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令和元年度答申第10号

更新日:2020年5月1日 印刷ページ表示

件名

 生活保護変更決定処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

(1) 審査請求人

 ○○年○○月○○日付け処分庁○○福祉事務所長(以下「処分庁」という。)による生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第26条に基づく生活保護変更決定処分(以下「本件処分」という。)において収入充当された○○円の金員の支給を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
ア 本件処分が○○個人情報保護条例違反をして得た情報をもとに下されたものである上、過支給分の充当はしないという約定(証拠のビデオファイルあり)がある。
イ 処分庁は、釈放日を書面に書けという強要罪、詐欺罪、○○個人情報保護条例違反を2重・3重に繰り返した。
ウ 審査請求人は、過支給分の充当は一切認めないと書面に書いている。

(2) 審査庁

 審理員意見書のとおり、請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 次のとおり、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。

(1) 本件処分の妥当性

 処分庁は、審査請求人が逮捕・勾留されたことを理由として、本件処分を行った。
 留置施設に留置されている者(以下「被留置者」という。)については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)により、被留置者の状況に応じた適切な処遇がされることになっており、起居すべき居室が提供され、衣類及び寝具、食事及び湯茶、日用品、筆記用具その他の物品が貸与又は支給されるとともに、負傷し、若しくは疾病にかかっているとき又はこれらの疑いがあるときは、医師による診療等が行われる。
 したがって、被留置者は、留置施設に留置されている期間において、最低限度の生活を維持することができない者には該当しないこととなるから、保護を行う必要性に欠けるといえる。
 審査請求人は、○○年○○月○○日に逮捕、翌日に勾留され、○○月○○日に釈放された。勾留中の請求人に対する処遇は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づいて措置されることとなるため、法第26条第1項に規定する「被保護者が保護を必要としなくなったとき」に該当すると考えられ、処分庁が請求人に対する保護を停止する判断をし、過支給分の返還を求めることは、違法又は不当であるとはいえない。
 過支給分を収入充当したことについても、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号。以下「実施要領」という。)に基づき適正に処理されたものである。
 また、審査請求人から提出されたビデオファイルは、○○年○○月○○日の処分庁とのやりとりの一部(「収入充当はしません」という発言)を撮影したもので、本件処分との関係は認められない。
 なお、返還金の有無や収入充当できるかどうかについては、案件ごとに異なるものであり、その都度、適切に判断すべきものである。審査請求人が処分庁に書面で提出した「過支給分の充当は一切認めません」という主張には根拠がない。
 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

(2) その他

 処分庁は、○○地方検察庁への照会により審査請求人の逮捕・勾留及び釈放について確認しており、強要を行った事実や○○個人情報保護条例違反をした事実は認められない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和2年2月12日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和2年2月20日 調査・審議
 令和2年3月16日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

(1) 本件に係る法令等の規定について

ア 生活保護の補足性

 法第4条第1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と、同条第2項は、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と規定している。

イ 保護の停止

 法第26条は、「保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなったときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもって、これを被保護者に通知しなければならない」と規定している。
 また、生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)の第10の問12において、保護を停止すべき場合は、「(1) 当該世帯における臨時的な収入の増加、最低生活費の減少等により、一時的に保護を必要としなくなった場合であって、以後において見込まれるその世帯の最低生活費及び収入の状況から判断して、おおむね6か月以内に再び保護を要する状態になることが予想されるとき。」、「(2)当該世帯における定期収入の恒常的な増加、最低生活費の恒常的な減少等により、一応保護を要しなくなったと認められるがその状態が今後継続することについて、なお確実性を欠くため、若干期間その世帯の生活状況の経過を観察する必要があるとき」としている。

ウ 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律

 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第182条は、「被留置者の処遇(運動、入浴又は面会の場合その他の内閣府令で定める場合における処遇を除く。)は、居室(被留置者が主として休息及び就寝のため使用する場所として留置業務管理者が指定する室をいう。以下この条及び第212条において同じ。)外において行うことが適当と認める場合を除き、昼夜、居室において行う。」と規定している。
 また、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第186条は、「被留置者における、次に掲げる物品(書籍等を除く。以下この節において同じ。)であって、留置施設における日常生活に必要なもの(第188条第1項各号に掲げる物品を除く。)を貸与し、又は支給する。」と規定している。
 さらに、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第199条では、「留置施設においては、被留置者の心身の状況を把握することに努め、被留置者の健康及び留置施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」と規定している。

