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群馬県総合評価落札方式活用ガイドライン
平成26年4月制定(令和3年10月一部改正)群馬県県土整備部
1 品確法制定の背景
以前、公共工事については、公正性を高めた一般競争入札の施行が拡大するなか、厳しい財政事情のもと、公共事業費の減少とともに価格競争が激化しており、著しい低価格による入札が急増し、適切な技術的能力を持たない業者による不良工事の発生、下請や労働者へのしわ寄せによる公共工事の品質低下に関する懸念が問題となっていた。
また、談合を象徴とした公共工事の入札に関する問題がマスメディアで取り上げられ、社会問題化する事件もあった。
このような背景のもと、平成17年4月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律(以下「品確法」)が施行された。
品確法第3条(基本理念)には、公共工事の品質は、価格と品質で総合的に優れた内容の契約がなされることによって、確保されなければならないと明記されており、総合評価落札方式は、この基本理念に基づいて実施されるものである。
2 総合評価落札方式の意義
総合評価落札方式の適用により、公共工事の施工に必要な技術能力を有する者が施工することとなり、工事品質の確保や向上が図られ、工事目的物の性能の向上、長寿命化、維持修繕費の縮減、施工不良の未然防止等による総合的なコストの縮減、交通渋滞対策、環境対策、事業効果の早期発現等が効率的かつ適切に図られることにより、現在かつ将来に県民の利益がもたらされることが期待できる。また、民間企業が技術力競争を行うことによりモチベーションの向上が図られ、技術と経営に優れた健全な建設業が育成されるほか、価格以外の多様な要素が考慮された競争が行われることで談合が行われにくい環境が整備されることも期待される。
3 本ガイドラインの目的
本ガイドラインは、群馬県が発注する建設工事について、品確法及び基本方針(品確法第8条に基づき、平成17年8月26日閣議決定)に基づき、公共工事の品質確保を図っていくために実施する、総合評価落札方式の活用についての指針である。
本ガイドラインが定められた後、その活用結果を踏まえて制度の一部が改正されるなどしたことなどから、改定版を策定するものである。
総合評価落札方式を実施する場合の手続きについては、「群馬県総合評価落札方式実施要領」で定められているが、本ガイドライン(改定版)は、当該実施要領に基づき、総合評価落札方式を行う上での考え方等について示したものである。
なお、本ガイドライン(改定版)の内容は、今後は活用結果等を踏まえ、改善を図っていく予定である。
4 総合評価落札方式の概要
4-1 総合評価落札方式の特徴
総合評価落札方式は、従来の「価格」のみの競争と異なり、「価格」と「品質」の2つの基準で評価する。そのため、必ずしも最も安い価格で入札した者が落札者になるとは限らず、価格と品質で最も高い評価を受けた者が落札者となる。
4-2 総合評価落札方式の方法
総合評価落札方式は、予定価格の範囲内で入札したものの「価格」と「品質」をそれぞれ点数化し、足し合わせた総合評価点の最も高いものを落札者とする加算方式により行う。(参考:加算方式以外には除算方式がある。)
総合評価点 = 価格点(価格)+ 価格以外の評価点(品質)
価格点及び価格以外の評価点の算定方法については、巻末の総合評価点算定基準による。
価格点と価格以外の評価点の配点、総合評価点算定基準の内容等については、今までも必要に応じて見直しを行ってきたところであるが、さらに今後の実施結果を検証し、必要に応じて見直す。ただし、基準等に係る変更に際しては、後述「5-5」に即した事務を行う必要があることに充分留意されたい。
4-3 総合評価落札方式の型式
総合評価落札方式の型式は次のとおりとする。
標準型
技術的な工夫の余地が大きい工事において、県が求める工事内容(工事目的物の性能・機能・環境・交通対策など社会的要請、総合的なコストの縮減等)を実現するため、入札者の施工能力や技術提案等に基づく技術力等と価格を総合的に評価することが適当と判断した工事に適用する。施工計画書の提出を求めるとともに、配置予定技術者のヒヤリングを行う。
