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平成28年度答申第3号

更新日:2016年12月8日 印刷ページ表示

1 件名

自動車税滞納処分に対する審査請求

2 処分庁

渋川行政県税事務所長

3 審査会の結論

 審査請求人の主張には理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、本件審査請求は、棄却すべきである。

4 審査関係人の主張の要旨

(1)審査請求人

 処分庁が審査請求人に対して平成28年4月12日付けで行った平成27年度自動車税の徴収金に係る普通貯金の払戻請求権に対する滞納処分(以下「本件処分」という。)について、差し押さえられた口座(以下「本件口座」という。)は児童扶養手当のみが入金される口座であり、他の収入がないのにこの処分は不当であるので、処分の取消し及び差押金額の返還を求める。

(2)審査庁

 審理員意見書のとおり、棄却が適当である。

5 審理員意見書の要旨

 次のとおり、本件審査請求には理由がないので、棄却されるべきである。

  1. 差押禁止債権の振込によって生じた預金債権は、原則として差押禁止債権としての属性を承継しないと解されている(最高裁平成10年2月10日第三小法廷判決。以下「最高裁判決」という。)。
  2. なお、差押禁止債権である児童手当が入金される口座を差し押さえた処分は、次の理由により違法であると判断した裁判例(広島高裁松江支部平成25年11月27日判決。以下「広島高裁判決」という。)があるが、固有の事実関係に基づき最高裁判決の例外を示したものである。
    ・最高裁判決を原則としつつも、処分庁が児童手当の振込日であることを認識した上で、児童手当が振り込まれた9分後に、児童手当によって大部分が形成されている預金債権を差し押さえた処分は、実質的に児童手当受給権を差し押さえたものと変わりがない。
  3. 本件処分は、児童扶養手当の振込日を認識して振込日当日の入金直後に行われたものではない。
  4. したがって、本件処分は広島高裁判決の事案と異なり、最高裁判決に従って判断すべきであり、本件処分は児童扶養手当受給権自体を差し押さえたものと変わりがないとは認められないことから、違法又は不当な点はない。

6 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

  • 平成28年9月30日 審査庁から諮問書を収受
  • 平成28年10月7日 調査・審議
  • 平成28年10月12日 群馬県行政不服審査会から審査請求人、処分庁及び群馬県総務部税務課に対し、書類の提出を依頼
  • 平成28年10月26日 処分庁及び群馬県総務部税務課から書類を収受
  • 平成28年11月11日 調査・審議
  • 平成28年12月2日 調査・審議

7 審査会の判断の理由

(1)審理手続の適正について

 本件審査請求に係る審理手続は適正に行われたものと認められる。

(2)審査会の判断について

 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)第24条の規定により、児童扶養手当の支給を受ける権利の差押えは禁止されている。また、最高裁判決により、差押禁止債権の振込によって生じた預金債権は、差押禁止債権としての属性を承継しないと解されている。

 しかし、広島高裁判決では、最高裁判決を原則とした上で、処分庁が児童手当の振込日であることを認識した上で、児童手当が振り込まれた9分後に、児童手当によって大部分が形成されている預金債権を差し押さえた処分は、実質的に児童手当受給権を差し押さえたものと変わりがなく、違法であると判断されている。

 そこで、広島高裁判決の主旨に基づき、本件における事実関係が広島高裁判決において違法な処分と判断されることとなった事実関係と同様であると認められるかについて、次のとおり検討する。

ア 処分庁が児童扶養手当の振込日を認識していたかについて

 審査庁から提出された事件記録によると、処分庁が行った財産調査の結果により、処分庁は、審査請求人が児童扶養手当の受給者である可能性があることは推測し得たと認められる。
 しかし、処分庁からの提出資料によると、処分庁が行った預貯金の財産調査において、本件口座が児童扶養手当の振込口座であることがわかる資料を入手していたことは確認できなかったことから、児童扶養手当の振込口座を処分庁が認識していた、又は認識し得たとは認められない。
 また、群馬県総務部税務課からの提出資料によると、滞納処分を行う際の預貯金の財産調査において、一般的に児童扶養手当が入金される口座であるかどうかの調査は特段行うこととされていない。
 よって、処分庁が処分日の前日に本件口座に児童扶養手当が振り込まれることを認識していた、若しくは認識し得た、又は認識すべきであったとは認められない。

イ 児童扶養手当によって大部分が形成された口座であるかについて

 処分庁は、審査請求人が処分庁に審査請求書を提出した際に持参していた本件口座の通帳により、児童扶養手当と思われる振込があることを確認していることから、本件口座に児童扶養手当が振り込まれていたことは争いがない。
 しかし、審査請求人が本件口座は児童扶養手当のみが振り込まれる口座であると主張している一方で、処分庁は審査請求人が持参していた本件口座の通帳により個人からの定期的な振込があることを確認している。両者の主張からは差押えの際本件口座の残高の大部分が児童扶養手当で形成されていたかの点が明らかでないため、当審査会は本件口座の取引履歴について審査請求人に資料の提出を求めたが、提出されなかった。

ウ 検討結果

 アで検討したとおり、処分庁は処分日の前日に本件口座に児童扶養手当が振り込まれることを認識していなかった。したがって、広島高裁判決で違法な処分であると判断された要件の一つである振込日の認識の点が認められないことから、仮に審査請求人の主張のとおり本件口座の残高の大部分が児童扶養手当で形成されていたとしても、本件における事実関係は、広島高裁において違法な処分と判断されることとなった事実関係とは明らかに異なる。

 したがって、本件は最高裁判決に従って判断すべきである。最高裁判決により、差押禁止債権の振込によって生じた預金債権は差押禁止債権としての属性を承継しないとされていることから、本件処分に違法又は不当な点はない。

以上のとおり、審査請求人の主張には理由がなく、本件審査請求は、棄却すべきである。

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