ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織からさがす > 総務部 > 総務課 > 令和2年度答申第5号

本文

令和2年度答申第5号

更新日:2020年7月30日 印刷ページ表示

件名

 生活保護変更決定処分及び生活保護廃止決定処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 令和2年3月26日付けで処分庁が行った生活保護変更決定処分(住宅扶助の削除)及び生活保護廃止決定処分(以下これらを「本件処分」という。)の取消しを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
(1)〇〇市の借家(以下「借家」という。)は、〇〇市の実家(以下「実家」という。)を占有することができなくなった場合のために、借りておかなければならない。生活保護法による保護の実施要領について(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)の中の「第2実施責任」の中に、「なお、現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」とあるが、審査請求人はこれに該当する。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 処分庁が生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第29条第1項に基づき照会した預金取引履歴やライフラインの使用料金、郵便物の転送手続等から実家を生計の本拠としていることが明らかである。また本件が次官通知の第2実施責任なお書き以降に該当するとは認められない。そのため生活保護の実施機関については、実家の住所地を所管する〇〇市福祉事務所とされるべきである。
 また、住宅扶助は日々の生活の場としての家屋の家賃を保障するものであり、借家は預金取引履歴やライフラインの使用料金、郵便物の転送手続等からそれとは認められない。
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
 令和2年5月29日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
 令和2年6月5日 調査・審議
 令和2年7月3日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1)生活保護の実施機関

 法第19条第1項は、「市長及び社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。」と規定し、「次に掲げる者」の1つに「その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者」と規定している。
 また、次官通知の第2において、「保護の実施責任は、要保護者の居住地又は現在地により定められるが、この場合、居住地とは、要保護者の居住事実がある場所をいうものであること。なお、現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」と規定している。
 さらに、生活保護問答集について(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「事務連絡」という。)第2実施責任居住地及び現在地の認定と実施責任の所在(1)居住地の認定において、「生活保護でいう居住地とは、生活保護が最低生活の保障を目的としていること及び保護の実施上世帯単位の原則によっていることから、その者の属する世帯の生計の本拠となっている場所をいい、空間的には、居住事実の継続性・期待性がある住居のある場所をいう。」とされている。

(2)住宅扶助

 法第14条は、「住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。」と規定し、「左に掲げる事項」の1つに「住居」を規定している。
 また、事務連絡第7最低生活費の認定3住宅費において、「日々の生活の場としての家屋の家賃、間代、地代等のほか、破損等により住居としての機能に障害が生じた場合の小規模な補償費を保障するものである。」とされている。

3 本件処分の妥当性について

(1)審査請求人の居住実態について

 処分庁が、法第29条第1項の規定等により行った居住実態に係る調査結果は、次のとおりである。

ア 処分庁の訪問等について

 処分庁職員が、令和元年12月26日から令和2年3月24日までの間に37回借家を訪問しているが、いずれも審査請求人は不在であった。
 また、令和2年1月〇〇日付けの審査請求人あての文書が、〇〇郵便局から〇〇郵便局に転送されている。

イ 文書に記載された住所等について

 審査請求人が提出した次の文書については、借家(平成23年の文書については、借家への転居前の〇〇市内の借家)が居所と、実家が住所と記載されている。

  • 平成23年5月13日付け、平成26年6月3日付け、平成27年1月26日付け、平成28年1月13日付け、同年4月29日付け、同年10月19日付け及び平成29年2月22日付け行政不服審査請求書
  • 平成23年〇〇月〇〇日付け、平成27年〇〇月〇〇日付け、平成28年〇〇月〇〇日付け、平成29年〇〇月〇〇日付け及び同年〇〇月〇〇日付け再審査請求書
  • 平成26年7月4日付け、平成27年5月5日付け及び平成29年4月13日付け反論書
  • 平成28年8月4日付け懲戒請求書

