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令和3年度答申第8号

更新日:2021年11月8日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

(1)営農型太陽光発電設備の下部にある○○○及び○○○の農地(以下「本件対象農地」という。)において、営農が確実に行われていないと処分庁は判断しているが、本件対象農地の所有者である参加人(以下「参加人」という。)は、営農を継続する意思を表明しており、参加人は営農責任者で参加人本人が営農作業を行うか、又は第三者に依頼して行う二つの方法で行ってきた。
 また、本件対象農地は、長い期間、休耕地的農地の状況にあり、雑草が激しく生い茂っていたが、雑草除去、耕土、ふきの根の植え付け、施肥を行い、その後、毎年度、何回もの雑草除去を繰り返し行ってきたのであり、本件対象農地はこのような経緯を経て営農されてきたものである。
 よって、処分庁が営農が確実に行われていないと判断するのは事実無根である。
(2)さらに処分庁は、本件対象農地における(栽培作物である「ふき」の)単収が地域単収の8割以上を満たす計画がないと判断している。確かに、営農での単収が8割に達していないのは事実であるが、単収を毎年増加させる努力をし、現に、毎年少しずつ増加していることに加え、雑草除去を根気よく続け、年々収穫量が上がること期待して、ふきの栽培を継続しているのであり、他の市町村で(単収が)8割未満だから農地転用許可を認めないということは聞いたことはない。
 地域の専業農家の平均単収の8割が、具体的にどのくらいの分量になるのか、全く不明であり、統計数値として聞かされ、それを営農計画書に数値として記載し、それを基準として8割未満と判断しているが、処分庁は短い年度で裁定するのではなく、もう少し長い年数で裁定すべきである。
 これらのことから、営農型太陽光発電設備に係る農地転用(一時転用)を許可するという裁決を求める。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

1「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(平成30年5月15日付け30農振第78号農林水産省農村振興局長通知。以下「局長通知」という。)2(2)ウの該当性の有無について

  • 審査請求人及び参加人は、対象となる農地において営農を継続する意思があること及び肥培管理を経て営農を継続してきたことを主張している。
  • 令和2年11月27日に○○○農業委員会が農地法(昭和27年法律第229号)第5条第1項の規定に基づく農地転用許可申請(以下「本件申請」という。)に要する書類の1つである「下部の農地における営農計画書」に記載されている営農者である参加人に対し、電話にて営農の継続の意思について確認をしたところ、「今後、申請地で耕作する予定はない。」等の発言を聴取している。
  • ○○○農業委員会は、審査請求人及び参加人に対し、平成27年1月20日付けの一時転用許可以後、除草や営農状況について必要な改善措置を講ずるよう何度も指導している。
  • 局長通知3(1)に基づく営農型発電設備の下部の農地における農作物の状況報告(以下「状況報告」という。)によると、下部の農地における単収は、平成30年度及び令和元年度において、同じ年の地域の平均的な単収と比較して、2割以上減少している。
  • 以上のことから、局長通知の審査要件である適切な営農の継続性について、審査請求人及び参加人における営農状況(本件対象農地の管理や収量の確保)を見る限りではこれを満たしているとはいえないため、審査請求人及び参加人の主張や意見は認められない。

2 審査請求人の単収増加に向けた努力と姿勢について

  • 審査請求人は、ふきの単収を増加させるべく努力を行い、現に単収は少しずつ増加してきたため、その姿勢を認めるとともに、単に単収が8割に満たないから許可しないのはおかしい旨主張する。
  • 審査請求人は、ふきの定植が遅れた理由について、審査請求人から参加人への連絡が遅れたためであると説明しており、審査請求人の失念により、計画より1年以上経過した時期に定植を開始している。
  • 審査請求人及び参加人は、○○○農業委員会から度々除草指導を受けている。
  • 局長通知3(1)で「報告内容が適切であるかについて、必要な知見を有する者の確認を受けるものとする。」とされている状況報告において、審査請求人が自身を知見を有する者として所見を記入し、報告内容の確認を行っていることは、反論書において、地域の専業農家の平均単収の8割が具体的にどのくらいの分量になるのか全くわからないとしている審査請求人の主張と矛盾している。
  • 以上のことから、審査請求人及び参加人のふきの収量確保に向けた積極的な営農活動や本件対象農地の管理状況を勘案すると、現に局長通知に記載のある本件対象農地での単収が同じ年の地域の平均的な単収と比較して2割以上減少しており、この点から見ても審査請求人の主張は認められない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和3年9月22日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和3年9月30日 調査・審議
 令和3年10月4日 審査請求人より主張書面を収受
 令和3年10月11日 参加人より主張書面を収受
 令和3年10月21日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 令和2年12月23日付け農地一時転用不許可処分(以下「本件処分」という。)に係る法令等の規定について

