本文
平成28年度答申第1号
1 件名
保護変更申請却下処分に対する審査請求
2 処分庁
伊勢崎市福祉事務所長
3 審査会の結論
審査請求人の主張には理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、本件審査請求は、棄却すべきものである。
4 審査関係人の主張の要旨
(1)審査請求人
処分庁の行った保護変更申請却下処分は、次のとおり、違法又は不当なものなので、撤回すべきである。
- 処分庁が行った平成28年4月28日付け保護変更申請却下処分は、変更の処分をすべきであるにもかかわらず、それを行わないので不作為である。
- 審査請求人に汲取り料の支払義務はないので、処分庁に住宅扶助の代理納付を解除させ、賃貸人に適正な賃料の支払いを行いたい。そもそも、審査請求人の保護の目的を達成するため、住宅扶助の代理納付を行わなければならない必要性は、存在しない。
- 次の2点について、保護変更申請却下通知書に記載がない。
- 審査請求人が、代理納付先である賃貸人から賃料のほかに汲取り料が掛かることについて適切な説明を受けておらず、やむを得ず汲取り料を支払っていること。
- 審査請求人が前住所地で起こされた建物明渡等請求訴訟について、支払義務のない水道代や更新料の請求に係る部分については勝訴していること。
※審理員意見書は、憲法違反、越権行為及び権利濫用であるから、審査会で採用すべきでない。
(2)審査庁
審理員意見書のとおり、棄却が適当である。
5 審理員意見書の要旨
次のとおり、本件審査請求には理由がないので、棄却されるべきである。
- 生活保護変更申請却下処分は、審査請求人の行った生活保護変更申請に対して行われた処分であり、不作為には当たらない。
- 処分の理由は、生活保護法第37条の2及び生活保護法施行令第3条の規定に基づき、被保護者の住居を確保し、保護の目的を達成するために行った正当なものであり、これに反する事情は認められない。
- 他に審査請求人の主張するような違法又は不当な点も認められない。
6 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
- 平成28年6月29日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
- 同年7月1日 調査・審議
- 同月15日 審査請求人から審理員意見書に対する意見書を収受
- 同年8月5日 調査・審議
7 審査会の判断の理由
(1)審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
(2)審査請求人の主張について
ア 不作為に当たるかについて
審査請求人は、住宅扶助の代理納付の解除を求めて生活保護変更申請を行ったにもかかわらず、当該代理納付が解除されないことは、行政不服審査法第3条に規定する「不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと)」に当たると、また、処分庁の行った却下は門前払いであり、明らかな不作為であると主張している。
処分庁は、生活保護法(昭和25年法律第144号)第24条第9項において準用する同条第3項の規定により、審査請求人の行った生活保護変更申請に対して却下という処分を行っているのだから、これが不作為に当たらないことは明らかである。また、生活保護法における却下とは、単に申請の受付を拒絶することではなく、申請を受け付け、適否を審理した後に否とする処分をいうのであるから、審査請求人の主張は、失当である。
イ 住宅扶助の代理納付の継続について
当該処分の前提となる住宅扶助の代理納付は、生活保護法第37条の2及び生活保護法施行令(昭和25年政令第148号)第3条の規定に基づき、被保護者の賃料を市が直接賃貸人に支払うことにより、被保護者の住居を確保し、保護の目的を確実にするために行われるものである。
審査請求人は、支払義務のない汲取り料を控除した額を賃貸人に支払うために代理納付の解除を求めて変更申請を行ったものである。当該変更申請を認めて代理納付を解除すれば、審査請求人は汲取り料を控除した額を家賃として支払うこととなり、両者の間に家賃支払いに係る争いが発生する可能性が高いことから、保護の目的を達成するため住宅扶助の代理納付を行う必要性は存在すると考えられる。
したがって、上記を考慮した結果、住居扶助の代理納付を継続すべきであるとして、変更申請に対して却下処分を行った処分庁の判断は、妥当なものであり、違法又は不当な点は認められない。
ウ 保護変更却下通知書の理由の記載について
審査請求人は、代理納付先である賃貸人が審査請求人に対して家賃のほかに汲取り料が掛かることについて適切な説明をしていないことや審査請求人が起こされた建物明渡等請求訴訟の判決内容について、保護変更却下通知書に記載がないことを理由として、当該処分が違法及び不当であると主張している。
しかしながら、当該変更申請の審理に当たっては、生活保護法第37条の2の規定に基づき、審査請求人の保護の目的を達成するために代理納付の必要性を判断する必要があるが、請求人の主張する上記の事項は、処分庁が判断をするに当たって必要な事項であるとは認められない。
したがって、保護変更却下通知書に上記事項の記載がないことを理由とした審査請求人の主張は、失当である。
エ その他
その他当該処分について、違法又は不当な点は認められない。
以上のとおり、審査請求人の主張には理由がなく、本件審査請求は、審理員意見書のとおり、棄却すべきである。