エ 被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合の最低生活費

 「生活保護問答集について」(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)問7-15において、「被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合は刑事行政の一環として措置されるべきものであることから最低生活費の計上は必要ない」とされている。

オ 不当利得の返還義務

 民法(明治29年法律第89号)第703条では、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と規定している。

カ 生活保護費の返還免除

 法第80条では、「保護の実施機関は、保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる。」と規定している。この趣旨については、「既に決定支給した扶助費の額を減額変更して扶助費を返還させる場合、財務処理上は「戻入」という手続きがとられるが、法第80条はそのような戻入すべき額の免除を定めたもの」であるとともに、「保護の廃止、停止、変更等に伴い前渡した保護金品を支弁した者に返還すべきことは、民法第703条に示されたところによる」(問答集 問13-2)とされている。

キ 実施要領について

 実施要領第10(保護の決定)の2(保護の要否及び程度の決定)の(8)では、「最低生活費又は収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は、法第80条を適用すべき場合及び(7)のエ(賞与、期末手当等については、その収入月及び収入額が確実に把握できるときは、その収入額を認定のうえ、これを基礎として支給額の算定を行うこと。この場合、当該算定にかかる収入の額と、扶助費支給後に認定された収入額とに差を生じたときは、収入月以降の収入額に加減して支給額の算定を行うこと。)によるべき場合を除き、当該事由に基づき扶助費支給額の変更決定を行えば生ずることとなる返納額(確認月からその前々月までの分に限る。)を、次回支給月以後の収入充当額として計上して差し支えないこと。(この場合、最低生活費又は収入充当額の認定変更に基づく扶助費支給額の遡及変更決定処分を行うことなく、前記取扱いの趣意を明示した通知を発して、次回支給月以後の扶助費支給額決定処分を行えば足りるものであること)」とされている。

(2) 本件処分の妥当性

ア 処分庁による保護の停止の妥当性

 処分庁は、審査請求人が○○年○○月○○日に勾留され、○○月○○日に釈放されたことに伴って、本件処分を行った。
 留置施設に留置されている者(以下「被留置者」という。)については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律により、被留置者の状況に応じた適切な処遇がされることになっており、起居すべき居室が提供され、衣類及び寝具、食事及び湯茶、日用品、筆記用具その他の物品が貸与又は支給されるとともに、負傷し、若しくは疾病にかかっているとき又はこれらの疑いがあるときは、医師による診療等が行われる。
 したがって、被留置者は、留置施設に留置されている期間において、最低限度の生活を維持することができない者には該当しないこととなるから、保護を行う必要性に欠けるといえる。
 審査請求人は、○○年○○月○○日に勾留され、○○月○○日に釈放されており、勾留中の審査請求人に対する処遇は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づいて措置されることとなるため、法第26条に規定する「被保護者が保護を必要としなくなったとき」に該当すると考えられ、処分庁が審査請求人に対する保護を停止する判断をしたことは、違法又は不当であるとはいえない。

イ 過支給額の収入充当の妥当性

 (1)キのとおり、生活保護停止処分によって発生した過支給額について、確認月からその前々月までの分は、法第80条を適用すべき場合を除き、次回支給月以降の収入充当額として差し支えないこととされている。
 ○○年○○月分の生活扶助費の過支給額は、○○月○○日に審査請求人が勾留されたことにより、生活保護が停止されたことに伴って生じたものである。
 勾留中の扱いは(1)ウ及びエのとおりであること、処分庁から提出された証拠によれば、釈放日の翌日に処分庁が審査請求人宅を訪問し、過支給となった保護費について説明をしていることから、本件において、法第80条に規定する「被保護者に、やむを得ない事由がある」とはいえず、審査請求人が処分庁に書面で提出した「過支給分の充当は一切認めません」という主張には理由がない。また、審査請求人から提出されたビデオファイルは、○○年○○月○○日の処分庁とのやりとりの一部(「収入充当はしません」という発言)を撮影したもので、本件処分との関係は認められない。

ウ 結論

 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

(3) その他

 処分庁は、○○地方検察庁への照会により審査請求人の逮捕・勾留及び釈放について確認しており、強要を行った事実や○○個人情報保護条例違反をした事実は認められない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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