(1)一時転用許可

 局長通知1で、農地に支柱を立てて、営農を継続しながら上部空間に太陽光発電設備等の発電設備を設置する場合には、当該支柱について、農地法第4条第1項又は第5条第1項の許可が必要となり、この場合の発電設備については、当該設備の下部の農地において営農の適切な継続が確保されなければならないことから、一時転用許可の対象として可否を判断するものとされている。

(2)農地転用許可権者の確認事項

 局長通知2(2)ウで、「下部の農地における営農の適切な継続(次に掲げる場合に該当しないことをいう。)が確実と認められること。a 営農が行われない場合 b 下部の農地における単収が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少している場合(以下略)」とされている。

(3)一時転用許可期間中の農作物の収量等の報告

 局長通知3(1)で、「営農型発電設備の支柱部分について一時転用許可を受けた者は、毎年、下部の農地における農作物の生育に係る状況及び生産された農作物の収量等に係る状況を、翌年2月末日までに次に掲げる事項について農地転用許可権者に報告するものとする。この場合において、報告内容が適切であるかについて、必要な知見を有する者(例えば、普及指導員、試験研究機関、農業委員会等)の確認を受けるものとする。ア 下部の農地において農作物が収穫されている場合には、収穫された農作物の収量及び品質。 イ 下部の農地において農作物の栽培が行われているが、その収穫が行われていない場合には、収穫が行われていない理由及び同じ生育段階にある農作物と比較した場合の生育状況。」とされている。

(4)一時転用許可の期間満了後における再許可

 局長通知5において、「一時転用許可の期間が満了する場合には、農地転用許可権者は、2の手続に準じた手続により、再度一時転用許可を行うことができるものとする。この場合、それまでの転用期間における下部の農地での営農の状況を十分勘案して総合的に判断するものとする。(以下略)」とされている。

3 本件処分の妥当性について

(1)局長通知2(2)ウの「営農の適切な継続」の該当性の有無について

ア 審査請求人及び参加人は、本件対象農地において参加人の営農を継続する意思があること及び本件対象農地では肥培管理を経て営農を継続してきたと主張している。
 確かに本件対象農地において、ふきの定植が行われ営農自体は行われていることは認められるが、令和2年11月27日に○○○農業委員会が参加人に対し、営農の継続の意思を確認した際には、「年を取って、耕作をするのが大変になってきた」、「今後、申請地で耕作をする予定はない」と発言しており、令和3年4月6日に審理員が参加人に対し、営農の意思を確認した際には、「(本件対象農地を)毎日ではないが、時々見に行っている。」と発言しており、営農者が本件対象農地での営農について積極的関与があるとは認められない。
イ また、○○○農業委員会は審査請求人及び参加人に対して、一時転用許可後から本件対象農地における雑草が繁茂していたため、その除草指導を度々行っており、その都度審査請求人及び参加人は除草作業を行っていたが、再び雑草が繁茂していた。
 さらに、○○○農業委員会では平成31年度から除草指導に加え、本件対象農地における営農状況に問題があるとのことで審査請求人及び参加人にその状況を改善するよう指導しており、令和2年8月26日に○○○農業委員会が本件対象農地を調査したところ、雑草の繁茂だけでなく、ふきの定植状況が悪いことも確認している。
ウ なお、審査請求人及び参加人は、本件審査請求手続において、今後も営農を行っていく意思があるという内容の意見書を提出しているが、○○○農業委員会が審査請求人及び参加人に対し、除草指導や営農状況の改善指導を繰り返し行ってきたことを考えると、参加人の上記令和2年11月27日及び令和3年4月6日の発言を覆すには足りない。
エ 以上のことから、局長通知の審査要件である「適切な営農の継続性」について、審査請求人及び参加人における営農状況(本件対象農地の管理や収量の確保)を見る限りではこれを満たしているとはいえないため、審査請求人及び参加人の主張や意見は認められない。

