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平成30年度答申第4号

更新日:2018年9月19日 印刷ページ表示

件名

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条の規定による精神障害者保健福祉手帳の交付申請に対する拒否処分に対する審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 審査請求人は、幼少時からてんかんに罹(り)患しており、その後現在に至るまで、同病気から快復しておらず、毎月1度、通院して発作止めの治療薬を処方されている。また、現在発作止めの治療薬を服薬していても月に2度程度の発作(口からあわをふき、意識喪失、身体硬直)を起こしており、平成○○年には、この発作により左肩を骨折する傷害を負ったことから、救急車で○○市内の病院に緊急搬送され、同病院で入院治療を受けた。
 その他、審査請求人は、現在てんかんの病気の他に精神疾患を抱え、その日常をおくる上で、他者の支援を必要とする状態であり、単独で生活することは不可能である。
 以上から、審査請求人の精神疾患は治癒することはなく、精神障害者保健福祉手帳(以下「手帳」という。)の交付を受けられる状態にある。
 また、今回、手帳の障害等級に定める精神障害の状態に該当しないと認定された際の「7年以上てんかん発作は抑制されている」との手帳用の診断書(以下「診断書」という。)の内容は、事実と異なっている。
 さらに、平成○○年○月○日に障害等級2級と認定された際の診断書の「てんかんの発作の頻度は年に1回か2回」との内容についても、事実と異なっている。診断書の記載が事実に反している場合、相違している部分については、診断書の記載に拘束されるべきでなく、捨象するべきである。また、診断書の記載のうち、重要な事実に間違いがあった場合、その事実を指摘した上で、再度の専門医の判断を求めるべきである。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

1 診断書による障害等級の判定結果について

 診断書に基づき審査請求人の精神疾患の程度が障害等級3級に該当するかの判定を行うと、主たる精神障害としててんかんが確認できるものの、てんかんの発作は7年以上抑制されており、従たる精神障害もないことから、精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について(平成7年9月12日付け健医発第1133号厚生省保健医療局長通知。以下「判定基準」という。)に規定されている「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」には該当せず、精神疾患(機能障害)の状態は障害等級3級の要件を満たしていないと判断することができる。
 次に、診断書に基づき審査請求人の能力障害(活動制限)の程度の判定を行うと、「日常生活能力の程度」について「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」程度にあると判定されているものの、「問題は整形外科疾患であることが多い。てんかん発作は抑制されている。」と記載があることから、日常生活又は社会生活に一定の制限を受けている主な原因は、審査請求人の主たる精神障害であるてんかんによるものではなく、整形外科疾患によるものであると判断され、能力障害(活動制限)の程度も、障害等級3級の要件を満たしていないと判断することができる。
 以上から、審査請求人は障害の程度の最も軽い障害等級3級についての要件を満たしていないと判断することができるため、いずれの障害等級にも該当しないとして行った精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)第45条第3項の規定による精神障害者保健福祉手帳の交付申請に対する拒否処分(以下「本件処分」という。)について、違法又は不当な点を認めることはできない。

2 診断書の真偽について

 審査請求人は、診断書の内容が事実と異なっている旨主張しているが、障害等級の判定は、法第45条第2項に「前項の申請に基づいて審査し」と規定されており、あくまで提出された診断書に基づく書面審査を行うものであって、診断書の内容の真偽についての判断までは求められていないと判断できる。よって、審査請求人の当該主張は認められない。
 以上から、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 平成30年8月6日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 平成30年8月21日 審査請求人から主張書面を収受
 平成30年8月22日 調査・審議
   平成30年9月14日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 審査会の判断について

(1)本件に係る法令等の規定について

ア 法第45条第1項において、精神障害者(知的障害者を除く。)は、厚生労働省令で定める書類を添えて、その居住地の都道府県知事に対し、手帳の交付を申請することができる旨規定している。
 また、申請時に添える書類として、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号。以下「省令」という。)第23条は、医師による診断書(初めて医師の診療を受けた日から起算して6月を経過した日以後における診断書に限る。)又は障害年金の年金証書の写し等を定めている。
 法第45条第2項において、都道府県知事は、同条第1項の申請に基づいて審査し、申請者が政令で定める精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に手帳を交付しなければならない旨規定している。
 法第45条第2項の政令で定める精神障害の状態については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25年政令第155号)第6条第3項において、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、障害等級1級に係る障害の状態として、「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、障害等級2級に係る障害の状態として、「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」、障害等級3級に係る障害の状態として、「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」と規定している。
 法第45条第3項において、同条第2項の規定による審査の結果、申請者が同項の政令で定める精神障害の状態にないと認めたときは、都道府県知事は、理由を付して、その旨を申請者に通知しなければならない旨規定している。
 法第45条第4項において、手帳の交付を受けた者は、厚生労働省令で定めるところにより、2年ごとに、同条第2項の政令で定める精神障害の状態にあることについて、都道府県知事の認定を受けなければならない旨規定している。
 法第45条第5項において、同条第3項の規定は、同条第4項の認定について準用する旨規定している。
イ 精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について(平成7年9月12日付け健医発第1132号厚生省保健医療局長通知。以下「実施要領」という。)は、都道府県知事は、手帳の交付の可否及び障害等級の判定を都道府県に設置されている精神保健福祉センターに行わせるものとすると規定している。また、手帳の交付の可否及び障害等級の判定は、原則として精神保健指定医が行うことが望ましい旨規定している。
ウ 判定基準は、障害等級の判定について、精神疾患の存在の確認、精神疾患(機能障害)の状態の確認、能力障害(活動制限)の状態の確認、精神障害の程度の総合判定という順を追って行う旨規定している。また、判定に際しては、診断書に記載された精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態について十分な審査を行い、対応することとする旨規定している。
エ てんかんの精神疾患(機能障害)の状態については、判定基準において、「ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状が高度であるもの」は1級と、「ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」は2級と、「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」は3級と規定している。
オ 能力障害(活動制限)の状態については、判定基準において、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持」、「金銭管理と買物」、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」、「社会的手続や公共施設の利用」及び「趣味・娯楽等への関心、文化的社会的活動への参加」の各項目について、「できない」等の場合は1級と、「援助なしにはできない」等の場合は2級と、「行うことができるがなお援助を必要とする」等の場合は3級と規定している。
 また、精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準の運用に当たって留意すべき事項について(平成7年9月12日付け健医精発第46号厚生省保健医療局精神保健課長通知)において、診断書の「3 日常生活能力の程度」欄が、「精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる」である場合は障害等級非該当と、「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」である場合はおおむね3級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする」である場合はおおむね2級程度と、「精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする」又は「精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない」である場合はおおむね1級程度とされている。

