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令和4年度答申第5号

更新日:2022年9月30日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 審査請求人の主張は、令和3年9月1日付け生活保護変更申請に対する処分(以下「本件処分」という。)を取り消し、審査請求人に対して審査請求人の希望する額の移送費を支給することを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
(1)令和3年10月に○回受診したが、移送費は○回分しか支給されていない。
(2)審査請求人は令和3年○月に施設を退所した際に、施設に対して移送費の相当額を支払っていることから、移送費の支払は施設に対してではなく、審査請求人宛てになされるべきである。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 移送費の支給は、生活保護法による医療扶助運営要領について(昭和36年9月30日社発第727号厚生省社会局長通知。以下「医療扶助運営要領」という。)により、給付要否意見書(移送)により主治医の意見を確認した上で、傷病等の状態に応じて経済的かつ合理的な方法及び経路による最小限度の実費を、領収書等の挙証資料に基づき支給するものである。
 生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第34条第1項において、「医療扶助は、現物給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる。」と定められている。
 処分庁は、本件処分に伴い、審査請求人の主治医から令和3年10月15日に提出された給付要否意見書を確認し、嘱託医からの意見も踏まえた上で、移送費の給付は必要であると認めた。また、その費用については、給付要否意見書より治療に必要な通院頻度とされている1か月に○度の移送費を算定し、額を決定している。これは、医療扶助運営要領第3の9(3)イ及び第3の9(4)に基づく事務処理であるといえる。
 また、処分庁は、法第34条第1項に基づき、移送を行った施設宛てに移送費を支給している。審査請求人は、令和3年○月の施設退所時に施設に対して移送費相当額を支払っていることから現物給付ではなく審査請求人宛てに金銭給付をすることを主張するが、審査請求人は施設に対して立て替えていた移送費相当額を請求すべきであり、法第34条第1項に規定する処分庁が金銭給付することができる理由には当たらない。
 したがって、本件処分は、法令等の定めるところに従って適法かつ適正になされたものであり、違法又は不当であるとはいえない。
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和4年8月9日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和4年8月17日 調査・審議
 令和4年9月16日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1)法第34条第1項において、「医療扶助は、現物給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる。」と定められている。
(2)医療扶助運営要領第3の9(1)において、「移送の給付については、個別にその内容を審査し、次に掲げる範囲の移送について給付を行うものとする。また、給付については、療養に必要な最小限度の日数に限り、傷病等の状態に応じて経済的かつ合理的な経路及び交通手段によって行うものである」と定められている。
 医療扶助運営要領第3の9(2)イにおいて、給付の範囲について「被保護者の傷病、障害等の状態により、電車・バス等の利用が著しく困難な者が医療機関に受診する際の交通費が必要な場合」と定められている。
 医療扶助運営要領第3の9(3)イにおいて、給付決定に関する審査について「被保護者から申請があった場合、給付要否意見書(移送)により主治医の意見を確認するとともに、その内容に関する嘱託医協議及び必要に応じて検診命令を行い、福祉事務所において必要性を判断し、給付の対象となる医療機関、受診日数の程度、経路及び利用する交通機関を適正に決定すること。」と定められている。
 医療扶助運営要領第3の9(4)において、費用について「傷病等の状態に応じ、経済的かつ合理的な方法及び経路により移送を行ったものとして算定される最小限度の実費」とされ、「当該料金の算定にあたっては、領収書、複数業者の見積書、地域の実態料金等の挙証資料に基づき、額の決定を行うこと。」と定められている。
(3)「生活保護問答集について」(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)医療扶助運営要領関係問59において、「移送は最小限度のものを原則として現物支給するものである」と定められている。現物給付とは、被保護者の医療の給付及び看護又は移送等の役務の提供などを指定機関に委託して行わせるものと解される。
(4)問答集医療扶助運営要領関係問63において、過度の受診に対する移送費支給の可否について、「当該受診に要する交通費については、必要な費用とは認められないことから、移送費の給付対象にはならない。」と定められている。

3 本件処分の妥当性について

(1)処分庁は、本件処分に伴い、令和3年10月15日に提出された審査請求人の主治医による給付要否意見書を確認し、嘱託医からの意見も踏まえた上で、移送費の給付は必要であると認めた。
 また、その費用については、給付要否意見書において治療に必要な通院頻度とされている1か月に○日の移送費を算定し、額を決定した。
 以上は、医療扶助運営要領第3の9及び問答集医療扶助運営要領関係問63に基づく事務処理であるといえる。
(2)次に、医療扶助の実施に当たり、施設バスにより審査請求人が医療機関へ移送されていたことを踏まえると、審査請求人の医療機関への移送について、実質的に、処分庁から施設に委託がなされていたものと考えられる。この関係に基づき、施設は現物給付として移送を実施し、処分庁は現物給付を実施した施設に対し実費相当分を支給するというものであり、特段不合理な点は見られない。
 なお、審査請求人は、本人の施設利用契約が終了した後においては、施設ではなく審査請求人に対し支給されるべき旨主張するが、本件処分において処分庁が支給したのは、審査請求人が施設に在籍していた際の移送に係るものであるから、当時の関係に基づいて施設に対して支給することについて、特段不合理な点は見られない。
(3)したがって、本件処分は、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

4 付言

 処分庁は、令和3年10月15日に審査請求人から給付要否意見書及び通院証明書の提出を受け、同年11月18日に嘱託医審査を終了したが、その後の所内の検討に時間を要し、令和4年3月に本件処分を行っている。
 本件処分に係る医療扶助の現物給付は令和3年9月から11月にかけて行われており、審査請求人が医療扶助を受けられなかったわけではないが、法第24条第5項において、原則として申請があった日から14日以内に、その他特別な理由がある場合には30日以内に決定し通知することとされている趣旨を踏まえ、処分庁においては、適切な事務運用に留意されたい。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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