事業活動を通じて、効率的な生産による県産木材の安定的な供給に努めるとともに、県及び市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

木材産業事業者の役割

第八条 木材産業事業者は、自らの事業活動を通じて、県産木材の特性に応じた加工及び有効利用、安定供給の推進並びに加工技術の継承及び一層の向上に努めるとともに、県及び市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

建築等関係事業者の役割

第九条 建築等関係事業者は、自らの事業活動を通じて、県産木材の積極的な利用並びに木造建築等の技術の継承及び一層の向上に努めるとともに、県及び市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第二章 県産木材の利用の促進に関する指針

第十条 知事は、県産木材の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、県産木材の利用の促進に関する指針(以下「利用指針」という。)を策定するものとする。
2 利用指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 県産木材の利用の促進に関する施策の基本的事項
二 県産木材の利用の目標
三 県産木材の適切な供給の確保に関する基本的事項
四 前三号に掲げるもののほか県産木材の利用の促進に関し必要な事項
3 知事は、利用指針を定め、又は変更したときは、遅滞なくこれを公表するとともに、市町村長及び関係団体に通知しなければならない。

第三章 県産木材の利用の促進に関する施策

県産木材の利用の促進のための施策

第十一条 県は、県産木材の利用の促進及びそのための県産木材の供給の安定を図るため、次に掲げる事項について必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
一 森林資源の利用及び再生産を図るための森林の整備(森林の境界の明確化等を含む。)に関すること。
二 県産木材の生産に係る基盤の整備及び森林施業の集約化並びに人材の育成に関すること。
三 県産木材の加工及び流通の体制の整備に関すること。
四 建築物等及びこれらに係る工事における県産木材及び県産木材製品の利用に関すること。
五 合板、集成材等への県産木材の利用に関すること。
六 県産木材の利用の促進を担う技術者等の育成に関すること。
七 県産木材の品質の向上及び産地の認証に関すること。
八 県産木材のエネルギー利用等及び木質バイオマスの利活用に関すること。
九 県産木材の新たな用途の開発及び国内外への販路の拡大に関すること。

県の建築物等における県産木材の利用等

第十二条 県は、自ら行う建築物等の整備に当たっては、利用指針で定める基準により、木造とすることが適当でない建築物等又は困難であると認められる建築物等以外の建築物等については、原則として木造とするものとする。
2 県は、自ら整備する建築物等及びこれらに係る工事において、率先して県産木材及び県産木材製品の利用に努めるものとする。

情報の提供

第十三条 県は、林業事業者及び木材産業事業者による県産木材及び県産木材の加工品の安定的な供給並びに建築等関係事業者による県産木材の利用の推進が図られるよう、県産木材その他の木材の流通及び消費の動向を把握するとともに、県産木材の利用の促進に関する情報の提供に努めるものとする。

普及啓発

第十四条 県は、森林の有する多面的機能、木材の優れた特性及び県産木材を利用する意義について、普及及び啓発に努めるものとする。
2 県は、県民等に広く県産木材についての関心と理解を深めるとともに、積極的に県産木材を利用する意欲を高めるため、八月を県産木材利用推進月間とするものとする。
3 県は、木育(県民の生活に必要な物資としての木の良さ及びその利用の意義を学ぶ活動をいう。)の推進に努めるものとする。

顕彰

第十五条 県は、県産木材の利用の促進に関し特に優れた取組を行った者の顕彰を行うよう努めるものとする。

市町村への支援

第十六条 県は、市町村が実施する県産木材の利用の促進に関する施策を支援するため、技術的な助言その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第四章 県産木材の利用の促進のための体制

県産木材の利用の促進に関する協議会

第十七条 県は、県産木材の利用の促進に関する施策を円滑かつ効果的に実施するため、関係団体その他の関係者(次項において「関係団体等」という。)により構成される協議会(次項において「協議会」という。)を設けるものとする。
2 協議会では、関係団体等が、県産木材の利用の促進に関する課題について情報を共有し、緊密な連携を図るとともに、県産木材の利用の促進について協議を行うものとする。

財政上の措置

第十八条 県は、県産木材の利用の促進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

実施状況の公表

第十九条 知事は、毎年、県産木材の利用の促進に関する施策の実施の状況を公表するものとする。

附則

この条例は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、第十二条第一項の規定は、平成三十二年四月一日から施行する。

提案理由

林業県ぐんま県産木材利用促進条例を制定しようとするものである。