本文
平成31年度答申第1号
件名
要介護認定・要支援認定等についての審査請求
第1 審査会の結論
本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。
第2 審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人
自分の状態は、認知度が同様で「要介護1~3」の認定を受けている人と比べて、身体状態が同様か悪い。また、当初「介護1」の認定を受けたときより状態が悪化しているのに、認定が下がった。処分を取り消し、変更することを求める。
2 審査庁
審理員意見書のとおり、棄却すべきである。
第3 審理員意見書の要旨
次のとおり、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。
1 市担当職員が審査請求人宅での訪問調査(以下「本件認定調査」という。)を行い作成した認定調査票及び主治医意見書等に基づき、◯◯市介護認定審査会(以下「市介護審査会」という。)において審査請求人の要介護度等の審査が行われた結果、「審査判定結果 支援2」「有効期間 平成〇年〇月〇日から平成〇年〇月〇日」と判定され、当該判定に基づき処分庁は要介護認定・要支援認定等(以下「本件処分」という。)を行った。
2 審理員は、市介護審査会が行った要介護状態等の妥当性について、群馬県介護保険審査会(以下「県介護審査会」という。)へ鑑定を依頼し、次の理由により、市介護審査会の審査判定は妥当なものと認められる旨の回答を得た。
(1)県介護審査会が行った訪問調査の結果も踏まえ検討した結果、本件認定調査の結果は、被保護者等からの聞き取り及び実際の身体動作を反映したものであったと推測され、「要支援2」は適当であったと判断される。
(2)市介護審査会の二次判定を検討したところ、本件認定調査の特記事項及び主治医意見書から、「認知機能の低下の評価」及び「状態の安定性に関する評価」を変更する具体的な理由や、一次判定の変更を要するような特有の介護の手間の増加は、確認できなかった。
第4 調査審議の経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
平成31年3月20日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
平成31年3月26日 調査・審議
平成31年4月26日 調査・審議
第5 審査会の判断の理由
1 審理手続の適正について
本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。
2 審査会の判断について
(1)本件に係る法令等の規定について
ア 生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)による保護の基準及び程度については、「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)が定められているとともに、法定受託事務である保護実施の処理基準(地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項)として「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号)及び「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号)その他の通知が厚生労働省から発出されている。特に、介護扶助については「生活保護法による介護扶助の運営要領について」(平成12年3月31日社援第825号厚生省社会・援護局長通知。以下「介護扶助運営要領」という。)が発出されている。
イ 法第15条の2第1項の規定により、生活保護の介護扶助の対象者は、介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第3項に規定する要介護者及び第4項に規定する要支援者とされている。また、介護扶助運営要領第4の1では、「介護保険制度の被保険者でない40歳以上65歳未満の要保護者で介護保険法施行令第2条各号の特定疾病により要介護状態等にあるもの」については、「介護扶助の要否判定に当たり被保険者と同様に要介護状態等の審査判定を受け、要介護状態等に応じ介護扶助を受けることとする」とされている。さらに、介護扶助運営要領第4の2(2)アでは、要介護認定について「被保険者とそれ以外の者との間で統一を図る等のため、市町村に設置される介護認定審査会に審査判定を委託して行う」こととされている。
ウ 上記の手続きを経て、市町村長が行った処分に対して、被保護者が都道府県知事に審査請求を行った場合、「生活保護法に基づく介護扶助に係る審査請求の取扱いについて」(平成14年8月29日社援保発第0829002号厚生労働省社会・援護局保護課長通知。以下「平成14年保護課長通知」という。)によれば、審査庁である都道府県知事は当該都道府県の「介護保険審査会に対して、介護保険制度の被保険者でない要保護者の介護扶助の決定に際し要否判定の一環として行われた介護認定審査会による要介護認定の妥当性について、鑑定を求める」こととされている。
なお、平成14年保護課長通知は、現行の行政不服審査法施行以前の通知であることから、現在は、行政不服審査法第34条により、審理員の権限に属するのが相当と解する。
(2)本件処分の違法性の有無について
ア 本件処分に係る手続について
(ア)平成〇年〇月〇日、審査請求人から要介護等(変更)の申し出があり、同月〇日、処分庁は、市担当課に審査請求人に対する要介護認定の審査判定及び訪問調査を依頼した。
(イ)平成〇年〇月〇日、市担当課は、職員、審査請求人担当ケアマネージャー及びヘルパー等を審査請求人宅に訪問させ、本件認定調査を行い、同月〇日、認定調査票を作成した。
(ウ)平成〇年〇月〇日、市介護審査会が開催され、前記認定調査票及び同年〇月〇日を最終診察日とする主治医意見書等に基づき、審査請求人の要介護度等の審査が行われ、「審査判定結果支援2」「有効期間 平成〇年〇月〇日~平成〇年〇月〇日」と判定された。
なお、市介護審査会は、医師2名及び学識経験者3人の計5人の委員で構成されている。
また、委員には会議の1週間前に審査会資料を送付し、検討する期間を確保しているほか、審査請求人や調査立会者、主治医の氏名等を公開せず、個人が識別できない状態としている。
(エ)平成〇年〇月〇日付けで市担当課は、処分庁に対し、審査請求人に係る要介護状態等審査判定結果の通知書を送付し、同日付けで処分庁は受領している。
(オ)(エ)の判定結果に基づき、平成〇年〇月〇日付けで処分庁は、審査請求人に要介護認定・要支援認定等結果通知書を送付し、本件処分を行った。
イ 県介護審査会の判断について
上記(1)ウに基づき、審理員は、平成〇年〇月〇日付けで、県介護審査会に対し、市介護審査会が行った要介護状態等の妥当性について、鑑定を依頼し、平成〇年〇月〇日に回答を得た。鑑定の結果は、市介護審査会の審査判定は「妥当なものであると認められる」であり、以下の理由が付されている。
(ア)県介護審査会が平成〇年〇月〇日に実施した訪問調査の結果も踏まえ検討した結果、本件認定調査の結果は、審査請求人等からの聞き取り及び実際の身体動作を反映したものであったと推測され、コンピュータソフトで算出された判定「要支援2」は適当であったと判断される。
(イ)市介護審査会の二次判定を検討したところ、本件認定調査の特記事項及び主治医意見書から、「認知機能の低下の評価」及び「状態の安定性に関する評価」を変更する具体的な理由や、一次判定の変更を要するような特有の介護の手間の増加は確認できなかった。
上記ア及びイのとおり、本件処分に関し何ら違法又は不当な点は認められず、本件処分は妥当なものと認められる。
また、その他違法若しくは不当な項目を見いだすことはできない。
第6 結論
以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。