(2)審査請求人の単収増加に向けた努力と姿勢について

ア 審査請求人は、本件対象農地について、平成27年1月20日付けで最初の農地一時転用許可を受け、また、平成29年12月20日付けで1回目の更新の許可を受け、本件申請は2回目の許可更新申請である。局長通知5では、一時転用の再許可を行うに当たっては、「転用期間における下部の農地での営農の状況を十分勘案して総合的に判断するもの」とされているので、以下、この点についてみていく。
イ 審査請求人からは、報告時期にない令和2年度分を除く平成27年度から毎年5年間、審査請求人から状況報告が行われている。
 その状況報告によると、本件対象農地で生産された作物(ふき)の実際得られた単収は、平成27年から平成29年までの単収は「0」であり、平成30年及び平成31年(令和元年)は単収があるが、地域の平均的な単収と比較するといずれも2割以上減少しており、審査請求人及び処分庁ともにその事実は認めている。
ウ 審査請求人はこの点について、ふきの単収を増加させるべく努力を行い、現に単収は少しずつ増加してきたため、その姿勢を認めるとともに、単に単収が8割に満たないから許可しないのはおかしい旨主張する。
エ しかし、審査請求人は、ふきの定植が遅れた理由について、他の営農型太陽光発電設備を手がけており、参加人への連絡が遅れたためとしており、審査請求人の失念により、計画より1年以上経過した時期に定植を開始している。当初の計画どおり定植できていれば、早ければ翌年に初めて単収を得られ、その後も単収を増加させることができたはずである。
オ 前述のとおり、○○○農業委員会は、審査請求人及び参加人に対して、除草指導や営農状況の改善指導を行ってきたが、令和2年8月26日に○○○農業委員会が本件対象農地を調査したところ、雑草の繁茂だけでなく、ふきの定植状況が悪いことも確認されている。
カ また、審査請求人は、局長通知3(1)で「報告内容が適切であるかについて、必要な知見を有する者の確認を受けるものとする。」とされている状況報告において、審査請求人自身を知見を有する者として所見を記入し、報告内容の確認を行っていることは、反論書において、地域の専業農家の平均単収の8割が具体的にどのくらいの分量になるのか全くわからないとしている審査請求人の主張と矛盾している。
キ なお、本件申請は2回目の更新許可申請であるが、処分庁が1回目の更新許可申請は許可し、本件申請を不許可にしたのは、次の理由によるものであると認められる。
 1回目の更新許可申請を処分庁が許可したのは、ふきが定植されたばかりであったことから、○○○農業委員会から、現地確認を行ったうえ、今後も現地の状況を確認し、指導を行っていくことで、許可の更新を認めるのが妥当であるという内容の意見書が提出されたことを踏まえ、処分庁として判断したものである。
 一方、処分庁が本件申請を不許可処分にしたのは、○○○農業委員会から、営農型太陽光発電設備を始めてから6年間という長きにわたり、ほとんど営農することなく、今後、本件対象農地で地域平均単収8割以上の収穫を期待する要素はないため不許可が相当であるという内容の意見書が提出されたことを踏まえ、処分庁として判断したものである。
ク 以上のことから、処分庁の判断は、局長通知2(2)ウにおける「下部の農地における営農の適切な継続が確実と認められること。」の該当性の有無だけでなく、局長通知5に基づき、審査請求人及び参加人の下部の農地での営農状況を十分勘案して総合的に判断されたものであり、審査請求人の主張は認められない。

(3)審査請求人及び参加人による主張書面について

 審査請求人により提出された令和3年10月1日付け主張書面及び参加人により提出された同月7日付け主張書面における主張は、審理手続における従前の主張を繰り返すものであり、審査結果に影響を及ぼすものではない。

(4)結論

 よって、本件処分は、処分庁が法令等の規定にのっとり適正に行ったものであり、何ら違法又は不当な点は認められない。

4 上記以外の違法性又は不当性についての検討

 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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