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令和元年度答申第6号

更新日:2019年10月17日 印刷ページ表示

件名

保護申請却下処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由があるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により処分を取り消すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

(1)審査請求人は、【1】〇〇年〇〇月以降に保護を開始し、クーラーの持ち合わせがないこと、【2】「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7の2の(6)のウに係る「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保発第34号。以下「課長通知」という。)の回答にある「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」の2点に該当すると考え、生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)による一時扶助(家具什器(冷房器具))の申請(以下「本件申請」という。)をした。
(2)却下の理由が、「臨時的一般生活費(家具什器(冷房器具))の支給要件に該当しないため。」だけでは、理由の提示が不十分であり、その手続きに瑕疵がある。
(3)〇〇年〇〇月〇〇日にエアコン購入の相談をした際、処分庁から支給要件の説明を受けた事実がない。
(4)〇〇年〇〇月〇〇日にエアコン購入代金の支給の申請を希望した際、処分庁は、「審査請求人は、該当要件を理解した上で申請を行うとの申し出であった」と説明するが、審査請求人は、この記載に当てはまる会話をした事実がなく、支給要件の説明後、理解を示して申請を申し出たというまとめ方は事実の曲解でしかない。

2 審査庁

 本件処分を取り消すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 次のとおり、本件審査請求には理由があるから、本件処分は取り消されるべきである。

  • 処分庁は、審査請求人に支給要件に該当しないことを十分に説明していると主張するが、審査請求人は、これまでの説明が不十分であり「ダメな理由を書面でもらうことが大切」と反論している。また、処分庁は、審査請求人から提出された令和元年6月11日付け「生活保護法による一時扶助申請書」(以下「本件申請書」という。)には、審査請求書5(2)の【1】及び【2】の記載はないことから、要件に該当しない理由の記載が必要であるとはいえないと主張するが、たとえ記載がないとしても、判断を行うに当たっては、処分庁は、審査請求人の請求内容を十分に確認するとともに、審査請求人の健康状態及び住環境など必要な調査を行った上で支給の可否を判断すべきであり、その判断理由についても、審査請求人が納得できるよう具体的に提示すべきである。
  • 処分庁が通知した本件処分の却下理由から、支給要件に該当しない理由を判断することは困難であり、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条第1項及び第2項の趣旨に照らし、理由提示としては十分でないことから、提示理由の要件を欠いた違法な処分である。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和元年8月22日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和元年8月28日 調査・審議
 令和元年9月27日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 審査会の判断について

(1) 本件に係る法令等の規定について

ア 保護の基準及び程度等
 法第8条第1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うもの」とし、その厚生労働大臣の定める基準として「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)が定められるとともに、法定受託事務である保護実施の処理基準(地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項)として「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日社発第123号)、局長通知、課長通知その他の通知が厚生労働省から発出されている。
イ 臨時的一般生活費(家具什器(冷房器具))について
 局長通知第7の2の(6)のウにおいて、被保護世帯が局長通知第7の2の(6)のアの(ア)「保護開始時において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき」、(イ)「単身の被保護世帯であり、当該単身者が長期入院・入所後に退院・退所し、新たに単身で居住を始める場合において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき」、(ウ)「災害にあい、災害救助法第4条の救助が行われない場合において、当該地方公共団体等の救護をもってしては、災害により失った最低生活に直接必要な家具什器をまかなうことができないとき」、(エ)「転居の場合であって、新旧住居の設備の相異により、現に所有している最低生活に直接必要な家具什器を使用することができず、最低生活に直接必要な家具什器を補填しなければならない事情が認められるとき」又は(オ)「犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する場合において、最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき」のいずれかに該当し、当該被保護世帯に属する被保護者に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって、それ以降、初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるに当たり、最低生活に直接必要な冷房器具の持合わせがなく、真にやむを得ないと実施機関が認めたときは、冷房器具の購入に要する費用について、5万円の範囲内において、特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこととされている。
 また、課長通知第7の問100の答において、局長通知第7の2の(6)のウの「熱中症予防が特に必要とされる者」とは、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とされている。
ウ 申請に対する処分の理由の提示
 行政手続法第8条第1項本文で、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」と、同条第2項で、「前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。」と規定している。

(2) 本件処分の違法性について

ア 処分庁から提出されたケース診断会議記録票の写しによれば、〇〇年〇〇月〇〇日に処分庁においてケース診断会議が行われ、上記(1)イの局長通知及び課長通知の支給要件に該当するかについて組織的な検討を行ったうえで診断結果を出し、その診断結果に基づき、本件処分が決定されていることが認められる。
イ 行政手続法第8条第1項及び第2項の解釈
 行政手続法第8条第1項及び第2項において、行政庁が申請拒否処分を行う場合は、同時に、当該処分の理由を示さなければならないこと、申請拒否処分を書面でするときは、同時に、書面により当該処分の理由を示さなければならない旨を規定しているのは、行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を申請者に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨であるものと解されており、このような趣旨に鑑み、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならないとされている(最高裁判所昭和38年5月31日第二小法廷判決、最高裁判所昭和49年4月25日第一小法廷判決、最高裁判所昭和60年1月22日第三小法廷判決など)。
ウ 本件処分における理由の提示
 本件処分は、本件申請により求められた保護費の支給を却下しているものであり、行政手続法第8条第1項本文に規定する「申請により求められた許認可等を拒否する処分」であると認められる。
 処分庁は、本件申請書が提出されるまでの間に審査請求人に支給要件に該当しないことを十分に説明していると主張し、また、審査請求人から提出された本件申請書には、審査請求書5の(1)の【1】及び【2】の記載はないことから、支給要件に該当しない理由の記載が必要であるとはいえないと主張するが、たとえ記載がないとしても、法による一時扶助(家具什器(冷房器具))の申請に対する保護の判断を行うに当たっては、処分庁は、審査請求人の請求内容を十分に確認するとともに、上記2(1)イより局長通知第7の2の(6)のウの要件に該当するかについて、審査請求人の健康状態及び住環境など必要な調査を行った上で支給の可否を判断すべきであり、本件においては、ケース診断会議等による検討の結果、支給要件に該当しないと判断した理由について、本件処分がなされた時点において、審査請求人に対し、具体的に提示すべきである。
 しかしながら、処分庁は、審査請求人に対し、〇〇年〇〇月〇〇日付け「保護申請却下通知書」と題する文書を送付しているところ、当該文書の却下理由には、「臨時的一般生活費(家具什器(冷房器具))の支給要件に該当しないため。」との記載があるのみで、審査請求人において当該文書の記載から支給要件に該当しない理由を了知することは困難である。
 よって、本件処分は、行政手続法第8条第1項及び第2項の趣旨に照らし、処分の理由の提示が不十分であると認められることから、同条第1項本文に規定する理由の提示を欠く違法な処分である。

 以上のとおり、本件審査請求には理由があるから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

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