 また、審査請求人が提出した次の文書については、借家が住所と、実家が居所と記載されている。

  • 令和元年7月7日付け、同年12月20日付け及び令和2年1月29日付け行政不服審査請求書
  • 令和元年7月7日付け及び同年12月20日付け懲戒・告発請求書
ウ ATMの使用状況について

 平成29年〇〇月から平成30年〇〇月までの間、審査請求人は、〇〇市内のATMを48回利用している。
 平成30年〇〇月から令和2年〇〇月までの間、審査請求人は、〇〇市内のATMを8回利用しているが、いずれも、審査請求人が処分庁を訪問した日か、〇〇市内の医療機関を受診した日である。
 一方、平成30年〇〇月から令和2年〇〇月までの間、審査請求人は、〇〇市内のATMを19回利用している。

エ 内科に係る医療機関の受診について

 平成30年〇〇月限りで、〇〇市内の医療機関の受診を止めている。
 平成30年〇〇月以降、〇〇市内の医療機関を受診している。

オ ガスの利用について

 借家においては、平成30年〇〇月まで従量料金が発生しているが、翌月以降平成31年〇〇月を除き、基本料金のみが発生している。また、平成30年〇〇月から平成31年〇〇月まで、令和元年〇〇月及び同年〇〇月は、一時ガス止めの手続がなされている。
 実家においては、オール電化住宅である旨、処分庁が審査請求人から聞き取っている。

カ 水道の利用について

 借家においては、平成30年〇〇月までは、従量料金が発生している。翌月以降は、平成30年〇〇月を除き、基本料金のみ発生している。
 実家においては、平成30年〇〇月から審査請求人名義で使用を開始しており、使用料は、総務省統計局による「家計調査」の単身世帯の1ヶ月当たりの平均的なものとなっている。

キ 電気の利用について

 借家においては、契約先は不明であるが、令和元年12月26日から令和2年3月24日までの間に処分庁職員が借家の電力メーターを確認したところ、この間における使用量はわずか(69.85kwh)であった。
 なお、経済産業省資源エネルギー庁が公表している「省エネ性能カタログ2017年冬版」によると、一般的な冷蔵庫(単身用)の月当たりの消費電力は、27.5kwhとされている。
 実家においては、平成30年〇〇月から審査請求人名義で使用を開始しており、その使用料は、総務省統計局による「家計調査」の単身世帯の1ヶ月当たりの平均的な料金を上回るものとなっている。

(2)本件処分の妥当性について

 (1)の調査結果から、審査請求人は、生活の本拠を実家としていると判断することが適当である。
 なお、審査請求人は、実家において居住していることが、次官通知の第2のなお書きに当たると主張している。審査請求人は、実家の時効取得を目的に実家を占有しているが、実家を占有できなくなった場合のために借家を借りておく必要があると主張していることから、「他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等」には当たらないと解するのが適当である。
 よって、生活保護の実施機関については、実家の住所地を所管する〇〇市福祉事務所とされるべきである。
 また、住宅扶助は日々の生活の場としての家屋の家賃を保障するものであるが、居住実態のない借家が「日々の生活の場」とは認められない。

(3)生活保護廃止処分に係る処分庁の対応について

 生活保護廃止処分は、処分庁が保護の実施機関でないことを理由にされたものであるから、当該処分後の審査請求人の生活に関してなんらかの支援を講ずることが望まれるところ、処分庁は、審査請求人に対し、〇〇市福祉事務所における生活保護申請について処分庁が支援することを伝えており、また、処分時に〇〇市福祉事務所職員とともに実家を訪問し、その場で生活保護申請をすることができる旨を伝えている。
 さらに、生活保護の審査に最長30日程度かかることから、処分庁は、処分日から実際の生活保護廃止日まで30日空けており、生活保護廃止処分に係る処分庁の対応は、適切になされたものと認められる。

(4)結論

 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

群馬県行政不服審査会答申集ページへ戻る群馬県行政不服審査会ページへ