簡易型
技術的な工夫の余地が少ない工事において、施工の確実性を確保するため、入札者の施工能力(工事成績評定、同種の工事の施工経験等)、施工計画等に基づく技術力等と価格を総合的に評価することが適当と判断した工事に適用する。
超簡易型
簡易型より更に工夫の余地が少ない工事において、施工の確実性を確保するため、入札者の施工能力等(工事成績評定、同種の工事の施工経験等)と価格を総合的に評価することが適当と判断した工事に適用する。
総合評価落札方式により入札を行う場合において、各型式を適用する工事については、原則として以下のとおりとする。
標準型 | 設計価格1億円以上の橋梁上部・トンネル工事等。また、設計価格1億円未満の橋梁上部・トンネル工事であっても、契約担当者が標準型を適用することが適当と判断した場合は、実施することができるものとする。 |
---|---|
簡易型 | 設計価格1億円以上の工事、但し標準型で実施する工事は除く。また、設計価格1億円未満の工事であっても、契約担当者が簡易型を適用することが適当と判断した場合は、実施することができるものとする。 |
超簡易型 | 設計価格1億円未満の工事 |
※簡易型(電気・電気通信・機械器具設置)について
本型式については、県外に本店を置く企業の参加が見込まれる入札を行う場合において適用する。
- 橋梁上部・トンネル工事以外で標準型を適用する場合について
標準型については、現在橋梁上部・トンネル工事を対象に実施しているが、これ以外においても、技術的な工夫の余地が大きく標準型で実施することが適当と判断されるものについては、標準型を適用することができる。ただし、評価点算定基準を変更等する場合は事前協議を要する。(5-5参照)
4-4 総合評価落札方式の実施方針
群馬県では品確法が施行された平成17年度に、総合評価落札方式の取り組みに着手し、実施を順次拡大してきた。より活用しやすい制度の導入を図り、平成26年度より超簡易型の土木工事「技術力重視型」を試行し、平成30年度にこれを統合、さらに同年ヒアリング重視型を県土整備部限定の試行として導入するなど、社会的要請に応じて制度の活用拡大を図っている。加えて、県の政策的要請等により評価点項目の見直し・新設も継続的に実施しており、制度の内容的な拡充も図っている。
今後、品確法の趣旨に則り、創意工夫、技術・ノウハウを要する工事について、総合評価落札方式の適用を図っていく予定である。
4-5 学識経験者からの意見聴取
総合評価落札方式により入札を行う場合は、地方自治法施行令第167条の10の2の規定により、以下の場合において、2人以上の学識経験者の意見を聴取することになっている。
ア 落札者決定基準を定めようとする時
イ アの意見聴取において、アの落札者決定基準に基づいて落札者を決定しようとするとき改めて学識経験者の意見を聴く必要があるかどうかについて学識経験者に意見を聴き、意見を聴く必要があるとの意見が述べられた場合は、落札者を決定しようとする時
これにより、群馬県で総合評価落札方式を実施する場合の学識経験者の意見聴取については上記に規定する落札者決定基準を、総合評価点算定基準とし、以下のとおりとする。
・総合評価点算定基準を定めようとする時は、群馬県公共工事総合評価落札方式審査委員会(以下「審査委員会」という。)を開催するか、あるいは個別訪問により、2人以上の学識経験者の意見を聴取(以下「意見聴取」という。)する。
・落札者を決定しようとする時の意見聴取については、現在群馬県が実施している総合評価落札方式は、技術的工夫の余地が少ない工事が主体となっており、審査委員会等で審議決定した総合評価点算定基準により、後の手続きを機械的に進める方法をとっているため、落札者を決定しようとする時の意見聴取は、当面、これを行わないものとする。なお、今後新たな施工方法の提案など、「高度な技術提案を求め、それを審査する必要のある」工事を実施する事例が発生した場合は、別途審査委員会における審議もしくは意見聴取する。
5 総合評価落札方式の実施
総合評価落札方式により入札を行う場合は、条件付き一般競争入札により、ダンピング対策は低入札価格調査制度を適用するものとする。