(2)本件処分の違法性の有無について

ア まず、手帳の交付の可否及び障害等級の判定は、県の精神保健福祉センターである群馬県こころの健康センター所属の精神保健指定医3名により行われていることから、実施要領の取扱いにのっとり適切に行われていることが認められ、当該判定に係る手続において、本件処分を違法又は不当とすべき事実は認められない。
イ 次に、診断書からは、以下について確認することができる。
(ア) 精神疾患の存在について
 診断書の病名から、主たる精神障害としててんかんが確認できる。また、従たる精神障害と身体合併症はないことが確認できる。
(イ) 精神疾患(機能障害)の状態について
 診断書の「4 現在の病状及び状態像等」に「てんかん発作等」のみ該当有りとなっており、その他の備考欄に「発作は抑制されている」と記載がある。また、「5 4の病状及び状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」に「発作は7年以上抑制されている。腰部脊柱管狭窄症が重症で脳波はとれないでいる。」との記載がある。
(ウ) 能力障害(活動制限)の状態について
 診断書の「日常生活能力の判定」では、「適切な食事摂取」、「身辺の清潔保持、規則正しい生活」の各項目については「自発的にできるが援助が必要」と判定され、「金銭管理と買物」、「社会的手続や公共施設の利用」、「趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」の各項目については「援助があればできる」と判定され、「通院と服薬」、「他人との意思伝達・対人関係」、「身辺の安全保持・危機対応」の各項目については「おおむねできるが援助が必要」と判定されている。また、「日常生活能力の程度」については「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」程度にあると判定されており、「上記の具体的程度、状態等」の欄には「問題は整形外科疾患であることが多い。てんかん発作は抑制されている。生活面の指導は必要である。」との記載がある。
ウ 上記イ(ア)及び(イ)を基に、審査請求人の精神疾患の程度が障害等級3級に該当するかの判定を行うと、主たる精神障害としててんかんが確認できるものの、てんかんの発作は7年以上抑制されており、従たる精神障害もないことから、判定基準に規定されている「発作又は知能障害その他の精神神経症状があるもの」には該当せず、精神疾患(機能障害)の状態は障害等級3級の要件を満たしていないと判断することができる。
 次に、上記イ(ウ)を基に審査請求人の能力障害(活動制限)の程度の判定を行うと、日常生活能力の各判定では、全8項目中2項目が「自発的にできるが援助が必要」、3項目が「おおむねできるが援助が必要」、3項目が「援助があればできる」とされており、また、「日常生活能力の程度」については「精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける」程度にあると判定されているものの、「上記の具体的程度、状態等の記載欄」において、「問題は整形外科疾患であることが多い。てんかん発作は抑制されている。生活面の指導は必要である」と記載があることから、日常生活又は社会生活に一定の制限を受けている主な原因は、審査請求人の主たる精神障害であるてんかんによるものではなく、整形外科疾患によるものであることが確認でき、能力障害(活動制限)の程度も、障害等級3級の要件を満たしていないと判断することができる。
 以上から、審査請求人は障害の程度の最も軽い障害等級3級についての要件を満たしていないと判断することができるため、いずれの障害等級にも該当しないとした本件処分について、違法又は不当な点を認めることはできない。

(3)診断書の真偽等について

 まず、診断書については、省令第23条第1号に「指定医その他精神障害の診断又は治療に従事する医師の診断書(初めて医師の診療を受けた日から起算して6月を経過した日以後における診断書に限る。)」と規定されている。本件処分に係る診断書についてみると、精神科の医師が作成しており、また、審査請求人の主たる精神障害の初診年月日は昭和○○年頃であることから、主たる精神障害の初診年月日から診断書の作成日までの間に約○○年が経過しており、同号の規定に適合するものであることが認められる。
 審査請求人は、診断書の記載は誤っており、診断書の記載が事実に反している場合、相違している部分については、診断書の記載に拘束されるべきでなく、捨象するべきであった旨主張しているが、判定基準に「診断書に記載された精神疾患(機能障害)の状態及び能力障害(活動制限)の状態について十分な審査を行い、対応する」と規定され、診断書の内容の真偽についての判断までは求められていないことから、提出された診断書に記載された内容に基づき処分庁が判定を行ったことについて違法又は不当な点は認められない。
 また、審査請求人は、診断書の記載のうち、重要な事実に間違いがあった場合、その事実を指摘した上で、再度の専門医の判断を求めるべきである旨主張しているが、審査請求人が提出した診断書に誤りがあると主張するのであれば、それを提出した審査請求人自身が診断医に対し診断書の訂正を問うべきであるので、当該主張を認めることはできない。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

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