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令和2年度答申第1号

更新日:2020年6月18日 印刷ページ表示

件名

 生活保護変更決定処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 令和元年12月19日付けで生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第25条の規定による生活保護変更決定処分(以下「本件処分」という。)の年金生活者支援給付金(以下「給付金」という。)の収入認定及び12月分過支給額の収入充当分の支給を求めるというものであり、その理由は次のとおりである。

  1. 処分庁とは、過支給分の充当はしないという約定(証拠のビデオファイルあり)がある。
  2. 給付金の制度は審査請求人もテレビで見て知っているが、審査請求人に届くはずの郵便物が届いていないので何の手続きもしていない。何かの間違いである。
  3. 〇〇市からの連絡もなく、審査請求人の口座にも給付金は入金されていない。
  4. 処分庁は憶測のみで給付金を収入認定しようとしているが、審査請求人は給付金を受けとっていないのだから、他人に損失を及ぼしたとは言えない(民法(明治29年法律第89号)の不当利得に当たらない。)。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 次のとおり、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。

1 本件処分の妥当性

 処分庁は、審査請求人が給付金の請求書が届いていないと主張するため、「年金生活者支援給付金の支給決定情報にかかる留意点と保護費への反映について」(令和元年11月6日厚生労働省社会・援護局保護課保護係長事務連絡。以下「事務連絡」という。)及び法第29条第1項の規定により、〇〇市国民年金担当部局に照会を行い、審査請求人の給付金が支給決定され、支給額が月額6,250円、支給開始月が令和元年10月及び初回支払月が同年12月であることを確認した。また、金融機関に照会を行い、令和元年12月〇〇日に審査請求人の口座に給付金12,500円が入金されていることを確認した。
 処分庁は、受給月の12月とその翌月1月に実際の受給額である12,500円を分割して、それぞれ6,250円を収入認定するところ、12月は既に保護費が支給済みであったことから、1月分のみ収入認定を行い、事務連絡の2の(4)により、12月分に収入認定を行えば生じることとなる返還額の6,250円を1月に収入充当額として計上して差し支えないものと解して、本件処分を行ったものである。
 処分庁が審査請求人に対する保護を変更し、12月過支給分を収入充当、1月分を収入認定したことは、事務連絡等に基づき適正に処理されたものである。
 また、審査請求人が主張する「過支給分の充当はしないという約定(証拠のビデオファイル)」は、令和元年〇〇月〇〇日の処分庁とのやりとりの一部(「収入充当はしません」という発言)を撮影したもので、本件処分との関係は認められない。
 なお、返還金の有無や収入充当できるかどうかについては、案件ごとに異なるものであり、その都度、適切に判断すべきものである。
 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第4 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和2年3月9日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和2年3月16日 調査・審議
令和2年6月5日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1)生活保護の補足性

 法第4条第1項において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と、第2項において、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と規定されている。

(2)資料の提供等について

 法第29条第1項において、「保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定若しくは実施又は第77条若しくは第78条の規定の施行のために必要があると認めるときは、次の各号に掲げる者の当該各号に定める事項につき、官公署、日本年金機構若しくは国民年金法(昭和34年法律第141号)第3条第2項に規定する共済組合等に対し、必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社、次の各号に掲げる者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる」と規定され、第1号において、要保護者の収入状況について資料の提供等を求めることができるものと規定されている。

(3)不当利得の返還義務について

 民法第703条において、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と規定されている。

(4)給付金の保護費への反映方法について

 事務連絡の1「給付金支給決定情報にかかる留意点について」において、平成31年4月1日時点で基礎年金を受給しており、かつ、給付金の支給要件を満たしていることが確認できた方のうち、給付金の支給が決定した者の給付金支給決定情報(1回目)が、日本年金機構から各市町村の国民年金担当部局に令和元年11月1日に提供されているので、保護の実施機関は、支給された給付金を保護費に反映するため、各市町村の国民年金担当部局に対して、被保護者の給付金支給決定情報を照会することとされている。
 さらに、事務連絡の2「保護費への反映方法について」においては、(1)「初回支払月が令和元年12月のケース」で、令和元年10月18日までに、給付金請求書を日本年金機構等に提出した場合は、10月、11月分の給付金の支払が同年12月から開始され、この場合は、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第8の1の(4)のアにより、実際の受給額を12月と令和2年1月に分割して収入認定することとされている。
 また、事務連絡2の(4)「初回支払月の給付金の収入認定が同月の保護費の算定時期に間に合わない場合」においては、局長通知第10の2の(8)の「収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合」に当たるものとして、当該事由に基づき保護費支給額の変更決定を行えば生ずることとなる返納額(以下「返納額」という。)を、次月以降の収入充当額として計上することとされている。

(5)生活保護費の返還免除について

 局長通知第10の2(8)によると、収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は、確認月からその前々月までの分の返納額は、法第80条を適用すべき場合を除き、次回支給月以降の収入充当額として計上して差し支えないこととされている。
 法第80条は、「保護の実施機関は、保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる。」と規定している。

3 本件処分の違法性等の有無について

(1)本件処分における給付金の扱いについて

 処分庁は、審査請求人が給付金の請求書が届いていないと主張するため、法第29条第1項の規定により、令和元年12月〇〇日付けで〇〇市国民年金担当部局に、審査請求人の給付金の支給情報について照会を行った。
 令和元年12月〇〇日付けで当該照会の回答があり、審査請求人の給付金が支給決定され、支給額が月額6,250円、支給開始月が令和元年10月及び初回支払月が令和元年12月であることを確認した。
 処分庁は、受給月の12月とその翌月1月に実際の受給額である12,500円を分割して、それぞれ6,250円を収入認定するところ、12月は既に保護費が支給済みであったことから、1月分のみ収入認定を行い、事務連絡の2の(4)により、12月分に収入認定を行えば生じることとなる返納額の6,250円を1月に収入充当額として計上して差し支えないものと解して本件処分を行ったものである。
 また、事務連絡の4「その他の留意事項について」において、給付金支給決定者情報に基づいて収入認定する場合も、事後的に被保護者から振込通知書等の提出を受けて、実際の振込額を確認することとされている。このため、処分庁は、審査請求人に対し、振込の有無について回答を求めたが拒否されたため、令和元年12月〇〇日付けで金融機関に照会を行い、同月〇〇日に審査請求人の口座に給付金12,500円が入金されていることを確認した。
 なお、局長通知第10の2(8)において、収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は、確認月からその前々月までの分は、法第80条を適用すべき場合を除き、次回支給月以降の収入充当額として差し支えないこととされている。
 審査請求人は、給付金が支給された事実を知らないと主張していること、給付金の支給開始後速やかに本件処分が実施されていることから、本件において、法第80条に規定する「これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由がある」とはいえず、同条を適用しなかったことについて、違法又は不当な点があるとはいえない。
 以上のとおり、処分庁が審査請求人に対する保護を変更し、12月過支給分を収入充当、1月分を収入認定したことは、事務連絡等に基づき適正に処理されたものである。

(2)約定について

 審査請求人が主張する「過支給分の充当はしないという約定(証拠のビデオファイル)」は、令和元年〇〇月〇〇日の処分庁とのやりとりの一部(「収入充当はしません」という発言)を撮影したもので、本件処分との関係は認められない。

(3)結論

 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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