超簡易型については、条件付き一般競争入札において、開札後に、落札候補者の入札参加資格を確認する条件付き一般競争入札(事後審査方式)により行うことができるものとする。なお、事後審査方式によるか、事前審査方式によるかは、各契約担当者(入札資格審査委員会)の判断による。
5-1 総合評価点算定基準の設定
総合評価点算定基準の以下の評価項目の事項は、個別工事ごとに設定する必要があるので、当該発注工事の内容を考慮して、設定する。
【標準型・簡易型・超簡易型】共通
「企業工事成績評定」及び「配置予定技術者工事成績評定」の対象となる工事の種類
対象となる工事の種類を、下表より選定する。
区分 | 工事の種類 |
---|---|
01 | 土木一式工事 |
02 | 建築一式工事 |
03 | 大工工事 |
04 | 左官工事 |
05 | とび・土工・コンクリート工事 |
06 | 石工事 |
07 | 屋根工事 |
08 | 電気工事 |
09 | 管工事 |
10 | タイル・れんが・ブロック工事 |
11 | 鋼構造物工事 |
12 | 鉄筋工事 |
13 | 舗装工事 |
14 | しゅんせつ工事 |
15 | 板金工事 |
16 | ガラス工事 |
17 | 塗装工事 |
18 | 防水工事 |
19 | 内装仕上工事 |
20 | 機械器具設備工事 |
21 | 熱絶縁工事 |
22 | 電気通信工事 |
23 | 造園工事 |
24 | さく井工事 |
25 | 建具工事 |
26 | 水道施設工事 |
27 | 消防施設工事 |
28 | 清掃施設工事 |
29 | 解体工事 |
99 | その他 |
「企業の施工実績」及び「配置予定技術者の施工経験」で求める評価対象工事
記載例を参考に、具体的な評価対象工事の要件を設定する。
なお、条件付き一般競争入札の入札参加資格要件の同種工事で設定する条件と総合評価落札方式の評価項目の評価対象工事で設定する条件について、これらを同じ条件にしてしまうと、入札者全員の総合評価における当該評価項目が加点されることになり、差がつかない。そのため、総合評価落札方式の評価項目の評価対象工事で設定する条件は、入札参加資格要件の同種工事で設定するよりも高いレベルとなるように設定し、当該評価項目で加点されるものが、入札者の半数程度となるように、設定にあたっては注意すること。
標準型
「施工計画の評価」項目について
標準型における施工計画の評価内容については、別表「標準型総合評価落札方式 総合評価点算定基準 評価項目」に基づいて設定する。
5-2 総合評価点算定基準の入札参加者への周知
総合評価落札方式により入札を行う場合は、総合評価点の算定方法、評価点の配点、価格点の算定方法及び価格以外の評価点の算定方法(評価項目、評価点等)について、入札公告時に入札説明書により、入札参加者に周知する。
5-3 各型式の実施手順
5-4 評価結果の公表
総合評価落札方式により入札を行った場合は、契約成立後に入札者の価格以外の評価点(各評価項目の点数も含む)、価格点及び総合評価点等の評価結果を閲覧により公表するものとする。ただし、低入札調査基準価格未満の入札があり、低入札価格調査を実施した場合には、当該契約については価格点以外の評価結果は公開しない。
5-5 総合評価点算定基準を定める場合
新たに総合評価点算定基準を定めようとする(あるいは部限定の評価点算定基準を、それ以外の部局等で実施する)際は、事前に審査委員会の審議を経るか、個別に学識経験者に意見聴取(以下「審議等」という。)する必要がある。(4-5参照)
落札者を決定する際の審議等についても、評価点算定基準を審議等した際に審査委員会もしくは意見聴取委員が必要と判断した場合には同様に実施する。
ただし、当該部局において独自に要領等を定め、それに基づき学識経験者を選定・依頼し、審議等を行う場合は、別途審査委員会の審議等を経る必要はない。
※詳細については、右のPDFファイルをご覧ください。→ 群馬県総合評価落札方式活用ガイドライン(PDFファイル:309KB)
※算定基準については【総合評価落札方式】総合評価落札方式についてのページを参照して下さい。